お客様の声

スキルの見える化で配置と学びを連動。「南海版イノベーション」を推進するデータ主導の人財育成

南海電気鉄道株式会社

業種 鉄道・バス、陸運業
従業員数 2,717名(2025年3月末)
用途 DX人財の発掘・育成
総務人事室 人事部(人財・組織開発担当)
課長
中村 美紗子 氏
上級主任
田頭 亜佳音 氏
デジタル変革室 データマーケティング部
上級主任
佐竹 正義 氏
※所属部署、役職などは取材当時

Overview

課題

  • 全社的にデータを活用しきれておらず、感覚的な人材配置や育成から脱却する必要があった
  • DXを推進する上で、どの社員がどのようなスキルや素養を持っているのか把握したかった
  • 画一的な研修では参加者のレベル感と合わず、学習モチベーションの低下につながる恐れがあった

exaBase DXアセスメント&ラーニングを選んだ決め手

  • 事業創造とデータ活用の両側面から、人材のスキルを多角的に評価できるアセスメントだった
  • 全社的なDX推進に必要な素養や伸びしろを測る内容で、専門知識に偏っていなかった
  • アセスメント結果と連動し、個々のレベルに応じた最適な学習コンテンツを提示できるeラーニングであった

exaBase DXアセスメント&ラーニングを受講した効果や感想

  • eラーニング受講者のうち30%が目標水準を達成し、他の研修と比較して最も高い成果を記録した
  • 専門部署でなくてもデータの分析や活用が容易になり、人事部主導でのDX教育運用が実現した
  • 社員のスキルレベルが可視化され、戦略的な人材育成・配置の基盤が整った

2025年で創業140年を迎える南海電気鉄道は、2050年に向けた企業像の実現と企業価値の持続的向上を掲げ、人への投資を中核に据えた人的資本経営を加速しています。その実装エンジンが、社員一人ひとりが自ら考えて動く「南海版イノベーション」を生み出す人材育成です。中期経営計画(2025-2027)でも人財戦略とDX戦略を連動させ、公共交通×不動産の両輪に新規事業を加え沿線の価値創造を担う人材の底上げに取り組んでいます。

企業価値向上の鍵は「人」への投資。事業戦略と連動したDX人材育成の始動

──貴社の中期経営計画では「人的資本経営の加速」が重要な戦略として掲げられています。その背景にあるミッションや、会社としての期待をお聞かせください。

田頭氏: 人財戦略は、経営戦略と連動させることで企業価値を高めることが求められています。その期待に応えるためには、全社員が「南海版イノベーション」を実践することが不可欠です。「南海版イノベーション」とは、社会やお客様のニーズを的確に把握し、それを実現する取り組みを指します。2024年から正式に定義し、全社的な活動として推進を開始しました。社員一人ひとりが自らの能力を最大限に発揮できる環境を整えることが、イノベーションを根付かせる上での重要な基盤であると考えています。

出所:南海電気鉄道株式会社様
──全社的に「人的資本経営」を推進する背景には、どのような課題意識があったのでしょうか?

中村氏: 「人的資本経営」を推進する背景には、事業面と組織面の双方に課題意識があります。
まず事業面では、多くのお客様にご利用いただいているにもかかわらず、蓄積されたデータを十分に活用できていないという長年の課題がありました。お客様への提供価値を高め、生産性を向上させるためには、データに基づいた意思決定への転換が不可欠だと認識しています。
一方、組織面では、今後の人手不足という社会的課題にも対応していく必要があります。持続的な成長を実現するためには、社員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境を整備することが欠かせません。子育てや介護など、さまざまな制約を抱える社員であっても、いきいきと働ける仕組みを整えることが求められます。
こうした事業課題と組織課題を乗り越え、全社員が「南海版イノベーション」を実践できる状態を目指すために、「人への投資」を核とした「人的資本経営」の加速を、経営の中核戦略として位置づけています。

──そうした流れの中でDX人材育成に着手されたとのことですが、当初はどのような状況だったのでしょうか?

田頭氏: もともとは佐竹が所属するデータマーケティング部など、専門部署が中心となってDXを進めていました。2021年度からは研修も始めていましたが、専門部署だけでは全社的な取り組みに限界があり、進行速度にも課題を感じていました。そのため、人事部としてもDX推進に連携して取り組み、社員全体のスキル底上げを図ることにしました。

佐竹氏: DX推進の取り組みは、2020年のコロナ禍で専門組織が立ち上がったことから始まります。ただし、当初は「社内の誰にDXの素養があるのか」が把握できていない状態でした。まずは本社の若手~中堅層を対象にアセスメントを実施し、DXに適性を持つ人材を見極めるところからスタートしました。

──専門部署主導の段階では、どのような形で人材育成を行っていたのでしょうか?

佐竹氏: コロナ禍の2021年、アセスメント結果をもとに各部署からDXに関心や素養のある人材を集め、それぞれの部署が抱える課題を共有しながら解決策を検討する「DXリーダー養成研修」からDX人材育成をスタートしました。デザイン思考による課題整理や発想法を学び、デジタル技術を活用した解決策を検討、最終的には各現場に持ち帰って実践してもらう形で取り組みを広げていきました。この研修を起点に人事部と試行錯誤を繰り返しながら、現在のデータ主導の人財育成に至っています。

決め手は「デジタル変革力」と「事業創造力」。複数部署のニーズを両立させたツール選定

──各部署から人材を集めて育成する中で、なぜ自社で完結させず、外部サービスの導入を検討されたのでしょうか?

佐竹氏: 当社にはアセスメントを独自に設計・運用するだけの知見が不足していたためです。自社で手探りのまま人材を見極めようとすると、どうしても勘や経験に基づいた主観的な判断に偏ってしまいます。既に社会的に確立された仕組みがあるのであれば、それを活用することで客観性と再現性を担保しながら、人材発掘の精度を高められると考えました。

──exaBase DXアセスメント&ラーニングを導入される際、他社サービスとの比較も行われたのでしょうか?

佐竹氏: はい。初めてアセスメントを導入したのは2021年ですが、2023年に、人事部と連携して全社的にDX推進に取り組むことになり、この段階で改めてツールの見直しを行いました。当時のDX推進部、新規事業部、人事部の3部署合同で協議を重ね、およそ5社のサービスを比較検討しました。

──複数のサービスを比較された中で、最終的にエクサウィザーズを選定された理由を教えてください。

佐竹氏: DX推進部としては「データやデジタル技術を活用して変革を起こせる人材」、新規事業部としては「起業家マインドを持ち、自ら顧客課題を発見できる人材」という、それぞれ異なるニーズを持っていました。exaBase DXアセスメント&ラーニングの人材アセスメントDIA(Digital Innovator Assessment)(以下、DIA)はこの二つの観点である「事業を創造する力」と「デジタルで変革を推進する力」をどちらも測定できる点が大きな決め手でした。さらに、専門知識に偏らず、全社員を対象にDXの素養や今後の成長可能性を評価できる点も、私たちの目的に合致していました。

──他社のサービスでは、その両面を評価することが難しかったのでしょうか?

佐竹氏: 他のサービスの中には、ITやセキュリティに関する専門知識を問う設問が中心のものもありました。それらは専門部署向けには有効ですが、私たちが目指す「南海版イノベーション」を全社的に推進するうえでのアセスメントは適していないと判断しました。事前に「南海版イノベーションの実現にはどのような能力が必要か」という仮説を立てた上で各サービスを評価した結果、DIAが最も当社の理念に即した能力を可視化できると確信しました。

eラーニング受講者の30%が目標達成。他研修を13%上回る成果を支えた個別最適化の仕組み

──exaBase DXアセスメント&ラーニング導入後、どのようにプロジェクトを進行されたのでしょうか?

田頭氏: 2023年度から本格的に活用を開始しました。全社員にアセスメント(DIA)を受けてもらい、その結果に基づいてレベル別の研修を実施する流れです。初年度は本社勤務の社員を対象とし、こちらで指定した研修を受講してもらいました。2024年度からは、中期経営計画で掲げた「全社員が南海版イノベーションに取り組めるようにする」という方針に基づき、対象を本社および出向社員全員へ拡大しています。

──2023年度は会社側で研修を指定されたとのことですが、運用面で課題はありましたか?

田頭氏: はい。研修後のアンケートでは、「自分のレベルに合っていない」「受講目的が分からない」といった声が多く寄せられました。会社側が一方的に研修を割り当てる形では、受講者の主体性が損なわれ、学習意欲の低下につながる恐れがあると感じました。そのため、2024年度からは複数の研修ラインナップを提示し、社員自身が選択できる形式へと変更しました。

──研修の一つとしてexaBase DXアセスメント&ラーニングのeラーニングを導入されていますが、社員の反応はいかがでしたか?

田頭氏: 非常に好評です。自分のペースで、隙間時間を活用しながら学べる点が支持されています。2024年度の初導入時には、定員50名に対して100名を超える応募がありました。想定以上の反響を受け、翌年度は急遽定員を130名に増やして対応しています。

──eラーニングの学習効果についてはいかがでしょうか?

田頭氏: 高い成果が確認できています。受講者のうち約30%が目標水準を達成しており、これは昨年度実施した6種類の研修の中で最も高い数値でした。2番目に成果が高かった研修と比較しても13ポイントの差があり、eラーニングの効果を実感しています。この結果が、定員拡大の大きな判断材料にもなりました。

出所:南海電気鉄道株式会社「南海グループ 統合報告書 2025」
──なぜeラーニングで特に高い成果が出たとお考えですか?

田頭氏: アセスメント結果と連動し、個々の弱点に応じて「おすすめ動画」が提示される仕組みが、効果的な学習につながったと考えています。初年度に課題となった「自分のレベルに合わない研修」の問題が解消され、社員一人ひとりが重点的に学ぶべき領域を明確にできたことが、成果向上の要因だと捉えています。

──アセスメントによるスキル可視化は、今後どのように人財戦略に活かしていくご予定でしょうか?

田頭氏: 現在、タレントマネジメントシステムを導入しており、今後はDIAのデータを連携させ、社員一人ひとりのスキルを統合的に可視化していく方針です。アセスメントは単なる評価ではなく、社員が「南海版イノベーション」を実践し、事業戦略の実現に貢献していくための起点として活用していきたいと考えています。

佐竹氏: 私たちデジタル変革室では、アセスメント達成をゴールではなく、新たな出発点と位置づけています。その30%の人材が次の成長層となり、各事業部で変革を牽引するリーダーとして活躍することを期待しています。今後は、そうした人材のために、より専門性の高い教育・実践プログラムを整備していく計画です。

※2026年度までにイノベーションスキル習熟度の目標水準到達者が全体の30%を目指している(出所:南海電気鉄道株式会社「南海グループ 統合報告書 2025」)

専門家でなくても分析可能に。DX推進を「全社教育」の一環へ昇格させ、専門部署からのスムーズな業務移管を実現

──エクサウィザーズの導入・運用サポート体制について、どのように感じられましたか?

田頭氏: 担当の方には常に迅速に対応いただき、大変感謝しています。2023年度にアセスメントを本格導入した際には、結果のフィードバック会を開催していただくなど、運用面でのサポート体制が非常に充実していると感じました。また、私たちがKPIを設定する際にも複数回の打ち合わせを通じて丁寧に相談に乗っていただきました。操作方法の質問にとどまらず、運用設計に関するディスカッションにも伴走していただけたのは、非常に心強かったです。

──DIAの導入によって、人事部とデータマーケティング部の連携にはどのような変化がありましたか?

佐竹氏: 当初はデータマーケティング部が主導していましたが、人事部と連携を開始したタイミングで、全社教育の一環として主な運用を人事部へ移行しました。DIAは専門的な知識がなくても扱いやすく、データの確認や分布図の分析も人事部内で完結できています。私たちはKPIの算出など、より高度な分析が必要な場面でサポートに入る形で、円滑な協働体制を築けています。

田頭氏: もしアセスメントを自社で一から設計していたら、データ整理だけでも大きな負担になっていたと思います。DIAではフォーマット化されたデータが出力されるため、分析作業が格段に効率化されました。実際に私自身が初めてデータを加工してグラフを作成しましたが、問題なく進められました。ただし、分析結果を踏まえて「どのように人材を成長させていくか」を設計する部分では、データマーケティング部の専門的知見も欠かせないと感じています。

──どのような課題を抱える企業にexaBase DXアセスメント&ラーニングをお勧めされますか?

中村氏: 属人的な判断に頼る文化から脱却し、全社的なスキルの底上げを目指す企業に適していると考えます。まずは社員一人ひとりのスキルを可視化することが、人材育成の出発点になります。誰にどの知識が不足しているのか、誰がさらに成長できるのかを客観的に把握することで、より効果的な育成施策を講じることができます。

佐竹氏: 「DXを本格的に推進したいが、社内のどこにその素養を持つ人材がいるのか分からない」という課題を持つ企業には、特に有効だと思います。DX推進は「やらされるもの」ではなく、主体的に動く社員がいてこそ成果が生まれます。会社を本気で変えたいと考える意欲ある社員を見つけ出す上で、非常に有効なツールだと感じています。