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AIのメリットとデメリットとは?AIの問題点や暮らしの事例、今後の課題まで紹介

近年、AIのビジネス活用が急速に普及しています。AIは多くの分野で活用されており、導入するメリット(利点)は多く語られています。しかし、AIは万能ではありません。今回は、企業のDX推進担当者や新規事業担当者向けにAIのメリットとデメリットについて事例もあわせてご紹介します。AIの特性を知り、適切にAIをビジネスに活用していきましょう。

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AIとは

AIとは「Artificial Intelligence」の略称で、人工知能と訳されます。コンピューターシステムの性能向上により、コンピューター自身がデータから「学ぶ」ことができる「機械学習」がAIの中心技術です。

従来のコンピューターシステムではかなわなかった高度な演算を行うことが可能になり、ビジネスの世界でも、情報通信はもちろん金融業や製造業などでもAIを取り入れています。DX推進の流れもあり、ビジネスへのAI導入率は右肩上がりで増加しているのが現状です。AIをビジネスに活用するのが当たり前になりつつあるこの時期に、改めてAIのメリットとデメリットを知り、メリットを最大化させ、デメリットを最小化させつつ、適切にAIをビジネス活用していくことが求められます。

AIについて詳しくはこちらの「AIとは何か?機械学習やディープラーニングとの関係、最新事例、将来展望を解説!」の記事で解説していますのであわせてお読みください。

AIが得意とすること

AIが得意とするのは、膨大なデータからパターンを認識し処理することであり、主に以下の3分野で力を発揮します。

  • 音声認識
  • 画像処理
  • 自然言語処理

音声認識と画像処理は、対象となる音声・画像を認識し過去の蓄積データと照合した上で、それが何であるか判断をします。自然言語処理は、普段人間が発する曖昧性のある言葉や文章を、形態素ごとに分解したり、文脈に応じた解釈を推論して処理するものです。

AIが苦手とすること

一方で、AIが苦手とするのは、過去の蓄積データから導けない処理をすることです。0から1のアイデアを創出することや、規則性やパターンのない事象から、処理をすることはできません。

こうした処理は、複雑に絡み合うさまざまな因子を仮説に基づいて選択し、適切に結びつけることで成り立つものです。機械学習をベースに機能するAIには、まだまだ難しい領域といえそうです。

開発が加速するAI

2023年10月発表の特許庁資料によると、AI開発が加速している現状を確認できます。AI関連の発明の特許出願件数は、2018年を境に、大きく右肩上がりで推移しており「第三次AIブーム」と呼ばれる様相を呈しています。

2017年の特許出願件数3166件に対し、2021年度は9022件と3倍近い伸びを示し、国内の全分野特許出願件数の3.1%を占めている現状です。この流れは今後も続く見込みで、AIの開発はさらに加速度を増すとされています。

引用:特許庁「2023年度 AI関連発明の出願状況調査結果概要」

AIのメリット

AIは企業にとっても消費者にとってもさまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのか一つずつ見ていきましょう。

新しいビジネスの創出・競合優位性の強化

AIを活用することで従来ではできなかったビジネスモデルが可能になり、新しい事業創出が見込めます。

例えば自然言語処理を応用した感情分析AIを活用して、SNSの投稿やレビューなどからネガティブ要素を抽出し改善にあてるサービスなどが新たに生まれました。

また、大量のデータを学習させて精度の高くなったAIを活用することは一朝一夕では成しえないため、AIを活用したビジネスを確立することは競合の参入障壁にもなります。

例えば、大規模なECサイトでどのような属性のユーザーがどのような商品を購入したのかといったデータが溜まれば溜まるほど、最適な商品をレコメンドできるようになり高い購買体験が提供できます。しかし小規模でデータの溜まりにくいECサイトだとレコメンドの精度を上げるのに時間がかかるため、サイトの購買体験を上げることが、難しくなるでしょう。

データの予測、検知、最適化などを高い精度で行える

AIは大量のデータを解析して分析に役立てたり、過去のデータから未来を予測したり、人だと見落としがちな小さな違いに気づいたり、多くの条件下で特定のタスクを実施する際の最適なパターンを決めたりする作業が得意です。

蓄積された顧客や市場のデータをAIが解析して分析に役立てることで、高い精度で需要の予測が可能となります。分析結果を企業戦略やマーケティングに反映していけば、市場の流れをつかんだ事業を展開できるでしょう。人だと見落としてしまう製品の小さな傷や、痛んだ生産物もAIなら高い精度で見つけることができます。アルバイトのシフトの作成や店舗の棚割りの最適化など複雑な組み合わせも効果が最大化されるようなパターンを導き出すことができます。

生産性の向上による労働力不足の解消と人件費の削減

AIを活用することで、人の手よりもはるかに速いスピードで業務をすることが可能になります。特に単調な作業や入力作業、分析業務などに効果を発揮し、生産性が向上するとともに、人手不足の解消につながります。また、人が行っていた作業をAIに置き換えることで、人件費を削減することが可能です。

2022年は単純業務以外を効率化できるAIのサービスも増えました。ジェネレーティブAI(生成系AI)といわれ、新しいデジタルの画像や動画、音楽、文章などを生成するAIです。2022年は画像を生成する「Midjourney」や「Stable Diffusion」、動画を生成するMetaの「Make-A-Video」やGoogleの「Imagen Video」、OpenAIの「ChatGPT」など多くのジェネレーティブAIが生まれ、ビジネスの活用も模索されています。

ジェネレーティブAIがよりビジネス活用を見据えたサービスに進化していけば多くの生産性向上や労働力不足の解消につながるでしょう。

人ならではの業務に専念できる

定型作業やAIが得意な業務をAIに置き換えることにより、その時間を人間でしか行えない作業にあてることが可能となります。それにより人ならではの業務や人とのコミュニケーションに集中できるのです。

例えば、過去のデータを分析して将来の需要予測をするのに大量のExcelによる作業が発生していた場合、予測はAIの得意分野のためAIに任せて、部下との1on1の時間や顧客との商談を増やすといったことが可能になります。人と人とのコミュニケーションは、現状AIでは難しく、人間ならではの領域です。AIに得意な業務はAIに任せ、人間が得意な業務は人間がするように意識しましょう。

危険な作業での安全性が向上する

高い場所や災害現場での作業など危険な現場で業務にあたる場合、AIを搭載したロボットやドローンに作業をさせることで従業員が怪我をするリスクを減らせます。

例えば

  • 高い場所や足場が不安定な危険な場所で設備の点検を行う場合に、人の代わりにAI搭載のドローンが自動で点検を実施
  • 災害現場の復旧作業を、AIを搭載したロボットが自動走行して荷物を運ぶ

などがあります。

コミュニケーションの質が向上する

AIを活用した技術の進歩により、既存の業務や顧客とのコミュニケーションにも変化が及んでいます。例えば、以下のような技術の活用が普及しつつあります。

  • AIを活用した自動通訳
  • 遠隔コミュニケーション
  • 自動応答(チャットボット)
  • 音声認識技術 など

こうした技術が実用化されることで、コミュニケーションにかかる手間やリソースを解消し、質の向上につなげられるメリットがあります。

自動翻訳の技術により、海外の人々との「言葉の壁」が解消されつつあるだけでなく、遠隔コミュニケーションが定着し、物理的な制約に捉われずにやりとりすることが可能となりました。また、チャットボットにより、顧客から問い合わせに対して課題やニーズ別にパターン化された応対が可能になり、より円滑で正確な対応ができるようになってきています。

業務の正確性が担保される

人間が作業をする場合、担当者の熟達度によって、正確性にムラが生じます。また、熟練した担当者が処理したとしても、そのときの体調やモチベーションにより、業務品質が完全に一定化することはありません。

しかしAIによる処理では、人による熟達度の差や、体調・モチベーションに左右されることなく、常に一定の業務品質を確保することができます。人が行う場合、どうしてもヒューマンエラーにより品質やアウトプットの数が安定しないことは避けられない点があります。こうした正確性の担保により、ミスによる時間の無駄が軽減され、業務効率が飛躍的に向上します。

サービスの満足度向上

AIの活用により多くの製品やサービスの品質が上がり、顧客の満足度も向上します。例えば以下のようなものが挙げられます。

 

商品レコメンド

通販サイトにおいて、機械学習を用いて消費者の好みに合った商品を提案することが可能になります。消費者は自分で探さなくても、欲しい商品や、自分の知らない類似商品、一緒に買った方が良い商品などを確認することができるため購買活動の満足度が向上します。

 

24時間対応可能なチャットボット

カスタマーサポートにおいて、AIを活用した自動応答や自動チャットボットを導入することで24時間365日の対応が無人で対応可能になります。また、対応に時間がかかる人間のオペレーターよりもAIの対応が早いこともあるため、消費者が問い合わせる際の満足度が向上します。

 

医療現場での診断支援

AIを使った診断支援システムを導入することで、医者の診断スピードや正確性が向上し、患者の治療効果が改善されたり、病院の待ち時間が改善されたりすることもあるでしょう。

 

投資のAIサポート

AIを使った投資のアドバイスや取引の自動化によって、投資のリターンが向上し、顧客のリスクも改善されることがあります。今まで投資には一定の知識と時間が必要でしたが、気軽の投資ができるようになり消費者の満足度向上になるでしょう。

 

自動運転や配送最適化による配送の満足度向上

AIを使った自動運転トラックやドローンなどを使った配送、AIによって最適化された配送計画などによって配送スピードが向上し、消費者の満足度も向上するでしょう。

 

AIのスペシャリストが語る、新時代に求められる生成AIの活用とは?

AIやWEB3という言葉は耳にするものの、それが実際に仕事にどのような変化をもたらすのでしょうか。

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AIのデメリット

AIの導入は多くのメリットが見込まれますが、残念ながらデメリットがないわけではありません。AI導入に失敗しないためにも懸念される点を認識し、対策を考えていきましょう。

導入・運用コストがかかる

AIのシステムを導入するには初期投資が必要です。AIに学習させるデータを用意するのにコストや時間がかかる場合がありますし、AIを扱える人材が必要なため採用か育成、もしくは外注する必要があります。

また、AIのモデルの精度が最初は高くない場合があり、継続的に学習しデータを蓄積することでより精度が高くなるため、導入してすぐに結果が出ないこともあります。

AIの導入には初期コストがかかり、一定の精度が出るまで時間がかかる場合があることは十分理解した上で、費用対効果については適切な見通しを立てるようにしましょう。

また、長期的なコストを下げるために早期からAIを扱える人材の育成などに着手するようにしましょう。

セキュリティリスク

AIを導入する際に、今までオンプレミスな環境で動かしていたシステムをクラウドサービスに移行することもあるでしょう。最近はクラウドサーバでAIを使う例が非常に増えてきています。その場合、データの送受信がインターネットを介して行われるため情報漏洩やハッキングのリスクが高まるため、オンプレミス環境とは別のセキュリティ対策が必要になります。

また、一からAIの導入を検討する場合、今まで保有していなかったデータも取得・管理していく場合もあるでしょう。その際データレイク(ローデータを集めた巨大なデータベース)やデータウェアハウス(分析などの目的のためにデータが整理された状態で格納されているデータの倉庫)を新たに利用する場合もそれぞれセキュリティ対策が必要です。

また、AIを使ってセキュリティを突破しようとする悪意をもった人も出てきています。AIによって画像認証をすり抜けようとしたり、セキュリティ対策ソフトを狂わせたり、ソフトウェアの脆弱性を発見したりといった悪い使い方をする人たちへの対処も今後さらに必要になってくるでしょう。

人間の思考力を奪う

AI技術が今後さらに普及し活用が進めば、人間が自分の頭を使って考える機会がまずます減ってしまうことがデメリットとして考えられています。応答型AIやロボティクス系AIの進歩により、人間が指示さえ出せば簡単に答えを導き出したり、処理を行ってくれるようになりつつあるためです。

こうした便利さから、多くのことをAIに任せてしまう「AI依存」が起こりかねません。多くの業務をAIに委ねられるため、これまで以上に働く人材へ求められる役割を再定義する必要があるでしょう。

特にAI技術の普及により、単純労働以上に、ナレッジワーカー(知的労働者)の仕事が多く代替される可能性が高いといわれています。専門性や経験をもとに、AIをどのように事業へ活用できるのかを模索することが求められるでしょう。

AIに関する今後の課題

雇用の減少

AIに置き換えられる業務が増え、一部の職業において雇用の減少が懸念されています。英オックスフォード大学の機械学習分野の教授であるマイケル・オズボーン氏は2013年に著書「雇用の未来(The Future of Employment)」において「20年後(2033年ごろ)までに日本の総雇用者の49%の仕事が消滅する」と予想しました。

AIに代替されてしまう業務が増えるのは避けようのない未来です。しかし、AIにできないことやまだ苦手なことも存在します。オズボーン氏はAIが苦手とするスキルとして「クリエイティビティ」「ソーシャルインテリジェンス」の2つだと指摘しました。AIは過去の学習データから別のものを推測・生成しますが、0から1は生み出せません。また、人同士の感情をもったコミュニケーションなどの複雑な行動も理解・再現することは難しい状況です。したがって、AIが苦手な、クリエイティブな仕事や、人間とのコミュニケーションが重要な仕事の中にはしばらくAIに代替されない仕事があるでしょう。

また、AIが社会に浸透することによって生まれる雇用も多くあるとされています。例えば、AIの悪用を防ぐ(または見破る)ためにAIを監視する仕事なども生まれるでしょう。AIの普及により人とのコミュニケーションが減るため、AIには代替できない、一緒に散歩したり雑談したりといった人としてのコミュニケーションの価値が上がり、そうした仕事も増えていく可能性もあります。

AIを使うことによって発展する仕事もあるでしょう。2022年に画像生成AIが流行しましたが、画像生成AIを上手く利用して今までにないイラストや動画を生成するクリエイターも現れました。現状のAIは人間の指示によって動くツールであり、人間が使うことには変わりありません。

このようにAIが既存の雇用を減少させる可能性はあるものの、AIに代替されない仕事や、AIによって新たに生まれる仕事、AIによって発展する仕事があることも視野に入れれば前向きな議論ができるでしょう。

参考:『【オズボーン】AIがもたらす「仕事の未来」の最新形』NewsPicks 2022年12月24日

プロセスのブラックボックス化・責任の所在がわからなくなる

AIの問題として判断を下すまでのプロセスがわからない(プロセスのブラックボックス化)ことが挙げられます。例えば、AIによる自動運転で人の命に関わる事故などが起こった場合、原因究明が難航する可能性があります。他にも医療業界において、患者は何故AIがその診断結果にいたったのか理由を知りたいでしょう。そうした場合にもプロセスのブラックボックス化はデメリットが大きいです。

また、プロセスがわからないとAIが導き出した結果によって損害を被った(人に怪我をさせる、著作権侵害、名誉棄損など)場合、責任の所在がわからないことがあります。現状では、法整備もまだ完璧には進んでいません。そのため、AIが得意な領域や苦手な領域を見極め、時には「AIを使わない」判断もできるように利用者自身のリテラシーの向上も重要です。

この点についてはAIの進化も目覚ましく、「説明可能なAI」の開発も進められています。説明可能なAIとは、AIが導き出した判断・意思決定の根拠は何なのか、どのようにしてその結果にたどり着いたのかを説明してくれるAIです。このAIの開発が進めば、「AIが説明できない=AIの判断が正しいか人間が確認できない」ことについては人間が判断するなど柔軟な対応が可能になります。

AIの悪用

近年AIを悪用した事例が生まれており、今後発生する可能性があるものも含めて以下のようなものが想定されます、

  • ディープフェイク(AI技術を活用し、動画の中の人の顔などを一部入れ替える技術のこと)による偽の情報の拡散
  • 高度なフィッシング詐欺
  • AIによる偽のニュースの拡散
  • 防犯カメラの映像などのAI生成による冤罪
  • AIを活用してシステムの脆弱性をついたサイバー攻撃
  • 自動運転技術などの武器使用

こうした悪用例はAIの技術の進歩によって増えるため、企業や一般消費者においては専門家に助言を得たり研修を行ったり情報を集めたりすることで、リテラシー向上に努めたり、被害にあってもすぐに対応できるように準備しておくことが大切です。

また、AI犯罪への対策を警察が強化することに加え、AI犯罪対策サービスを提供する企業が増えてくることも想定されます。

AI人材の確保が困難

AIの導入・運用にはセキュリティなどをはじめとした、適切にAIの技術活用をマネジメントする、AI人材が欠かせません。しかし、国内ではこうしたAI人材の育成が進んでおらず、また、人材の採用も競争率が高くなっています。

AI人材は高いスキルや経験を要するだけでなく、国内外からもニーズが高いことから、より採用難易度が高い傾向にあります。そのため、既存の社員をAI人材に育成したり、外部の専門エージェンシーや人材を登用することによる、導入・運用を検討する必要があるでしょう。

ビジネスにおけるAIの活用事例

AIが実際にどのようにビジネスに活用されてメリットを企業に提供しているか、いくつか活用例を紹介します。

製造業におけるAIの活用事例

製造業にもAIは導入されています。生産ラインの効率化や、在庫管理の最適化、故障予測などに活用されています。

 

検品の自動化・精度向上

検品作業にAIを活用すれば、従来の人間の手による検査より、スピードと正確性が飛躍的に向上します。膨大な量の製品を素早く検査できるため、従業員の労務負担を軽減し、コスト削減も図れるでしょう。

 

検品の自動化・精度向上の事例

神戸市に居を構える「六甲バター株式会社」では、製品であるチーズの最終工程における全数検査にAIの活用を進めています。従来は熟練作業者の目視による検品を行っていましたが、AIを活用した画像分析によるシステムを導入し、1分間に500個もの自動検品を可能にしました。

ライン上を流れてくるチーズの底面を除く5面をAIが認識し、学習した画像と比較した上で、不良品と判断したものは自動的に排除する仕組みです。こうした最終検品システムを導入することにより、作業スピードを保ったまま、人間では見つけることが困難な不具合も発見できるようになりました。食の安全・安心によりいっそう寄与できることを、同社では成果と捉えています。

参考:ビジネス現場の役に立つAI導入・活用事例集と契約実務・知的財産の手引き 経済産業省近畿期経済産業局

小売業におけるAIの活用事例

AIの導入は大手企業やシステム会社だけでなく、スーパーやコンビニなど身近な場所にも広がっています。小売業界の企業で活用が広がっている例として次のような例が挙げられます。

 

売上・需要予測

これまでの売上データをAIが分析し未来の売上を予測します。また、市場データを分析して既存のものに限らず、新規のサービスや商品の需要予測も可能になります。

タクシー、ホテルなど時間や時期により客数が変化する業種では、AIを活用して来客数を予測し、適切な人員配置などの準備ができるでしょう。また、飲食店では発注量や在庫管理を最適化することで、食品廃棄ロスの削減にもつながります。

 

売上予測・需要予測の事例

首都圏と近畿圏を中心に多店舗展開する、スーパーマーケットチェーン「ライフコーポレーション」では、AIの需要予測による自動発注システムの導入を進めています。先行導入していた日配部門に加え、生鮮部門の自動化も、全304店舗で2024年4月までに稼働させると発表しました。

販売実績・気象情報・特売企画情報などのデータを基に、日々の発注数量をAIにより自動算出するため、従業員の勘や経験によらない精度の高い発注業務が可能になっています。さらに加工拠点や各メーカーとの連携により、一部商品においては従来5日間ほどであった予測期間を3週間先までに伸ばすことに成功しました。

参考:ライフ全304店舗の生鮮部門にAI需要予測による発注自動化サービス「AI‐Order Foresight」を適用 KYODO NEWSPRWIRE

医療におけるAIの活用事例

医療分野におけるAIの活用が進むことで、病気のリスク予測や治療の向上や、医師の労働問題を解消することが期待されています。近年は医師不足の問題もあることから、医師一人当たりの負担が問題視されています。以下のような技術の普及により、診察や治療にかかる負荷を減らし、制度の向上が期待できるでしょう。

 

画像認識による診断精度向上

AIによる画像認識技術は、画像診断に革命的な進化をもたらしています。レントゲンやCT・MRI等の画像診断において、人間の目では発見できない微細な変化を発見できるようになりました。病変の早期発見につながるだけでなく、精度の高い総合的な判断が可能になるため、医師の診断業務の負担軽減にもつながっています。

 

画像認識による診断精度向上の事例

香川県坂出市に居を構える「MIRAI病院」では、診療・検診において胸部X線画像の診断体制に課題がありました。人員不足もあり他診療科の医師が対応するといった状況でしたが、診断精度とスピードの課題を、クラウドによる画像診断サービス導入により解決しています。

画像診断システムの導入によって、他の検査項目を進めている間に画像解析が終了するため、患者を待たせることなく結果の説明ができるようになりました。また肺結節と呼ばれる病変の経時変化や肋骨骨折の診断において、レントゲン画像だけでは見えにくい箇所も検出できるようになり、見落としの防止につながっています。医師の診断の次にAIの判断を加えることで、ごく早期の肺がんを発見できるなど成果も出ているとのことです。

参照:新病院が掲げる「予防医療の充実」と「健康寿命の改善」を、AI技術を活用した機能を提供する医療クラウドサービスで後押しする 富士フイルム

農業におけるAIの活用事例

農業の分野にもAIをはじめとした先端技術の活用は進んでいます。いわゆる「スマート農業」といわれるものです。この技術は、広大な農地の管理や作物の生育状況の把握において、大きな力を発揮しています。スマート農業の普及により、肥料や農薬の過剰投与のない持続可能な農業の実現と、人的労力の削減や作物の品質・収量の向上が見込まれるでしょう。

 

作物や土壌の状態のリアルタイムな把握

IoTデバイスの活用により、作物の生育や土壌の状態をリアルタイムで把握できるようになりました。そのことにより、水や肥料の最適なタイミングでの投与や、病害虫の発生予防など、農作物に対する精度の高い管理が行えます。

 

作物や土壌の状態のリアルタイムな把握の事例

静岡大学に所属する峰野博士準教授はAIを活用し、熟練した農家の栽培技術を再現する研究を行っています。峰野氏が取り組んでいるのは、AIによる「甘いトマト」の栽培です。トマトをはじめとした野菜や果実は、与える水分を減らすと糖度が増すものです。葉のしおれ具合を判断基準に、糖度を上げつつ生育を妨げない給水制御技術の開発に取り組んでいます。

トマトが栽培される屋外のビニールハウスでは、季節や天候・時間帯によりハウス内の温度や湿度、光量が刻一刻変わるものです。そのため、ベテラン農家は葉のしおれ具合をこまめにチェックし給水量を調節しています。このことに着目し、定点カメラにより葉の状態を画像解析し、湿度・温度のデータや過去の経験則とあわせて、最適な給水量やタイミングのパターン化に成功しました。

参考:多様な環境に自律順応できる水分ストレス高精度予測基盤技術の確立 国立研究開発法人 科学技術振興機構

宿泊業におけるAIの活用事例

宿泊業界においてはAIの活用により、顧客体験の向上と、人的コスト削減を中心とした業務効率化が進んでいます。

 

接客の自動化による効率向上

自動翻訳機を備えたロボットの導入で、海外からの訪日客に対し多言語で対応可能になるなど、言葉の壁を超えたコミュニケーションが実現しました。また、自動チェックイン・チェックアウトシステムにより、顧客は自身のスマートフォンでスピーディに手続きを済ませられ、フロント業務の労務コスト削減にもつながっています。

 

接客の自動化による効率向上の事例

和歌山県紀美野町にてグランピング施設を運営する「株式会社たまゆらの里」では、非対面型チェックインシステムを導入することで、フロント業務の効率化と混雑防止に取り組んでいます。同宿泊施設は独立した36棟のコテージで構成されており、野外に面し開放的なためコロナ禍においても客足が途切れることがありませんでした。そのため、フロントにおける集中・混雑の解消が課題となっていたのです。

非対面型のチェックインシステムとあわせて、館内施設の説明や予約ができるアプリを開発導入することにより、フロントの混雑が解消され業務効率も向上しました。チェックイン業務の負担が軽減することで、イベントや体験メニューに人員を割けるため、顧客満足の向上にもつながっています。その他、システムをマニュアルとして活用することや、予約の一元管理などの業務効率化も図られました。

参考:和歌山県 宿泊業 DXへの歩みシステム導入事例集 公益財団法人わかやま産業振興財団 和歌山県旅館ホテル生活衛生同業組合

防犯分野におけるAIの活用事例

防犯分野においてもAIの活用は進んでおり、警察庁では2018年よりAIの捜査活用に向けた実証実験を開始。マネーロンダリング等の金融犯罪の防止や、SNSの監視による違法薬物取引に関する情報収集に役立てています。

 

防犯カメラの画像解析による捜査・犯罪抑止

昨今では、市街地や商業施設で防犯カメラの設置が進んでおり、膨大な画像データが日々蓄積されています。これらの画像データは、これまで犯罪発生時や指名手配犯の捜査に用いられてきました。

防犯カメラの画像にAIによる画像認識を加えることで、膨大な画像データから顔認証で容疑者を抽出することが可能です。AIに犯罪者の行動パターンを学習させることで、不審人物を特定しマークするなど犯罪抑止効果も期待されています。

 

防犯カメラの画像解析による捜査・犯罪抑止の事例

「警察庁」では防犯カメラ映像に、AIによる画像解析を導入し容疑車両の特定の精度・スピードアップに取り組んでいます。

これまで犯罪捜査において容疑車両は、発生現場や付近の防犯カメラ映像を収集し、捜査員が目視により特定を進めていました。この作業にAIによる画像解析を加えることで、膨大な画像データから容疑車両と似ている車種を抽出し、順番に表示させる仕組みを構築しています。

参考:警察白書 AIをはじめとする先端技術等の活用による警察力の強化に向けた取組 警察庁

教育分野におけるAIの活用事例

教育分野においてはAIの活用により、個々の学習者の状態に応じた教育が可能になっています。

 

学習者データの活用による教育のカスタマイズ

一人ひとりの学習履歴や、学習データを解析し、それそれの理解度や関心度にあわせたカリキュラムを提供します。学習者は自分のペースで学びを進められるため、学習への苦手意識をもつことなく、高いモチベーションでより深い知識を得ることができます。教育の質の向上と、教師の負担軽減が同時に実現できるのです。

 

学習者データの活用による教育のカスタマイズの事例

愛知県名古屋市立野跡小学校では、令和3年度より算数の授業にデジタル教材プラットフォームを導入する取り組みをはじめました。児童が個人の端末上で算数のドリルを解いていくことで、教師は児童がどのようなプロセスやアプローチで問題に取り組んでいるかを把握できます。

また各人の理解度が色分けされ表示される機能により、それぞれの習熟度にマッチした声かけや指導が可能になりました。学習者である児童一人一ひとりに寄り添った指導により、成果を上げているようです。

参考:【愛知県名古屋市立野跡小学校】「navima」は授業で活きる。~「ヒートマップ (習熟度画面) 」の活用~ TOPPAN EDUCATION

暮らしを支えるAIの活用事例

AIは私たちの暮らしの中でも多く活用されており、私たちは日頃多くのAIのメリットを享受しています。

身の回りで活躍するAI

私たちの身の回りでよく知られているAIは以下のようなものがあります。

 

スマートスピーカー

Amazonのアレクサなどに代表される最近増えてきたスマートスピーカーは自動音声対話のできるアプリケーションです。音声解析・自然言語処理・自然言語生成などの技術が使われてできています。

 

エアコン

三菱電機が提供するAIを搭載した三菱ルームエアコンは、AIが住宅性能を分析した上で、外気温の変化や一人ひとりの体感温度などを予測して、運転を自動でコントロールします。それにより、「暑くなる前に冷房を入れる」「ムシムシする前に除湿する」といったことが可能になります。

参考:『三菱ルームエアコン』三菱

 

冷蔵庫

シャープが開発したAIを搭載した冷蔵庫は、冷蔵庫内にある食材や近くのスーパーの特売情報、季節、天気情報、好みなどを基にレシピを提案してくれます。使えば使うほどレコメンドの精度が上がるスマート家電です。

参考:『冷蔵庫のクラウドサービス機能』シャープ

高齢化社会や医療現場を支えるAI

AIは日本の社会課題である高齢化社会や医療現場の人手不足問題も支えてくれています。介護や医療にAIを導入することで、介護スタッフの負担軽減や、患者の病気発症リスク予測が可能になります。

 

介護ロボット/アプリ

介護ロボットは、要介護者の見守りやコミュニケーションに活用されています。また、犬や猫などの動物型をした、心を癒す目的のセラピーロボットも開発されています。

介護記録AIアプリ「ハナスト」は介護スタッフが介助中に音声で介護記録を残すことができるアプリです。これにより介護の後にパソコンで入力する手間がなくなり、介護スタッフ間でアプリを見るだけで、介護を必要としている方々がどれくらい食事や水分を取ったか、どのような様子だったかを簡単に確認することができます。

参考:『ハナスト | 「話す」だけで、介護の仕事をシンプルに。』

 

病気の発症リスクを予測・病気の発見精度の向上

AIが患者の生活習慣、食事・運動のデータを分析し、将来の病気の発症リスクを予測することに活用されています。

また、人間だと見落とす可能性のある腫瘍の発生リスクなどを、レントゲンや腸内画像などをAIが解析することで発見する事例もあります。

まとめ

本記事ではAIのメリットやメリットを活かしている事例について解説しました。

AIは単なるビジネスにおける生産性の向上だけでなく、危険な作業を回避したり、消費者の満足度を向上させたりしてくれるといったメリットもあります。

同時にコストやセキュリティリスクといった多少のデメリットもあることを理解しつつ導入を検討しましょう。

大きな課題としてAIが悪用されると人々に大きな被害をもたらすことも考えられます。そこに関しては我々一人ひとりのリテラシー向上や意識も重要になるでしょう。

AIは既に私たちの生活の多くに取り入れられています。そのためAIの性質をよく理解しどのように使うかを考えながら活用していきましょう。