ChatGPTとは、米国のAI開発組織であるOpenAIが2022年11月に公開した対話型AIサービスです。
本記事ではChatGPTの紹介と、GPTという技術の説明、他のサーピスとの連携、APIの料金や何ができるのか、利用の際の注意点や社会に与えている影響まで説明します。今話題のChatGPTについて簡単に網羅的に学べますのでぜひご一読ください。
ChatGPTの概要・基本機能
ChatGPTとは
ChatGPTは、OpenAIが開発した会話型AIサービスで、私たちが入力した指示(プロンプトと言います)に対してまるで人間のように出力を返してくれます。ChatGPTはGPTという言語モデルをベースとしており、GPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略です。GPT-3、GPT-3.5、GPT-4とモデル自体もバージョンアップを続けており、GPT-3.5系のモデルとしてGPT-3.5-turboがあるなど更にモデルが分岐して存在しています。
※GPT自体は2017年にグーグルが発表した「トランスフォーマー(Transformer)」という大規模言語モデルをベースにしています。
非常に自然な文章や会話を生成・理解することができること、その精度の高さ、無料で気軽に使えるという点から、2022年後半以降、急速にユーザーを広げています。
現在、無料版のChatGPTではGPT-3.5のモデルが使用でき、有料版のChatGPT PlusではGPT-4のモデルが利用できます。
OpenAIとは
OpenAIは2015年12月にアメリカで設立された、AIの研究・活用をしている非営利団体です。OpenaAIのCEOはサム・アルトマン氏で、アメリカのアクセラレーターY Combinatorでも代表を務めていました。
米ツイッター社CEOのイーロン・マスク氏や、米LinkedInの創業者でCEO、米Microsoftの取締役でもあるリード・ホフマン氏なども設立に関わっています。
OpenAIはGPT以外にもいくつかのAIに関するモデルを展開しています。
DALL·E
DALL·Eは、テキストからオリジナルのリアルな画像やアートを作成できるモデルです。広告、デザイン、芸術など様々な分野での応用が期待されています。
Whisper
Whisperは、複数の言語を書き起こし、識別し、翻訳できる汎用性の高い音声認識モデルです。自然言語処理技術と組み合わせることで、音声アシスタントや音声対話システム、音声翻訳、文字起こしサービスなど幅広い用途に活用できます。
そんなAI研究組織が開発したChatGPTの仕組みを紹介します。
ChatGPTの仕組み
ChatGPTに使われているGPTという大規模自然言語モデルは自然言語処理(NLP)タスクにおいて高い性能を発揮する深層学習アルゴリズムです。現在のChatGPTではGPT-3.5、GPT-4の2つのモデルが使用可能です。
ChatGPTは以下のような要素から構成されています。
トランスフォーマーアーキテクチャ
ChatGPTに使われているGPT-3.5、GPT-4はトランスフォーマーと呼ばれるアーキテクチャ(ニューラルネットワークの設計や構造のこと)に基づいており、自己注意というメカニズムなどを用いてテキストの文脈を捉えることができます。これにより、従来の手法より出力までの時間が早く、精度も高くなっています。
大規模なデータセット
GPT-3.5、GPT-4はインターネット上の大規模なテキストデータセットを使用して学習しています。これにより、一般的な知識や文法、単語の使い方などを習得しています。
GPT-3はOpenAIが公開した論文「Language Models are Few-Shot Learners」にてWikipediaやCommon Crawlから収集した45TBもの膨大なテキストデータをベースに学習しているとしています。GPT-4の学習データセットについては公開されていませんが、GPT-3以上のデータやテキスト以外の画像データなども多く学習しているでしょう。
※Common CrawlとはWeb上のデータをクロールし大量のデータセットを公開している非営利団体です。
事前学習と後学習(微調整)
GPT-4はまず事前学習(Pre-training)で言語の基本的な知識を学び、次に後学習(Post-training)で微調整をおこない特定のタスクに適応していきます。これら2つのプロセスを経て、GPT-4は質問応答や文章生成など、多様なタスクに対応できるようになります。
事前学習ではインターネット上の言語、コード、画像などデータを学習し自然言語の統計的なパターンや文法、一般的な知識を把握します。これにより文章中の次の単語を予測する言語モデルを構築します。コストと時間が掛かるステージです。学習されたモデルはBase modelと言います。
Base modelは大量の知識がありますが、人の指示を聞くようには出来ていません。それを使いやすく「微調整」するのを後学習と言います。OpenAI独自で数年間集めた大量の人の理想の解答例などをを使い、「推論」「ツール使用」「対話」「安全性」などを例文無しでに理解させる過程になります。この過程では様々な分野の専門家といった人間によるフィードバックも含みます。
生成
GPT-4は、生成モデルであり、入力テキスト(プロンプト)に基づいて出力するテキストを生成します。与えられた文脈や質問に対して適切な回答や文章を生成します。
以上の要素からGPT-3.5(もしくはGPT-4)をベースにしたChatGPTは入力されたプロンプトに対して高い精度で出力を返してくれています。
GPT-3.5、GPT-4の違い
2023年4月現在、ChatGPTで使えるGPT-3.5、GPT-4のモデルの違いについて説明します。
GPT-3.5 | GPT-4 | |
---|---|---|
発表日 | 2022年11月30日 | 2023年3月14日 |
性能 |
|
|
表示速度 ※ChatGPT使用時 |
早い | 遅い |
他サービスとの連携 | APIを使い他サービスに連携可能 | API連携の他、ChatGPT Plusでは多くのプラグインが利用可能 |
Webブラウンジング機能 | 使用不可 | ChatGPT Plusで可能 ※2023年7月一時的に停止 |
GPT-3.5は2022年11月30日にOpenAIから発表され、GPT-3だと難しかった複雑な処理も対応可能になったり、自身で間違いを認め修正することなどもできたりするようになりました。
そして2023年3月14日にGPT-4が公開されました。GPT-3.5とGPT-4の大きな違いとしては
- 画像も入力可能になったこと
- 日本語の精度が飛躍的に向上したこと
- 開発者・ユーザーが口調やスタイルを指定可能になったこと
- AIの幻覚(ハルシネーション)が大幅に低減したこと
- 危険な回答が低減したこと
などがあげられます。
GPT-3.5とGPT-4の違いについて詳しくは「GPT-4とは?話題の生成系AI最新版の特徴・使い方・ビジネス活用事例を一挙に解説」の記事からご覧ください。
2023年5月にはChatGPT Plusユーザーに対してプラグインとWebブラウジング機能が公開されるなど、随時機能が拡張されています。
※2023年7月3日、Webブラウジング機能は望ましくない方法でコンテンツが表示される場合があることがわかり、一時的に提供を停止しています。
参考:「Language Models are Few-Shot Learners」2020年7月22日
参考:「GPT-4 Technical Report」2023年3月27日
参考:「How do I use ChatGPT Browse with Bing to search the web?」2023年7月4日
ChatGPTのアカウント作成・ログイン・アップグレード方法
ここではChatGPTのアカウント作成、ログイン方法、ChatGPT Plusへのアップグレード方法を説明します。
既に無料版のChatGPTのアカウントを持っている方は「③有料版のChatGPT Plusへアップグレード」からお読みください。
①アカウントの新規作成
まずはChatGPTのログインページにアクセスし、「Sign up」をクリックします。
次に「Create your account」の画面が出てくるので、下記手順でアカウント作成に進んでください。
- Googleのアカウントと連携し作成したい場合は「Continue with Google」を選択
- Microsoftアカウントと連携し作成した人は「Continue with Microsoft Account」を選択
- どちらでもない場合はEメールアドレスを入力
その後、ログイン用のパスワードの入力を求められるので、任意のパスワードを入力し、「Continue」をクリックします。すると「Verify your email」と出てきて、入力したメールアドレス宛に認証用メールが届きます。
届いたメールにある「Verify email address」のリンクをクリックします。「Email Verified」の画面が出たらサインアップ完了です。ログインすると最初だけプロフィール入力の画面が出てくるので、情報を入力して進んでください。まずは姓名を入力し、次に電話番号を入力します。
電話番号を入力すると2段階認証の6桁のコードがSMSで届くので、再度画面に戻り入力します。すると以下の画面になり、利用可能になります。
②ChatGPTのログイン方法
既にChatGPTのアカウントを持っている人はChatGPTのログインページからログインが可能です。
しかし、稀に以下のようにアクセス過多が要因でログインできない場合があります。その時は時間をおいて再度アクセスするようにしましょう。
③有料版のChatGPT Plusへアップグレード
有料版のChatGPT Plusへアップグレードしたい方は画面左のメニューから「Upgrade to Plus」をクリックします。
ポップアップが出てくるので「Upgrade plan」をクリックします。
次に左側に金額、右側にクレジットカードの入力画面が出てくるので、クレジットカード情報を入力して規約などに同意したら「申し込む」をクリックします。
これでChatGPT PlusでGPT-4が使えるようになります。
ChatGPT Plusでは、チャット画面の上段にタブで使用するモデルが3つ(GPT-3.5(Legacy)、GPT-3.5(Turbo)、GPT-4)の中から選べるようになっており、GPT-4モデルのみ、3時間に25メッセージまで使用可能という制限があります。
ChatGPTの使い方
次に無料版のChatGPTの使い方について説明します。
ChatGPTにログインして「https://chat.openai.com/chat」のページに来たら、下の「Send a message…」と書かれている入力窓に質問や指示を入れます。そして右の送信マークを押すと、回答が出力されます。
試しに、「1か月でTOEICの点数を500点から700点に上げる方法を教えてください。時系列に沿って勉強時間もわかるように表形式で教えてください。」というプロンプトを入力すると、以下のような出力が返ってきました。
日本語で文章を入力するだけで、表形式の勉強のスケジュールに加えて注意点についても回答してくれました。
ChatGPTのAPI
ChatGPTのAPIキーの発行・取得方法
OpenAIのアカウントを作成したらAPIキーを取得できます。APIキーを取得するとPythonやGoogle Apps Script(GAS)などのプログラミング言語を使用して、APIを呼び出し様々な便利な使い方ができます。API連携は開発者が容易に自社のプロダクトやサービスに組み込むことができるため、開発コストの削減や市場投入までの期間を短縮することもできます。
APIの使い方については、WebサイトやGitHubリポジトリなどで提供されているドキュメントを参照すると良いでしょう。
APIキーの取得方法は
①ログインした状態でOpenAIのページを開く。
②右上にアカウントアイコンが表示されるので、クリックして「View API keys」を選択
③「API keys」のページに遷移し、「+ Create new sercret key」ボタンをクリック。
④生成されたAPIキーが表示される。その横のコピーボタン(赤枠)をクリックしAPIキーを取得
以上がAPIキーの発行・取得手順になります。
ChatGPTのAPIの料金
ChatGPTのAPIは無料トライアルもできますが原則、有料になります。
gpt-3.5-turboのAPI料金
1,000トークンにつき0.002ドル
GPT-4のAPI料金
GPT-4は入力・出力、コンテキスト(1回の生成で扱えるトークン数)が8000か32000か、それぞれ個別に料金が指定されています。
1回の生成で8000トークンまで扱えるモデルの場合、入力1000トークンあたり0.03ドル、出力1000トークンあたり0.06ドル
1回の生成で32000トークンまで扱えるモデルの場合、入力1000トークンあたり0.06ドル、出力1000トークンあたり0.12ドル
となっています。
※トークンは、文章を形態素解析などの手法によって分割された最小の単位であり、必ずしも文字数とイコールにはなりません。日本語の場合、1000トークンでだいたい750文字程度です。
ChatGPTのAPI連携でできること
ChatGPTのAPI連携でできることとして「プロダクトの機能拡張/新規プロダクトの開発」「Google Chromeの拡張機能」などがあります。
プロダクトの機能拡張/新規プロダクトの開発
ChatGPT APIを活用することで、既存のプロダクトにGPTを使ったチャット機能やテキスト自動入力機能を追加したり、GPTを活用した新規のプロダクトを開発することができます。例えば、顧客対応を行うチャットボットの開発や、質問に対する回答を自動生成するFAQシステムの構築が可能です。また、AIによる文書要約や情報抽出、言語翻訳などのアプリケーションを開発することができます。
Google Chromeの拡張機能
ChatGPT APIをGoogle Chromeの拡張機能に活用することで、インターネット閲覧中にリアルタイムでGPTを活用した翻訳や要約・文章作成ができます。例えば、ウェブページ上のテキストを要約したり、Youtubeの動画の内容を特定の形式に要約したり、Googleの検索結果に検索したワードに関する内容を表示してくれる機能を開発できます。
これにより、ユーザーはより便利で効率的なウェブ閲覧体験を得ることができます。
LINEで気軽にChatGPTを使う
OpenAIのアカウント登録無しで、気軽にChatGPTを使いたいと考えている方はLINEで「AIチャットくん」というアカウントを友達登録することでGPT-3.5-turboという、表示速度が速いバージョンを気軽に使えます。これもChatGPTのAPIを活用してできたサービスです。無料のため利用できる回数には制限がありますが、「試しに使ってみたい方」、「使う頻度が少ない方」、「GPT-4は使えなくても良い方」はLINEのAIチャットくんを使ってみてください。
ChatGPTでできること
ChatGPTでできることには様々なことがあります。それぞれ紹介していきます。
質問に対しての回答
ChatGPTの基本的な機能として、質問に対して回答を返してくれます。
これは、カスタマーサポートチャットボットやFAQシステムの構築、知識データベースの作成に活用できます。また、教育や研究の分野でも、学習者が理解を深めるための回答や解説を提供することが可能です。
文章の翻訳・要約・校正
ChatGPTは、文章の翻訳、要約、校正といったテキスト処理タスクにおいて非常に高いパフォーマンスを発揮します。そもそもGPTのベースとなるトランスフォーマーという技術は翻訳を目的に開発された技術のため、特に翻訳機能の精度は高いです。
その為、外国語の長い文章を、日本語で簡潔にまとめてもらうといったことが可能になります。
物語や脚本の生成
ChatGPTは物語を考えることもできます。以下では、一定の条件を指定してオリジナルストーリーの脚本を考えてもらいました。
指定した登場人物の設定を上手くストーリーに織り交ぜて展開しているのがわかります。しかしストーリーそのものはシンプルなよくあるストーリーかもしれません。
ChatGPTが人間が考えるような独創的なストーリーを考えるのはまだ苦手です。ある程度こちらで内容を考えてプロンプトをもっと詳細に記載する必要があります。今後GPTの機能が向上してくれば、シンプルなプロンプトで独創的なストーリーを考えてくれるようになるかもしれません。
サイト・アプリの開発支援
ChatGPTはウェブサイトやアプリケーション開発においても活躍します。例えば、プログラミング言語の解説や機能実装の手順を提案してくれたり、デザインやユーザーエクスペリエンスの改善に関するアドバイスも提供してくれたりするため、ChatGPTとぺアプログラミングができます。
また、「こういうことをしたいのでコードを教えて」というと、ちゃんと動くコードを教えてくれます。勿論完全ではないためエンジニアのチェックは必要ですが、最近はほとんどChatGPTがコーディングをして作られたアプリの事例なども出てきており、アプリの開発に革命が起きている状況です。
AIのスペシャリストが語る、新時代に求められる生成AIの活用とは?
AIやWEB3という言葉は耳にするものの、それが実際に仕事にどのような変化をもたらすのでしょうか。
「Web3時代のAI戦略」を執筆したエクサウィザーズ取締役の大植択真が、テクノロジーの現在地と今後の展望について解説しています。
アーカイブ動画を無料で公開中のため、ぜひご視聴ください。
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- DX人材育成やDX組織構築に関わっているが今後の方向性や具体的な方法論にお悩みの方
- ChatGPTなどの基盤モデルの登場で今後求められるスキルがどのように変化するのかを知りたい方
- これからの時代を先読みし、それに対応したスキルをどのように身に着けるべきかについてお悩みの方
Google検索との違い
知りたいことについて入力して回答を得るという意味では検索エンジンであるGoogleと、ChatGPTとの使い分けに悩む人もいるでしょう。しかしChatGPTとGoogle検索は、それぞれ特徴が異なるため、以下の表を参考に使い分けることをおすすめします。
ツール | 特徴 | 利用シーン |
---|---|---|
ChatGPT |
|
|
Google検索 |
|
|
ChatGPTがまだ苦手なこと
ChatGPTにはまだ苦手なことも沢山あります。まだ、と言っているのは現在進行形で進化しているからであり、今後性能の向上によって解決される課題も出てくるでしょう。ChatGPTがまだ苦手なことについて紹介します。
最新の情報には答えられない
ChatGPTは、2021年9月までの情報を基に学習しているため、最新の情報については答えてくれないことがあります。
2023年にWBCで優勝した国について質問したところ、2021年9月の情報しか含まれていないので答えられないという回答が返ってきました。
情報の正確性
ChatGPTは、情報の正確性という点ではまだ懸念があり、堂々と間違ったことを言うことがあります。その理由として、学習したデータの中に間違った情報があることや、最新の情報を持っていないことがあげられます。今後は学習するデータの精度向上や、プラグインの追加により最新の情報を学習できるようにすることで情報の正確性は改善されることが予想されます。
違法行為や差別的な表現に関する内容
ChatGPTは、「違法行為や不適切な行為を助長する質問」や「差別的、攻撃的、人種差別的、または不快感を与える可能性のある内容の質問」、「個人情報やプライバシーに関わる質問(例:特定の個人の住所や電話番号)」などには極力答えられないように設計されており、モデルがバージョンアップするごとにその精度は増しています。
ChatGPTを使う上での注意点
機密情報の取り扱い
ChatGPTを使用する際には、機密情報の扱いに注意が必要です。OpenAIの利用規約では、「APIを介して送信された情報はAIの学習には使用されず、APIを経由しない入力情報(例:OpenAIのWebサイトで直接ChatGPTに入力された情報)はAI学習に利用される可能性がある」と記載されています。よって、APIを介さないChatGPTに直接機密情報や個人情報を入力しないようにしましょう。
ChatGPTでは過去に、他のユーザーの名前、メールアドレス、住所、クレジットカードの下4桁、有効期限が表示される問題が発生したことがあります。また、他人のチャット履歴のタイトルが誤って第三者に表示されるバグも生じ、緊急メンテナンスが行われる事態が起こりました。そういった背景もあり業務利用に慎重になっている企業も多いのが現状です。
ChatGPTを業務利用する場合は、個人情報や機密情報を入力しない旨をガイドラインとして策定するのがいいでしょう。
最近はOpenAIのAPIを利用して自社独自のAIチャットツールを作成し、個人情報や機密情報を入力してもAIの学習に利用されない状態で利用する会社も増えています。
必ず内容の事実確認をおこなう
前述した通り、ChatGPTは間違った内容を出力する場合があります。また、情報元のソースも通常では教えてくれません。そのため、ChatGPTが出力した内容が正しい内容なのかは、人間が事実確認をするようにしましょう。
ChatGPTのプラグイン
ChatGPTは2023年4月現在、一部のユーザーに段階的にプラグインを公開中です。一部を紹介します。
・ブラウジング機能
Web上のページをリアルタイムにブラウジングして回答を出力します。これにより最新の情報にもアクセスすることができ、今までの課題だった「2021年9月までのデータにしか答えられない」という問題も解決されます。
・Expedia
旅行プランの提案や宿泊施設の予約、航空券の予約、観光地などのアクティビティ予約、レンタカーの予約などがChatGPTを介してできるようになります。
・FiscalNote
法律、政治、および規制に関するデータと情報について、最新の情報へのアクセスを提供し、有効にします。
・Instacart
ChatGPTで、地元の食料品店から食料品の注文が可能になります。
・Klarna Shopping
何千ものオンラインショップから価格を検索・比較が可能になります。
・Wolfram
Wolframの豊富な計算能力やデータ分析機能がChatGPTを介して使えるようになります。
・Zapier
Google スプレッドシート、Trello、Gmail、HubSpot、Salesforce など、5,000 以上のアプリと連携・管理ができます。
以上がOpenAI社から公開のあったプラグインの一例になりますが、今後もプラグインはどんどん追加され、出来ることが増えていくことも想定されます。
~2023年4月28日追記~
2023年4月21日に公開されたTEDトーク「The Inside Story of ChatGPT’s Astonishing Potential 」においてOpenAI共同創業者のグレッグ・ブロックマンがおこなったプラグインを活用したライブデモについて紹介します。
DALL-Eモデルによる画像生成
グレッグ氏はプラグインの一つで画像を生成するDALL-Eモデルを選択し、ChatGPTに「Suggest a nice post-TED meal, and draw a picture of it.(TED後の素敵な食事を提案し、その絵を描いてください。)」というプロンプトを入力しました。
するとChatGPTはTEDトーク後にお勧めのメニューをテキストで表示します。
そしてそのあと数秒後にDALL-Eモデルから提案したメニューの画像を生成してくれました。
また、画像生成のためにChatGPTが使用したプロンプトも確認ができるのでフィードバックも可能です。
他のプラグインとの統合
更に先ほどの情報を記憶して他のプラグインと連携することで出来ることが広がります。「先ほど提案した美味しいものの買い物リストを作ってください」というプロンプトを入力すると先ほど提案してくれたメニューに使う食べ物を、Instacartというショッピングサイトと連携してリストアップしてくれました。
そして最終的にはTwitterとも連携し、この食材リストをツイートするところまでChatGPTが実施してくれました。
グレッグ氏は他にもブラウジング機能を利用してウェブ上のデータを基にファクトチェックをするデモや、データを分析しその分析結果をChatGPTに出力してもらう様子なども公開しました。
こうしたプラグインは数か月後にChatGPTユーザーに公開予定とのことです。
このようにChatGPTのプラグイン追加による機能向上も今後随時実施されていくでしょう。
TEDトークはこちらからご覧いただけます。
GPTと他のサービスの連携
OpenAIのAPIを活用しGPTの機能を活用したサービスが続々と生まれています。例をいくつかご紹介します。
Salesforce
SalesforceはCRM向け生成系AI「Einstein GPT」を発表しました。これは独自のAIモデルとOpenAIのChatGPT技術を組み合わせたもので、CRM内で顧客対応コンテンツをリアルタイムで生成します。
営業担当者やカスタマーサービス担当者に有用で、Slackでもチャットボットが利用できます。現在パイロット版の申し込み受付が始まっており、一般提供は2023年の後半を予定しています。
参考:「Salesforce、世界初のCRM向け生成AI「Einstein GPT」を発表」株式会社セールスフォース・ジャパン 2023年3月9日
atama Plus+
全国の塾に教育の最適化教材を提供しているatama plusは、長野県の直営塾「THINX」でAI教材「atama+」の「物語文で単語学習機能(β版)」の提供を開始しました。
これは、ChatGPTを利用し、生徒に個別最適化した物語文を生成し、英単語学習を支援するものです。暗記が苦手な生徒に対して文脈を通して英単語を定着させることが期待されます。まずはTHINXの3教室で高校生を対象にβ版の提供を開始し、検証後に提供範囲を拡大する予定です。
参考:「AI教材「atama+」に「ChatGPT」を活用した新機能(β版)を搭載」atama plus株式会社 2023年4月7日
スピーク(英会話)
英会話アプリ「スピーク」では、GPT-4をAI講師機能に導入しています。
ユーザーは「AI講師」を相手に自由な会話を行うことができ、自身が話した内容の語彙、文法がどの程度のレベルかといったフィードバックを受けることができます。
同社のCEO、コナー・ズウィック氏は、「GPT-4の活用により、AI講師は正確かつ一貫性のある会話を提供し、ユーザーとの自然なやり取りが可能になっています。これにより、対人型英会話に匹敵する英語学習が実現され、ユーザーの学習回数と成果が向上している」と述べています。
参考:「英語スピーキング特化型学習アプリ「スピーク」の機能である「AI講師」の「GPT-4」活用を発表」PRTIMES 2023年3月15日
ChatGPTが巻き起こす社会への影響
禁止されるChatGPT
ChatGPTの利用を禁止する国・教育機関・企業が増えています。
イタリアはChatGPTの利用を禁止しました。理由は、一般データ保護規則(GDPR)に違反しているためです。GDPRでは個人情報の不当な収集や、データを収集したことをユーザーに知らせないことを禁止していますがChatGPTはそれに違反しているという理由からです。今後GDPRを適用している国はイタリアの方針に追随する可能性もあります。
アメリカのバイデン大統領も「潜在的リスクにも対処すべきだ」との認識を示しており、安全性の確認は、開発企業が責任を負うと強調。利用者の個人情報を保護する法整備の必要性も訴えています。
教育機関でもChatGPTを規制する動きがあります。教育の現場において、学生の能力を測るためのレポートや論文、読書感想文などをAIが作っていては学生の能力を正確に測れません。
上智大学は3月27日、学生と教職員に対し、レポートや学位論文でチャットGPTなどのAIが生成した文章や計算結果などを、教員の許可なく使うことを禁止しました。AI生成文章を検知するソフトを使い論文などでの使用が判明した場合、「厳格な対応を行う」としています。
文部科学省は、取り扱いに関するガイドライン作成に取り組んでいます。ChatGPTの一律の禁止などはせず、子どもたちが自分の考えを深めるツールとして使うなどの方法を検討します。
また、2023年2月時点で、NTTドコモでも『ChatGPT』をはじめとして、第三者提供のAI系サービスの利用は認められていません。
今後ChatGPTの活用を禁止されるシーンも増えてくると同時に、ChatGPTの活用を前提とした教育方法や業務も増えてくるでしょう。ChatGPTの活用ガイドラインの早急な策定が求められています。
参考:「チャットGPT、学生の利用に対策…上智大「論文使用なら厳格な対応」」読売新聞オンライン 2023年4月9日
参考:「学校でのChatGPT 活用と注意点の指針、文科省策定へ」朝日新聞デジタル 2023年4月7日
参考:「ChatGPTを日本企業はどう使う?「禁止」ドコモ、「模索」楽天、「自社開発」LINE…14社調査」2023年2月16日 Business Insider Japan
ChatGPTの利用が前提の企業も
一方で、ChatGPTの利用を前提とする企業も増えています。パナソニックホールディングスは、2023年4月14日に、米OpenAIの「GPT-3.5」を用いた会話型AIサービス「PX-GPT」を国内グループ全社員9万人に提供開始すると発表しました。これは、グループ会社のパナソニックコネクトが国内全社員1万2500人向けに2023年2月から利用していたものを、国内グループ全社版に拡大して環境を整備したものです。
他にも、
- 農林水産省がChatGPTを一部の業務で使う方針を固める
- みずほフィナンシャルグループがマイクロソフトの「Azure OpenAI Service」の活用の検討を開始
- ベネッセホールディングスがAzure OpenAI Serviceを活用したAIチャットサービスの運用を、グループ社員約15,000人の向けに運用開始
など民間企業だけでなく中央省庁でも活用が広がっています。
日本経済団体連合会(経団連)の十倉会長は定例記者会見の中でChatGPTを始めとした対話型AIとの向き合い方や規制のあり方について問われ、「人類の進歩の歴史に鑑みれば、対話型AIのような革新的な技術を一切使わないようにするというのは難しい。倫理的な側面等への留意がなされることを前提に、いかに技術を活用していくかという方向で、各国で議論が重ねられていくのではないか。」と述べています。
参考:『農林水産省、ChatGPT活用へ マニュアル更新など』日本経済新聞 2023年4月18日
参考:『社内AIチャット「Benesse GPT」をグループ社員1.5万人に向けに提供開始』ベネッセ 2023年4月14日
参考:『みずほFGが「Azure OpenAI Service」活用へ、対話型AIで業務効率化や価値創出』日経FinTech 2023年4月17日
参考:『定例記者会見における十倉会長発言要旨』日本経済団体連合会 2023年4月17日
まとめ
本記事では、ChatGPTの基本情報、機能、利用方法から応用事例、注意点、そして社会への影響まで幅広く解説しました。ChatGPTは革新的なAI技術であり、今後確実に利用が広まっていく技術ですが、同時にその利用には慎重さも求められます。
現時点では、情報の正確性、複雑な条件・複雑な文脈への対応に課題を抱えているため利用者は常に事実確認を行い、適切な使い方を心がける必要があります。また、ChatGPTの活用が広まるにつれて、人がやるべき業務や、学ぶべき内容、身に付けるべきスキルも変化が求められるでしょう。
この記事が、ChatGPTを理解し、効果的に活用するための参考になれば幸いです。