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生成AIを業務利用するメリットとは|配慮すべきデメリットやリスク対策についても解説

生成AIが急速に進化・普及するなか、すでに業務に利用している、あるいはこれから導入を検討する企業は多いのではないでしょうか。生成AIを業務に活用することにより大幅な業務効率化が見込まれる反面、さまざまなリスクも内在しています。

この記事では、生成AIを業務利用するメリットとデメリット、発生しうるリスクとその対策について解説します。

生成AIとは

AI(人工知能)とは、従来人間の知能でしか処理できなかったタスクを、コンピューターや機械により代替する技術です。

なかでも近年注目される生成AIは「ジェネレーティブAI(Generative AI)」とも呼ばれ、プロンプトという指示に応じた、文章や画像・動画、音声などのコンテンツを自動生成するAIのことです。

近年、生成AI分野の飛躍的な技術向上により、人間が作成したものと同等か、それ以上のクオリティーでコンテンツを生成できるようになりました。そのため、さまざまな分野で業務利用の可能性が探られています。

生成AIの特徴

従来のAIは特化型AIとも呼ばれ、特定のタスクを遂行するためのものが大部分でした。特定の用途を遂行するために必要なデータのみをモデルに学習させ、その範疇でのみタスクに対応するものです。

一方で生成AIは汎用型AIとも呼ばれることもあり、大規模モデルがWeb上に存在するさまざまなデータを大量かつ自律的に学習・訓練することにより、特定のタスクに限らない幅広い活用が可能になります。

結果として、用途に限ったデータを全く用意しない「ゼロショット学習」でも、高い精度で認識・分類が可能になっています。

生成AIの普及スピード

2022年に発表されたOpenAI社のChatGPTを皮切りに、生成AIの分野は大きく注目を集めました。驚くべきはその普及スピードです。ChatGPTは、発表からわずか2カ月で1億ユーザーに達しています。

総務省の資料に、SNSなど各種Webサービスが1億ユーザーを達成するまでの期間を比較した表があります。

【各種サービスにおける1億ユーザー達成までにかかった期間】

ChatGPT 2ヶ月
TikTok 9ヶ月
Instagram 30ヶ月
X(旧Twitter) 49ヶ月
Facebook 54ヶ月

出典:総務省『令和6年版 情報通信白書の概要』2024年6月

ChatGPTは、SNS等ほかのオンラインサービスと比較し、驚異的なスピードで普及していることがわかるでしょう。こうした状況を踏まえ、大手企業やスタートアップに関わらず、さまざまな企業が生成AIの開発を発表しました。さながら「生成AIブーム」ともいえる様相を呈しています。

生成AIの種類

生成AIは生成されるコンテンツに応じ、以下の4タイプに分類されます。

  • テキスト生成AI
  • 画像生成AI
  • 動画生成AI
  • 音声生成AI

それぞれの特徴を見ていきましょう。

テキスト生成AI

テキスト生成AIはユーザーがテキストで与えた指示に対して、それに基づいた文章を生成します。そのほか、入力した文章の要約や外国語の翻訳、プログラミングのコード作成といった処理も可能です。また、質問を投げかければ、それに応じた回答を返してくれるので、対話を繰り返すことでアイデア出しにも活用できます。

【主なテキスト生成AIサービス】

  • ChatGPT(OpenAI)
  • Gemini(Google)
  • BringChat(Microsoft)
  • DeepSeek-R1(DeepSeek)

画像生成AI

画像生成AIとは、簡単なテキストに指示に応じて、意図に沿った画像を自動生成してくれます。指示によって「実写風」「イラスト風」「アニメ風」など、画像のテイストを指定できるサービスもあり、専門スキルがなくとも一定のクオリティを担保した画像の作成が瞬時に可能です。

【主な画像生成AIサービス】

  • DALL・E2(OpenAI)
  • Bing Image Creator(Microsoft)
  • Adobe Firefly(Adobe)

動画生成AI

動画生成AIとは、画像やテキストによる指示に応じ、ユーザーの意図に沿った動画を自動で生成します。テキストや画像と違い、高度な処理が必要なため、実現が難しいとされていた分野でしたが、OpenAI社の「Sora」の登場により分単位の長尺動画の生成が可能になりました。

【主な動画生成AIサービス】

  • Sora(OpenAI)
  • Gen-2(Runway)

音声生成AI

音声生成AIは、実在する人間の声を音声データとして学習させ、新たな音声を生成します。機械的な読み上げではなく、抑揚や感情のニュアンスを反映できる点が特徴です。特定の人物の音声を学習させれば、あたかもその人が話しているような自然な音声の生成も可能です。

【主な音声生成AIサービス】

  • Amazon Polly(Amazon Web Service)
  • VALL-E(Microsoft)

生成AIの活用が見込める業務の具体例

生成AIを業務利用している企業や、これから導入を検討する企業は、生成AIを活用し以下の分野で業務効率化を図ろうとしています。

  • 文章の作成や要約
  • 翻訳の補助
  • オリジナル画像・動画の作成
  • さまざまなアイデア出し
  • プログラミングのサポート
  • 社内FAQの自動化
  • 顧客からの問い合わせ対応自動化

それぞれ、確認していきましょう。

文章の作成や要約

業務において利用範囲が広いのは、やはりChatGPTをはじめとしたテキスト生成AIです。文書に関わる業務においては、ほぼ網羅的に活用できるといっても過言ではないでしょう。

具体的には、以下に挙げるような活用が想定されます。

  • 稟議書など社内文書の作成
  • メールの文面作成
  • 広告文やキャッチコピーの作成
  • 文章の校正
  • 専門書籍やニュースソースの要約

こうした文章に関わる業務を生成AIに代替することにより、大幅な業務時間の短縮とクオリティーの向上・均質化が見込めます。

翻訳の補助

テキスト生成AIは翻訳にも活用できる点が優れています。日本語を指定する言語に翻訳、反対に外国語のテキストを日本語に翻訳することが可能です。

海外と取引のある企業では、英文やそのほかの言語で記載された書類を頻繁に処理することがあります。業務によっては、海外の専門書を参照しなくてはならないケースもあるでしょう。生成AIの翻訳機能を活用することにより、語学に堪能な人材がいなくても、こうした業務がスムーズに進みます。

オリジナル画像・動画の作成

画像・動画生成AIを利用してオリジナル画像・動画を作成し、資料作成や広告に活用するケースも増えています。これまでフリー素材により画像を調達していた企業では、イメージにあう画像がなく困る場面もありました。

画像生成AIを活用すれば、簡単にイメージにあった画像を作成できるため、フリー素材から画像を探す手間が大幅に省けます。生成した画像はオリジナルであるため、他社と被ることもありません。

さまざまなアイデア出し

生成AIはコンテンツの作成だけでなく、対話をすることでアイデア出しの壁打ちにも活用できます。単純に「OOの案に関する提案をください」と指示するだけでも、複数のアイデアを提示してくれます。

生成AIの提示した内容に対し、質問を繰り返すなどプロンプトを工夫することにより、人間の頭では考えつかない、斬新なアイデアにたどり着くことも期待できるでしょう。

プログラミングのサポート

生成AIはプログラミングのコード作成やデバッグにも活用できます。プロンプトにより概要を指示するだけで、自動でコードを提案してくれるでしょう。

また、デバッグにおいては、大幅な省力化が期待できます。エラーのあるプログラムを読み込ませ、問題個所を指摘するように指示すれば、瞬時にエラーを特定します。ベテランエンジニアでも精査に時間がかかるデバック作業の、大幅な時間短縮が可能です。

社内FAQの自動化

ノウハウや情報の共有に課題を抱える企業も多く、生成AIを活用した対策に期待が寄せられています。例として、生成AIを活用した社内FAQが挙げられるでしょう。

社内に点在する業務マニュアルと最新の業界情報や法令などを学習データに用い、質問すればその時点における正しい業務手順を示すといったこともできます。あるいは、年末調整など毎年発生し、従業員からの問い合わせが多い事務手続きの質問対応にも活用可能です。

顧客からの問い合わせ対応自動化

顧客からの問い合わせ対応に、生成AIを活用したチャットボットの導入も進んでいます。従来のAIであれば、顧客からの問い合わせに対する回答を、その都度学習させる手順が必要でした。この手順が滞れば、顧客の求めている情報を提供できなくなるケースも発生します。

しかし、生成AIを用いたチャットボットでは、事前に与えられた学習データに加え、生成AIが参照できるデータも活用して回答を生成します。そのため、想定外の質問にも対応できるのです。

生成AIを業務に利用するメリット

ここでは、生成AIを業務に利用するメリットを確認していきましょう。想定されるメリットは以下に挙げる通りです。

  • 作業効率の向上が見込める
  • 革新的なアイデアが生まれる
  • 顧客・従業員満足度の向上につながる
  • 人手不足の解決策となる

作業効率の向上が見込める

生成AIを業務利用すれば、これまで人間の手により時間をかけていた業務が自動化できるため、大幅な作業効率の向上が見込めます。生成AIはプロンプトにより、簡単な指示をするだけで一定のクオリティーを担保した成果物を提供してくれるからです。

人間は生成された内容のチェックと手直しだけをすればよく、一からコンテンツを作り上げる必要はなくなります。その分空いた時間を、ほかの重要な業務に回せるため、組織全体の生産性も向上するでしょう。

革新的なアイデアが生まれる

生成AIをアイデア出しに活用すると、人間では考えつかないような革新的なアイデアの創出が期待できます。人間の頭でアイデアを考えるときは、どうしても過去の経験則や保有している知識に頼りがちです。

生成AIを壁打ちに使用し、さまざまなパターンのアイデアを出してもらいます。それを人間が組み合わせ、さらに生成AIに投げかけることで、これまでにないアイデアが生まれる可能性があるのです。

顧客・従業員満足度の向上につながる

生成AIを活用した顧客対応チャットボットが機能すれば、顧客は疑問をすぐに解消できます。人間が対応することがなくなるので、24時間年中無休で顧客のタイミングにあわせた対応が可能になるでしょう。

従業員向けFAQがあれば先輩や上司に確認することなく、疑問点を解決できるため業務の停滞を防げます。スピード感をもって疑問を解消できる環境が構築されることにより、顧客・従業員双方の満足度向上が見込めます。

人手不足の解決策となる

人間の手による業務プロセスを生成AIに代替できるため、クオリティーを下げることなくより少ない人員で業務を回せるようになります。このことは、人手不足の解消に大きく寄与することでしょう。

生成AIを活用すれば、熟練した人材のスキルに頼ることなく、一定の品質を保ったコンテンツの作成が可能です。スキルをもった人材を抱えておく必要性は薄くなり、業務の属人化が防げる点も大きなメリットです。

生成AIを業務利用する際に配慮すべきリスクやデメリット

大幅な業務効率化が見込める一方で、生成AIの業務利用はさまざままリスクやデメリットを内包しています。リスクやデメリットを正しく把握していなければ、思わぬトラブルにより会社が大きなダメージを被る可能性も否定できません。

主に考えられるリスクとデメリットを以下に挙げます。

  • ハルシネーションリスク
  • 著作権侵害のリスク
  • 情報漏洩リスク
  • 従業員のスキル低下

ハルシネーションリスク

生成AIが作成するコンテンツは、必ずしも正しいとは限りません。事実に基づかない情報を生成してしまう現象を「ハルシネーション」と呼びます。生成AIはインターネット上の膨大なデータからモデル学習をおこない回答を導きます。そのデータ内に誤りや偏った情報が混在することが原因で、ハルシネーションが発生してしまうのです。

もし、生成AIを活用した顧客対応チャットボットが、ハルシネーションを起こしたらどうなるでしょうか。事実と異なる情報を提供してしまったことにより、顧客が不利益を被るかもしれません。それにより、企業の存続に関わるような事態につながる可能性も否定できないのです。

著作権侵害のリスク

生成AIの業務利用により、著作権を侵害する可能性も否定できません。学習データやプロンプトに著作物が含まれていた場合、生成物が権利侵害をしていないとはいいきれないのです。

学習データに著作物を用いることは、著作権法における権利制限規定に該当し、著作権侵害にはあたりません。しかし、生成物が著作権侵害に該当するかどうかは、類似性や依拠性が認められるかどうかの個別の判断によります。そのため、生成AIの作成したコンテンツを商用利用する場合は、慎重な判断が求められるのです。

情報漏洩リスク

プロンプトに個人情報や機密情報が含まれていた場合、その情報が生成AIの学習データに活用される可能性があります。プロンプトに含まれる情報を生成AIが学習し、それを第三者に提供してしまうことが起こりうるのです。そもそも機密情報や個人情報が学習に使われた時点で、情報漏洩という解釈も成立しかねません。

また、生成AIのバグにより、チャットの内容が別のユーザーの目に触れる状態となった事例もあります。機密情報の漏洩は企業の競争力に影響を及ぼし、個人情報の流出は企業の信頼を損ないます。生成AIの業務利用には、十分な情報管理体制が必須となるでしょう。

従業員のスキル向上を阻害する

生成AIの活用により大幅な業務効率化が見込める半面、過度な依存により従業員のスキル向上が阻害される可能性もあります。たとえば資料作成の業務に常に生成AIを活用した場合、自ら情報のリサーチや整理、情報に基づいた根拠の組み立て、文章の作成をおこなうことはなくなります。

このような状況では、従業員個々のスキルが向上することなく、競争優位をもたらす独自性が生まれにくくなってしまうでしょう。結果として企業の弱体化につながる可能性があるのです。

生成AIの業務利用におけるリスク対策

ここまで、生成AIを業務利用について、メリットとデメリット・リスクの両面から見てきました。たしかにリスクは存在しますが、それ以上に得られるメリットがあることも事実です。

リスクを回避しつつ生成AIを活用する対策は、主に以下が挙げられます。

  • 社内で完結する業務から導入を始める
  • 学習データの取り扱いに注意する
  • 人間の目視によるチェックプロセスを設ける
  • 業務利用に関する社内規程やガイドラインを整備する

社内で完結する業務から導入を始める

顧客対応チャットボットなど、対外的な業務への活用は慎重におこなうべきでしょう。ハルシネーションにより、企業として誤った見解や情報が外部に出てしまうと、信用問題に発展する恐れがあるためです。

導入の初期はまず、従業員に生成AIに慣れてもらうことから始めます。そのうえでまずは、社内文書の作成など、比較的簡単な領域から活用を進めていきましょう。徐々に活用領域を広げていき、社内で完結する業務で信頼性が確保されてから対外業務に移行すると安全です。

プロンプトの取り扱いに注意する

生成AIに入力するプロンプトは、学習データに利用され第三者の目に触れる可能性がある前提を、全従業員に周知しましょう。あるいは、生成AI自体の設定を学習データに使用しないモードにするなどの対策を講じます。

ChatGPTの企業向けプランである「ChatGPT Enterprise」や「exaBase生成AI]といったセキュリティ機能が充実した生成AIは、入力情報が学習データに使用されません。コストはかかるものの、こうしたセキュリティが充実したサービスを選定することが、リスク回避の第一選択となるでしょう。

人間の目視によるチェックプロセスを設ける

生成AIに対する過度な依存は避けるべきで、あくまで補助的な役割を果たすものと捉える姿勢が重要です。生成AIの作成するコンテンツは「たたき台」としての活用にとどめましょう。

人間の目視によるチェックプロセスを設けることが、生成AIを業務利用する際の鉄則です。必ず、誤った情報や差別・偏見など公序良俗に反する表現が含まれていないかを確認しなくてはなりません。

業務利用に関する社内規程やガイドラインを整備する

生成AIを業務利用する際には、セキュリティの構築などハード面のアプローチも大切ですが、取り扱う人材の教育や社内ルールの策定といったソフト面の対策も必要です。

活用する業務や使用する従業員の範囲、チェック体制の整備と責任と権限の明確化など、十分な検討のうえ、ルールを設け規程化することが必須です。あわせて、従業員教育をおこないルールを周知し、遵守してもらうことが欠かせません。加えて、生成AIを利用するリスク、とくに著作権や情報漏洩に関する知見を深めてもらうことも必要です。

まとめ

生成AIの発展は目覚ましく、自社の業務に活用することで、大幅な業務効率化が実現できるでしょう。多くのメリットが得られる反面、さまざまなリスクやデメリットも内在しており、安全に利用するには生成AIに対する深い知見が必要です。

しかし、生成AIは最新のテクノロジーであり、深い知見をもった人材は希少性が高く、自社で確保するのは困難を極めるのではないでしょうか。既存人材を育成するにも、時間がかかりすぎます。そのため、生成AIを業務に取り入れる場合は、万全のセキュリティ対策が講じられたサービスの活用が第一選択となるでしょう。

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