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キャリアアップ助成金について要点だけおさえて簡単に解説!

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化・処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対し、助成金を支給する制度です。

本記事では、キャリアアップ助成金の各コースの概要や申請手続きの流れ・注意点、計画の作成方法について、わかりやすく解説します。

※この記事は、2023年12月時点で発表されている情報を基に作成しています。制度の内容は変更になることがあるため、都道府県労働局または最寄りのハローワークで最新の内容を確認しましょう。

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者(以下「有期雇用労働者など」)といった“非正規雇用労働者”の、企業内におけるキャリアアップを促進するための制度です。

これらの社員の正社員化や処遇改善の取り組みを実施することで、助成金を受け取れます。この助成金を活用すれば、労働者の意欲や能力向上につながり事業の生産性向上も期待できるでしょう。事業主にとっては優秀な人材を確保でき、労働者にとっても雇用の安定や処遇の改善につながる制度です。

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

支給対象となる事業主

キャリアアップ助成金を受給するためには、「支給対象事業主」に該当しなければなりません。コースごとに支給対象事業主の要件は異なりますが、まずは全コース共通の要件を紹介します。助成金申請を検討している事業主の方は、以下の支給対象要件を確認しておきましょう。

  1. 雇用保険適用事業所である
  2. 雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置いている
  3. 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に係る「キャリアアップ計画」を作成し、管轄 労働局長の認定を受けている。また、「キャリアアップ計画書」の内容変更時は実施日の前日までに「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出している
  4. 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件・勤務状況および賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにしている
  5. キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいる

上記の要件のほか、「支給申請年度の前年度以前の労働保険料を納入していない事業主は助成金を受給できない」といった助成金を受給できない要件もあります。

キャリアアップ助成金の各コースの説明

キャリアアップ助成金は、「正社員化支援」と「処遇改善支援」に大別されます。

また、正社員化支援は「正社員化コース」「障害者正社員化コース」、処遇改善支援は「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度コース」「短時間労働者労働時間延長コース」に種類が分かれており、コースにより要件や支給額などが異なります。

なお、「生産性の向上が認められる場合の加算」については令和5年3月31日をもって廃止のため、本記事では記載していません。

 

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

正社員化コース

正社員化コースでは、就業規則または労働協約などに基づき、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換・直接雇用した場合に助成金を受け取れます。正規雇用労働者には、多様な正社員の形態(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)へ転換した場合なども含みます。

助成金の受給条件は、「正社員化後6カ月間の賃金が正社員化前6カ月間の賃金と比較して3%以上増額していること」「正規雇用労働者に転換する制度を就業規則などに規定していること」などです。

支給額と加算措置・加算額

正社員化コースの「支給額」と一定の条件に該当すると加算される「加算措置・加算額」は、以下の通りです。なお、正社員化コースの1年度1事業所当たりの支給申請上限は20人までとなります。

【支給額】(1人あたり)

条件 中小企業 大企業
有期契約労働者→正規雇用労働者 57万円 42.75万円
無期契約労働者→正規雇用労働者 28.5万円 21.375万円

【加算措置/加算額】(1人あたり)

派遣先で派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合は、以下の通りです。

中小企業/大企業
28.5万円

対象者が母子家庭の母などまたは父子家庭の父の場合は、以下のようになります。

条件 中小企業/大企業
有期契約労働者→正規契約労働者 9.5万円
無期契約労働者→正規契約労働者 4.75万円

勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定する場合の1事業所あたりの加算額は以下の通りです。

中小企業 大企業
9.5万円 7.125万円

人材開発支援助成金との併用でも加算措置がある

正社員化コースは、「人材開発支援助成金」との併用が可能です。

人材開発支援助成金とは、事業主が労働者に対して訓練を行った場合に受講料などの訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度のこと。人材開発支援助成金における特定の訓練の終了後に正規雇用労働者に転換した場合、助成金額が加算されます。

加算額は以下の通りです。

【加算措置/加算額】(1人あたり)

条件 中小企業/大企業
有期契約労働者→正規契約労働者 9.5万円
無期契約労働者→正規契約労働者 4.75万円

「自発的職業能力開発訓練」または「定額制訓練」の修了後に正社員化した場合については、以下の加算が適用されます。

条件 中小企業/大企業
有期契約労働者→正規契約労働者 11万円
無期契約労働者→正規契約労働者 5.5万円

対象となるのは、以下の訓練コースです。

  • 人材育成支援コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開などリスキリング支援コース(自発的・定額制訓練)※2022年12月新設

 

なお、訓練途中の正社員化は訓練加算の対象外になるので、注意が必要です。

障害者正社員化コース

障害者正社員化コースでは、障害のある有期雇用労働者などを正規雇用労働者などに転換する場合に助成金を受け取れます。

支給対象者には、以下のような条件があります。

  • 支給対象事業主に雇用される労働者である
  • 転換実施日の時点で、身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者 ・難病患者・脳の機能的損傷に基づく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者
  • 就労継続支援A型事業における利用者でない

そのほか細かい条件がいくつかありますので、必ず申請前に内容を確認してください。障害者正社員化コースの「支給額」は以下の通りです。

支給額

障害者正社員化コースの「支給額」は以下の通りです。

【支給額】(1人あたり)

引用:「キャリアアップ助成金 | 障害者正社員化コース」厚生労働省

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者などの基本給を定める賃金規定などを3%以上増額改定し、その規定を適用する場合に助成金を受け取れます。

助成金の受給要件は以下の通りです。

  • 賃金規定などを増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、最寄りの労働局へ提出していること
  • 有期雇用労働者などの基本給を賃金規定などに定めていること
  • 賃金規定などを3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6カ月分の賃金を支給していること

支給額と加算措置・加算額

賃金規定等改定コースの「支給額」と「加算措置・加算額」は以下の通りです。

【支給額】(1人あたり) ※1年度1事業所当たり100人までは複数回の申請が可能

条件 中小企業 大企業
賃金規定を3%以上5%未満増額改定した場合 5万円 3.3万円
賃金規定を5%以上増額改定した場合 6.5万円 4.3万円

なお、職務評価を行った上で賃金規定などを改定した場合、以下のように助成額の加算が受けられます。

【加算措置/加算額】(1事業所あたり)

中小企業 大企業
20万円 15万円

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者などと正規雇用労働者との共通の賃金規定などを新たに規定・適用する場合は、賃金規定等共通化コースを活用できます。

支給対象者は、「賃金規定などを共通化した日の前日から起算し3カ月以上前から共通化後6カ月以上の期間継続して事業主に雇用されている有期雇用労働者などであること」といった条件があります。

支給額

賃金規程等共通化コースの「支給額」は、以下の通りです。

【支給額】(1事業所あたり)

中小企業 大企業
60万円 45万円

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)厚生労働省

賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者などを対象に賞与または退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成金が受けられるコースです。支給対象事業主となるには、以下の要件などに該当することが必要です。

  • 対象労働者1人あたり、以下のどちらかまたは両方に該当する事業主であること
    • 賞与について、6カ月分相当として5万円以上支給
    • 退職金として1カ月分相当として3千円以上を6カ月分または6カ月相当として1.8万円以上積立てている

適用要件は変更になることがあるため、最新資料にて確認しましょう。

支給額と加算措置・加算額

「支給額」と「加算措置・加算額」は以下の通りです。

【支給額】(1事業所あたり)

中小企業 大企業
40万円 30万円

また、賞与と退職金制度を同時に導入した場合には、以下の加算措置があります。

【加算措置/加算額】(1事業所あたり)

中小企業 大企業
16.8万円 12.6万円

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間延長コースは、有期雇用労働者などの週所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用した場合に助成を受けられるコースです。以下のような支給が受けられます。

支給額と加算措置・加算額

「支給額」と「加算措置・加算額」は以下の通りです。

【支給額】(1人あたり)

条件 中小企業 大企業
3時間以上延長した場合 23.7万円 17.8万円

なお、3時間未満の延長であっても以下の助成が受けられるケースがあります。

条件 中小企業 大企業
1~2時間延長かつ10%以上昇給した場合 5.8万円 4.3万円
2~3時間延長かつ6%以上昇給した場合 11.7万円 8.8万円

※2024年9月末まで

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

正社員化コースの手続きの流れ

キャリアアップ助成金を受給するためには、計画的にスケジュールを立てることが大切です。ここでは、正社員化コースの申請手順についてステップで紹介します。

 

 

申請手続きの流れについては、上記の通りとなります。

 

 

申請手続きに必要なステップについても見ていきましょう。

申請手続きに必要なステップ

①有期契約労働者などの転換や直接雇用実施日の前日までに「キャリアアップ計画」の作成・提出を行う

<主な対応>

  • 事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置
  • 労働組合などの意見を踏まえた「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受ける

②就業規則・労働協約、そのほかこれに準ずるものに転換制度を改定する

<主な対応>

  • 労働基準監督署に改定後の就業規則の届出を行う

③就業規則などに基づき正規雇用への転換・直接雇用を実施する

<主な対応>

  • 転換後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付する
  • 転換後に適用される就業規則などに規定した労働条件・待遇を適用する

④転換・直接雇用後6カ月分の賃金を支払う

<主な対応>

  • 転換後6カ月間の賃金が、転換前6カ月間の賃金と比較し3%以上増額していることを確かめる

⑤支給申請する

<主な対応>

  • 申請の実施は、取り組み後6カ月月分の賃金(時間外手当などを含む)を支給した日の翌日から起算して2カ月以内に行う

⑥審査・支給決定

<主な対応>

  • 申請項目にミスがある場合は対応する

なお、「人材開発支援助成金」と併用する場合、有期契約労働者などの転換や直接雇用実施日の1カ月前までに人事開発支援金計画届を作成・提出を行うことが必要です。支給申請時には、支給申請期間内に所要の添付書類を揃えたうえ、所要の事項を全て記載して提出しましょう。

ただし、キャリアアップ助成金制度の内容は年度によって変更されることがあります。そのため、申請する場合は最新の情報に従って行いましょう。

参考:「キャリアアップ助成金」厚生労働省

参考:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」厚生労働省

キャリアアップ計画の作成方法

キャリアアップ助成金は、各コース実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、提出することが受給要件となっています。以下で、キャリアアップ計画を作成する際のポイントについて見ていきます。

キャリアアップ計画を作成する際のポイント

キャリアアップ計画を作成する際は、「有期契約労働者などのキャリアアップに関するガイドライン」に沿い、おおまかな取り組みのイメージを決めることがポイントです。対象者・目標・期間・目標を達成するために事業主が行う取り組みなどについて記入しましょう。

また、3年以上5年以内の計画期間を定める必要もあります。さらに、計画の対象となる有期契約労働者などの意見が反映されるよう、従業員の意見を聞くことも大切です。

参考:「キャリアアップ助成金のご案内」厚生労働省 2022年4⽉1日

キャリアアップ計画書・チェックリストのフォーマット

キャリアアップ計画を作成する際は、申請様式をダウンロードして作成できます。また、作成時にチェックリストを活用すると、内容の抜けや漏れなく計画書を提出できるでしょう。以下のサイトから、それぞれダウンロードできますので、キャリアアップ計画の申請時にご活用ください。

フォーマットのダウンロードはこちらから

チェックリストのダウンロードはこちらから

キャリアアップ助成金の申請に関する注意点

キャリアアップ助成金を申請する際にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。申請時に理解しておきたい注意点について解説します。

各種手続きや賃金の支払いなどについて法令に基づき適切に行う必要がある

キャリアアップ助成金の活用は、法令を遵守することが前提条件です。有期契約労働者なども、労働関係法令および社会保険関係法令が適用となることを理解しておきましょう。具体的には、法令に基づく各種手続きや賃金の支払い、雇用契約書・出勤簿・賃金台帳などの作成や管理を適切に行っている必要があります。

申請のタイミングによっては制度内容が変更になっている場合がある

先述の通り、キャリアアップ助成金は定期的に制度内容が変更されているため、申請のタイミングによっては注意が必要です。例えば、以下のような改正点があります。

  • 「正社員化コース」の有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止(2022年4月1日以降)
  • 「正社員化コース」「障害者正社員化コース」に係る「正社員定義」が変更になり、賞与または退職金の制度かつ昇給のある正社員への転換が必要になる(2022年10月1日以降)
  • 各コースの生産性向上が認められる場合の加算が廃止(2023年4月1日以降)

申請時の正確な内容については、都道府県労働局または最寄りのハローワークで必ず確認しましょう。

参考:「キャリアアップ助成金が変わります~令和4年4月1日以降変更点の概要~」厚生労働省 2022年3月31日

まとめ

キャリアアップ助成金には、さまざまな受給要件があります。現行の制度内容をしっかり確認し、申請手続きを抜けや漏れなく行いましょう。

キャリアアップ助成金は、労働者の処遇改善やエンゲージメント向上し、企業は優秀な人材が確保できるというメリットがあります。キャリアアップ助成金を活用し、事業の生産性向上を目指しましょう。

キャリアアップ助成金は、DXを進めるうえでも不可欠な、社内の人材育成において欠かせないものです。

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