お客様の声

TEPCO DXを牽引するDX人財育成の取り組みとは

東京電力ホールディングス株式会社

業種 電力事業
従業員数 約38,000人(連結)
用途 DX人財育成
東京電力ホールディングス株式会社 DXプロジェクト推進室 副室長
笹川 竜太郎 氏
2000年入社。変電設備の保守業務を経て、社内人財公募制度でインターネット上のコンテンツビジネスを経験。その後、電力システムの開発・導入業務、人事部門における採用業務、賠償業務、グループ会社における海外ビジネス業務を経て、2022年7月より現職。

Overview

課題

  • 電気事業は「発電した電気をお客さまへお届けする」というビジネスモデルだが、人口減少や脱炭素化、電源の分散化など業界を取り巻く環境は大きく変化している
  • 東京電力は、「電力の安定供給」と「カーボンニュートラル」の両立に向けた事業構造変革に取り組んでおり、DX活動を重要な推進方策として位置づけ、DX人財の育成を進めている
  • DX人財ポートフォリオを策定すると共に、育成目標を全社員の2割(6,000人)に設定
  • これまで社内でスキル認定を行っていたが、社外共創の拡充に向け、社内的な評価だけでなく、社外でも通用する、世の中に求められる人財であることを示すためにも、「社外のモノサシ」を用いた評価が必要になった

exaBase DXアセスメント&ラーニングを選んだ決め手

  • 自己評価だけでなく、客観的な指標で評価できること
  • 問題に対する回答の正誤によって難易度が変わること(幅広いレベルの判定が可能)
  • DXのD(データやデジタル技術)の要素だけでなくX(企業構造やビジネスモデルの変革)の要素を評価/可視化できること
  • デジタルスキル標準に準拠していること

exaBase DXアセスメント&ラーニングを受検・受講した効果や感想

  • 2,000名以上の社員がエクサウィザーズ社のDIA3.0を受検。その結果を分析することにより、DX人財を育成するための有効的な施策が見えてきた
  • スキルを可視化し外部のデータと比較することにより、組織や部署内の実力値や傾向を把握することが可能となった
  • 育成ターゲットが可視化されると共に、効率的な育成プロジェクトを策定可能。加えて、社員の学ぶ意欲を高める効果が期待できる

首都圏を含む一都八県に電力を供給し、全国に電力を販売している東京電力。供給電力量では日本の電力の約1/3を担っており、2,900万軒のお客さま情報や、600万本の電柱をはじめとした設備情報など膨大なデータを保有している。
現在、業界が直面している脱炭素化や電源の分散化などの環境変化に対応するため、「電力の安定供給」と「カーボンニュートラル」を軸に新たな価値を創造する事業構造変革に取り組んでいる。変革を支えるためのDX人財育成にも積極的に取り組み、2016年ごろにはデータ分析人財の育成に着手し、2022年には「DX全社員化」へ拡大した。
DX人財を育成するに至った背景や育成プロセスについて、東京電力ホールディングス株式会社DXプロジェクト推進室 副室長 笹川竜太郎氏に語っていただいた。

DX人財育成のベースには全社を挙げたカイゼン活動

東京電力では、2018年頃からDX人財育成に本格的に取り組みはじめました。まずは、DX人財育成に乗り出した経緯からご紹介いたします。

当社のDX人財育成のベースには「カイゼン活動」があります。トヨタ自動車が取り組む「トヨタ式カイゼン」は有名ですが、当社でも2015年頃から生産性向上を目的として社長をトップにカイゼン活動に取り組み、今では全社員に広く浸透しています。カイゼン活動では「いつものやり方」に疑問を持ち、1つ1つのプロセスを深掘りする力が磨かれますが、このカイゼンで培ったなぜなぜを繰り返す力にデジタルを掛け合わせることで非連続の変革を目指すことをTEPCO DXとして位置づけ、DX人財の育成を進めています。

2016年には「データサイエンティストプログラム」を整備するなどデータ人財を育成していましたが、2018年経済産業省が「DXレポート」を公表した時期に合わせて、当社でもDX推進の専門組織「DXプロジェクト推進室」を設立。全社的なDX推進を開始すると共に、DX人財育成にも本格的に着手しました。

  • データ分析コンペなどの全社的なイベントを開催(約400名が参加)
  • 研修プログラムの修了後に参加できる社内コミュニティを形成

当初はアーリーアダプター層(商品やサービスをいち早く購入・導入する顧客層)や、デジタル技術に関心が高い層の社員を対象に研修を行い、徐々に範囲を広げていきました。
2022年から「安全で持続可能な社会」を実現するための「カーボンニュートラル」や 「防災」を軸とした事業展開に向けてDX人財の育成対象を全社に広げています。

出所:東京電⼒グループのめざすカーボンニュートラルと防災を軸とした「次世代まちづくり」
https://www.tepco.co.jp/press/release/2022/pdf4/221101j0101.pdf

東京電力が取り組むTEPCO DXでは、「徹底的なデータ化により、ゼロカーボンエネルギー社会の実現を牽引」することを目指しています。TEPCO DX実現のためにも土台となるDX人財の育成を本格的に進める必要がありました。

出所:TEPCO DX 白書 2024
https://www.tepco.co.jp/about/about-dx/pdf/TEPCO_DXhakusho2024.pdf

DX人財の育成は長期的な視座が求められる

TEPCO DXでは、全社員の約2割にあたる6,000人をDXの中核を担う人財として育成することを目標に掲げました。また、経産省・IPAが作成している「デジタルスキル標準」を踏まえ、6つの職種・4段階のスキルレベルを策定しています。

出所:TEPCO DX 白書 2024
https://www.tepco.co.jp/about/about-dx/pdf/TEPCO_DXhakusho2024.pdf

「DX人財の育成」と一言で言っても、その内容は多岐にわたります。デジタル技術の知識習得はもちろんのこと、顧客ユーザーへの共感力の醸成や常識に囚われない発想力なども育成しなければなりません。つまり、DX人財の育成は一朝一夕でできるものではなく、長期的な視座が必要なのです。

そのため、私たちは「可視化・育成・配置」という育成サイクルで人財育成に取り組むことにいたしました。

  • 可視化
    人財の質と量の見える化
    社内でのレベル判定の他、社外アセスメントを導入(エクサウィザーズ社のDIA3.0)
  • 育成
    自律的なキャリア開発と個人に応じたスキル強化
    業務に必要なスキルや資格取得の支援だけでなく、自律的に学びたい社員を支援するためにさまざまなオンライン学習動画サービス等を導入。また、掲示板やチャットによるコミュニティを形成
  • 配置
    重要プロジェクトには高レベル人財を優先的に配置
    人財公募などの既存制度もフル活用して、マッチングの向上に努める
出所:TEPCO DX 白書 2024
https://www.tepco.co.jp/about/about-dx/pdf/TEPCO_DXhakusho2024.pdf

exaBase DXアセスメント&ラーニング導入の決め手

DX人財の質と量の見える化のために、自社ではなく社外アセスメントのexaBase DXアセスメント&ラーニングを導入しました。

もともと社内には各部門単位にレベル認定制度がありました。しかしDXは電気事業の中だけで実施するのではなく、日進月歩するITスキルや外部のサービスを社内に取り込みながら事業変革を進めなければなりません。そこで、社内だけでなく本当に社外でも通用する人財なのか、社外のモノサシも必要と考えました。

exaBase DXアセスメント&ラーニングの導入の決め手となったポイントは「アセスメントの仕組み」と「データ分析の豊富さ」でした。他社サービスと比較検討した際に下記の点を魅力に感じました。

  • 自己評価だけでなく、客観的な指標で評価できること
  • 問題に対する回答の正誤によって難易度が変わること(幅広いレベルの判定が可能)
  • DXのD(データやデジタル技術)の要素だけでなくX(企業構造やビジネスモデルの変革)の要素を評価/可視化できること

当時、システム人財育成のなかで、デジタルの要素をアセスメントする仕組みはありましたが、Xをどのように評価しようか悩んでいました。エクサウィザーズ社のサービスはXの要素も評価できる点や数値化してデータ活用ができることが興味深かったです。

即戦力人財に共通する2つのポイント

「可視化・育成・配置」という育成サイクルを回す中で、社員約2,000人にエクサウィザーズ社のDIA3.0(exaBase DXアセスメント&ラーニングのアセスメント)を受検してもらいました。受検した個人の結果をマッピングしてみたところ、高レベルに位置する人財(DXにおいて即戦力となる人財)には、次のような傾向が高いということが見えてきました。

  • キャリア採用の社員
  • DX組織において一定の経験を有する社員

私たちも想定していた通りの結果ではありましたが、DX人財育成においてはキャリア採用が有効な施策であること・実践の場があることが非常に重要であることが見えてきたのです。このことから、全体的なレベルの底上げは行いつつも、マインド向上やスキル向上など、ポイントを絞って打ち手を講じることが有効であると考えています。
また、エクサウィザーズ社から提供されたアセスメント結果と私たちが定義したDX人財を総合的に見て、特定の役割を担う人財に求められるDX推進スキルについても可視化することができました。

例えば、東京電力では事業領域が広いため、人財ポートフォリオにある「ビジネスアーキテクト」の需要が高いことがわかりました。

ビジネスアーキテクトに該当する社員について分析してみると、戦略やマネジメント、全体最適のアプローチなどのスキルにおいて一定レベルを有している反面、マーケティングなどに課題が残っています。
また「セキュリティ」については概ねレベルが高いことが確認できました。これは、当社がサイバーセキュリティを重要経営課題の一つに位置付け、サイバーセキュリティ方針のもとセキュリティ専任組織を設置して、資格取得の推奨に加え、実践の場や定期的な訓練に注力してきた結果が反映されているのかもしれません。
このように、保有しているデータのスキル化や可視化をすることにより、組織や部署内の実力値や傾向を把握することが可能となりました。
その結果、人財育成担当箇所では効率的な育成プロジェクトを策定することができるようになり、さらにそれが社員の学ぶ意欲の向上につながっていくと私たちは考えています。

育成した人財が価値を発揮する仕組作り

アセスメントの結果から社内人財の評価や社外との比較も見えてきました。足りないスキルや育成すべきターゲット層が見える化されたため、今後、どのように育成や配置を進めていくのがベストかを検討しています。

例えば、データサイエンティストは社内にもう少し必要なことがわかりました。またビジネスアーキテクトに該当する人財は、「変革」の要素を持っている一方で「デジタル」の要素が足りない、またはその逆の社員がどれほどいるかが見えてきました。両方の要素を持った人財を育成していくために、それぞれに適切な育成機会や研修を提供していく動きができるようになりました。

出所:TEPCO DX 白書 2024
https://www.tepco.co.jp/about/about-dx/pdf/TEPCO_DXhakusho2024.pdf

今後は育成した人財が価値を発揮できる仕組みを検討し構築することが重要と考えます。DX人財育成を進める企業は増えているので、育成の次のステップにいる他社とも意見交換をしていきたいです。

東京電力ホールディングスでは、TEPCO DXを進めることにより、お客様やパートナー企業様、社員も含め、あらゆるステークホルダーと繋がり、データによる価値を共有して信頼を築き上げていきたいと考えています。