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【経営者/DX推進担当者向け】経営者は生成AIにどう向き合えばいいか ~活用成功企業と失敗企業の違い~

入山 章栄 氏

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了後、三菱総合研究所を経て、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年、米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授に就任。2013年に早稲田大学ビジネススクール准教授、2019年4月から現職。 専門は経営学。国際的な主要経営学術誌に多く論文を発表している。著書の『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』、『世界標準の経営理論』はベストセラーとなっている。

 

大植 択真

京都大学工学部卒業。京都大学工学研究科修了(都市計画、AI・データサイエンス)。2013年、ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、事業変革、DX推進、新規事業立ち上げなどの多数のプロジェクトに従事した後に2018年、エクサウィザーズ入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。企業の経営層や管理職向けDX研修の講師実績が多数ある。2020年6月に取締役就任。兵庫県立大学客員准教授。兵庫県ChatGPT等生成AI活用検討プロジェクトチーム アドバイザー。著書に『Web3時代のAI戦略』(日経BP)、『次世代AI戦略2025 激変する20分野 変革シナリオ128』(日経BP)。

エクサウィザーズが運営する「exaCommunity」において開催されたオンラインセミナー「経営者としてどのようにDXに向き合うか?」。早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏とエクサウィザーズ取締役 大植択真が、デジタライゼーションの枠を超えた本質的な顧客価値・企業競争力を生み出すDX、推進を加速する人材について、ビジネスの現場での事例を交えて語り合いました。

経営者は生成AIにどう向き合えばいいのか

大植:今回のセミナーのテーマは「経営者としてどのようにDXに向き合うか?」です。参加者の方々から事前に質問を受けつけておりますので、今日は入山章栄先生にいろいろ聞いてみたいと思っています。

まず1つ目の質問、「経営者は生成AIにどう向き合うといいのか?」です。生成AIが登場して、日本の企業でもかなり普及してきました。

ビジネスで生成AIを活用することで生産性を上げ、よりクリエイティブな働き方をしていく中で、従業員の働き方や会社のあり方はどう変わっていくと思われますか。

入山氏:もうすでに変化は起きていますし、これからも大きく変わっていくでしょう。これから1、2年は、生成AIが大ブレイクすることは間違いないですね。ChatGPTベースのものはもちろん、それ以外も含めて、新しい生成AIを作ったサービスがどんどん出てくると思います。

この1、2年で生成AIをいかにうまく使いこなすかで、勝ち負けがはっきりしてくる。さらに高度なイノベーションが起きるのは5年くらい先でしょう。そこから20~30年先は正直、わからないですね。わからないものの、「資本主義や民主主義は見直さないとまずい」といった、根本的な変化が起きる可能性はあると考えています。実際、映画『マトリックス』みたいな世界でAIが全ての意思決定のベースとなり、人間はそれに従う。とまでは言わないけど、そっち側の世界が出てくる可能性も考えられます。

だから、まずこの数年で会社をAI体質、従業員全員がAIを使える状態にすることが重要だと理解しています。

では、生成AIは何ができるのか。これは僕ではなく、AIの専門家であるPKSA Technologyの上野山 勝也さんが使っていた整理軸でなるほどと思ったのですが、「知識軸」「抽象軸」「表現軸」で整理するとわかりやすいです。
まず「知識軸」に関しては、人間は大量の知識を持つAIには勝てません。それから「抽象軸」。大量のデータから知識を得て、それを抽象化するのは生成AIが一番得意とするところです。

最後は「表現軸」ですね。これからおそらくPowerPointの生成AIもたくさん出てくるので、例えばコンサル風の文章を書いてというと、すぐ作ってくるわけですね。かたい表現にしてください、てにをはを綺麗にしてください、大人っぽい表現してください、英語にしてくださいといったことも圧倒的に生成AIの方が得意なので、人間が要らなくなってしまうわけです。これら生成AIの方が得意な作業においては、相当働き方が変わっていくでしょう。これらの仕事や職業がなくなるというよりは、作業が要らなくなっていくと思うんですね。

人間だけが価値を出せる3つのポイント

入山氏:では、人間の仕事が全く要らなくなるかというとそんなことはなくて、知識軸、抽象化軸、表現軸以外で価値を出せる人だけが勝ち残っていくと僕は考えます。そのポイントには3つあります。

1点目は、「アイデア」を出すこと。ChatGPTにしても生成AIにしても、根本はディープラーニングなので、失敗を減らす仕組みです。普通で平均のことを言うのは得意だけど、途方もないアイデアを提言するのは得意じゃない。アイデア出しのサポートはやってくれるけど、本当の意味で飛び抜けたアイデアはどちらかというと否定する。このようにアイデアを出すことについては人間が勝ち残っていきます。

2点目は、「実行」ができないこと。当たり前ですがやるのは人間なので、実行については人間だけが勝ちます。

3点目は「責任」が持てないことです。これはすごく重要で、人間にこれから残るのは責任をとる仕事ということですね。「ChatGPTが言ったからやりました」では、責任取れないじゃないですか。ChatGPTが言おうがPiが言おうが、「私の責任でやりました」となるわけです。

例えばコンサルタントでいうと、パートナークラスなどのかなり上のレイヤーですよね。普段から経営者と付き合って悩みを相談して、たまに突飛でもないアイデアを出して「責任を取って一緒にやりましょうか」という飛び抜けた仕事は残ります。

一方で、ただ単純作業をこなすだけの社員は不要となってくる。会社もそうなっていくと思います。特に中間層・若手層においては、知識軸、抽象化軸、表現軸で作業する仕事は要らない。

つまり失敗を恐れず、知の探索をどんどんやること、実際に行動すること、生身の形で行動すること、意思決定をしたら責任を取ること。これらに人材をどれだけシフトさせられるかがが、鍵になると思っています。

大植:コンサルタントにしても事業会社にしても、責任が取れて知の探索ができている人がいれば、情報を集めて作業をする仕事は極論AIでいいとなるだろうということですね。

中間管理の機能が薄まっていく

入山氏:そこで課題になってくるのが、会社の適正サイズだと思っています。ChatGPTのOpenAI社も、100人くらいで事業を始めているんですよ。100人でGoogleに勝っているわけです。

実際、小さい単位でのビジネスがたくさんできるようになります。私もいろいろな仕事をしていますけど、これからは作業的な仕事を全部AIに任せられるようになってくるので、私一人で結構な仕事ができてしまう時代になってきています。

そうなると会社の中で従業員をどう配置するかといったことが、とても重要なことになると思います。

大植:私も入山先生と同じく、AIの活用やDX推進において変化が求められるのは、中間管理職になると思っています。顧客がいる以上、現場で営業する従業員も大切です。ただ中間管理の機能は、おそらくAI活用やDX推進によって薄まっていくでしょう。中間管理をどれくらい薄くできるかという点は、経営論点になりますね。

入山氏:その通りです。まさに知識を抽象化して、それを適切な表現で管理するのが管理職です。管理は生成AIがもっとも得意とするところなので、中間管理職は要らないんですよ。ただ、結局現場で仕事をしているのは人間なので、コーチングとファシリテーションの2つに関しては、これからの管理職の重要な仕事になってくると考えています。

大植:なるほど、わかりやすいです。

入山氏:つまり、部下が現場で頑張ってるけど大変な時にコーチングする。自分の経験談や知識はAIで学べるので教える必要はなくて、部下の悩みを聞き出してあげることですね。

多様な人が集まって、バラバラの意見を出し合いながら意思決定するファシリテーションは人間でないとできません。その真ん中に立って、いろいろな人の意見を引き出し、AIで思いつかないようなアイデアを生み出す。そういう仕事がすごく望まれてくるだろうと思っています。

生成AIの有効性を理解していない人へのアプローチはどうしたらいいか

大植:続いての質問は、「生成AIの有効性をわかっていない人、関心がない人は全く触ろうとしません。こうした人へのアプローチはどうすればいいでしょうか?」という質問です。具体的な活用事例を示すことだと思うのですが、何かアドバイスがあればお願いしたいです、とのことです。

入山氏:ここで一番重要なポイントは、「社員全員が使う」ということですね。それが個人のパフォーマンスアップにつながり、知識軸、抽象化軸、表現軸が苦手な人を助けてくれます。ローパフォーマーは、この3つが苦手なんですよ。それを上げてくれるから底上げになるんです。

例えば、私が取締役をやっているロート製薬は業績が好調なんですけど、実際に社員のほとんど全員が生成AIを使っています。経営陣の感度が高いので、取締役会でChatGPTや生成AIはどうすればいいかといった議論を積極的にしているんですよ。

私が理事を務めているコープさっぽろという北海道の生協もCIOの判断が早く、「とにかくChatGPTを使い倒さなきゃ」って言いながら取り組んでいます。だからどんどん改善が進むんですね。

小さなことでいいから「生成AIってすごく便利なんだ。やってみると面白いね」という感覚を持ってもらうことが大事だと思います。そういう意味ではChatGPTもいいけれど、Piのほうがインターフェースがフレンドリーで楽なんですよ。いずれにしても、こんなに便利で楽になる技術に携わっているという成功体験は重要です。たしかに一回使うとわかるんですよ。ドハマリした人は対話にはまっちゃって、4時間ぐらいやってるらしいです。しかも全知全能で、いろんなことを知っているわけですから。

ChatGPTや生成AIの特徴は、人間にとって難しいことをやらせるんじゃなくて、可能な限り簡単にやらせるってことなんですね。これからはもっと簡単なサービスが出てきます。それをはめ込むのが1つの手ですね。

ある旅館のDX事例なんですけど、古い日本旅館なので従業員が年配の方しかいない。みんな超抵抗するわけですよ。そこでどうしたかというと、勤怠管理をデジタルでやることを強制させたんです。

すると今まで抵抗していた年配の従業員が、目の色を変えてやりだしたんです。なぜなら自分の就業時間をちゃんとデジタルで入れないと、給料が出ないから。人間って、そんなもんなんですよ。「いや、そんなものは時代に合わん」とは言っているけど、面倒くさくて怖いだけで、やると便利なんですよ。つまり、やるインセンティブが弱いだけなんです。これやらなかったら給料出ないって、しちゃえばいい。一番いいのは経営と人事と組むことですね。

大植:「それならやります」って感じですね(笑)。給料が出ないと困りますからね。

経営の役割は今後どうなっていくのか

大植:入山先生の所感で、「経営陣は今後こうなっていく」といったお考えがあれば教えていただきたいです。

入山氏:30年後はわかりませんが、これから当面はもう間違いなく生成AIの活用・促進だと思います。ChatGPTでできる知識軸、抽象化軸、表現軸とはかけ離れたことに挑み、ときにはChatGPTですら反対するような大胆なアイデアを決めて、実際に行動していく。

そして、その結果に対して、うまくいくにしてもいかないにしても責任はとる。経営の役割はより先鋭化されていくと思います。簡単な調整業務などは全部AIに任せられるし、いわゆる秘書業務みたいなのも楽になるでしょう。逆に言うと、秘書や企画職の負担は軽くなるため、経営層より秘書室とかの仕事が変わるだろうなと思っています。

可能な限り外に飛び出して、世界中のいろいろなところを見て、さまざまな人と交流して、時にはものすごく大胆な意思決定をしてその責任を取る。経営陣もそうですが、企画や秘書も含めて、そうなっていくんじゃないかなというふうに思っています。逆に、そうなっていかなければ、生き残れない時代になっていくのではないでしょうか。

大植:今の入山先生のお話をお聞きすると、経営者の中でも本質的な業務は残るので、逆にこれまで本質的な業務をやっていなかった経営陣と本質的な業務を行っていた経営陣では、かなりギャップが開いていきそうですね。

入山氏:そうですね。生成AIによって、おそらく雇用も流動化していきます。会社のいわゆるビジョンやパーパスを語り切るには、経営者自身も納得している必要があるし、それを社員に向けて「うちの会社はこういう方向感でやるんだ」という腹落ちみたいなことが、より重要になってくると考えています。

仕事がAI化することで、今まで忙しくて必死に仕事をしていた知識層が、知識軸、抽象化軸、表現軸の軸に捕らわれなくなって、「なんで私、この仕事をこの会社でこんなの分野で大変なことをやらなきゃいけないんだっけ」と思うようになる。

さらに、「なんで私、生きてるんだっけ?」「人は何で生きるんだろう」と考えるようになる。私は、これからの時代は宗教がすごく重要になってくると考えています。宗教を悪い意味で言っているわけではなく、これからのいい会社というのはより宗教化していくというのは間違いないと思っているんですね

一番わかりやすいのは、ユーグレナですね。出雲充さんという経営者に魅かれて、若手社員がたくさん入社している。経営自体はまだ赤字ですが、売上も立っているし、上場企業ですし、何より個人株主が6割います。圧倒的なファンがいるわけですよ。経営陣の役割はまさにこうなっていく。知識軸、抽象化軸、表現軸だけでやっていた経営者は要らなくなり、そういう会社はなくなっていくと、僕は思っています。

大植:めちゃくちゃわかりやすいですね。入山先生の経営理論でいうと、センスメイキングということでしょうか。経営陣の役割は、言い続けること、納得してもらうことが大事になってくるということですね。

入山氏:そうですね。かつての終身雇用時代のサラリーマン経営者たちは「うちの会社は20~30年後に向かって何をするんだっけ」「この会社で働くって何が幸せなんだっけ」みたいなことを、あまり考えてきませんでした。しかし、これからはそういう人たちがトップになると結構きつい。まさに腹落ちしてほしいと思います。

成功する経営者のポイントとは

大植:今回のセミナーのサブタイトルに「成功企業と失敗企業の違い」という論点がありまして、成功する経営者のポイントについてお聞きしたいと思います。

生成AIの活用促進によって成功企業になるために、経営陣は何を意識して何に取り組むべきか、何かお考えがあれば教えていただきたいです。

入山氏:ロート製薬やコープさっぽろは、かなりボトムの従業員から生成AIは使いこなそうという雰囲気になっています。

何ができるかというと、3つあると思っています。

1つは「トップダウン」です。経営者の感度の良さ、意思決定の速さですね。

2つ目は「企業文化づくり」です。トップが言ってるし、面白そうだからやってみようという文化ですね。そうした文化づくりはすごく重要だと思います。

3つ目は評価ですね。鍵となるのは人事部門だと思っています。トップと人事部門がいかに握れていて、トップのやりたい世界観を人事がうまく作れるか。これはいうのは簡単ですが、実際にやるのは大変で時間もかかるわけですよ。

トップと人事部門がいかに握れていて、トップのやりたい世界観を人事がうまく作れるかが大事です。

これは言うのは簡単だけど、文化とか組織とか人材にはどうしても時間がかかるものです。ロート製薬やコープさっぽろができるのは、もう10何年前から取り組んできたからに他なりません。積み上げがあるから、ChatGPTの取り組みも進むんですね。その積み上げがないと難しいので、人事部門が鍵となります。

ただあまり簡単に結果が出ないからといって、あせらない方がいいですね。とにかくやり続けるということが重要だと思います。そういう意味では、日本の会社は任期性があるので、そういう感度のいいトップがいるなら、その人が代わらないことが重要ですね。

大植:なるほど。だからトップはまずコミットして全社に導入する。全員使える環境を開放して、本質的にはカルチャーというか、会社の文化がないと変わらないので、継続的に会社を変えていく。短期的というよりは、中長期的な会社の文化変革を人事部とやっていくといった感じのイメージですね。

入山氏:これは決して新しい話じゃなくて、コロナ前から結構言ってることなんですよね。まさに長期の腹落ちをして、知の探索的なことをたくさんやる。そのためには従業員のマインドセットがもっと自発的になって、企業文化、文化というものを戦略的に作っていくことが重要です。

ChatGPTの時代、これができる会社はどんどん使いこなせるようになるし、できない会社はより取り残される。だから相当差がつく時代になっていくと思います。

AI・IoTの時代はモノづくりの価値が上がる

大植:最後にオーディエンスの皆さんからの質問もご紹介したいと思います。

入山氏:「ハルシネーション」についてどう思っているかといった質問もあります。オーディエンスの皆さん、すごく感度が高いですね。

大植:皆さん、アンテナ高いですね。AIと金型についての質問もいただいてますが、画像も含めてモノづくりの現場でも活用が拡がっていくと思っています。

入山氏:金型とAIの相性はめちゃくちゃ良さそうですよね。僕はIoTプラットフォーマーのソラコムという会社の社外取締役をやっているのですが、これからのAIの時代・IoTの時代は、モノづくりの価値が絶対に上がるんですよ。

ホワイトカラー的な知識はAIがやってくれるし、様々なデジタル上につながるのでモノを作る価値が上がるし、モノづくりが復権するという可能性がある。コマツやDMG森精機など、生成AIを活用してすでに勝っている会社もあります。金型もすごいチャンスがあるんじゃないかと思っています。

大植:次の質問です。「生成AIを仕事で使う場合、生成AIの言ってることが正しいかどうか判断できる専門領域で手伝ってもらうことが多く、逆に知らない領域では、責任を取れる仕事ができる気がしません。これから生成AIが当たり前になる時代に、企業における人材育成はどう考えるべきでしょうか?」。
新人の時代に汗かいて覚える経験を生成AIに任せると、判断できる脳が育たないことを懸念しています、とのことですが、いかがでしょうか。

入山氏:これはいい質問です。生成AIが得意なのは推論なのですが、判断はできないですよ。なので、ジャッジは人間がやるわけです。これから一番なくなる仕事は何かというと、おっしゃる通り、新人の時代に汗かいて覚える仕事なんですよね。それはつまり繰り返しの仕事です。

繰り返しのルーティンワークで、特にフィジカルなものが伴わないものは、AIが一番得意なところなので駆逐される。ただ駆逐されたところで、そのAIの作業が本当に正しいかどうか判断するというスキルは必要だと理解しています。

わかりやすいのが電卓です。電卓はもう何十年以上前に我々人類に生まれているわけですけど、電卓が出てきたから数学の勉強しないでいいかというと、そんなことはないじゃないですか。計算をすることはなくならないし、小学校教育の算数はなくなりません。ワープロやWordがある時代に漢字の学習もなくならない。教育とはそういうものであり、会社でも人材教育は必要だと考えています。

大植:最後の質問は、こちらです。「入山先生の知識軸、抽象化軸、表現軸という整理は非常にわかりやすい一方で、特に知識についてのハルシネレーションで、生成AIが誤ったことを言うことが懸念されます。このリスクは人間が責任の一つとしてとるということでしょうか。そのリスクへの対応方針についてお聞きしたいです」、とのことです。

入山氏:おそらく20~30年後には、AIのほうが正しいという時代が来る可能性は高いと思います。そうすると本当にマトリクスの世界ですけど、AIが正しいからその中で我々はどうするかということになる可能性があります。

それはこれからのAIのコンピューティングがさらに高性能になっていくので、その中で我々は正しいというジャッジメントできるところが出てくるでしょう。ただ、当面はこのハルシネレーションリスクはあると思っています。

そこで重要になってくるのは、先ほどのピープルマネジメントであり、会社の人格です。だからどの会社もハルシネレーションリスクはあると考えた方がいいと思います。

この会社は高潔な人たちがやっているから、信頼していいだろうという判断軸になっていく。便利で安いからこの会社を使おうというリスクは相当上がるだろうと考えています。

生成AIを悪用するプレイヤーは出てくるリスクもあるので、このリスクはまだ解決の仕様がないというのが私の見解です。大植さんはどうお考えですか?

大植:入山先生のお話に全く同感です。推論と判断を分けるといった話は深い論点だと思います。あくまでも責任・判断は、人間がすると整理できるのかなと。
本日はありがとうございました。