ChatGPTのような生成AIに入力する文を、プロンプトといいます。
プロンプトエンジニアリングは、プロンプトをうまく作成し、最適な結果を引き出せるようにする方法や技術を指しています。
プロンプトの内容次第で、チャット型AIツールの「ChatGPT」が回答する文章の質は大きく変わってきます。
ChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM)を使いこなせるようにするためには、必須のスキルとなり、LLMを使ったサービスのビジネスへの活用が広まる中で、プロンプトエンジニアリングの重要性も高まるでしょう。
本記事ではプロンプトエンジニアリングの概要や基礎について解説するとともに、ChatGPTで使える事例を紹介します。
プロンプトエンジニアリングとは
「プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)」とは、生成AIから望ましい出力が得られるように、AI(人工知能)への指示や命令である「プロンプト」設計を最適化するスキルを指します。
プロンプトエンジニアリングとは
「プロンプトエンジニアリング」とは、生成AIへのプロンプトを効果的に設計できる技術です。
エンジニアリングというと、プログラミングを連想する人もいるかもしれません。
一般的にいうプログラミングとは、専用言語のプログラミング言語を用いて、システムやソフトウェアのもととなるプログラムを作成することです。
一方で、プロンプトエンジニアリングは、自然言語を用いてAIに入力するプロンプトを作成することを指しています。
生成AIの可能性を最大限に引き出すためには、プロンプトの設計や最適化が非常に重要です。
生成AIの出力結果の質はプロンプトの内容に大きく依存するため、適切なプロンプト入力のスキルが必要とされます。
何となく知りたいことを問いかけることでももちろん有効です。
例えば、ChatGPTに「おすすめのレシピを教えてください」と指示を与えた場合、ChatGPTはおすすめのレシピを教えてくれるかもしれません。
しかし、材料が家にないものや昨日食べたばかりのレシピとなる場合があります。
具体的に家にあるものや、食べたい味付けなどを質問すると、より望んだ答えが得られます。
例:「おすすめのレシピを教えてください。冷蔵庫に豚の細切れ肉とナス、にんじん、もやし、豆腐、鮭の切り身があります。なるべく全部を使って夕飯の献立となるように5品作ってください。和食中心がいいです。材料と作り方を教えてください」
とすると、より要望に沿ったレシピを返してくれます。
このように具体的なプロンプトの設計をすることが、プロンプトエンジニアリングの一例です。
また、そもそも大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)(以下、LLM)を効率的に利用するためには、それらの特性を理解する必要があります。
LLMは、大量のテキストデータから学習して自然言語を生成したり理解したりするAIモデルを指します。
また、インターネット上で利用可能なテキストデータを学習し、あらゆるテキスト生成タスクに対応するように設計されています。
特定のタスクのみに特化した従来の機械学習モデルとは異なる特長です。文脈を正確に捉え、文法的に正しい文章を生成する能力を持っています。
重要性とその背景
生成AIの技術の進化と普及に伴い、プロンプトエンジニアリングの重要性も増してきました。
なぜなら、生成AIの出力品質は、与えられたプロンプトに大きく影響されるためです。
明確で簡潔なプロンプトが複雑なタスクを解決するためには必要です。
さらに、一部のAIモデルでは、プロンプト以外のパラメータ(AIが実行するタスクのために設定する要素や指示のこと)も調整可能で、その調整により生成結果に影響を与えます。
したがって、生成AIへのプロンプト設計やその他のパラメータの設定は、注意深く行うべきです。
プロンプトとその生成結果を確認しつつ、適宜調整や改善を行うことが重要です。プロンプトエンジニアリングは、今後さらに重要となるスキルと考えられます。
ChatGPTのプロンプトエンジニアリング
テキスト生成のAIとして代表格となったChatGPTのプロンプトエンジニアリングの方法を見ていきましょう。
ChatGPTとは
生成AIの中でもテキストを扱うChatGPTは、登場とともに爆発的な人気となりました。
ChatGPTは米OpenAI社によって開発された言語生成モデルで、自然言語処理の分野で高い評価を受けています。
私たちを取り巻く生活やビジネスでも多く使われるようになりました。
ChatGPTも他の生成AIと同様に、プロンプト次第で生成結果が大きく変わってきます。
ChatGPTのプロンプト例
ビジネスの活用シーン別に、ChatGPTで使えるプロンプトの事例12選を紹介します。
長文テキストの要約
長文のテキストの要約は、短くまとめつつ要点をしっかり押さえた形にまとめられます。
記事や論文など長い文章を読みやすい要約にまとめることで、短時間で内容を把握できるでしょう。
例1:
Q |
以下のテキストを要約して、最も重要なポイントを箇条書きにしてまとめてください。 テキスト: “””突如、局地的に豪雨や落雷をもたらす「ゲリラ雷雨」。その名の通り突発的な現象で、事前の予測が非常に難しい。その難題に挑んできたウェザーニューズは東名阪地域におけるゲリラ雷雨について、発生の予測精度9割を実現した。7月からは、発生リスクをより細かいエリアごとに事前通知できる仕組みを整えた。他企業・団体が追随できない予報レベルの高さを支えているのは…(以下略)”””※ |
---|---|
A |
以下、テキストの要約として最も重要なポイントを箇条書きにしました。
|
Q |
さらに短くまとめて、重要なポイントを箇条書きにしてください。 |
A |
了解しました。以下のようにまとめます。
これらのポイントは、テキストの主要な情報を反映しています。 |
例2:誰に対しての文章であるかを指定することで、わかりやすく文章の要約を行なうことが可能です。
Q |
以下のテキストを中学1年生でも理解できるように、500字程度にわかりやすくまとめてください。 テキスト: “””突如、局地的に豪雨や落雷をもたらす「ゲリラ雷雨」。その名の通り突発的な現象で、事前の予測が非常に難しい。その難題に挑んできたウェザーニューズは東名阪地域におけるゲリラ雷雨について、発生の予測精度9割を実現した。7月からは、発生リスクをより細かいエリアごとに事前通知できる仕組みを整えた。他企業・団体が追随できない予報レベルの高さを支えているのは…(以下略)”””※ |
---|---|
A |
ゲリラ雷雨について、中学1年生でもわかるように500字以内でまとめると: ゲリラ雷雨とは、突然降る大雨や雷を指します。朝は晴れていても、急に雨が降ってきて洗濯物が濡れてしまうことがありますよね?これがゲリラ雷雨です。 この雨は突然起こるので、予測が難しいと言われています。でも、「ウェザーニューズ」という会社が、このゲリラ雷雨をとても上手に予測できる方法を考えました。この会社の予測は、東京や名古屋、大阪の都市で、10回中9回以上は当たっています! ウェザーニューズの秘密は、普通の人たちの協力にあります。この会社は、アプリを使って、雨が降るかもしれない場所にいる人たちに、「今、空はどう見えますか?」と聞きます。すると、人々は空の写真や雲の様子をアプリに送ってくれます。ウェザーニューズは、この情報を使って雨が降るかどうかを予測します。 このアプリのおかげで、雨に濡れずに済むことが多くなりました。たくさんの人が「この予測のおかげで傘を持って出かけられた!」と喜んでいます。 ウェザーニューズは、これからもゲリラ雷雨の研究を続ける予定です。もっと詳しく、もっと早く雨を予測できるようになるかもしれませんね。 最後に、ゲリラ雷雨は予測が難しいけれど、技術の進歩とみんなの協力で、だんだんと予測が上手になってきています。これからも、この技術が私たちの生活を助けてくれることでしょう。 このように、シンプルかつわかりやすい言葉を使用してゲリラ雷雨とウェザーニューズの取り組みについて説明しました。 |
Q |
大人でも理解できるような文章として、500文字以内でまとめてください。 |
A |
「ゲリラ雷雨」とは突然の強い雨や雷を指す言葉で、予測が非常に難しいとされています。この現象が注目されたのは、2008年の事故で、神戸市や東京都豊島区での大雨による水位の急上昇が原因で、多数の命が失われました。 これを受け、ウェザーニューズという組織がゲリラ雷雨の予測に挑戦しました。彼らは「ゲリラ雷雨防衛隊」というプロジェクトを立ち上げ、スマホアプリを通じて、ゲリラ雷雨の発生前に警告を発するシステムを開始。特筆すべきはその予測の高精度で、東京、名古屋、大阪の主要都市で90%以上の正確さを持っています。 この高い予測精度の秘訣は、ユーザーからの情報提供にあります。ウェザーニューズは、ゲリラ雷雨が発生しそうなエリアの住民に、空の写真や雲の観察データをアプリを通じて送信してもらうシステムを利用。集められた情報は解析され、ゲリラ雷雨のリスクを高精度で評価しています。さらに、AI技術も用いられ、雲の写真の自動解析が行われている。 ウェザーニューズのアラームは、多くの人々に利用され、実際のユーザーからは「外出を控えることができた」や「傘を持って出かけることができた」といった感謝の声が寄せられています。このユーザー参加型の情報収集は、気象予報の新しい方法として注目されており、さらなる高精度な予測の可能性を秘めています。 結論として、ゲリラ雷雨の予測は難しいものの、ウェザーニューズの取り組みにより、その精度が向上しており、多くの人々の生活を守っています。 |
※引用:日経ビジネス「ウェザーニューズ、ゲリラ雷雨の予測精度9割を支える「体感」」
質問の応答
ChatGPTに特定の回答を返せるようにするための、プロンプト設計の方法の一つは、フォーマットの改善です。
プロンプトの4大要素である、「Instraction」「Context」「Input Data」「Output Indicator」を組み合わせて質問するとよいでしょう。
- Instraction: 「以下の文脈を基に、入力データを解析し、感情の指標を出力してください」
- Context: 「ユーザーは、映画のレビューサイトに感想を投稿しています」
- Input Data: 「この映画は素晴らしかった!アクションシーンが特に心に残った」
- Output Indicator: 「感情: ポジティブ」
プロンプトの4大要素については、後ほど詳しく説明します。
例1:
Q |
次の文脈を参考にして、入力データから動物の種類を特定し、その結果を出力してください。アフリカのサバンナでの動物の観察記録です。この動物は大きな鬣と長い尾を持っており、草原を高速で走ります。この動物の種類はなんですか? |
---|---|
A |
チーター |
例2:
Q |
文脈を考慮して、入力データを基に最も適切な推奨アクションを示す指標を出力してください。ユーザーはレストランでの食事の際、アレルギー情報を確認しています。この料理には、ピーナッツ、大豆、牛肉が含まれています。 |
---|---|
A |
注意: ピーナッツアレルギーの方は摂取を避けてください。 |
情報の抽出
ChatGPTはテキストの生成をおこなうように訓練されていますが、分類や抽出など他の自然言語処理のタスクも実行できます。
例:
Q |
次の文章が示す感情を「良い」「普通」「悪い」に分類してください。 文章: サッカーをするのは楽しい感情: |
---|---|
A |
感情: 良い |
会話
ChatGPTと会話ができます。
カスタマーサービスのチャットボットなどで利用できる会話システムの構築に役立つでしょう。
例1:
Q |
近いうちにキャンプに行く予定なんだけど、必要なキャンプギアについて教えてもらえる? |
---|---|
A |
もちろん、キャンプに必要な基本的なギアをリストアップしますね。 テント(タープもオプションとして) キャンプの楽しみ方や目的によっては、さらに特定のギアや用具が必要になることもあります。詳しい情報やアドバイスが欲しい場合は、具体的な質問をしてくださいね! |
Q |
ありがとう!夜のキャンプファイアにおすすめのレシピはある? |
A |
もちろん、キャンプファイアでの料理は楽しみの一つですね。以下、おすすめのレシピをいくつか紹介します: ファイアローストコーン:トウモロコシをそのまま炎にかざして焼き、塩やバターをつけて食べます。 |
例2:カスタマーサービスなどのビジネスで活用できる会話の実例です。
Q |
私の注文した商品がまだ届いていません。注文番号は12345です。 |
---|---|
A |
申し訳ございません、お手数をおかけします。注文番号12345をもとに、配送状況を確認いたします。少々お待ちください。 …数秒後… 注文番号12345に関しての配送状況を確認しました。商品は昨日発送され、明日中にはお手元に届く予定です。追跡番号はXYZ123456789です。配送業者のサイトで直接状況もご確認いただけます。 |
Q |
わかりました。ありがとう。 |
A |
いつでもお問い合わせください。他に何かご不明点やご質問があれば、教えてください。良い一日をお過ごしください! |
コード生成
プログラムのコード生成や修正が可能です。
例1:次の動作をするPythonの関数を書いてください: 1から10までの数をリストとして返す。
Q |
次の動作をするPythonの関数を書いてください: 1から10までの数をリストとして返す。 |
---|---|
A |
了解しました。以下の関数は1から10までの数をリストとして返します。 def get_numbers>(): この関数を実行すると、1から10までの数を含むリストが得られます。 |
コードの修正も可能です。
例2:
Q |
Pythonで書いたコードがエラーを出してしまって困ってるんだ。手伝ってもらえる? |
---|---|
A |
もちろん、エラーが出ているコードを教えていただけますか? |
Q |
def add(num1, num2) |
A |
コードを確認しました。defで関数を定義する際の行末にコロン(:)が欠けています。以下のように修正すれば動作するはずです。 def add(num1, num2): |
推論
推論処理はChatGPTなどのLLMにとって、難しいと一般的には言われています。
これはLLMが統計モデルとして、確率に従った選択をしており、計算に必要な計算機や計算専用のプログラムを持っていないからです。
しかしながらGPTのモデルが改良されており、以前は解答が間違っていた問題でも、正答するようになってきています。
例1:
Q |
スーパーでオレンジを21個買いました。友達に4個、弟に5個あげました。さらに追加で3個のオレンジを買って、8個食べました。残りのオレンジは何個ですか? |
---|---|
A |
計算してみましょう。
したがって、残りのオレンジは7個です。 |
例2:GPT-4
Q |
2分の1と3分の1とどちらが大きいですか? |
---|---|
A |
2分の1(1/2)と3分の1(1/3)を比較します。 1/2 = 0.5 0.5 > 0.3333… したがって、2分の1(1/2)の方が3分の1(1/3)よりも大きいです。 |
GPT-3.5
Q |
2分の1と3分の1とどちらが大きいですか? |
---|---|
A |
2分の1と3分の1を比較すると、3分の1の方が大きいです。理由は、3分の1は1の中で1/3を表し、2分の1は1の中で1/2を表すからです。したがって、3分の1は2分の1よりも大きいです。 |
GPT-4の結果は正解ですが、GPT-3.5の結果は間違っています。
新しいモデルを使うようにするか、あとで述べるようにテクニックを用いて推論を導き出すようにしましょう。
プロンプトエンジニアリングの基礎
プロンプトエンジニアリングを学ぶためには、大元であるプロンプトについて理解を深めましょう。
プロンプトの設計方針
プロンプトエンジニアリングの主要な目的は、期待通りの回答や生成物を得るためのプロンプトを効果的に設計することです。
この設計方針は、シンプルであるプロンプトから複雑なものまで、有益で正確な回答や創造的な出力を得るための方針を考慮するものです。
以下の項で挙げる、要素と効果的なポイントを踏まえてプロンプトを設計する必要があります。
プロンプトの4大要素
プロンプトは主に4つの基本的な要素から成り立ちます。
これらの要素を考慮しながらプロンプトを設計することが重要です。
4つすべての要素を必ずしも使用する必要はありませんが、これらの要素を組み合わせて使うことで、より詳細かつ正確な回答を引き出すことが可能となります。
効果的なプロンプトを作るには
プロンプトを効果的にするためには、以下を抑える必要があります。
- 命令の内容を具体的にする
- 明確化し、複雑であいまいな命令にはしない
- 質問の背景や意図を正確に伝える
- 段階的にアプローチする
- 必要であれば追加情報を提供する
- バイアスのない、中立的な質問をする
これらのポイントを考慮しながらプロンプトを設計することで、期待した情報を生成AIから得られるようになるでしょう。
企業におけるプロンプトエンジニアリングの課題
企業でもChatGPTなど生成AIの導入が広まってきました。
自社のビジネスでも、さまざまな場面で活用したいと考えている経営者や担当者の方は多いはずです。
効果的なアウトプットを得るためのプロンプト作成のノウハウが少ない
生成AIが急速に普及した結果、企業においてまだ導入が始まったばかりの場合や、未だ導入していない企業も多いでしょう。このような状況で、企業は自社のビジネスに合わせた活用方法を模索していると思われます。
多くの企業内では、生成AIの仕組みやプロンプトの作成方法を十分理解している人は少ないでしょう。
そのため、企業内でのノウハウの蓄積が十分でなく、効果的なアウトプットを得るための知識やスキルも乏しいのが現状です。
背景として、AIの活用に必要なノウハウがまだ蓄積されていない点が挙げられます。
特に、プロンプト作成に関する技術や知識の理解が浅いため、活用方法を確立するのが難しい状況にあります。
生成AIの真のポテンシャルを引き出すためには、プロンプトエンジニアリングをはじめとしたノウハウの蓄積と実践が必要です。
生成AIのポテンシャルを引き出せれば、効果的な活用が見込めるでしょう。
そして、ChatGPTを効果的に活用できれば、他企業との差別化やイノベーションの加速が可能となります。
革新的なアプローチによって、企業は優位性を確立し、成長や持続可能な経営を実現するための重要な鍵となるでしょう。
セキュリティ対策が心配
生成AI技術の進展に伴うセキュリティリスクへの懸念も増大しています。プロンプトの入力に際して、個人情報や機密情報の利用は避けるべきです。
さらに、出力内容の著作権や法的問題にも注意が必要です。企業が生成AIをビジネスで最大限に活用するためには、これらのセキュリティリスクに真摯に取り組み、適切な対策を講じることが重要です。
選択肢の一つとして、外部サービスの導入も考えられるでしょう。
新しい技術の可能性を追求する一方で、セキュリティや法的問題への対応も怠らない姿勢が求められます。
プロンプトの11個のテクニック
プロンプトエンジニアリングを体系的にまとめた解説資料として代表されるのが「プロンプトエンジニアリングガイド」です。
日本語版も公開されているこの資料から、解説している高度で効果的なテクニックを11個紹介します。
Zero-shotプロンプティング
例や事前知識をAIに提供せずに、いきなり質問するプロンプトの型です。
LLMは膨大なデータを用いてあらかじめ学習してあるため、Zero-Shotの状況でもある程度適切な回答を提供します。
Q |
二酸化炭素の化学式は何ですか? |
---|---|
A |
CO2です。 |
Few-shotプロンプティング
Zero-shotでは複雑なタスクでは不十分になってしまいます。
プロンプト内に少数の例を提供することで、新しい質問をするプロンプトの型です。
Q |
‘犬’ -> ‘動物’, ‘バラ’ -> ‘植物’。それでは、’トマト’は何ですか? |
---|---|
A |
「トマト」は「植物」です。具体的には、トマトはナス科の果実です。食文化の文脈でみると、サラダや料理に使われることから野菜として扱われることも多いですが、植物学的には果実に分類されます。 |
Q |
以下は、動物とその説明の一覧です。
ライオンに関する短い説明を書いてください。 |
A |
ライオン: たてがみを持ち、強力な捕食者で「ガオー」と鳴く動物。 |
LLMが少量のデータしか得られない状況であったり、新たなタスクを学習する必要があったりという場合に使用します。
Chain-of-Thoughtプロンプティング
中間的な推論のステップを介したもので、より複雑な推論能力を可能とします。
LLMでは難しいとされる推論処理に有効な手段です。
直接答えを求めようとすると間違えてしまう可能性が高いものでも、中間的な結果を出力させることでミスを減らせることが可能となるという考えです。
Q |
Aくんが最初に持っていたお菓子の袋は10個です。彼は友人に4個を渡し、さらに2個を自分で食べました。 Aくんは今、何個のお菓子の袋を手元に持っていますか? |
---|---|
A |
Aくんが最初に10個のお菓子の袋を持っていて、友人に4個渡し、2個食べたので、10 – 4 – 2 = 4個のお菓子の袋が残っています。 したがって、Aくんの手には現在4個のお菓子の袋が残っています。 |
Self-Consistency(自己整合性)
言語モデルへ入力されたデータをもとにして、一貫性のある回答を生成する方法です。
推論の問題を解く際に、思考過程をプロンプトに含めて、より正確な回答が生成できます。
Q |
問題:初めに子どもは5人いました。後から4人が加わり、3人が去りました。合計で子どもは何人になりましたか? 回答:スタート時に子どもは5人いたところに、4人が加わり9人になりました。その後、3人が去ったので、残りは6人の子どもがいます。 問題:飴が初めに8個ありました。空腹だったので5個を食べてしまいました。しかし、途中で3個の飴を購入しました。現在の飴の総数は何個ですか? 回答:始めに8個の飴があり、5個食べると3個になります。その後、3個購入したので、合計で飴は6個となります。 問題:猫は最初10匹いました。その後、3匹がどこかへ行ってしまい、帰り道で6匹の猫を見かけました。現在、猫は合計で何匹いるのでしょうか? 回答:猫は初めに10匹いましたが、3匹がいなくなり7匹になりました。その後、6匹が増えて合計13匹の猫がいます。 問題:クッキーがはじめに36個ありました。その後、28個を食べ、途中で駄菓子屋で49個を購入しました。クッキーは今、いくつありますか? |
---|---|
A |
回答:クッキーは最初36個あり、28個を食べた後、残りは8個でした。49個購入すると、クッキーの合計数は57個となります。 |
知識生成プロンプティング
言語モデルに知識を与える手法です。
言語モデルに質問する際に、関連した知識の提供によってよりよい回答が得られます。
Q |
質問:ゴルフでは、他のプレイヤーよりも多くのポイントを得ることが目的ですか。「はい」か「いいえ」? 知識:ゴルフの主要な目標は、各ホールを可能な限り少ないストローク数で完了することです。通常、ゴルフのラウンドは18ホールから成り立っています。1ラウンドは、標準的なゴルフコースを1周するものです。各ストロークは1点として計算され、最終的なストローク数が勝者を決める基準となります。 説明と回答: |
---|---|
A |
説明と回答:ゴルフでは、できるだけ少ないストローク数(または「ポイント」)でコースを完了することが目標です。したがって、他のプレイヤーよりも「多くの」ポイントを得ることが目的ではありません。答えは「いいえ」です。 |
Tree of Thoughts (ToT)
Tree of Thoughts(思考の木、ToT)は、言語モデルを用いて思考の流れや概念を、木構造の形で表現して整理するプロンプト作成の手法です。
情報の階層や関連性を明確にし、深い理解の促進を目的とします。
自動プロンプトエンジニア(APE)
自動での指示生成と選択のためのフレームワークである自動プロンプトエンジニアは、AI技術を活用してプロンプトを自動生成する手法です。
特定のタスクや問題に、スピーディーにプロンプトを生成でき、効率的で実用性のある効果が期待できます。
アクティブプロンプト
アクティブプロンプトは、CoTが固定された人間による注釈付きの例のセットに依存している問題を解決するため提案されたプロンプトの手法です。
リアルタイムで状況の変化やユーザーからの要求に応じて、プロンプトを動的に調整する作成手法です。
ユーザーと直接対話するタスクなどで利用価値が高いでしょう。
方向性刺激(Directional Stimulus)プロンプティング
LLMの出力を特定の方向へ導くために、プロンプトを生成する手法です。
焦点を絞って回答や生成が可能となります。
意思決定や計画立案などの特定の目標や結果を重視するタスクに有効です。
ReAct
ReAct(Reasoning + Actingの造語)とは、プロンプト生成の際にタスクの目的を明確に定義し、タスク達成のための必要な情報をプロンプトに含める手法です。
交互に「推論」と「行動」を実行することで、より高精度な計画が可能となります。
さらに外部情報を組み込むことができ、外部からの情報を「観察」として取り入れる一方、外部環境には影響せず、文脈を更新して後のタスクに活用します。
マルチモーダルCoTプロンプティング
従来のCoTにマルチモーダルな機能を持たせたものです。
マルチモーダルとは、テキスト・画像・音声など複数の異なるタイプの入力を表し、異なるタイプを組み合わせることで、豊富で詳細な回答が実現可能です。
複雑なタスクでも非常に効果的でしょう。
ChatGPTで効果的なプロンプトエンジニアリングにするための8つのコツ
プロンプトエンジニアリングは、各生成AIにおいて、少しずつテクニックは異なってきます。
多くの人に使われているChatGPTで簡単に使えるコツを紹介します(OpenAIが公開している文書を参考にしました)。
これらの基本的な考え方は、他の生成AIに使えるコツにつながるものもあるので、覚えておくと便利です。
最新モデルを使う
ChatGPTは絶え間なく進化が続いており、新しいモデルは前世代のものより高性能である可能性が高いです。
最新のモデルを使用することで、精度が向上し、予測の能力も高まります。
ChatGPTは2023年9月現在GPT-4が最新バージョンです。より良い結果を得るためには、最新のモデルを使用しましょう。
命令をプロンプトの先頭に置き、###または”””で命令と文脈を区切る
命令を先頭に置くことにより、AIは優先的に解釈しやすくなります。
また、区切りや意味を伝えるためには、マークダウン方式やバックティックを利用しましょう。
命令と文脈を明確に区切ることによって、AIがどこに注意を払うべきか正確に把握できます。
ChatGPTのプロンプトのフレームワークの一つに、noteのCXOの深津貴之氏によって考案された「深津式・プロンプトシステム」があります。
役割や条件を指定し、ChatGPTが理解しやすいようなプロンプトにする方法です。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
以下のテキストを要約してください。 |
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効果的なプロンプト例 |
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Q |
以下のテキストを要約し、もっとも重要なポイントを箇条書きにしてください。 テキスト: “”” |
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希望する文脈や結果、長さ、形式、スタイルなどを具体的で説明的、かつ可能な限り詳細に記述する
プロンプトを明確にすることがChatGPTの出力品質の向上になります。
「文脈」「結果の形式」「回答の長さ」「その他の要件」といった点を具体的に指定すると、ChatGPTは期待に沿った返答をしやすくなります。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
春についての詩を書いてください。 |
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効果的なプロンプト例 |
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Q |
春について短くて感動的な詩を書いてください。 |
---|
例をいくつかを示して、望ましい出力形式を明示する
例をはじめにいくつか示します。
また具体的に出力の形式の要件を示すことで、ChatGPTにとって明確なガイドラインとなります。
生成AIに期待する出力の質を向上させるための一つの有効な手段です。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
おすすめの映画を教えてください。 |
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効果的なプロンプト例 |
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Q |
おすすめの映画を教えてください。ジャンルはアクションで、好きな映画は「スパイダーマン」「アイアンマン」「バットマン」。リスト形式にして、監督と概要をまとめてください。 |
---|
Zero-shotプロンプティングからスタートし、次にFew-shotプロンプティングを試し、どちらもうまくいかない場合はファインチューニングを行う
事前知識や例を示さずにプロンプトから指示するZero-shotプロンプティングから始めて、次にいくつかの例をあらかじめ提供するFew-shotプロンプティングを実行します。
どちらもうまくいかなかったらファインチューニングをおこないます。
ファインチューニングは、事前学習された機械学習モデルの性能を特定のタスクに適応させるための技術です。
例えば、ChatGPTの場合、特定の言語翻訳タスクを最適化したいとき、関連する日本語と英語のデータを追加して再学習させることで、そのタスクの精度を高めることができます。
少ないデータで高い精度を達成できること、学習時間の短縮、そして過学習のリスクを減少させることです。
効果的に活用することで、ChatGPTのような生成AIのパフォーマンスを大幅に向上させることが可能となります。
あいまいで不明確な記述を減らす
ChatGPTなどの生成AIへのプロンプトは明確な指示が極めて重要です。
ふわっとした、あいまいな、不明確な表現をすることは意図しない出力となる可能性が高いでしょう。
具体的かつ詳細な情報をAIに提供することで、期待される動作を実行します。
簡潔で明確なプロンプトを与えることで、期待通りの結果が得られるでしょう。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
このテキストをかなり短く簡略してください テキスト: |
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効果的なプロンプト例 |
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Q |
このテキストを30文字から50文字程度の文章にしてください テキスト: |
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何をすべきでないかを言う代わりに、何をすべきかを言う
ChatGPTへのプロンプトは肯定的な形での記述が推奨されています。
なぜなら否定形での要求よりも、肯定的に具体的な行動や結果を示したほうが効果的に動作するからです。
AIのモデルはタスクの目的を直感的に理解し、より適切な結果を返すことが可能となります。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
問い合わせの対応中にユーザー名やパスワードは質問しないでください |
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効果的なプロンプト例 |
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Q |
問い合わせ対応中にユーザー名やパスワードを質問することは控えて、ヘルプ記事の参照に誘導してください |
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コード生成に特化のモデルを特定パターンに誘導するため「リーディングワード(先行する単語)」を使う
ChatGPTでプログラミングのコード生成をするときの方法です。
AIを特定のプログラミングのパターンやスタイルに誘導する手段として利用されます。
リーディングワードを先頭に配置することで、特定のコードの構造や文法に沿った出力をしやすくなります。
効果が低いプロンプト例 |
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Q |
マイルをキロメートルに変換するpythonプログラムを記述してください。 |
---|
効果的なプロンプト例 |
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Q |
マイルをキロメートルに変換するpythonプログラムを記述してください。 import |
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効果的なプロンプトエンジニアリングを学ぶためには
効果的なプロンプトエンジニアリングを学ぶためには、インターネットで公開されているガイドや教科書を参考にする、ネット情報を取得する、サービスを利用する、eラーニングや研修での人材育成などの方法があります。
プロンプトエンジニアリングのガイドと教科書
ChatGPTや画像生成AIの発展と普及に伴い、ネット上の情報は日々増加しています。
しかし、情報の質とその正確性にばらつきがあるため、信頼性のある教材の選定が重要です。
プロンプトエンジニアリングのガイドや教科書を参照することで、基本的な理解を深めることができるでしょう。
これらの資料には、専門家や研究者によって確認された知識や技術がまとめられています。
ただ、単に教材を読むだけでは不十分です。
効果的な学びのためには、実際にプロンプトエンジニアリングを試みる実践的な経験が不可欠です。
情報を適切にフィルタリングし、実際の操作と組み合わせることで、理論と実践のバランスを取りながらスキルを習得することが可能となります。
サポートサービスの利用
ウェブ上にはプロンプトエンジニアリングのノウハウやガイドが多数掲載されていますが、テクノロジーの進化やAIのアップデートに伴い、一度学んだノウハウが常に通用するわけではありません。
そのため、自らの知識とスキルを継続的に更新し、最新の情報や技術に追従する必要があります。
また、サポートサービスの利用や専門家との連携は、特定の課題や疑問に対する迅速な回答や解決策を得る上で有効です。
特に複雑な問題や未知の課題に直面した場合、専門家の知見や経験を活用することで、時間の節約や効率的な学びを実現することができるでしょう。
eラーニングや研修での人材育成
継続的な学びと実践は、効果的なプロンプトエンジニアリングを学ぶためには欠かせません。
近年、eラーニングや研修を利用した人材育成が注目されています。
プロンプトエンジニアリングの基礎から応用までを体系的に学ぶeラーニングは、自分のペースで学びを進めることができ、場所を選ばずにアクセスする利点があります。
研修を通じて、経験豊富なトレーナーや講師からの指導を受けることで、実業務の問題点や課題を共有し、解決策を模索することが可能です。
さらに、研修中の他の参加者との交流やグループワークを通じて、異なる視点やアイディアを得ることができます。
これらの学びの方法を組み合わせることで、効果的なプロンプトエンジニアリングのスキルやノウハウを習得し、実業務に応用することができるでしょう。
まとめ
ChatGPTを皮切りに、大手IT企業が次々と新しい言語モデルを用いたサービスを登場させています。
テキストだけでなく画像や動画など幅広い分野で生成AIが発展を続けていくでしょう。
そのなかでプロンプトエンジニアリングの重要性は急速に増していると言えます。
本記事を参考に、よりよいプロンプト作りを目指してください。
自力では難しいとお考えでしたら、外部のサービスの利用もおすすめします。