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AGIは完成間近?OpenAI騒動から見えてきたこと

公開日
2023.11.21
更新日
2026.06.17
AGIは完成間近?OpenAI騒動から見えてきたこと

(編注)画像はAdobe Fireflyで生成しました

Sam Altman氏解任劇から一両日中に状況が二転三転している。この原稿を書いている時点では、Altman氏のMicrosoft参画が発表されたものの、OpenAIの800人近い従業員のほぼ全員が同士のCEO復帰なければ退職するという書簡に署名したという報道があったばかり。Altman氏がOpenAIに復帰するという予測が今のところは主流になっている。今後、どうなるのか予断を許さない状況なので、この記事ではこの騒動の行方を予測するのではなく、今回の騒動から見えてきた汎用人工知能実現可能性の時期について考察してみたい。

その前に、今回の騒動に関する個人的な見解を明らかにしておきたい。多くの人は、今回の騒動をOpenAIのCEOのAltman氏と同社の主任研究員Ilya Satsukeverの権力争いと見なしていることは知っている。社内クーデターとは普通そういうものだ。しかしOpenAIの幹部たちのインタビュー動画を何本も見てきた自分からすると、今回の騒動は単なる権力争いではないように見える。

まず第一にSatsukever氏は、善人としての評価が高い。イーロン・マスク氏は、Satsukever氏のことを「優秀な上に、心がある」と高く評価している。もともと権力争いが好きな人物ではなさそうだ。

またSatsukever氏の最新のTED講演の中での彼の最大の主張は、AIのポジティブ、ネガティブの両面での社会的インパクトに気付けば、多くの人は競争するのではなく協力するようになるとというものだ。

その例として同氏は、Anthropic, Google, DeepMind, Microsoft, OpenAIが参加する業界団体The Frontier Model Forumを挙げている。競合する各社が、AIの安全性を求めて協力し合っているという。またOpenAIはWebページ上では、自分たちより競合が先に進めば、安全性の面で進んで協力すると宣言しているとも指摘した。

講演の中で同氏は「AIがどれだけ劇的にすばらしいものになるのか、また不安を抱くのが適切であるということが誰の目にも明らかになれば、人々は前例のないほど協力的な態度で行動し始めるようになるのです」と語っている。(ソース YouTube The Exciting, Perilous Journey Toward AGI | Ilya Sutskever | TED  https://youtu.be/SEkGLj0bwAU?si=3XcUtAbaa0sOuguW 英語)

そう考えるSatsukever氏が、なぜAltman氏退任のクーデターを起こしたのか。恐らくAltman氏が十分な安全策を検討せずにAIをさらに進化させようとしているように思えたのかもしれない。Altman氏を失脚させて自分がOpenAIのCEOになりたい、というような通常のビジネス視点での動機ではないと思う。

ところが事態は、だれも予想しなかった状況に発展し、Altman氏がMicrosoftに参画し、OpenAIの従業員のほとんどが退社の意志を表明した。そうなれば、AIの進化をMicrosoft1社が担うことになる。安全面に考慮しながらAIを進化させたいというSatsukever氏の思いとは、真逆の結果になりかねない状況になった。そこで同氏はX(旧Twitter)上で「後悔している。(Altaman氏に)戻ってきてほしい」と謝罪した。

自分のメンツにこだわらず、すぐに謝罪したわけだ。すぐに謝罪できるのは、利己的な動機ではなかったことの1つの証拠だと思う。

さてでは本題のAIがどこまで進化しているのか、ということを考えてみよう。Altman氏が事実上解雇された日の前日に同氏はAPEC(アジア太平洋経済協力)のパネル討論会に登壇。「2024年に起こるサプライズとは」という質問に対して「AIモデルは、誰も予想しなかったレベルにまで大きくジャンプして進化する」と答えている。またOpenAIの技術進化の歴史の中で4回特筆すべきことがあったが、その4回目はこの2、3週間の間に起こったと語っている。

「誰も予想しなかったレベルへの進化」。これはAIが人間同等、もしくはそれ以上に賢くなるという汎用人工知能(AGI)への進化、ということなのだろうか。それが来年、実現するというのだろうか。

AGIが実現するのかどうかは分からないが、2、3週間前に起こったブレークスルーがあまりにも劇的で、その安全性に対する十分な配慮がないまま、この技術を推進しようとAltman氏が動き出したことに、Sutsukever氏が危機感を抱いたのかもしれない。

Sutsukever氏をそこまで駆り立てたのであれば、相当の技術的ブレークスルーなのかもしれない。

OpenAI騒動がどういう形で決着するのかよりも、このブレークスルーがどういうもので、社会にどのようなインパクトを与えるようになるか。そちらのほうが個人的には気になった。AGIが来年実現するのかどうかは分からない。しかし来年もAIが大きく進化することは間違いなさそうだ。

著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。