生成AIに触れる機会を増やし、グループ全体のDXを推進
東京ガス株式会社
- 業種
- インフラ・エネルギー
- 従業員数
- 15,963名【連結】 (2023年3月31日現在)
- 用途
- 業務効率化 DX推進
事例概要
Overview
ChatGPTの導入検討開始後、早急にグループ全体への導入を決定。全グループ員が生成AIに触れられる環境を整えることで、デジタルを通じた業務効率化と最新技術に対する認識の向上を促す
課題
・急速に普及する生成AI(ChatGPT)を自社でも早急に導入し、積極的に業務に活用していきたい
・企業活動においてDXが必須である中、社内でデジタルスキルや知見を持つ人材を育成したい。また、デジタルから遠い社員にも生成AIに触れる機会を提供したい
導入の決め手
・東京ガスグループが求めるセキュリティ基準をクリアしていたこと
・導入までのリードタイムが短かったこと
・エクサウィザーズが実施していたセミナーが非常に分かりやすかったこと
効果
・業務でデジタルを使うことが少ない社員も、広く生成AIに触れるきっかけとなった
・exaBase 生成AIの利用者が集まって活用方法を共有する場を設けたことにより、社内全体の知見が高まり、コミュニケーションも活発になっている
東京ガス株式会社は1885年に創業。エネルギーソリューション事業を主に展開しており、都市ガスの製造や販売のほか、LNG (液化天然ガス)の輸入販売や海外事業、都市ビジネスを手がけるなど、エネルギーバリューチェーンを中心に幅広い領域をカバーしています。
同社では、2023年から2025年の中期経営計画においてDXを戦略実行のひとつの軸とし、それぞれの事業領域でDXの取組みを加速させています。 DX推進の一環としてChatGPTの社内導入検討を開始。7月にはChatGPT「exaBase 生成AI」をグループ全体に導入しました。
今回は、東京ガスグループ全体のDX推進を牽引するDX推進部の皆様に、DX推進部のミッションやexaBase 生成AIを導入するに至った経緯、導入後に得られた成果やこれからの展望などについて伺いました。
これからの企業活動に欠かせないDXをグループ全体で牽引する「DX推進部」
Q: 企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を導入されたDX推進部の役割と、導入の背景について教えてください。
小代:DX推進部は、東京ガスグループ全体のDX推進を担当しています。
当社グループの各組織の変革を牽引し、データサイエンスやデジタル開発の側面でサポートするのがDX推進部の主な役割です。
例えば今回の生成AI(ChatGPT)のような新技術やデジタルツールをグループ全体に普及させ、その活用を促進することも同部のミッションの一つです。
企業活動においてデジタルが欠かせない時代になり、生成AIで業務プロセスやビジネスモデルが大きく変わるという現実味が増してきました。当社グループでは、デジタル技術と接する機会を創出して積極的に業務に活用していくことを目指し、いち早く生成AI(ChatGPT)の導入を決定しました。2023年7月当時、私たちの知る限りではエネルギー業界での導入は初めてだったと認識しています。
生成AIをいち早くグループ全体に導入することに、非常に大きな価値を感じた
Q: 企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を導入された背景について教えてください。
沼田:2023年3月にChatGPTのAPIが公開され、多くの企業がこれを利用したサービス提供を始めるのと同時に、私たちもChatGPT導入の検討をスタートしました。急ピッチで事業への活用可能性を調査した結果、その普及の速さと幅広い用途(要約や翻訳、ブレインストーミング、コーディング等)をふまえ、特定の部署だけでなくグループ全体での利用が望ましいと判断し、早期の導入を決定しました。
経営層の理解とエクサウィザーズ様の協力により、exaBase 生成AIの検討・導入はスムーズに進み、2023年7月にグループ全体での利用開始に至りました。
ChatGPTの導入は、新しい技術である生成AIに多くの社員が触れ、最新技術に関する理解を深める機会となることも期待できます。そのため、導入時には数値的な目標を設定せず、まずは多くの社員に広く使っていただくことを目指しました。
リードタイムの早さとセキュリティーの安心感が導入の決め手に
Q: 他の競合サービスとも比較された中で、企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を導入する決め手となったのはどういった点でしたか?
沼田:導入までのリードタイムが非常に短かったことです。また、導入検討時に拝見したエクサウィザーズ様のオンラインセミナーの内容が非常に分かりやすかったことも要因のひとつでした。早急にChatGPTを導入したいと考える中で、「まずはエクサウィザーズに相談してみよう」という流れが自然に起こりました。
エクサウィザーズの担当者様には、導入の条件であったセキュリティーの担保についても素早く対応していただき、安心材料となりました。
翻訳やブレストなど、幅広くexaBase 生成AIを活用
Q: 現在は、「exaBase 生成AI」」をどのように活用していますか?
町田:exaBase 生成AIの具体的な活用事例を収集し、他のユーザーの参考とすることを目的に会話数が多いユーザーにexaBase 生成AIの利用用途についてインタビューを実施しました。
その結果、翻訳、Excel関数の検索、コーディングに関する利用用途が多いことが明らかになりました。
小代:東京ガスグループでは、海外事業カンパニーだけでなく、海外の子会社や提携企業とのコミュニケーションも頻繁に発生するため、翻訳用途でexaBase 生成AIを活用する社員は多いですね。
町田:単にネット上の翻訳サイトのように文章を機械翻訳するだけでなく、「丁寧なビジネス表現にして」や「この日本語はこの英単語変換して」といった具体的なニュアンスを指定して翻訳ができる点などが便利だという声がありました。
また、日本語を英語に翻訳する際、翻訳した英文を再度日本語訳したものを出力結果に併記させることで翻訳と同時に翻訳の妥当性をチェックするという工夫をされている方もおり、工夫次第でさらに効果的に活用できる可能性があると感じました。
また、コーディングの補助としての用途も多く、exaBase 生成AIである程度の型を作り、その後で自らが手を加えてコードを完成させるという使い方をしているようです。
ドキュメントやウェブサイトを参考にコーディングする場合、エラー内容や解決策の調査は厄介ですが、exaBase 生成AIにエラーメッセージをそのまま読み込ませれば、エラーの解説や解決案の提案をさせることもできるので、あるデータサイエンティストはコーディングにかかる時間が3割ほど減ったといいます。
Excel関数については処理したい内容を日本語で入力し関数を提案させたり、他者が作成した関数を読み解くために関数の解説をさせるなどの用途で利用しているという回答もありました。
ウェブ検索代わりに使っている方もいます。これは、特定の情報を正確に得る目的ではなく、ある分野の情報を網羅的に知るためには有効なようです。
このケースでは、専門的な知識や技術情報を広範囲に把握し、その上で詳細な調査を必要とする項目をピックアップするための一次調査として利用されていました。
コーディング補佐の例(提供:東京ガス)
町田:情報を広く共有するため、事務局ではイントラサイト上にexaBase 生成AIのページを設け、ガイドラインや活用事例、よくある質問などの情報を掲載しています。そのページにアクセスすればexaBase 生成AIに関する情報が一通り把握できる環境を整えました。
また、Microsoft Teamsでユーザー向けのコミュニティも運営しています。
ユーザー同士がTeams上で「こんな便利な使い方ができました」といった情報を共有したり、操作方法やプロンプトの作り方などを質問し、他の方がそれに回答するなど、ユーザー同士でのやり取りが行われています。
閲覧のみの方もいれば積極的に情報発信する方もいて、各ユーザーが自分にとって使いやすい方法で活用しているようです。
コミュニティを盛り上げるため、事務局も定期的に活用事例やプロンプトなどの情報を発信し、活性化に努めています。
翻訳やコーディングでは、業務効率が3割向上したという報告も
Q: 企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を導入し、どのような成果を感じられていますか?
小代:今までデジタルやAIに触れてこなかった方にもexaBase 生成AIが広がり、「こんなことまでAIができるようになっているんだね」という驚きの声を多くいただいています。
町田:「生成AIにまず触れてほしい」という目的は達成されていると思います。それぞれの部署の中で「こういう使い方をしたら良かったよ」と話題になることも多いようです。
営業部署へのインタビューでは、「過去の提案を少しアレンジした提案ばかりになってしまっているので、その壁を打ち破りたい」という課題を抱えている方もいました。exaBase 生成AIを使うことによって、新たなアイデアを得たり、固定化された考え方を打破するきっかけとして使っているという事例も聞いています。
定量的な評価を実施したわけではないですが、インタビューした方からは、「翻訳にかかる時間が3分の1になった」という感想もいただいています。
小代:また、最近では、若手社員を中心とした有志のコミュニティや組合活動の勉強会でも exaBase 生成AIを取り扱う動きが出てきています。まずはexaBase生成AIに触れていただいて、そこから徐々に活用シーンを増やしていただきたいですね。
導入初期の8月にエクサウィザーズの方を講師に招いて生成AIに関する講演会を開催しました。講演では「AI生成とは」などの基本的な概要から、効果的なプロンプトの作り方まで、1時間で網羅的に解説していただき、説明も分かりやすく評判は大変良かったです。生成AIの全体像を理解するのに非常に役に立ちました。
リアルタイムで約700名が聴講し、講演後の動画発信も含めると、これまで1400名ほどが聴講しています。
生成AI活用をさらに高度化させ、次のステップに進みたい
Q: 企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を、今後どのように活用する予定ですか? また、「exaBase 生成AI」に期待することがあれば教えてください。
町田:exaBase 生成AIの社内データ連携機能を検討しています。
データ連携はさまざまなシーンで有効だと考えており、社内規約や労務関係のルール、事業毎の固有のルールなどを幅広く読み込ませるのも有用だと思います。
実際にインタビューでも固有データ連携のニーズはありました。生成AIに慣れた後の次のステップとして、この方向性はイメージしやすいと思います。
沼田:今までAIは限られた人が使うものだというイメージがありましたが、ChatGPTの登場によって一般の方が利用できるようになりました。
多くの社員から早期導入に対して感謝の声を頂戴しましたし、活用方法に関する問合せも多く寄せられています。
ただし、生成AIへの期待は増していますが、実際に利用するうえではさまざまなハードルがあると感じています。
生成AIは万能のではないため、少しでも有益に活用できるようにプロンプトの精度を高めるなど、ユーザーの工夫も必要です。エクサウィザーズ様には、生成AIを深く使いこなすための周辺技術も含めて開発していただきたいですね。
小代:使用頻度が低い方々に今以上に活用していただくため、事務局では情報発信を続けていきます。加えて、他の技術と生成AIの掛け合わせなど、より高度な生成AIの活用方法をグループ全体に展開し、次のステップに進みたいと考えています。