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【AI/生成AIセミナー レポート】イオン×ファミリーマート、リテール2強の推進担当者が登壇〜生成AIはリテール業界の現場をどう変えていくのか〜

【AI/生成AIセミナー レポート】イオン×ファミリーマート、リテール2強の推進担当者が登壇〜生成AIはリテール業界の現場をどう変えていくのか〜

2026年1月19日、株式会社エクサウィザーズは「リテール業界向けAI/生成AI情報交換会」を開催しました。普及が進む生成AIの活用は、リテール業界の実店舗や本部業務において「具体的な成果」を出すフェーズへと移行しています。

本イベントは、リテール業界で先進的な取り組みを行う企業の事例から実務定着への道筋を探り、AI/生成AI推進を後押しする実践知を共有する場として企画されました。

当日は、イオン株式会社と株式会社ファミリーマートの推進担当者が登壇。現場の熱量をいかに引き出すか、全社展開を支える組織の仕組みをどう作るか、デジタル未経験者がいかに実務を塗り替えるか、といった多様な視点から、単なるツール導入に留まらない、DX/AX(AI変革)を成功させ

現場の課題に深く入り込み、AI実装と変革を支援するエクサウィザーズの役割

セッション冒頭、エクサウィザーズの稲次から、リテール業界におけるAI活用のポイントを、提供するAIプロダクトの支援実績とともに紹介しました。

私たち、エクサウィザーズの最大の特徴は、お客様ごとの個別課題に深く入り込んでAIを実装する「AIソリューション」と、その知見を汎用化した「AIプロダクト」の提供、の二軸を循環させる、独自の事業構造「ぐるぐるモデル」です。 

「ツールを導入して終わりではなく、実務を最適化するプロセスから得た知見をプロダクトへ還元していく。このサイクルこそが私たちのスタイルです」


この徹底した現場視点は、多岐にわたるプロダクト展開に結実し、既に大きなインパクトを生んでいます。

 

エクサウィザーズのぐるぐるモデル図

リテール業界におけるAI/AIエージェント活用した支援事例

この日登壇したイオン・ファミリーマート両社は、 エクサウィザーズの汎用型生成AI「exaBase 生成AI」の活用しており、生成AIがすでにオペレーション変革の強力な武器になっていることを示す効果も紹介されました。(ここでは一部をご紹介しております)

イオン様の取り組み内容まとめ|エクサウィザーズ登壇資料より

ファミリーマート様の取り組み内容まとめ|エクサウィザーズ登壇資料より

<生成AIの利用用途>

  • 本部・エリアマネージャー:
    お客様の声分析、プロモーション企画、新商品開発、売上向上の施策出し、現場スタッフ育成/採用など。
  • 店長・現場スタッフ:
    膨大なマニュアルからの情報検索、求人原稿の自動作成、外国人の多言語翻訳、レジエラー対応など。

生成AIの先にある”AIエージェント”と、それを使いこなす変革を支える”AX人材”

続いて、自律的にタスクを完遂する「AIエージェント」の展望と支援事例、またそれを使いこなし変革を支える「AX人材」の重要性が語られました。

「これまでの生成AIは『対話』によるサポートが中心でしたが、これからはAIが自律的にタスクを分解し、実行まで完遂するAIエージェントが進化していきます。」

リテール業界での専用AIエージェント活用例|エクサウィザーズ登壇資料より

こうした自律的なテクノロジーを組織に定着させるためには、スキル以上に「AIを使って何を変えるか」という個人の意志、すなわちマインドセットが重要になります。

「私たちが考える『AX人材』とは、単なるAI利用者ではなく、自ら変革を起こせる人です。弊社が提供する『exaBase DXアセスメント&ラーニング』では、スキルの先にある『マインド(スタンス)』を可視化することで、変革の旗振り役にふさわしい人材の発見を支援しています」


実際にイオン様でも本サービスを活用されており、可視化が難しかったマインド面を捉えたことで、現場主導のデジタル人材育成を構造的に支える指針となっているとの評価をいただいています。

単に技術を導入するだけでなく、個々のマインドまでを可視化し、適切な人材が変革を担える環境を整える。これが、組織全体のAXを支える土台となることを紹介しました。

この日司会、ファシリテーターを務めたエクサウィザーズ 稲次


イオンの事例:
イオンデジタルアカデミーが拓く「生成AI×ボトムアップDX」

次に登壇したのは、イオン株式会社の沖中氏。従業員62万人の巨大組織において、いかにボトムアップの熱量を引き出したのか。そのプロセスには、現場への深い信頼がありました。

イオン株式会社 ICT企画チーム イオンデジタルアカデミー担当 沖中氏

強制ではなく現場の主体性を支援することで、ボトムアップ型の変革を加速

導入初期、沖中氏は経営層と現場のギャップとジレンマに直面したと言います。

「経営層には費用対効果やリスクへの不安がありましたが、一方で現場はまだ一度も使っていない。実感が伴わず答えられない、というのが正直なところでした。そこにギャップとジレンマが生まれていたのです」


そこで選んだのは、無理なトップダウンではなく「意欲のあるメンバーに委ねる」というアプローチでした。その変革の土壌となったのが、2021年に設立された「イオンデジタルアカデミー」です。

経営層から現場のアルバイトまで、グループ全従業員を対象に学びと交流の場を提供し、「使ってみなければわからない」という考えのもと、社員1,000名が試運転できる環境を構築。現場からすぐに使えるプロンプトテンプレートの配布要望があり、公開したものの「自分の業務にフィットしない」という現場の声にぶつかります。

「気づいたのは、単にテンプレートを配るだけでは、現場のメンバーがどのように生成AIと向き合えばよいのかという“姿勢”まで伝えることができていなかった、ということでした」


ここから、現場が生成AIに向き合うための「姿勢」を伝える方向へと舵を切ります。現場自らが最適解を見つけ出せるよう土壌を整えることに注力した結果、組織の中に自律的な主体性が芽生え始めました。

デジタルアカデミーの役割と全体像|イオン登壇資料より

遠くの成功事例より「隣の仲間の失敗」を。熱量を連鎖させる等身大のコミュニティ

ツールを導入しただけで終わらせず、いかにして現場一人ひとりがAIを「自分の武器」として使いこなす文化を根付かせるか。その活用定着の原動力となったのは、「イオンデジタルアカデミー」の取り組み現場メンバーが自ら講師を務めるナレッジシェアの仕組みでした。

「どこかの遠い成功事例よりも、隣の席にいる仲間の等身大なチャレンジの方が、周囲を動かす力になるのです。勉強会では成功談だけでなく『こう失敗して改善した』というプロセスを、自分の言葉で語ってもらうことを大切にしました」


お昼休みの30分を活用したオンライン勉強会や、本音で悩み相談ができるコミュニティの運営により、当初十数名だった参加者は100名、1,000名と拡大。技術的な相談から上司に活用を促すための説得方法まで、何でも共有し合えるハードルの低さが、現場ならではの創意工夫を次々と生み出す土壌となりました。

最後に、イオンの沖中氏は「主役はテクノロジーではなくて、イオンの中にいる現場の人。現場のちっちゃな課題を現場の人が解決できるようになろう、という合言葉は変えない」と締めくくり、現場主導の文化醸成こそがAXの核心であることを改めて示しました。


ファミリーマートの事例:生成AI活用​ 社内浸透の取組み​

続いて、株式会社ファミリーマートの山中氏が登壇。現場の熱量を一過性の「草の根運動」で終わらせず、全社的な仕組みへと構造化した戦略的な舞台裏を明かしました。

株式会社ファミリーマート クリエイティブオフィス&8 ゼネラルマネジャー補佐 山中氏

経営層の意識を変え、組織の空気を変える戦略的な巻き込み

山中氏が最初に取り組んだのは、全社展開を加速させるための「トップの意識改革」でした。現場の熱量を最大化させるには、経営層の理解とコミットメントが不可欠だと考えたからです。

「現場の草の根運動だけでは、マインドの醸成には限界がある。いかに経営層の興味を引くかが、推進を加速させる大きな転換点となりました。役員や社長への勉強会を通じて、AIで部下の仕事がどう改善されるのかを具体的にイメージしてもらったのです」

 

AI導入・推進ロードマップと全体像|ファミリーマート登壇資料より

ハルシネーションや情報漏洩といった経営層特有の懸念に対し、エクサウィザーズの支援も受けながらプロの視点でリスクと可能性を直接インプット。これにより経営層の漠然とした不安を期待へと変え、組織全体でアクセルを踏むための強力なモメンタムを醸成しました。

「一人の成功」を一気に横展開。評価制度と連動した徹底的な仕組み化

現場展開においては、全国約3,000名のスーパーバイザー(SV)を主役に据えました。個人の成功を組織全体の成果へと昇華させるため、活用事例の横展開を評価制度やイベントと連動させ、「仕組み」として定着させていきました。

「SVの本質的な業務は全国共通。つまり『一人の成功事例は、一気に横展開できる』のです。だからこそ、活用を定着させるために人事評価(MBO)の指標にも組み込み、仕組みとして動かしていきました」


1,100件超のエントリーを集めた「生成AIコンクール」では、現場発の優れたアイデアを全社ポータルで公開し、優秀者は社長自らが表彰。さらに、AI活用によって浮き彫りになった「慣習化した不要な業務」を思い切って廃止するなど、現場に新たな余白を創出することにもこだわりました。

山中氏は、「目指しているのは、AIによる作業の効率化で余白を作り、お客様が『用がなくても行きたい』と感じるような楽しいお店作りを再実現すること」と述べ、テクノロジーの先にある情熱を語りました。


パネルディスカッション:小売現場におけるAI活用の理想と現実をめぐる議論

最後のセッションとして、稲次をファシリテーターとしてパネルディスカッションが行われ、小売現場におけるAIの理想と現実をめぐって、さらに踏み込んだ意見が交わされました。


パネルディスカッションの様子
左からイオン 沖中氏、ファミリーマート 山中氏、エクサウィザーズ 稲次

小売の現場でAIは​“どこまで使えるのか?” “使っているか?”​ ~​理想と現実のギャップ ~​

山中氏は、SVによる返信文やPOP作成といった現状に触れつつ、「将来的には、人間が指示を出すよりも効率的に店舗作業をこなすような、物理的な領域(フィジカルAI)での進化も期待している」と、実店舗の未来像を展望しました。

これに対し、沖中氏は現場普及における小売業特有の構造的な壁を指摘します。 「小売業は、先輩がやってきたことを現場で後輩に伝承していくOJTによって大きくなってきた業界です。そのため、前例のない新しい技術とは本来、相性が良くない側面もあります。常に『効果が出るのかわからない』というジレンマが付きまといますが、良い事例を待つのではなく、自分たちで事例を創り出していく。その姿勢こそが、今のギャップを埋める鍵になると考えています」

AI導入をやってよかったこと

沖中氏は「これまで課題だと思っていなかったことが、課題だと気づけるようになった人が増えたことが大きな収穫」と語ります。

「当たり前だと思っていたルーチン業務に対し、『生成AIで解決できるのではないか』と発想した瞬間に、それは解決すべきチャンスに変わります。作業時間の短縮だけでなく、ケアレスミスがなくなりクオリティが向上したという発見も、現場にとっては非常に大きな価値なのです」

山中氏も、AI導入が業務プロセス自体の見直しに繋がった実感を述べました。 「生成AIを活用して業務を見つめ直すことで、やらなくてもよかったはずの業務が次々と炙り出されました。組織全体で『この仕事は辞めてもいいのではないか』という対話が生まれています。私自身の部署でも、報告の形式をテキストベースに簡略化するなど、本質的な業務に集中できる環境作りが進んでいます」

今後の展望

沖中氏は「AIを使う段階から、AIを使って何かを『作る』段階へ引き上げたい。魚を与えるんじゃなくて釣り方や、釣りに行こうとするマインドを育てていきたい」と、自律的な人材育成への決意を述べました。また、「小売業は世界で最もお客様と接点がある業界。競合という枠を超えて、業界全体でお客様に何を提供できるか、今後もこうした対話を深めていきたい」と語りました。

山中氏は、「コスト削減のためではなく、ユーザー体験を豊かにするためにAIを使いたい。かつてのコンビニのように、用がなくても立ち寄りたくなるような、楽しいお店作りをもう一度目指したい」と、テクノロジーの先にある顧客への価値を強調しました。

最後に稲次が「他業界との競争も激しくなる中で、リテール業界全体でお客様に何を提供できるか、皆様と共に考えていきたい」と総括し、本セッションを締めくくりました。


左:イオン 沖中氏、右:ファミリーマート 山中氏

まとめ

本イベントを通じて示されたのは、生成AIの導入が単なるツール導入ではなく、現場一人ひとりのマインド変化と業務の再定義をもたらすという事実です。AXの本質は、現場から湧き上がる改善の熱量を、いかに組織全体の推進力へと構造化できるかにあります。

エクサウィザーズは、AIを用いた広範な企業課題の解決に向け、プロダクト提供や伴走支援に留まらず、こうした知見共有の場を通じても、リテール業界全体のAX推進を力強く支援してまいります。