お客様の声

導入初月から月間200時間相当の業務効率化を実現。名古屋鉄道のChatGPT活用方法と効果とは?

名古屋鉄道株式会社

業種
交通サービス業
従業員数
約5,000名【単体】、約30,000人【連結】※2023年時点
用途
業務効率化、生産性向上

事例概要

課題

・ChatGPTの日本語版のリリース後、グループ会社を含めた従業員から「ChatGPTを業務で使っていいのか」「ChatGPTの利用ポリシーを定めてほしい」といった問い合わせが増えた。
・これを受けて、2023年5月にガイドラインを策定。ガイドラインでは、ChatGPTは原則利用できるものの、個人情報や機密情報の入力は禁止するなど制限を設けた。万が一情報の漏えいがあった場合には、速やかに報告することを義務づけるなどの細かなルールも設定。
・生成AIが業務の効率化や生産性の向上につながる可能性が高いと強く感じていたので、並行して、セキュアに利用できる生成AIの環境を整備しようと模索していた。

導入の決め手

・導入を決めた理由は、大きく3つ。 1つ目は、入力データがChatGPTの学習データに使われずに、機密事項として入力できること。2つ目は、ユーザー単位でログの取得が可能で、名古屋鉄道グループのコンプライアンスに対応できること。3つ目が、ライセンス使用料が安価で、コストを抑えられること。
・ユーザー一人ひとりの利用状態が日ごとに可視化でき、予算の上限設定も可能なため、コストコントロールができる点も魅力であった。

効果

・exaBase 生成AIを活用した「汎用活用検証トライアル」では、グループ会社含めて約200名の参加者が文書作成、情報収集、企画アイデア出し等に生成AIを活用し、導入初月から約200時間の業務効率効果を実現。2023年12月時点で約300名が利用しており、今後拡大予定。
・参加者からは「自分では考えつかなかったようなアイデアをもらえた」「新たな気づきを得られた」という声もあり、定量的な面だけでなく、定性的な面でも導入効果は大きいと評価している。
・非デジタル部門の社員からも「Excelマクロを含むプログラミングのコードの作成や確認に活用した」という声があり、デジタルスキルの幅を広げることができた。
・参加者への「今後も生成AIを継続して使いたいか」という質問には98%の人が「YES」と回答。業務を進める上で、生成AIが価値を生んでいることを実感した。
・2024年1月以降、自社データを取り込むことができるexaBase 生成AIの「データ連携」機能を活用し、自社固有の情報に関しても精度の高い回答を実現することを目指す。


早くから生成AIの可能性に着目し、業務への活用を模索した名古屋鉄道株式会社。同社では、エクサウィザーズの生成AI「exBase 生成AI powered by GPT-4」を2023年7月に導入し、3つの独自検証プロジェクトを進行させました。結果、1カ月で200時間相当の業務効率化を達成。今回は、同社のグループで生成AI活用の検証を推進しているデジタル推進部グループDX担当課長の壁谷 知宏氏に3つの検証プロジェクトの目的や内容、そして結果やそこから得た重要ポイントについて伺いました。

ガイドラインの策定と同時に、業務効率化のためセキュアに利用できる生成AIを模索

Q:今回、エクサウィザーズの法人向けChatGPTサービス「exBase 生成AI powered by  GPT-4」を導入された背景を教えてください。

 

名古屋鉄道株式会社

2022年11月にChatGPTの日本語版がリリースされ、わずか2カ月で1億人ユーザーを超え、さまざまなメディアでも連日のように生成AIが取り上げられていました。当社でも、グループ会社から「ChatGPTを業務で使っていいのか」「ChatGPTの利用ポリシーを定めてほしい」といった問い合わせが増えるようになりました。

これを受けて、2023年5月にガイドラインを策定。同時に生成AIが業務の効率化や生産性の向上につながる可能性が高いと強く感じていたので、並行して、セキュアに利用できる生成AIの環境を整備しようと模索していました。その際に、エクサウィザーズの法人向けChatGPTサービス「exBase生成AI powered by  GPT-4(以下、exaBase 生成AI)」の存在を知ったのです。

ガイドラインでは、ChatGPTの利用は原則できるものの、個人情報や機密情報の入力は禁止するなど制限を設けました。万が一情報の漏えいがあった場合には、速やかに我々への報告を義務づけるなどの細かなルールも設定。また、100社ほどある名古屋鉄道のグループ会社においてはChatGPTの利用を各社の判断に委ね、併せてガイドラインの策定も求めることとしました。

ユーザー一人ひとりの履歴の管理や、リーズナブルなライセンス料など、セキュア以外の魅力も導入の決め手に

Q:exaBase 生成AIの導入の決め手は何でしたか?

名古屋鉄道が、「exaBase 生成AI」の導入を決めた理由は、大きく3つです。 1つ目は、入力データがChatGPTの学習データに使われずに、機密事項として入力できること。2つ目は、ユーザー単位でログの取得が可能なため、当社のコンプライアンスに対応できること。3つ目が、ライセンス使用料が安価で、コストを抑えられる点です。

ユーザー一人ひとりの利用状態が日ごとに可視化できる上、予算の上限設定も可能で、コストコントロールが容易なのも魅力でした。これらの点から、2023年7月に名古屋鉄道グループ横断で利用を開始しました。 

3つの独自検証プロジェクトを同時並行で実施

Q:現在、どのように活用しているのでしょうか?

「導入効果を最大化する」「効率化の可能性を探る」という観点で、3つの検証プロジェクトを並行して進めています。

1つ目は、当社とグループ会社で希望者を募って、各業務における生産性向上にどの程度、生成AIが寄与するのかを検証した「汎用活用検証トライアル」です。

2つ目が、人的資本経営や新しい働き方の実現という視点を含めて、有志メンバーによって、より高度でクリエイティブな活用方法を検証する「高度活用検証ワークショップ」。

3つ目が、「自社データ活用生成AI開発」です。生成AIをより高度に利用するためには、今後自社データを生成AIに取り込んで、積極的に活用していく必要があります。そのために、自社データの活用が可能な生成AI環境を構築しようと考えています。

これらのプロジェクトを7月から年末にかけて約半年の期間で検証を進め、2024年以降には、実用化プロジェクトに発展させていく予定です。

文書作成、情報収集、企画アイデア出し等に生成AIを活用し、導入初月から約200時間の業務効率効果を実現

Q:まず、「汎用活用検証トライアル」の具体的な内容についてお聞かせください。

「汎用活用検証トライアル」では、生成AIの活用事例や活用方法において、どのぐらい活用できるかを定量的・定性的に検証していきます。具体的には、文書の作成や情報収集、リサーチ、企画のアイデア出し、議事録の作成、外国語の翻訳などが挙げられます。

名古屋鉄道グループにおいて、この検証トライアルへの参加希望者を募ったところ、約200名からの応募がありました。若手だけでなく、経営層やマネジメント層、中堅社員など、さまざまな職種の方から手が挙がったのは嬉しい誤算です。

まずは、希望された方全員にアカウントを付与。その後、この検証トライアルを推進していくために、次の3つの点で工夫を施しました。

 

  • 工夫(1)コスト意識の確認

参加者が、本当にコスト意識を持った人なのかどうかを見極めるために、この半年のトライアル期間中に、2回のアンケートに回答することを必須にしました。ChatGPT自体は、個人でも、ある程度の機能が無償で利用できるので、そのイメージのまま活用してもらいたくなかったからです。

また「exaBase 生成AI」のライセンス料金だけでなく、GPT3.5と4のバージョン違いでも、それぞれの利用料金が違うことを共有しました。その上で、1カ月半経って一度も使っていない人は、アカウントを回収することにしました。

 

  • 工夫(2)グループ会社には、無償でアカウントを提供

一方でグループ会社に対しては、無償でアカウントを提供しています。名古屋鉄道グループの多くが中小企業であり、デジタルリテラシーが高い会社ばかりではないというのが現実です。

まずは多くのグループ企業にこの生成AIを活用してもらって、少しでも業務効率化や事業拡大につなげてもらいたいと考えています。この検証期間中においては、グループ企業は無償で利用できるスキームにしました。

 

  • 工夫(3)定量・定性的なデータを取る

定量的、定性的なデータを取ることに加えて、製品を使う上での知恵をメンバー間に共有できるようにしたいと考えました。そこで、リアルタイムに共有できるチャットルームへの参加や、利用実績シートの入力を必須にしました。

生成AIを使っていく中では、プロンプトエンジニアリングと呼ばれる、適切な質問や指示をAIに与え、より良い答えを引き出すスキルが求められます。ただ、このプロンプトエンジニアリングを、全参加者が目指すのは簡単ではありません。

その一方で、日常での「こんな業務や用途に使えるのでは」といったアイデアは、高いスキルがなくても比較的簡単にできますし、新たな気づきにもなるのではないかと考えています。

汎用活用検証トライアルの概要(出典:名古屋鉄道)

利用実績シートには、生成AIをどのような作業に活用したのか、それが単発だったのか定期的に使えるものか、それによって業務時間がどのぐらい削減できたかを記載してもらっています。この手法で業務の削減時間を集約したところ、導入した7月18日から8月中旬までの1カ月間で、約200時間もの削減効果がありました。先日、11月末時点の数字を取ったところ、削減時間が800時間まで拡大をしていました。月間に直すと200時間程度、これを直近のユーザー数である300人程度で削減したことになります。

自由記載の意見として、「自分では考えつかなかったようなアイデアをもらえた」「新たな気づきを得られた」という声もあり、定量的な面だけでなく、定性的な面でも導入効果は大きかったと思っています。

驚いたのは、Excelマクロを含むプログラミングのコードの作成や確認に活用したという声が2割近くあったことです。デジタル部門やITシステム子会社の社員だけでなく、一般部門の若手からそうした声が上がってきました。生成AIを利用できる範囲が確実に広がっていることを実感しました。

最後に、「今後も生成AIを継続して使いたいか」という質問をしたところ、98%の人が「YES」と答えました。業務を進める上で、生成AIが価値を生んでいるというのが、まさにこの数字に表れていると思います。

 

名古屋鉄道株式会社

exaBase 生成AIの『データ連携』機能を活用し、自社情報に関する高精度な回答を実現

Q:「高度活用検証のワークショップ」「自社データ活用生成AI開発」など自社独自での取り組みも始めていますね。

「高度活用検証のワークショップ」は、生成AIに高い知見を持つファシリテーターが主導して、より高度でクリエイティブな利用検証を目的としています。

この取り組みは、デジタル推進部と総務部や人事部が連携し、人的資本経営でも重要視される社員のエンゲージメントの向上につなげるための施策や、今後労働人口が減少する時代に向けて、より少人数でも大きな成果が得られるための業務効果・効率の検証を行っていく予定です。

ワークショップ自体は全4回で、初回はプロンプトの作り方や他社の先行事例を学ぶ基礎的なプログラムを実施。2回目以降は、より具体的な活用方法を学習できるようにしていきたいと考えています。

第1回目のワークショップ終了後に何名かのメンバーに話を聞いたところ、「ファシリテーターから教わったプロンプトのテクニックを実践してみると、本当に活用できそうなアイデアが得られた」という声が上がってきました。

もう1つのプロジェクト「自社データ活用生成AI開発」では、株主総会やIR情報、社史、社内報など、自社固有の情報に関する質問に精度高く回答できるよう検証を進めています。このプロジェクトでは、システム開発により自社専用の生成AI環境の構築を進めていますが、精度比較のためにexaBase 生成AIの『データ連携』機能も利用しところ、自社で構築した生成AI環境以上の回答精度が得られることも多くありましたので、2024年1月以降はグループ各社にデータ連携機能を拡大していく予定です。

情報システム部門は業務効率化のチャンス

Q:exaBase 生成AIの活用を検討している企業様に、アドバイスはありますか?

大きく分けて、3つのメッセージがあります。このうち最初の2つは、ユーザー個人としてのアドバイスです。

 

100%の精度を追い求める前に、まずは利用してみる

生成AIの回答精度は、「100%ではない」ということを理解した上で、壁打ち相手として、どんどん質問を投げかけていってもらいたいと思っています。

すべてが正しくないにしても、初動を早めたいというニーズには必ず役に立ちます。これはあくまで一般論ですが、質問を繰り返すことによって精度が高まり、3割〜4割の業務効率化につながるのではないかと言われております。

また、効率化だけではなく、我々に新しい気づきを与えてくれます。先輩や同僚に対して質問ばかりを繰り返していると、たぶん嫌がられます。しかし生成AIは、どんな質問を何度行っても、愛想よく丁寧に答えてくれますし、自社の文化に染まっていないからこそ、我々が考えてもいなかったアドバイスを提案してくれます。マイクロソフトが自社の生成AI自体を「コパイロット(副操縦士)」と呼んでいますが、まさにその名の通り、我々のよき相談相手(パートナー)になってくれると思います。

 

現場だけでなくマネジメント層にも有用

生成AIが必要になるのは、いわゆる実務を担っているような若手や中堅職のみであって、経営層やマネジメント層は、その対象にあたらない。そんな間違った認識を一部の方は持っているという話をよく耳にします。

生成AIは、マネジメント層に対しても、アイデア出しや情報の収集などで、非常に優秀なパートナーになり得ます。今後、各社様が使う際にも、ぜひ経営層やマネジメント層に対しても積極的な活用を推奨していくのが、いいのではないでしょうか。

 

情報システム部門は、効率化のチャンスを逃すな

最後のメッセージは、情報システム部門の方向けです。おそらく社内での生成AIの利用ニーズは高まっていると思います。その一方で、ガイドラインの作成やツールの選定などに時間をかけてしまって、効率化のチャンスを逃してしまっていないでしょうか。

生成AI自体が日進月歩のテクノロジーなので、今日私が話している情報も、来月にはもう古くなっているかもしれません。どの生成AIが主流になっていくかは、誰にも分かりません。情報システム部門以外の社員からも非常に関心の高い生成AIは、同時に社員DXの意識を高めてくれる素晴らしいツールでもあります。ぜひ「スモールスタート、クイックイン」での導入も検討していただければと思います。