DXコラム > セミナーレポート > 人事責任者×採用担当で徹底討論!人事業務の効率化に本当に使えたChatGPTのプロンプト20選

人事責任者×採用担当で徹底討論!人事業務の効率化に本当に使えたChatGPTのプロンプト20選

このセミナーは「生成AIをまだ使っていない」「生成AIと対話する前に、どのような場面で使えるのか分からない」と悩んでいる方々を対象に、生成AIの使い方、プロンプトの事例をお伝えする。エクサウィザーズの人事部門では日々の業務に生成AIを活用している。その経験を基に、採用や人事企画、労務、総務のそれぞれどのような場面で生成AIが使えるか、具体的にどのようなプロンプトを使っているか、20のパターンを説明する。

 

半田 頼敬
株式会社エクサウィザーズ
執行役員人事責任者

半田 頼敬

慶應義塾大学卒業後、2010年ベネッセコーポレーションに入社。マーケティングを担当後、2015年リクルートホールディングスに入社。リクルートの中途採用やIndeed, Inc .の国内外のTech系人材の新卒・中途採用プロジェクトに従事。2018年にエクサウィザーズに一人目専任人事として参画し、組織拡大をリード。2021年のIPOを経て、2022年4 月より執行役員に就任。現在は大企業のDX推進を目的としたTech組織のコンサルティングも担当している。Linkedinが選出する"日本で最も勢いのあるスタートアップランキング“、TOP STARTUPS2019・2020で2年連続1位、2019年にはLinkedin Japanが選出する人事でMVPを受賞。自身でも生成Alを積極的に活用し、そこから得た知見やノウハウを、講演やメディア等を通じて発信している。

遠藤 魁
株式会社エクサウィザーズ
採用担当

遠藤 魁

早稲田大学卒業後、2018年リクルートに入社。新卒採用を担当後、研究者支援をしているスタートアップLabBase(旧:POL)に入社し、全社の採用責任者・人事マネージャーとして組織拡大をリード。その後エクサウィザーズに入社し、Biz Dev(事業開発)、エンジニア、海外採用など全ポジションの新卒採用を推進中。自社採用でもAlを積極的に活用し、Alを活用した採用プロセスの改善、新規施策の企画~実行までを行なっている。

生成AIに関する活用アンケートの概要

 

はじめに半田頼敬から、生成AIの利用実態に関するアンケート結果についての説明があった。

「ポイントは『変化』です」(半田)、さらに「『生成AIを使うか否か』から『どう活用するか』との段階に入ったということでしょう」(半田)がアンケート調査を通して分かった生成AIをめぐる今の状況だ。

エクサウィザーズは「生成AIに関する活用アンケート」を今年8月に実施し、ビジネスパーソンに「生成AIをどれくらい使っていますか」を尋ねた。4カ月前にも同じ趣旨のアンケートを実施しており、2回の結果を比較すると活用レベルが大きく向上していた。「生成AI活用レベル」を5段階に分けて尋ねたところ、「レベル4 時々使用」がマジョリティーになり、「『レベル5 日常的に使用』との回答が20.3%まで増えています」(半田)。

 

 

 

回答を「役職別」に見ると、どの役職でも生成AIが広く使われており、経営陣でも過半数が使っている。

 

 

生成AIの使い道にはいろいろあるが、今は主に汎用的な用途での活用がアンケート回答の上位を占めている。

 

 

一番多い使い方が、人事部門に限ったものではないが、「文書生成」で、その次に「アイデア出し」「調査」「要約」だ。

 

 

活用のレベルが上がると、それに応じて活用の幅が広がること、さらに検索から生成への変化も起きていることが分かった。「生成AIは、Google検索の延長線上で使うのではなく、『生成する』という使い方にシフトする例が見られます」(半田)。

 

 

特に生成AIの使用レベルが「レベル5 日常的に使用」の会社では、役職に応じた使い分けが進んでいる。

「われわれはGoogle検索に慣れすぎてしまっている」(半田)ことが生成AIを使う上での1つの課題だ。

一般的な企画立案や資料作成のプロセスの一部である「既存の情報を見つけ出す」「知識を見つけ出す」という情報収集でGoogle検索を使い慣れているため、生成AIが出てきてもGoogle検索の延長線上で生成AIを情報収集の手段だけに使っている。それだけでは「もったいない」(半田)のだ。

実際に生成AIを使いこなして業務でインパクトを出すには、「既存の情報と知識をベースにしながら、新しい情報を作り出す『生成』の意味での使い方ができるとよい」(半田)との考えが広がってきている。

 

 

実際に生成AIの活用するシーンを4分類すると「たたき台の作成」と「調査・要約」「壁打ち相手」、さらにエンジニアや自動化ツールを使ったりする開発者向けに「プログラム作成」だ。人事部門は基本的に「プログラム作成」以外の3つが関係する。「たたき台の作成」と「壁打ち相手」は、検討や議論のたたき台を作ることや、ミーティングを効率化する資料を用意することに「結構使えるとの実感」(半田)を持っている。

 

 

アンケート調査の結果として強調したいのは次の3点だ。1つ目は、生成AIの活用フェーズが2回のアンケートの間隔である4カ月間で大きく変わったこと。2つ目は、生成AIを使うか否かではなく、使うことが前提でどのように使うかを考える段階に入ったこと。3点目は、生成AIを単に情報を検索するだけではなく新たな情報を作り出すことに使えるかが生成AIを使う上での今後の分かれ道であること。

人事業務でのプロンプト20選

 

 

このセミナーは「人事業務の効率化に本当に使えたChatGPTプロンプト20選」とのタイトルだ。300人弱の参加申し込みがあり、「人事業務にChatGPTを使いたい」とのニーズがかなりある。エクサウィザーズの人事部門がChatGPTを試行錯誤しながら使って見つけたプロンプトの中から20を厳選して共有する。

 

 

図に示したように、採用や人事企画、労務、総務のそれぞれどのような場面で生成AIが使えるか、「職種理解」の1場面だけプロンプト4つ、「集客施策アイデア出し」や「テーマ検討」など16の場面はそれぞれプロンプト1つを取り上げ、合計20のプロンプトを説明する。

未経験の職種を理解【プロンプト1】

 

 

「採用:職種理解」で取り上げた例は中途採用の担当者が経験する業務だ。

例えば経理社員を中途採用する場合、人事担当者がその業務を担当したことがなければ具体的な業務イメージが浮かばないだろう。それでも求人票を書いたり、それを転職エージェントに説明したり、スカウト文面を作るなどの業務をこなさなくてはならない。経理業務に限らず、中途採用するほかの職種でも事情は同じだ。

そこで「候補者が抱えているインサイトはどのようなものがあるのか」「どのような理由で転職するのか」などを生成AIと対話してみると、例えば20代中盤の経理の担当者が転職を検討する理由などが分かる。さらに「生成AIの回答の中で疑問に感じたところを生成AIに重ねて尋ねると、その回答を返してくれる」(半田)との使い方もできる。

職種理解を深掘り【プロンプト2】

 

 

「情報を深掘りするためには『パターンで出してください』との指示が有効です」(半田)。生成AIを使って「この人が転職するとき、どのようなキャリアパスがあるか」を調べるときに、「そのキャリアパスをパターンで出してください」と指示すると、図に示したように深掘りするためのヒントがたくさん出てくる。

さらに実際にスカウトで送ってみようとなったときに、どのような部分に注視しながら、経歴やスカウト文面の中に入れ込ませることが必要なのかなどを生成AIと対話すると、図のようにいろいろな情報が得られる。

職種理解で相談準備【プロンプトNO.3】

 

 

転職者が担当する業務の概要を理解するために、生成AIに「経理の転職者が担当する業務を10項目挙げて」と指示すると、該当する業務を出してくる。これをもとに採用候補者との面談やエージェントへの説明で相手から尋ねられそうなことの準備ができる。

図の例に挙げているのは、大企業からスタートアップへの初めての転職を検討している人からの質問とそれに対する回答案だ。生成AIが出してきた質問、回答案について自分の会社で当てはまるのか、当てはまらないのかを検討し準備してから経理部門の担当者に相談に行くと、議論の質がかなり向上する。

エンジニア採用での活用事例【プロンプトNO.4】

 

 

エンジニア採用の場面でも生成AIはかなり使える。エンジニアが当たり前に使っている言葉でも業務の経験がないとイメージできないものがある。生成AIを使うとそのような言葉でも必要最小限な知識を短時間で得ることができる。

知識の習得でも生成AIを使えば、Google検索以上のことができる。例えば「類似しているポジションとの違いを教えてほしい」、これまでの経理採用の例でも挙げたが、「キャリアパスを教えてほしい」、「このポジションの優秀さの定義は何だろうか」などを生成AIに箇条書きで出力させることができる。現場担当者と議論するポイントや尋ねることのたたき台として使える。

新卒採用【プロンプトNO.5】

 

 

ここまでは中途採用の場面を取り上げた。次に新卒採用の場面でどのようにして生成AIを使っているかを説明する。

新卒採用の場合、今の時期にどのような採用活動が行われているかなどをリサーチすることが重要だ。エンジニアの採用活動を想定すると、他社はどのような施策をやっているのか、そのイベントの形式はオフラインなのかオンラインなのか、イベントにどれくらいの予算をかけているのか。生成AIを使うとその洗い出しができる。

「このようなことに生成AIを使う場合に肝心なことは、制約条件や、アイデアを出すためのステップのようなことまできちんと指示を出すことです」(遠藤)。制約条件は、例えば時期やターゲット、予算、期間など。さらに「回答のそれぞれの項目について評価もしてください」との指示も出すと、図に示したプロンプトのように10項目の回答が返ってくる。他社がどのようなことをやっているかも回答してくれる。

生成AIがアイデアを出した後に、そのアイデアを生成AI自身に評価させることは、「みなさんはそれほどやっていないと思います。これはかなりいろいろな場面で使えるTIPSです」(半田)。

ロールプレー【プロンプトNO.6】

 

 

生成AIの使い方にロールプレイもある。

新卒採用か中途採用に限らず、まだ人事担当者が採用したことのない職種を採用するときや、スタートアップやベンチャー企業であれば「社内の1人目ポジション」を採用するときは、人事担当者としてはクロージングや採用候補者へのヒアリングプロセスなどのイメージを持ちたいだろう。

【プロンプトNO.6】

 

 

「人事担当者にとって生成AIは事前の壁打ち相手になるケースもあります」(遠藤)。先輩社員がいないのでロールプレーイングができないケースで生成AIのプロンプトが使える。ヒアリング内容やプロセスなどを可視化した後に、生成AIがヒアリングの進め方や質問案を出してくるので、それに対して候補者視点で自分で回答していくと、図に示したようにアトラクト情報などを伝えてくれる。

図はまだ「開発中の画面イメージ」であるが、「ロールプレイの発展形」(半田)の例で、営業職種のためのロールプレーイングとしてエクサウィザーズが金融系法人に提供を計画しているサービスの画面だ。

営業のロールプレーイングのやり方は、採用の場面でも使えるところがあり、その発展形として人事分野の採用面接を想定したロールプレイにも使えると予想される。

自社理解【プロンプトNO.7】

 

 

自社や他社のニュースに自分なりの解釈を加えて解説することは、採用担当者に求められる能力の1つだろう。図で例に挙げたのはエクサウィザーズのプレスリリースで、「JAXAとAIロボットシステムを開発」という一見壮大な内容だ。何が具体的にすごいかを「自分の言葉で説明できますか」と尋ねられると、「専門知識が足りないと、よくわからないこともある」(半田)。

ここで生成AIを使うことを考える。プレスリリースの要約、意味が分からない言葉や分かりにくい言葉の単語リストの作成を指示できる。さらに「これからどのような社会に変わっていくのか、変化を予測してほしい」と生成AIへ質問を1つ加えることで、プレスリリースの単なる要約や転載だけの採用広報資料を作るのではなく、情報の付加価値を高めることができる。

プレスリリースの情報は、「プレスリリースのURLを生成AIに読み込ませるプラグインを使えば、生成AIが使えるようになります」(半田)。

採用広報記事作成【プロンプトNO.8】

 

 

8個めのプロンプトは採用広報で使う記事の作成に生成AIを使うものだ。「このようなコンテンツ作成の工数削減や、大量のコンテンツを作る仕組みにも生成AIは活用できます」(遠藤)。

「私の前職での経験ですが、採用広報では限られたリソースの中で数多くの記事を作成する必要があり、一つ一つの記事を作ることに多くの時間を使っていました」(遠藤)。

では、これを生成AIで処理するとどうなるだろうか。「約30分のインタビューのテキストデータを生成AIに読み込ませ、一定の制約条件を付けて生成AIに5000字程度の記事を作らせると、わずか1分ほどで済んでしまいました」(遠藤)。記事内容を要約し、タイトル作成も生成AIで可能であった。

採用広報でコンテンツ作成に人や予算を潤沢に用意できる企業は少ないだろう。最近は、デジタルトランスフォーメーションを進める企業が従来と違う採用対象者にその企業のこれまでとは異なった内容をアピールする場面がかなりある。採用対象者に企業の考えを理解してもらうために大量のコンテンツが必要だ。人や予算を多く確保することではなく、「生成AIの技術を使うことによって1人の採用担当者でもかなりの量のコンテンツを用意することができるようになる」(半田)。

炎上リスクチェック【プロンプトNO.9】

 

 

採用広報用のコンテンツを公開する前に広報部門のチェックやコンプライアンスチェックの工程がある。採用広報の炎上リスクやコンプライアンスのチェックに生成AIを使うことができる。「生成AIに一定のルールなどをインプットするだけで、炎上リスクや表現のチェック、リスクを避ける表現の代替案を出すことができます」(遠藤)。

大量のコンテンツを作り続けると、そのチェックのために広報担当者に負担がかかる。生成AIを使うことで、チェックの工程を広報に頼ることなく採用部門の中で完結させることができる。採用部門以外の現場の工数をあまり使わずに、コンテンツを大量生産できる。

採用担当者は社内のいろいろな職種、ステークホルダーと仕事をする機会が多くある。資料や準備などがある程度のクオリティーになってからでないと相手の方に手間を取らせて「迷惑をかけてしまう」と考えて相談や資料を渡すためらうことで、時間を必要以上に使ってしまうこともある。生成AIを使うと、「100点とは言いませんが80点か70点くらいまで準備をしてから、相手の方と議論ができることを実感しています」(半田)。

生成AIの出力の中で「表形式の出力が好きです。分かりやすくてお薦めです」(半田)。

イベント登壇者向けTIPS【プロンプトNO.10】

 

 

TIPS系の話でも生成AIを使うことができる。

人事の採用に関係した業務を現場のマネージャーにお願いするとき、その業務に関するマニュアルを作るかどうか迷うシーンがある。それと同じように、わざわざマニュアルを作るほどではないが、完全に現場に任せることはためらう業務があるだろう。

このときに生成AIを使うと、必要な内容について漏れなくダブりなく一般的な注意事項をまとめたマニュアルのようなものを作ることができる。TIPSのシェアができる。

図に示したのは、採用のオンラインイベントに登壇してもらう人向けに、生成AIで作ったマニュアルの例だ。慣れていない人は登壇すると緊張したり、まれにマイクトラブルが起きてしまうことがある。生成AIを使うと、わずか数分でこのようなマニュアルを作ることができる。このチェックリストを事前に登壇者に渡すことで、大きなトラブルを防ぐことができる。

生成AIを使うことで、ほんの少しの時間をかけるだけで、プラスアルファの仕事ができる。「工数削減とアウトカムの最大化という意味で生産性向上に効いてくると思います」(半田)。

面接準備【プロンプトNO.11】

 

 

次は面接の話だ。「面接の事前準備の精査に生成AIが使える」(半田)。

採用に当たって現場から「人事ではこの点を詳しく見てほしい」と求められることがあるだろう。「これまでこのようなことを採用候補者に尋ねて、このようなことは分かっているが、この点だけはまだ分からない」とのポイントを候補者に尋ねるときに、情報を検索しても質問を用意することはできない。人事の面接官が面接の回数を重ねてこのような場面に慣れている場合は、それなりに準備することができるが、業務内容に詳しくない職種の場合や、自分の知識では解像度が高くはない職種のコンピテンシーを判断する場合には、何を尋ねたらよいか分からないことがあるだろう。

このようなときに生成AIは使える。個人情報は入れずに、これまでの経歴や候補者の概要、これまでの面接評価を生成AIに入力し、「面接でこのコンピテンシーを確認したい」と生成AIに尋ねると、質問案や回答に対する判断基準などのたたき台を作ることができる。

テーマ検討【プロンプトNO.12】

 

 

次は労務でどのように生成AIを使うかとの話だ。経営層からの抽象的な問いへの対応や、労務リーダーの業務内容を向上させることにも生成AIは使える。

「労務では1年間にどのような施策をやるか」「その施策はどのようなゴールを目指すか」「それに関連した労働法はどのようなものがあるのか」などを一つ一つ調べると時間がかかる。関係者とのミーティングを良いものにするためには、慎重な事前の準備が必要だ。

「それらをいったん停止して、『生成AIに尋ねてみるか』と考えを切り替えることがポイントだと思います」(半田)。

図に挙げたプロンプトを使って、勤務先企業の概要やキーワードになりそうな言葉を生成AIに入力する。さらに優先度、起こりうるリスク、リスクが起きたときのアクション、それに関連する法律を生成AIに出力してもらう。その出力されたテキストをベースにしてクイックに上司に「このような形でまとめています」「ほかに抜けている観点はありますか」とワンストローク入れるだけで、ミーティングの質が上がり、たたき台をベースに議論を深めることができる。資料作成で手戻りが少なくなることも期待できる。

労災認定【プロンプトNO.13】

 

 

次も労務系の例だ。

労災認定の判断は労災が発生した状況によって異なることがあるので、社会保険労務士や法務、専門家に相談する必要がある。「何を尋ねて確認しなくてはいけないのか」について相談前に生成AIを使えば、必要な項目に見当を付けることができる。その結果、専門家とのやり取りの回数を減らせることが期待でき、チーム全体と自分自身の生産性が上がる。「相手の時間も奪わない」(半田)という意味でも生産性が向上する。

FAQの作成【プロンプトNO.14】

 

 

人事企画に生成AIを活用する例としてFAQ作成を説明する。

人事に多くある話として、交通費精算の方法のように多くの社員から尋ねられる質問がある。それに対応するために社内FAQを作ることはいろいろな会社で取り組んでいるだろう。ただ、FAQを作る際に人事担当者にとってそもそもの「よくある質問」を用意することはかなりの手間だろう。

「生成AIに『よくある質問のリストを作る』、『それに対する答えも作る』と指示することができます」(半田)。出てきた質問リストと回答を検討し、「これはFAQに必要ない」「これは当社の場合と違う」などを判断することで、これまでは数時間もかかっていたFAQのページを作る作業がすぐに済んでしまう。生成AIに「質問を100個出してください」「回答も100個出してください」と指示することが可能だ。

 

 

PDFを読み込ませる

次に説明するのは応用編だ。

生成AIが回答を生成する基はゼネラルな話だけではない。「生成AIに会社資料のPDFや採用のWebページを参照して答えるように指示」(半田)すれば、回答内容の質を保つことができる。図はエクサウィザーズの社内サービスで、PDFを読み込ませて即席のFAQを作ることが技術的には可能になっている。

 

 

人事以外に法務や経理でも煩雑なルールの確認に生成AIは使える。例えば、個人情報保護法の規定を生成AIに読み込ませておき、必要なときに生成AIベースで調べることができる。会計基準も、会社規定の内容は何となく分かっていても実際に参照する部分がどこにあるのか分からないときは、その確認に生成AIが使える。

説明会の事前準備【プロンプトNO.15】

 

 

人事企画の業務に制度説明がある。例えば新しい人事制度を導入する場合、従業員向け説明会を準備するだろう。その事前準備の中に「どのような質問が出るか」「それに対してどのように回答するか」という想定問答集の用意がある。ただ、社内制度は慎重に検討され、説明会開催のぎりぎりまで制度が決まらないことがあり、想定問答集を準備する余裕がなかなか取りにくい。

そこで質問と答えの準備に生成AIを使うことを考える。「説明で盲点になっている観点はないだろうか」などを生成AIに尋ねると、「抜けていた観点などを生成AIが気付いてくれることがあります」(半田)。これまでのやり方は、新制度の担当者が気付かない点、盲点となっていることを人事のほかの人からのフィードバックによって見つけていた。ここを生成AIで代替できる。

また、生成AIに新制度説明会の資料のPDFファイルを読み込ませ、それを基に説明会の質問と答えを作成してもらうこともできる。このように生成AIを使うと、説明会の事前準備の工数をかなり減らせる。

業務引き継ぎ【プロンプトNO.16】

 

 

次は業務を引き継ぐ場合の活用例だ。「自分が気付いていない観点の洗い出しに生成AIが使えます」(半田)。

未経験の業務を前任者から引き継ぐ場合、まったく準備をせずに引き継ぎミーティングに参加してしまい、その後実際に業務を始めると分からないことや疑問点がいろいろと出てくることが普通だ。それを避けるために、引き継ぎの前に生成AIに「引き継ぐ業務のポイントはどこにあるのか」「業務がうまくいかない場合の落とし穴はどこにあるのか」などを尋ねておく。

先回りして問題点を知っておくだけで、引き継ぎミーティングで「この観点はどうなのですか」「この点はこれまでどのように検討していましたか」などと確認できる。引き継いだ後に前任者の説明の手戻りを減らすことができる。

人事企画、現場アドバイス【プロンプトNO.17】

 

 

この図の話はTIPSを生成AIで作る使い方の1つだ。

人事が現場のマネージャーにアドバイスをするシーンを想定しよう。人事評価のフィードバックの時期を前にマネージャーから、「人事評価が厳しい部下にどのようにフィードバックしたらよいのか」と尋ねられても、「では事前にロールプレーイングをやってみましょう」と全てのマネージャーに対応できるわけではない。人事評価フィードバックの一般的な注意点やどのような姿勢で部下に向かい合ったらよいのかなどのアドバイスが必要だ。上司に相談する前に「まず生成AIに尋ねることができます」(半田)。

人事企画、オンボーディング【プロンプトNO.18】

 

 

この図はオンボーディング系の話で、これも「自分の気づかない点に気付くために生成AIを使う」(半田)ものだ。

会社で業務に慣れてくると「新入社員は何を知っていて、何を知らないのだろう」が分からなくなり、人事が新入社員にとって良い説明ができなくなることが起きる。「この気づかない点を防ぐために生成AIを使います」(半田)。

新入社員に説明するポイント、それを聞いた新入社員がどのような状態になればよいのかなどを生成AIにあらかじめ尋ねておき、その回答をベースに資料を作る。その過程で不足していることに気付いたことを資料に加えるというやり方がある。

アンケートの報告【プロンプトNO.19】

 

 

次は要約系の使い方で、イベントなどのレポート作成に生成AIが使える。

イベントのレポートでは、イベント開催後の全社アンケートや定性アンケートの分析、報告の業務があるだろう。例えば自由回答のテキストを生成AIに読み込ませて、「自由記述を要約してください」「8割の意見を吸い上げてください」、さらには「ポジティブな意見をまとめてください」「ネガティブな意見をまとめてください」と指示できる。レポートに収録する定性アンケートのまとめの作業が「30分1回で終わる」(半田)こともある。生成AIはこのような使い方ができる。

データ分析補助【プロンプトNO.20】

 

 

この説明は応用編だ。生成AIを使うと、ほかの部署に尋ねることなく採用担当の中で仕事が完結できる。さらに「ほかの部署を巻き込むときに依頼の質が上がるという利点」(半田)がある。

採用のレポートを作ることや「コードを書いてください」ということはコードを生成することだ。エンジニアは「GitHub Copilot」などによってコードを書くところで生成AIをかなり使っている。人事でもスプレッドシートで関数を組んで分析することがある。

そのようなデータ分析の前処理として、「そもそも分析手法としてどのようなものがあるのか」「このデータを整備するときの観点は何だろう」などの疑問を専門家や社内の別部署のデータサイエンティストに尋ねるのは少し気が引けるだろう。これらのことを生成AIに尋ねると回答が返ってくる。

「たたき台の作成」と「壁打ち」で生成AIがかなり使える

 

 

ここまでエクサウィザーズの人事部門で生成AIを活用している経験に基づいてプロンプト20選を説明してきた。「図の上部分の『たたき台の作成』と『壁打ち』で生成AIがかなり使えるという感覚を私は持っています」(半田)。

「思っていたよりも使える」をゴールに

最後に半田からの総括がおこなわれた。

活用事例の紹介を通して、「生成AIは使えない」という印象をもつ方に「思っていたよりも使えるかもしれない」と認識を改めていただくことをゴールとした。今回共有したプロンプトをベースにしながら、「自分だったらこんな形で対話するな」というようなきっかけにしていただけるとよいとして、イベントを締めくくった。