お客様の声

アセスメントで見える化、育成で行動へ―社内にDXを根付かせる育成戦略とは

新日本電工株式会社

業種 製造業
従業員数 950名(連結/2024年12月)
用途 DX人材のスキル・素養の可視化/DXリテラシーの向上/高度DX人材の育成
情報システム部長 兼 DX推進室長
小島 克己 氏
※所属部署、役職などは取材当時

Overview

課題

  • 各部門でDXをどう捉え、どのように関わっていくのかが明確でなく温度差があった
  • 「DX自体には賛成だけれど、具体的な実動イメージがつかない」というようなDXに対する解像度のばらつきがあった

exaBase DXアセスメント&ラーニングを選んだ決め手

  • アセスメント機能によって、個人のDXスキルや課題を可視化でき、成長を定量的に追える点
  • eラーニングの内容が充実しており、マインドセットやリテラシーの醸成に効果的だった点
  • エクサウィザーズによる伴走型の支援体制(DX推進リーダー育成プログラムでのプロジェクト支援)

exaBase DXアセスメント&ラーニングを受検・受講した効果や感想

  • アセスメントを通じて、受検者自身のITスキルの棚卸しや課題の明確化ができた
  • eラーニングでDXへのマインドが醸成された
  • DXリーダー研修後、業務効率のDX企画が実際のプロジェクトとして推進されている

「2030年のあるべき姿」に向けて、DX人材育成が始動

──DX推進に着手された背景についてお聞かせください。

当社は合金鉄の製造を祖業とし、合金鉄事業、機能材料事業、焼却灰資源化事業、アクアソリューション事業、電力事業の5事業を展開しています。2021年に公開した中期経営計画の中で2030年のありたい姿(現在は「あるべき姿」)を「素材と環境で人々の暮らしを支え、より良い未来に向かって挑戦し続ける会社」と定めました。このあるべき姿には製品や技術、サービスの提供による社会課題の解決や持続的な成長に向けた企業基盤の強化といった、サステナビリティ経営の推進が必須です。このサステナビリティ経営を推進するにあたって必要な要素を考えた時、はじめて「DX」という言葉が社内で正式に登場し、全社的な変革の必要性が共有されるようになりました。これを受けて、DX推進を加速させるために全社横断のタスクフォースを立ち上げ、ビジョンやロードマップの構築に着手しました。

DXを推進するうえでは、生産、業務、事業の3領域に取り組んでいます。例えば、生産DXでは生産情報を可視化しリアルタイムで共有できるような環境作りから始まり、生産現場における省人化やオペレーションの最適化によるスマートファクトリー化と、それによるモノづくり領域での競争力強化を目指しています。これらを支える基盤として人材の育成が不可欠であると判断しました。そこで2026年までにDX推進リーダーおよびデータサイエンティストを40名、2030年までに80名の育成を目指すという目標を掲げ、人材育成を段階的に進めることにしました。DX推進室では、DX人材の育成目標を追うとともに、社内のDXへの意識をどう醸成していくかを考え、日々業務に取り組んでいます。

図:DX活動テーマ
出所:新日本電工グループ中期経営計画より抜粋

壁は「温度差」──現場と経営層のギャップを超えるために

──当時、社内におけるDXの認識はどのような状況だったのでしょうか。

2022年時点では、DXという言葉自体がまだ十分に浸透しておらず、全社的に取り組むべきテーマであるという共通認識もこれから形成される段階でした。各部門でもDXをどう捉え、どのように関わっていくのかが明確でなかったため、まずは「DXとは何か」「なぜ必要なのか」といった部分から丁寧に意識を揃えていくことが重要だと感じました。

──経営層や現場からのDXに対する意見や声はいかがでしたか

社長をはじめ、経営層の中にはDXの重要性を深く理解し、推進を力強く後押ししてくださる方も多くいます。一方で、組織としてはまだ温度感にばらつきがあるのも事実で、取り組みの浸透には一定の時間がかかると感じていました。たとえば、一部からは「こんなことをやってみたい」といった前向きなアイデアが出てくることもありますが、組織の意思決定のプロセスや部門間の調整の中で、実行に至るまでに時間を要するケースもあります。また、現場レベルでは「DX自体には賛成だけれど、具体的なイメージがつかない」というようなケースもありました。

DX人材育成の全体像―アセスメントから高度DX人材の輩出まで

──数あるサービスの中でexaBase DXアセスメント&ラーニングを選んだ理由を教えていただけますか?

DX人材育成に取り組む際に、複数の企業からご提案をいただきました。その中でexaBase DXアセスメント&ラーニングを選んだ一番の決め手は、提供されているアセスメントでした。アセスメントを受けることで、個人のDXスキルレベルや課題が明確になり、さらに継続的に受けることで自身の成長度合いが可視化できる点に魅力を感じました。また、デジタルスキル標準に完全準拠しており、社員のDXスキルを精緻に確認できる点も魅力的でした。
eラーニングの内容も非常に充実しており、DXに対するマインドセットや基礎的なリテラシーの醸成において高い効果が期待できると感じました。また、エクサウィザーズによる伴走型の支援体制も大きな魅力で、特にDX推進リーダー育成プログラムでは、受講者が立案したプロジェクトに対して実現可能性の検討やブラッシュアップの支援を行っていただける点が、実践的な育成に非常に有効だと考えました。

──現在のDX人材育成のお取組状況をお聞かせください。

最初にDXアセスメントと、DXに関する基礎的な内容をインプットできるeラーニングを約250名に受けてもらいました。アセスメントによりメンバーの現状のDXに対するマインドやスタンス、知識レベルを可視化し、全体的なリテラシーを向上させるためです。ここからさらにメンバーを選抜し、高度DX人材教育の一環として、DX推進リーダーやデータサイエンティストの育成プログラムを20名に受講してもらいました。
このプログラムでは、受講者が自部門や全社の課題に基づいたDXのプロジェクトを立案するのですが、その過程でプロジェクト内容の具体化や実現可能性について、エクサウィザーズに伴走いただきながらブラッシュアップすることができました。

──実際に研修やアセスメントを受講された方々の声はいかがでしたか?

アセスメントについては、様々な声がありました。セキュリティやプログラミング開発といった専門的な設問に戸惑った方もいましたが、ITスキルの棚卸しとして非常に有効だったと捉えています。
一方で、eラーニングについては、DXマインドやロジカルシンキングなどの基礎的なコンテンツを必須としたことで、「非常に分かりやすかった」「業務に役立ちそうだ」といった前向きな声も聞かれました。特に、ITに苦手意識のある従業員にとっても、入り口として無理なく学べる構成になっていると思います。

図:3年間のDX人材育成の全体像
出所:株式会社エクサウィザーズ

意識・スキルとも着実に前進 ― 実務でもプロジェクト化が進む

──高度DX人材の選抜はどのように行われたのでしょうか?

最初はアセスメントの結果や、DX推進を強化したい部門の意向をもとに選抜していました。しかし、部門によっては総合職の人数が限られていたり、DXに関心のある人材が少なかったりといった事情もあり、候補者の選出がスムーズに進まないケースも見られました。
このような背景を踏まえ、今年度からは選抜方法を見直し、より柔軟な仕組みに変更しました。まだ試行錯誤の段階ではありますが、選抜の裾野を広げることで着実に前進しています。たとえば、これまでは総合職中心だったところから、今年度は一般職の方も上長推薦付きでDX教育の対象者に加えるなど、新たな動きも出てきています。今後は、総合職・一般職の区別なく、意欲ある人が手を挙げやすい仕組みにしていくことで、DX人材育成の基盤をさらに強化していきたいと考えています。

──お取組の成果をお聞かせください。

2026年までにDX推進リーダーおよびデータサイエンティストを40名育成するという目標に対しては、2024年の教育プログラム修了時点で12名の合格者が出ており、着実に成果が見え始めています。
また、約3ヶ月に一度、会議でDXの進捗を報告する場を設ける等、全社的なDXに対する意識変革にむけた取り組みも行っています。
実際に、DX推進リーダー研修を修了した担当者が中心となって進めている、受発注業務の効率化プロジェクトがあります。
このプロジェクトが進行している事業部門は、複数の会社が統合してできた部門で、同じ受発注処理でも工場によってやり方が複数通り存在していました。そのため、対応者によって作業が違う属人化が生まれ、余分な工数がかかってしまっている状況でした。現状はどのようなシステムを導入すれば業務の標準化と効率化ができるかを検討しており、この取り組みが成功すれば、従来複数人必要だった業務がより少人数で済むようになります。このプロジェクトの他にも複数プロジェクトが企画されています。

DX育成の鍵は“経営層の本気”と“スキルの見える化”

──DX人材育成を成功に近づけるポイントをお教えください。

DX人材育成を成功させる上で、何より大切だと感じるのは、社長を筆頭に経営層がDXの必要性、そしてそれを支える人材育成の重要性をしっかりと理解し、全社的に取り組むという強い意思を持つことです。当社の場合、社長自身が新しい技術や変革に非常に前向きで、DXへの理解が深かったことが、取り組みを進める上で大きな後押しとなりました。また、中期経営計画の中で「人的資本」への投資を明確に打ち出していたことも、社内の理解を得やすく、育成を進める環境づくりに大きく寄与しています。やはり、上層部のリーダーシップが全社を巻き込む鍵になると思います。

図:人的資本経営について
出所:新日本電工グループ中期経営計画
──今後はどのような点に力を入れていきたいですか?

社員から「こんなDXにトライしたい」「こういうアイデアがある」といった、具体的な提案を増やしていきたいと考えています。そのためには、社員がDXによって何ができるのか、どのような可能性があるのかを知る機会を提供することが重要です。他社事例などを積極的に紹介し、社員の想像力を刺激することで、新たなアイデアや取り組みが出てくることを期待しています。

──これからDX人材育成に取り組む企業様へメッセージをお願いします。

DX人材育成における具体的な取り組みとして、アセスメントの活用をぜひお勧めしたいです。スキルや強み・弱みを数値で可視化できると、社員一人ひとりが自分の現在地を把握しやすくなり、今後の学習目標も立てやすくなります。また、組織全体でスキルマップを持つことで、育成方針の策定や適材適所の人材配置にもつながります。成長が「見える化」されることは、社員のモチベーションを高める上でもとても効果的です。

図:DXアセスメント「DIA」のサンプル画像

当社は今年の10月に創業100周年を迎えます。2030年に向けて描く「あるべき姿」の実現に向けて、DX推進、そしてそれを支える人材育成はますます重要になります。これからもエクサウィザーズさんと連携しながら、より多くの仲間と一緒に、変革に向けた一歩を踏み出していきたいと思っています。