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サッポロホールディングス・安西 政晴氏が語る、経営層・管理職向けDX研修が全社員DX人財化とDX推進に与えるインパクト
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サッポロホールディングス株式会社
DX・IT統括本部 DX企画部
企画グループリーダー兼推進グループリーダー
安西 政晴 氏

安西 政晴 氏

1989年サッポロビール株式会社入社後、新規事業開発部門を経てビールマーケティング部門で商品開発、宣伝を担当。その後飲料水関連会社、再びビール部門でマーケティング部門マネージャーを経験し、2018年より改革推進部で同社のDX推進に携わりながら、現在はサッポロホールディングス社IT統括部を兼務しグループ全体のDX推進に携わる。

サッポログループのDX推進全体像

サッポロホールディングス安西政晴氏の講演では、サッポログループ全体での人財育成・確保に対する取り組みを中心に、経営層・管理職向けDX研修がDX人財育成やDX推進に与えるインパクトなどが語られました。

3つのDX方針

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

サッポロホールディングス社では、2022年3月にサッポログループのDXの方針についてリリースを発信。グループ全体の方針として3つのDX方針を掲げています。1つは、顧客接点の拡大。2つ目は、新規・既存のビジネスの拡大。3つ目が働き方の改革と変革です。

「我々が、現ホールディングスの尾賀社長にDXの方針に関する相談をした際に、シンプルにこの3点が返ってきました。この3つのDX方針を掲げ、グループ全体の事業会社すべてにも共通する方針として、現在はDX事業の環境整備を進めています」(安西氏)

4つの事業環境整備

DXを推進していくための事業環境整備のポイントは、4つあります。1つが人財育成、2つ目は推進体制の強化、3つ目がITテクノロジー環境の整備、4つ目が業務プロセス改革です。

「例えば、ITテクノロジー環境の整備はクラウド環境への移行、推進体制の強化はDX・IT委員会という推進組織の設立など、グループ全体として横串を刺していく体制を作っております」(安西氏)

人財室の全体像

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

人財育成の全体概要を示したのが上記スライドです。全社員6000名向け研修をベースに、グループ人材育成が実施されています。①の基幹人財育成研修は、DXを担う人財としてリーダークラスが200名、サポータークラスが700名を対象に行われます。

「②の管理職向け研修は150名、③のDX担当役員向け研修は15名を対象として設定しました。DXを進めていくためには担当者だけではなく、管理職や担当役員も当事者として理解をしてもらい、DXの成果創出を加速させていきたいと考えています」(安西氏)

基幹人財育成研修

研修の全体像

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

グループ全社員6000名向けの基幹人財育成研修は、基礎的なeラーニングで実施されています。DX・ITサポート推進サポーターについては、希望者を公募で700名を選定。約40時間の専門E-ラーニングを受講してもらう体制を取っています。

「当初に想定していた約2倍の応募があり、1年目と2年目のウエイトバランスを調整した面もありましたが、約900名のリーダー・サポーターたちが育っているという状況です」(安西氏)

選抜については2回行っており、エクサウィザーズ社のDIAを活用していただきました。200/900に絞る1回目の選抜は点数順にて行い、2回目のアセスメントについては、研修終了時に実施されたそうです。

「200名の受講者が研修中にどれくらい伸びたのか、どういうことを学べたのかということを確認したいという目的と、スキルが伸びた人財を人事異動に反映させたいという狙いがありました。人事の持っているHRシートに対して、別角度で作成したデジタルHRシートを1つプラスして交渉するという手法として活用させていただきました」(安西氏)

育成カテゴリー

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

育成のカテゴリーは、「ビジネスデザイナー」「DXテクニカルプランナー」「ITテクニカルプランナー」という3つの基本カテゴリーで設置されました。一番起点になるのは、ビジネスデザイナーだと、安西氏は語ります。

「DX・IT推進リーダー研修受講者200名の内、半分以上がビジネスデザイナーです。ビジネスデザイナーが起点にならないと、物事は前に進まない。デジタルでどんなビジネスをやりたいのか、どういうふうにビジネスを変えたいかを考える人が必要なので、注力して育成していきたいと思います」(安西氏)

DXテクニカルプランナーは、データ分析を行うデータサイエンティストを育成するデータサイエンスとノーコード/ローコード開発に分かれて実施されています。

ITテクニカルプランナー研修は、社内情報システムの設計・運用・保守・セキュリティ対応などを担う人材育成を目指しています。

現在の情報システム部門が持つ知見やノウハウを持つ方が高齢化していく中で、そのスキルを学んで引き継いでくれる人財を求めているからだといいます。また、自社グループの基幹システムを理解しながら、ネットワークやセキュリティに詳しい人財を育成することで、システム開発がすべて外注化してしまうことを防ぐ目的もあると、安西氏は言います。

「今後さらに社内システムのクラウド化やSaas化が進んでいった際に、社内のシステムを理解している人が少ない状態で社外に開発を委託するという形になってしまうことを危惧しています。そのため、ITテクニカルプランナーに関しても教育を強化しています」(安西氏)

管理職向け研修

管理職向け研修の対象と目的

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

管理職向け研修は、管理職全員というわけではなく、DX基幹人財研修受講者(リーダークラス)200名の直属上司150名に対して実施しています。DX基幹人財は研修終了時にDX企画書を作成し、所属部署の上長の理解を得たうえで、DX推進を進める必要があるからです。

自部署でDX企画を実現するためには、上長の理解やサポートは必須といえます。しかし、上長がDXを全く理解していなかったり、興味がなかったりすると、きちんとした支援が得られません。

「直属上司向けに管理職向けの研修を実施することで、支援をしないことに対するリスクを含めて、企画実現に向けた支援についての研修を行っています」(安西氏)

管理職向け研修・モニタリングの概要

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

研修後、各組織でバラつきが起こらないように、エクサウィザーズ社作成の以下コンテンツを活用して、データドリブンなチームになることのメリットを伝えています。

  • DXの現状と事業インパクト
  • DX推進における管理職の役割
  • データドリブンなチーム運営とは
  • ケーススタディ(ワークマン)

一方で、これをやるだけではダメだと安西氏は強調します。

「DX基幹人財200名の企画が、各事業部門でどのように進捗しているのか。半期ごとに報告してもらう体制にしています」(安西氏)

報告されたものに関しては、ホールディングスの取締役会の報告事項にしているとのこと。うまく進んでいない状況も含めて報告する体制作りをしているといいます。

「成果を出すために、上司としてもきちんと動いてもらうための環境をきちんと作っていく。また、人事異動があって新たに担当や上司が変わっても、やり続けていく状態にしたいと考えながら、きちんとフォローしていく研修を進めています」(安西氏)

担当役員向け研修

担当役員向け研修の対象と目的

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

担当役員向け研修は、DX担当役員および関連する経営企画部・DX企画部の部長15名を対象に実施しています。基本的には経営課題に対して、DX施策をどのように活用して成果を出していくか、今後必要な施策に対する目ききなどを理解してもらうことが狙いだったと、安西氏は語ります。

「エクサウィザーズ社にご協力をいただき、『DXの経営インパクト・経営が意識すべきこと』『両利きの経営の実践』『失敗から学ぶDXの進め方』『DX戦略ワークショップ』という4回の研修を実施しました。最後のワークショップでは、一人一個ずつ、自分たちはこうしていきたいという宣言的なことを書いてもらいました」(安西氏)

担当役員向け研修の感想

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

続いては、担当役員研修を実施したことでどのような効果があったのか、研修終了後に寄せられた感想をもとに紹介されました。

研修前の発言で多かったのは、「製造メーカーにDXは必要なのか」「デジタルを活かして具体的に何ができるか、イメージが湧かない」といった内容が多かったそうです。

ところが、研修後の発言では、「経営者の姿勢で大きく変革が左右されることに気づいた」「環境変化が厳しい中、自分も学習していかなくてはいけないと感じた」「経営層の無関与・丸投げはよくない」といった意識面での大きな変化が見られました。

「研修の中でDXの何を学んだかということよりも、担当役員として積極的にDXに関与して支えていかなくてはいけないという意識醸成ができたことが、一番の成果だと思っています」(安西氏)

また、安西氏は一般的な企業の役員や部長などの管理職は、なんらかの成功体験を持って昇進しているが、DXでの成功体験を持って昇進している人はまだいないのではないかと指摘します。

「そういった意味では感覚的には分からない部分があるので、DX推進を部下に任せきりにするのではなく、DXの技術がどういうものかを知る必要があると思います。当然使えるようになるまでの必要性は無いですが、プログラミングがどういうものなのか、例えばPythonがどのようなことができるプログラミング言語なのかといったことを理解していただきたいと考えて実施しました」(安西氏)

経営層・管理職向け研修がDX推進に与えたインパクト

実際にDX推進を担う人財だけではなく、経営層・管理職といった他階層にも同時進行で研修を実施したことの効果も紹介されました。

多階層研修・同時進行による効果

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

まず、DX基幹人財研修を受けた200人という人数をどう算出したのか。サッポログループの中で各事業所部や支店に対して少なくとも1人か2人ぐらいはいる状態で200名。さらに各部署に適切な人数をかけ合わせ、DX・ITサポート推進サポーター700名という、点でなく面としてDX推進者がいる状態を考えたと、安西氏は説明します。

「全社的にDXをやっていかなきゃいけない雰囲気が出来上がっていく中で、担当者だけが頑張るのではなくて、担当役員や管理職が理解を示し、周りがサポートすることで、大きなアクションにつながることができたと思っています」(安西氏)

安西氏はその成果として、大きく2つの環境整備面での成果を挙げています。

DX推進組織、グループ連携体制が強化された

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

一つは、DX推進組織やグループ連携体制に変化が起きたこと、もう一つは全社的なオープンイノベーションの強化ができたことだと安西氏は言います。

「昨年までホールディングスにはDXの組織はなかったのですが、今年の春からDX企画部を設立しました。さらにIT部門と連携した組織を作り、DXを実務的に回していく体制を作っています。一方で、事業会社との連携支援を強化することで、グループ全体でDXを推進する環境を作ったことも大きな成果の一つだと考えています」(安西氏)

全社的なオープンイノベーションが強化された

資料_サッポロホールディングス

出典:サッポロホールディングス株式会社

もう一つは、全社員DX化という全社的オープンイノベーション強化の取り組みです。DX推進に関する悩みの相談など、DXの駆け込み寺的な存在として「DXイノベーションラボ」という専用ポータルサイトを設立し、支援する体制です。

最後に安西氏は今後も結果を出すべく、前向きに取り組んでいきたいと以下のように語り、セッションをまとめました。

「ここに来れば仲間がいるし、情報がある。何かやる時に前に進める情報が必ずある環境を作りました。こうしたものはホールディングスでないとなかなか考えにくいので、グループとしての必要性を考えながら進めました。できたばかりなので、成果が出るのはこれからですが、このオープンイノベーションの中から新しいことが生まれてくることを期待しています」(安西氏)