【AI経営セミナーレポート|前編】 AI企業のトップによる、AIドリブン経営戦略とAIとの向き合い方
2026年2月13日、名古屋のイノベーション拠点「STATION Ai」にて、「AI経営セミナー in 名古屋 ~AI実践企業が語る経営戦略とAI人材育成~」(以下、本セミナー)が開催されました。
AI活用はいまや業務効率化の枠を超え、企業の競争力を左右する重要な経営課題となっています。
『AIを経営戦略に組み込み、どうやってAI活用を現場で推進すべきか』
本セミナーではこの問いに迫るべく、第1部に株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 CEOの春田真が登壇し、AIを経営にどう活かすかを様々な視点で講演。続く第2部では、東海エリアを代表する企業である豊田合成株式会社、アイホン株式会社をゲストに迎え、生成AI導入の取り組みと活用定着への道のりを語っていただきました。
参加者満足度95%以上、東海エリア企業の経営者や役員を中心に満員御礼となる大盛況のイベントの様子を、前編・後編でご紹介します。
※本セミナーは、SMBC日興証券株式会社と共催、STATION Ai株式会社の協力により、東海エリアにおける企業の競争力強化とAI実装の加速を目的とし開催されました。
会場は満員御礼。NHKや東海テレビなどからのTV取材も。
オープニング:AIは脅威ではなく、使いこなすべき道具である
開会に先立ち、本セミナーの共催であるSMBC日興証券株式会社 執行役員 名古屋駐在の大木秀悦氏からの挨拶でスタート。
大木氏は、急速に進化するAIを前に「いよいよ自分の能力が追い抜かれる時代が来たと実感している」と、一人のビジネスパーソンとしての本音をユーモアを交えて語りました。そのうえで、「AIは使いこなしてなんぼ」と力強い言葉を添え、「本セミナーが皆様のお仕事の中で少しでもお役に立てれば幸いです」と挨拶。これから始まる熱い議論の幕開けを告げました。
SMBC日興証券株式会社 執行役員 大木氏による挨拶の様子
【対談】第1部:AI企業のトップが語る、企業が取り組むべきAIとの向き合い方、AI経営戦略とは
⚫︎ 登壇者
春田 真 (株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長CEO)
粟生 万琴 氏(株式会社レオ 代表取締役/ 豊田合成 社外取締役 / モデレーター)
第1部では、東証グロース市場に上場し、国内2,000社以上の企業支援でAI実装を推進するエクサウィザーズ代表・春田が登壇。名古屋のスタートアップシーンを牽引する粟生氏がモデレーターを務め、不確実な時代に経営者が向き合うべきAIの本質とどのように戦略に組み込み組織を変革していくのかについて、わかりやすく紐解きました。
(左)株式会社レオ 代表取締役 粟生氏、(右)エクサウィザーズ 代表取締役社長CEO 春田
共に変化を楽しみ続ける2人は10年来の知己
経営者に求められる心構え:誰よりも考え抜かないと新しいものは生まれない
セッションの冒頭、バブル崩壊直後の銀行員時代やDeNA黎明期といった冬の時代の経験を振り返り、現在のAI活用にも通じる経営のあり方を語りました。DeNA取締役会長や横浜DeNAベイスターズ初代オーナーなど、幾度もの変革期を乗り越えてきた春田ならではの視点が光る内容でした。
粟生氏:まずは自己紹介とキャリアの原点についてお願いしてよろしいでしょうか? 春田さんと私が出会ったのは10年ほど前のシリコンバレーでしたが、改めてその前のキャリアから伺えればと思います。
春田:私は1992年に住友銀行に入行しました。バブル崩壊直後で、最初の3年間、特に1年目の冬は、もし昔に戻れるとしても二度と戻りたくないと思うほど大変な環境でしたね。毎日辞めようと思っていましたが、そこでお金の怖さや仕事の厳しさを味わったことが、社会人としての基礎体力になったのは間違いありません。 その後、銀行内の新規事業として証券子会社の立ち上げなどに携わり、インターネットの台頭とともにDeNAへ移りました。DeNAでは15年半、常に新しいものにチャレンジし続けてきました。
粟生氏:転機みたいなところが大きくあったのかなと思うんですけども、やっぱりきっかけはテクノロジーの進化というか潮流みたいなものを肌で感じてらっしゃったんですか?
春田:95年に銀行で新規事業に携わった時、ふとした瞬間に「ある事業について、俺より考えている人は絶対にいないな」と思ったんです。そうなると、役員であろうと偉い人であろうと、堂々と議論ができるようになります。 これは現代のビジネスでも同じです。会社の中で新しい領域をやる時、それを経験している人なんてほぼいない。だからこそ、担当者は「部長や役員よりも、僕の方が絶対考えている」と思えるまで考え抜かなければならない。それじゃないと新しいものは生まれないと思います。
時折、春田らしいユーモアを交え、AI経営の本質を鋭く語る講演に
粟生氏:でもこれ、新規事業のヒントになりますよね。任された領域を徹底的に、誰よりも考える。DeNAの方々が皆さん口を揃えておっしゃるのが、「もうとことん考えて、とことんやって、とことん失敗した。とにかく修行した」と。春田さんもまさにそのお一人ですもんね。
春田:そうですね。DeNAの初期は本当にいつ潰れてもおかしくないくらい資金繰りも大変でした。でも、失敗に対してマイナスの評価はありませんでした。結果はタイミングや環境といった外部要因に依る部分も大きい。ですが、どこまで考え抜いたかというプロセスは自分たちでコントロールできるし、周りも評価できます。結果が出なくても「このチームはめちゃめちゃ頑張っていたよね」となれば、次のチャンスが回ってくる。そうやって挑戦を回していくのが経営の役割だと思います。
粟生氏:その「とことん考える」というスタンスは、あの横浜DeNAベイスターズの買収と再建の時も同じだったのでしょうか。当時、IT企業が球団を持つというのは、業界でもかなり驚きのトピックスでしたよね。
春田:球団経営も好き嫌いではなく、「球団を持つことの意味」を会社として考え抜いた上で買収しました。興行収益の構造を紐解き、ネットの世界で培った「潜在ファンを捕まえてコア化する」というeコマースの発想をリアルの世界で再現することにチャレンジしました。まさに新規イノベーションの最たる結果が出たのかなと。
AIを使った新しい付加価値の創造。ここまでいかないと本当のAI利活用にならない
粟生氏:そんな春田さんがなぜ、このAIカンパニー、エクサウィザーズの創業に至られたのか。なぜAIを選択されたのか教えていただけますか。
春田:AI、特にディープラーニングが盛り上がる中で、「これは今後10年、ソフトウェアの世界において中心になることは間違いがないだろうな」と思ったのが一番大きい。私は変化が起きそうな場所で仕事をしていたほうが楽しいし、変化が好きです。 また、年齢を重ねたこともあり、正面から「社会課題を解決しましょう」「幸せな社会を実現する」と掲げて取り組むのもありなんじゃないかと。そう考えて、新しいテクノロジーを用いて現在の形になってきました。
スクリーンではエクサウィザーズのミッションを紹介
粟生氏:現在このエクサウィザーズという会社において、事業とミッション、そして東海エリアとの関係性を今後どうお考えでいらっしゃいますか。昨年12月には名古屋の「STATION Ai」にも入居されましたが。
春田:中部地区はご存知の通り製造業が中心です。AIが出てきて、足元では個人の仕事の効率化は進んでいますが、私は「AIはそんなもんじゃない」と常に思っています。 特に製造業は、原料調達から製造、流通までものすごく多くのプロセスを経ていますよね。AIで単に仕事を楽にするだけじゃなく、それを結びつけることによって新しい何かが生まれるのではないかなと。企業と企業のつながりをもっと生かした、新しい形。単なる効率化ではなくAIを使った新しい付加価値の創造。ここまでいかないと本当の意義での利活用にならないのではないかな、と。
粟生氏:東海地方には製造業が多く、”カイゼン”カルチャーによってプロセスを細分化・改善していく文化が元々あります。そこに昨今の生成AIのブレイクスルーで、東海エリアはまさにAI利活用の代表的なエリアになり得る可能性がありそうですね。
春田:そうなんです。人がやっていることの精緻化は当然ありますが、「人がやっているから、こういうプロセスになる(順番に並ぶ)」という面があると思うんです。
でも、AIを利用することによって、例えば、このプロセス自体が直列に並ぶんではなくて、もっと「並列」に並べて違う形が一気にできるようになるとか。そうすれば、人がやるべきことは本当はもっと少なくて済む。
もちろん、人で回している組織なので、変化を受け入れる・受け入れないというのは大きな問題だろうなと思っています。それでも、目指すべきはプロセスのあり方自体や仕事の仕方が変わっていくこと。これをどこまでできるか、我々自身もチャレンジしたいなと思っています。
粟生氏:AI経営戦略について…エクサウィザーズでは「AIドリブン経営」といったワードを発信されていますが、従来の経営とAI経営とは何が違うのでしょうか。
春田:最大の変化は、AIの中でも「AIエージェント」と呼ばれるものが出始めてからですね。AIをツールと考えている限りは、人が中心となった仕事の仕方です。これが人の代わりに仕事をするエージェントになれば、人に依存しない形になる。人が経験していないことであっても、手順さえ教えればできてしまう。AIを中心とした仕事の仕方になったらどんなことができるんだっけ、何が一番効率的なんだっけ、ということを考える。「AIドリブン」でやっていきましょう、というのはこういう背景です。
粟生氏の軽妙な語り口により、会場は和やかな雰囲気に
経営層と社員に求められるAIリテラシー
粟生氏:経営者に求められるAIリテラシーはどのようなものだとお考えですか?専門的な知識が必要なのでしょうか。
春田:まずは、とりあえず否定せずにAIを受け入れてみてはどうですか、ということです。入口で閉じてしまうのは非常にもったいない。
一方で、もう1つ大事なのは、AIエージェントのように人の代わりに、もしくは人と一緒に仕事をさせる形になれば、システムやデータベースに接続していくことになります。そうなると人が許可していないことをAIエージェントがやってしまう事態も起こりうる。そういうリスクに対して、AIがやったらどんなことが起こりうるんだという怖さを意識した上で、社内の方にどこまでできるのかを問うのが必要ではないかと思います。
粟生氏:一方で、社員の皆さんに求められるAIリテラシーについては? 専門人材を先に育てた方がいいのか、という質問も多いですが。
春田:社員には「AIを使えないとダメだ」と言ってます(笑)。特に生成AIは進化が激しいので、触る頻度によって、たった1年でものすごく差が出ちゃう。
専門人材を育てるより、まずは全ての社員に使わせることが基本です。これまでは経験を積まなければいけなかったことが、これからはテクノロジーによってめちゃめちゃ短くなっていく。多くの仕事の場合、その深さをテクノロジーが埋めてくれる可能性が高いのではないかなと思っています。
スクリーンではエクサウィザーズ 春田の経歴を紹介
不確実な時代だから変化を前提に。どうやったらもっと変わるのかという視点が大事
粟生氏:最後に、これからの3年を見据えて取り組むべきことを教えてください。
春田:正直、AIの進化がこれだけ早いので、3年後にどうなるか予想することは本当に難しい。でも、大事なことは、1日でも早く取り組むべきであること。変化していくことを前提とした教育や仕事の仕方にしていかないとダメじゃないかなと。 今は「作ったものを明日からでも変えられる」テクノロジーになってきている。利用される方々もそういうことを前提に、「どうしたらもっとより良く使えるか」「どうしたらもっと変わるか」という視点を持つのがすごく大事ではないかと思います。
粟生氏:AIの最前線を走るエクサウィザーズの代表である春田さんが仰るからこそ、非常に説得力がありますね。私自身も、当初の予測よりも遥かに速いスピードで社会が変わっていると感じます。お話を伺って、とにかく予測不可能でスピードが速いからこそ、まずは使ってみる、そして使いながら変化していく。そこに経営も組織も社員も一丸となって取り組む時代に突入したのだと強く感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
会場へ熱く語りかける春田と、モデレーターを務めた粟生氏
第1部では、変革期を何度も乗り越えてきた春田の実体験を通じて、AI時代における経営の心構えが語られました。AIを単なる効率化の手段に留めず、新たな付加価値を生み出す経営の武器とするために、経営者も社員も変化を恐れず一歩を踏み出すことの重要性が強く印象づけられるセッションとなりました。
続く後編では、この戦略的な視座をいかにして実務レベルへ落とし込み、現場の定着へと繋げるのか、という壁を乗り越えるヒントをご紹介します。東海エリアを代表する製造業、豊田合成株式会社とアイホン株式会社の両社を迎え、具体的な導入手法を深掘りします。
活用を促すための「カスタムテンプレート」の展開や、AIを「新人アシスタント」と位置づけて心理的ハードルを下げる工夫など、各社が試行錯誤の末に見出した現場にAIを根付かせるための「仕掛け」を詳述。「AIを導入したものの、なかなか実務で使われない」という壁を打破する、具体的かつ実践的な事例をお届けします。
後編はこちら(※近日公開予定)
ご案内|エクサウィザーズについて
貴社のパートナーとして、企業変革に伴走します
エクサウィザーズは、東証グロース市場に上場し、累計2,000社以上のAI導入・開発・人材育成をご支援してきました。
戦略のロードマップ策定から、独自の特許技術を用いた現場でのプロダクト実装、そして組織全体のリテラシーを底上げする人材育成まで、私たちは「AIを経営の武器に変える」ための全プロセスを強力にバックアップします。
「自社のプロセスとAIをどう結びつけるべきか」「自社の課題にどうAIを掛け合わせるべきか」といった検討段階からのご相談も承っております。AIを経営の力に変え、新たな付加価値を共創していくパートナーとして、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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