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「DX投資促進税制」とは?認定要件・成功事例・申請方法をわかりやすく解説

「DX投資促進税制の内容がよくわからない」「申請の要件や手続きが複雑で不安」などと悩んでいませんか?

DX投資促進税制は、企業のデジタル化を支援する税制優遇制度です。2025年3月末までに申請をして許可されれば、最大5%の税額控除や30%の特別償却を受けられます。

本記事では、DX投資促進税制の基本的な内容から具体的な申請要件、実際の活用事例を詳しく解説します。申請手続きの流れや注意点までわかりやすくまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

DX投資促進税制とは?

DX投資促進税制とは、企業のデジタル化を促進するために、クラウド技術を活用したデジタル関連投資に対して税制優遇措置を提供する制度です。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用して企業の競争力を高めるための技術です。

デジタル技術による企業変革に取り組む企業に対して、税額控除または特別償却の選択制を設けています。ここでは、DX投資促進税制の定義や期限、対象企業について解説します。

DX投資促進税制の定義

DX投資促進税制は、企業のDXを実現するために必要なクラウド技術を活用した投資に対して、最大5%の税額控除または30%の特別償却を選択できます。制度を活用すればソフトウェア開発やクラウドシステムの構築、関連する機械装置の導入など、幅広いデジタル投資が可能です。

投資額は国内売上高の0.1%以上から300億円を上限とし、カーボンニュートラル投資促進税制と合わせて当期法人税額の20%までが控除対象です。デジタル技術の活用による生産性向上や、新規需要の開拓を目指す企業を支援する制度として位置付けられています。

申請受付は2025年3月31日まで

申請受付期間は、2021年8月に始まった制度が2023年3月末までの期限でした。しかし、2年間延長されて2025年3月31日まで継続されています。

DX認定の取得から事業適応計画の認定まで約4ヶ月の期間を要するため、早期の準備が重要です。申請から認定までには、情報処理推進機構によるDX認定審査に60営業日、事業適応計画の認定に30日程度の期間が必要です。

実際の投資実行と税制適用までの期間を考慮すると、余裕を持った計画立案が求められます。

DX投資促進税制の対象企業

DX投資促進税制の対象企業は、青色申告書を提出する法人で、産業競争力強化法の認定事業適合事業者です。また、情報技術適応計画(DX投資促進税制)が主務大臣に認定され、令和4年12月31日以降にDX認定の取得・更新を行った企業も対象です。

投資額は過去3年の国内売上高平均額の0.1%以上を確保し、クラウドシステムの構築・保守が含まれる投資計画が必要となります。アプリケーション開発支援や研究開発用途、ソフトウェアのみの投資は対象外です。

他にも、ハードウェアとソフトウェアを一体的に活用し、全社的なDX推進に取り組む企業も申請できます。なお、令和4年度までの旧制度を活用した事業者は、現制度での税制利用はできません。

DX投資促進税制の認定に必要な要件

DX投資促進税制を利用するには、デジタル要件(D要件)と企業変革要件(X要件)を満たさなくてはいけません。2つの要件の概要をまとめると、以下の通りです。

要件 認定基準
計画期間 10年以内(目標達成の翌年度以降は報告義務免除)
新需要の開拓 計画期間内における当該事業適応計画の新商品・新サービスによる事業年度の売上高が、比較対象期間(おおよそ10ヶ月前5事業年度)における全事業の売上高の平均値の10%以上の達成が見込まれる
財務の健全性 計画終了年度において、有利子負債/CF≦10、かつ経常収入>経常支出の達成が見込まれる
前向きな取組
  • 海外売上高比率が25%以上の達成が見込まれる(既に事業部門で海外売上高比率が50%を超えている場合は、50%以上の達成が必要)
  • クラウド技術を活用し、既存データと外部データを連携・活用
  • センサー等による新規データ取得
全社的取組 実施しようとする事業適応が、取締役会等の機関による認定の方針に係る決議・決定に基づくものである
その他
  • 令和4年12月31日以降にDX認定の取得・更新がある
  • 投資額が過去3年の国内売上高平均額の0.1%以上である
  • クラウドシステムの構築・保守である
  • 以下の要件に該当しない取り組みである
    • アプリケーション開発支援
    • 研究開発用途
    • ソフトウェア・保守のみ
    • 汎用ハードウェアのみ

出所:DX投資促進税制|経済産業省

詳しく解説します。

デジタル要件(D要件)

デジタル要件(D要件)は、DX投資促進税制の認定に必要な重要な基準の1つです。クラウド技術を活用し、既存データと外部データを連携・活用することが求められます。

クラウドシステムの構築・保守が含まれる投資計画であり、研究開発用途やソフトウェアのみの投資は対象外です。DX認定の取得・更新が令和4年12月31日以降に行われている必要があります。

投資額は過去3年の国内売上高平均額の0.1%以上を確保し、上限額は300億円までです。ハードウェアとソフトウェアを一体的に活用する計画が求められます。

企業変革要件(X要件)

企業変革要件は、事業計画における新商品・新サービスの売上高目標と財務健全性の基準を定めています。売上高目標は、過去5事業年度における全事業売上高の平均値と比較して10%以上の増加が必要です。

財務面では、有利子負債とキャッシュフローの比率が10以下であり、経常収入が経常支出を上回ることが求められます。海外市場への展開も重視され、海外売上高比率25%以上達成を目指す事業計画が必要です。

ただし、既に50%を超えている場合は、50%以上の基準が適用されます。投資計画は10年以内で設定し、取締役会等による経営方針の決議に基づく全社的な取り組みが必須となります。

目標達成後の翌年度以降は報告義務が免除されますが、アプリケーション開発支援や研究開発目的の投資は対象外です。

DX投資促進税制を活用した成功事例

DX投資促進税制を活用した結果、事業が改善された企業は多く存在します。ここでは、導入成功事例を企業ごとに紹介します。

電力業界におけるDXの実践例|株式会社JERA

株式会社JERAは、火力発電所の運転最適化に向けたデジタル技術の活用を推進しています。クラウド技術とAIを組み合わせ、電力市場価格、需要動向、発電所の運転データを一元管理する体制を構築しました。

発電所の運転データと市場データをリアルタイムで連携し、最適な発電計画を立案できる仕組みを実現しています。データ分析による予測精度の向上により、発電効率の改善とコスト削減を達成しました。

さらに、遠隔監視システムの導入により、24時間体制での運転状況の把握と迅速な対応が可能になりました。クラウド基盤の整備により、複数の発電所のデータを統合的に管理し、運用効率の向上を実現しています。

参考:認定事業適応計画の(中間)実施状況の概要の公表(株式会社JERA)|経済産業省

金融機関のデジタル変革事例|京都中央信用金庫

京都中央信用金庫は、顧客データの分析基盤を構築し、金融サービスのデジタル化を推進しています。顧客との接点をデジタル化することで、個々のニーズに合わせた最適な金融サービスを提供できる体制を整えました。

クラウド技術を活用した顧客管理システムにより、取引データの分析と活用が可能になりました。結果、顧客サービスの質の向上と業務効率化を同時に実現しています。

デジタル技術の導入により、従来の金融機関の枠を超えた新しいサービス提供モデルを確立し、地域金融機関としての競争力強化を図っています。

参考:認定事業適応計画の(中間)実施状況の概要の公表(京都中央信用金庫)|経済産業省

製造業におけるDX推進事例|関西ペイント株式会社

関西ペイント株式会社は、生産・在庫管理システムのデジタル化により、製造プロセス全体の最適化を進めています。クラウド技術を活用した需要予測システムを導入し、効率的な生産計画の立案を実現しました。

データ分析に基づく在庫管理の最適化により、在庫コストの削減と供給体制の強化を図っています。生産現場のデジタル化により、品質管理の精度向上と生産効率の改善を達成しました。

製造業におけるDXの成功事例として、デジタル技術の活用による生産性向上と競争力強化を実現しています。

参考:認定事業適応計画の(中間)実施状況の概要の公表(関西ペイント株式会社)|経済産業省

DX投資促進税制の申請方法

DX投資促進税制の申請は、以下の流れで進めます。

  1. 事業適応計画の作成
  2. 認定要件の確認
  3. 申請書類の提出

詳しく解説します。

Step1: 事業適応計画の作成

事業適応計画では、企業の将来像と具体的な実行計画を策定します。10年以内の計画期間で、新商品・新サービスによる売上目標と達成時期を明確にしましょう。

財務計画では経常収支の見通しと、有利子負債の返済計画を具体的な数値で示すことが大切です。クラウド技術の活用方法や、データ連携の仕組みについても計画に含める必要があります。

Step2: 認定要件の確認

DX投資促進税制の申請を行う際には、全ての認定要件を満たす必要があります。特に重要な確認事項として、DX認定の取得時期が令和4年12月31日以降であることを証明する資料が必要です。

投資規模の算出方法や除外される投資内容(アプリケーション開発支援、研究開発用途など)についても事前の確認を行いましょう。また、クラウドシステムの構築・保守が含まれる投資計画であることを示す資料も準備します。

Step3: 申請書類の提出

申請時に必要な書類として、取締役会等の機関決定に関する議事録や事業適応計画書、DX認定証明書などを準備しましょう。各書類は、所管省庁の指定フォーマットに従って作成する必要があります。

提出後は審査期間として約3ヶ月を要するため、計画的な申請準備が重要です。認定後は実施状況の報告義務があり、目標達成までの進捗管理体制も整える必要があります。

なかなかDXが進まない場合は、実施までにやるべきことを理解しておくことが大切です。以下ではDX新任担当者向けのチェックリストを資料としてまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

出所:DX新任担当者向けチェックリスト

DX投資促進税制の申請が受理された後の対応

DX投資促進税制の申請が受理されたら、以下の対応を行う必要があります。

  • 実施状況の報告を行う
  • 財務指標の管理を徹底する
  • 売上目標の進捗管理を行う
  • データ活用を継続する
  • DX認定の維持を行う

詳しく解説します。

実施状況の報告を行う

実施状況の報告では、新商品・新サービスによる売上高の進捗状況を定期的に報告する必要があります。計画期間内における事業年度の売上高が、比較対象期間の平均値と比較して10%以上増加しているかを確認しましょう。

財務指標についても、有利子負債とキャッシュフローの比率が10以下を維持しているかの報告が必要です。経常収入が経常支出を上回る状態を継続的に確保できているか、具体的に示す必要があります。

財務指標の管理を徹底する

財務指標の管理では、有利子負債とキャッシュフローの比率を定期的に確認し、基準値以下を維持する必要があります。収入と経費のバランスを把握し、収支状況を適切に管理しましょう。

計画終了年度に向けて、財務の健全性を維持するための具体的な施策を実行します。月次での財務状況の確認と、必要に応じた改善策の実施が重要です。

売上目標の進捗管理を行う

売上目標の進捗管理では、新商品・新サービスによる売上高の達成状況を月次で確認します。売上高比率の目標達成に向けた、新しい取り組みの進捗状況を把握しましょう。

目標値との差異が生じた場合は、原因分析と対策立案を速やかに実施します。定期的な進捗会議を開催し、全社的な取り組み状況を共有することが重要です。

データ活用を継続する

データ活用では、クラウド技術を活用した既存データと、外部データの連携を継続的に実施しましょう。グループ内外の事業者・個人のデータ連携を強化し、活用範囲を拡大します。

センサー等による新規データの取得と分析を継続的に行い、事業改善に活用することが大切です。データ分析結果を基にした、業務改善や新サービスの開発を推進しましょう。

DX認定の維持を行う

DX認定の維持では、認定基準に基づく取り組みを継続的に実施する必要があります。クラウドシステムの構築・保守を含む投資計画を着実に実行しましょう。

デジタル技術の活用による、業務改善や新規サービスの創出を継続的に推進することが大切です。全社的なデジタル戦略の実現に向けた取り組みが、維持・強化につながります。

DX投資促進税制の申請における注意点

DX投資促進税制の申請を行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • 投資規模の計算に注意する
  • 対象外の設備要件もある
  • 取締役会の承認手続きを行う

詳しく解説します。

投資規模の計算に注意する

投資規模の算出では、連結会社と単体会社で基準となる売上高の考え方が異なるため、自社の形態に応じた正確な計算が必要です。正しい数値を出すためにも、売上高の基準期間は直近の事業年度から遡って計算しましょう。

投資計画では、単年度ではなく計画期間全体を通じた投資配分を検討し、実行可能な規模での計画立案が重要です。投資実行時期については、認定から実施までの期間を考慮した現実的なスケジュールを組む必要があります。

申請前の段階で投資規模の妥当性を社内で十分に精査しつつ、必要に応じて専門家への相談を検討しましょう。

対象外の設備要件もある

DX投資促進税制はアプリケーション開発支援や研究開発用途、ソフトウェアのみの投資は対象外です。汎用ハードウェアのみの投資やインターネット利用サービスのみの投資は認められません。

クラウドシステムの構築・保守を含む、包括的な投資計画が必要です。ハードウェアとソフトウェアを一体的に活用する計画を立案しましょう。

取締役会の承認手続きを行う

実施しようとする事業適応は、取締役会等の機関による認定の方針に係る決議・決定に基づく必要があります。具体的な投資計画と実施体制の話し合いをした後は、取締役会等の承認を示す議事録や関連資料の保管をしておくことが大切です。

また、事業適応計画は一事業部門や一実施拠点だけではなく、組織的な意思決定に基づく全社的な取り組みとして位置付けます。承認手続きには、計画の具体的な実施内容と期待される効果、必要な投資額等の詳細な説明が含まれていることが重要です。

DX投資促進税制と組み合わせるべき支援制度

DX投資促進税制は他の補助金制度と組み合わせれば、デジタル投資に関する費用負担を軽減できます。以下に、おすすめの支援制度をまとめました。

  • IT導入補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 事業再構築補助金

詳しく解説します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、業務効率化やデジタル化に必要なITツール導入を支援する制度です。補助上限額は最大450万円で、補助率は通常枠で1/2以内となります。

クラウドサービスやソフトウェア導入、デジタル化基盤の構築など、DX投資促進税制の対象となる設備投資と併せて活用することが可能です。セキュリティ対策推進枠やデジタル化基盤導入類型など、目的に応じた複数の枠が用意されています。

出所:IT導入補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり補助金は、製造業やサービス業の生産性向上に向けた設備投資を支援する制度です。補助上限額は、従業員規模により750万円〜8,000万円まで設定されています。

DX・GX分野の製品・サービス開発に必要な設備投資を支援する制度が設けられており、DX投資促進税制との相乗効果が期待できます。生産性向上や業務効率化に向けた包括的な投資計画を立案することが可能です。

出所:ものづくり補助金総合サイト

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換、事業再編に取り組む企業を支援する制度です。補助上限額は従業員規模により100万円から1億円まで設定されています。

DXを活用した事業再構築を行う場合、設備投資やシステム構築費用に対して補助を受けることができます。成長分野進出枠やコロナ回復加速化枠など、事業の目的に応じた申請が可能です。

出所:事業再構築補助金

DX投資促進税制に関するよくある質問

最後に、DX投資促進税制に関するよくある質問に回答します。

  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制はいつまで適応される?
  • DX投資促進税制が使える対象資産は?

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制はいつまで適応される?

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、2024年4月1日から2026年3月31日までの期間で事業適応計画の認定を受けることが可能です。認定を受けた日から3年以内に対象資産を取得し、事業の用に供する必要があります。

事業適応計画の認定から実際の投資実行までには時間を要するため、早期の準備が重要です。認定申請から承認までには約3ヶ月の期間が必要となり、計画的な申請準備が求められます。

DX投資促進税制が使える対象資産は?

 DX投資促進税制の対象資産は、以下の4種類です。

  • ソフトウェア
  • クラウドシステムへの移行に係る初期費用(繰延資産)
  • 機械装置
  • 器具備品機械

装置と器具備品については、ソフトウェアや繰延資産と連携して使用するものに限定されます。ただし、アプリケーション開発支援、研究開発用途、ソフトウェアのみの投資は対象外となります。

また、汎用ハードウェアのみの投資やインターネット利用サービスのみの投資も認められません。クラウドシステムの構築・保守を含む、包括的な投資計画であることが必要です。

まとめ

DX投資促進税制は、企業のデジタル化を支援する重要な制度として、2025年3月末まで申請を受け付けています。税額控除または特別償却の選択制により、企業のデジタル投資を後押しします。

電力や金融、製造業といったさまざまな業界で成果を上げており、業種を問わずデジタル化による競争力強化が可能です。本記事を参考に、DX投資促進税制を活用してみてください。

なかなかDXのイメージがわかない場合は、身近な業務のDX化を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。以下の資料では、DXが進めやすい業務や導入する方法をまとめているため、ぜひご確認ください。

出所:身近なものからどうDXを進めるか