お客様の声

「『AIタマちゃん』に聞いてみよう」という声があちこちから聞こえるように。
SaaSと個別開発のいいとこ取りを目指す埼玉県の生成AI活用戦略

埼玉県

職員数
全職員
用途
アイデア出し、議会議事録からの関連情報抽出、要約、翻訳、校正、データ分析など

事例概要

課題・背景

• 生産年齢人口が減少する中で社会の活力を維持するためにDXを推進しており、生成AIにも早くから注目していた
• 実証実験などを通じて、プロンプトエンジニアリングを問わず活用でき、全ての業務で利用できるセキュリティが確保された生成AIの必要性を感じた
• 会議録作成業務の効率化のために音声テキスト化システムの導入も検討しており、さらに生成AIによる要約・校正を組み合わせることで効果が出ると考えた

『exaBase 生成AI for 自治体』を評価したポイント

• セキュリティが強固であること
• よく使うプロンプトをテンプレートとして登録できること
• SaaS(Software as a Service)のサービスであるため、導入コストが抑えられること
• 自動的に機能がアップデートされ、いつでも複数の最新言語モデルを利用できること

効果

  • セキュリティの確保された生成AIを導入したことで、多くの業務で活用できるようになった
  • 音声テキスト化システムとの併用により会議録作成時間を5〜6時間から1時間程度に短縮できた
  • 多くの職員がアイデア出しにも活用し、短時間で多角的な案を出せるようになった
  • 会議前に生成AIでアイデアを作り、それを基に職員間での議論を行うようになり、時間短縮と議論の充実につながっている
  • エクセルやパソコンなどの使い方が分からない場合も生成AIに聞くことですぐに解決できるようになった
  • アンケートの分析にも活用している
  • ユーザーインターフェースが使いやすく、業務効率化に繋がっているという声が多くの職員から寄せられている

埼玉県庁では、2023年4月という早い段階から生成AI導入の検討を進め、7月にはガイドラインを作成し、一部の職員を対象に実証実験も実施しました。2024年7月からは、自治体専用ChatGPT「exaBase 生成AI for 自治体」を導入。職員の皆さんに親しみを込めて使ってもらおうと「AIタマちゃん(あいたまちゃん)」という愛称を付けて全庁に展開しました。また、AI開発環境「exaBase Studio」も同時に導入し、自治体としては、exaBase 生成AIとexaBase Studioを連携させた独自ユースケースの創出を目指す初の事例となりました。他の自治体に先駆けて、なぜ、このような取り組みを始めたのでしょうか。行政・デジタル改革課 DX推進担当の江尻 孝樹氏と池田 啓治氏に詳しいお話を伺いました。

「TX(タスク・トランスフォーメーション)」の実現に向け、生成AIの活用をスタート

Q:埼玉県様では、行政DXを積極的に推進されていますね。生成AIの導入を考えたきっかけは何だったのでしょうか。

江尻氏:埼玉県では、大野知事のリーダーシップのもと、行政DXを積極的に進めています。その中でも、現在特に力を入れている取組として「TX(タスク・トランスフォーメーション)」というものがあります。機械にできることは機械に任せ、人間は人間にしかできない仕事をもっと力を込めてやっていこうという取組です。さらに、TXにより浮いた時間を活用して、業務の質の向上や職員のスキルアップにつなげて行くことも考えています。こうしたことにより、より良い県民サービスを実現するというのが目標です。

生成AIが自治体の業務効率化に非常に役立つという話題を耳にするようになったのは2023年の4月ごろからです。横須賀市の導入事例で、実証実験の開始からその後の取組まで大きく報道されていた時期だったかと思います。

そうした事例も踏まえて、埼玉県でも7月にガイドラインを定め、知識を事前に習得した職員に限定して、まずは無料の生成AIの利用を開始しました。
あわせて、生成AIの活用には、プロンプトエンジニアリングが必要ではあるものの、すぐにすべての職員が活用できるようになることは難しいと考えられたことから、プロンプト組込型の生成AIシステムを実証実験として構築しました。

池田氏:実証実験では多くの職員が共通して使うもので試した方がいいだろうと、記者発表資料のリード文やタイトルなどの生成で活用を始めました。あらかじめプロンプトを組み込んでおくことで、誰でもこれまでは思いつかなかったような面白いキャッチーなタイトルが作れるのではないかという可能性を検証したかったのです。

ただ、生成AIへの指示であるプロンプトの精度や参考情報として与える情報によってかなり回答が左右されることがわかって、当初はあまりうまくいかなかったという記憶があります。これを全ての職員に活用してもらうのは、なかなか難しいという印象がありました。

セキュリティや導入コストなど、多くの点で「exaBase 生成AI for 自治体」を評価

Q:そうした実証の取り組みを受けて、2024年7月より「exaBase 生成AI for 自治体」を全庁にご導入いただきました。どのような点を評価いただいたのでしょうか。

江尻氏:当初から、プロンプトの知識のない一般的な職員がプロンプトを書くのはかなり難しいだろうと考えていたのですが、よく使うプロンプトをテンプレートとして登録できる点はすごく良かったですね。

また、昨年度実施した職員アンケートでも、学習されるリスクがある生成AIでは、機密情報を扱う所属では、そもそも利用する余地がないという意見がありました。その点、exaBase生成AIは、セキュリティが確保されているため、県で扱っている非公開情報を入力しても、安心して気軽に使える点も高い評価がありました。また、SaaSのサービスであるため、導入コストも抑えられるところも良かったポイントです。

 

池田氏:自動的に機能をアップデートしてくれるのが非常に良いと実感しています。ニュースで知ったGPT-4oが、あっという間に使えるようになっていたのには驚きました。また、GPT-4oでは入力可能な文字数が1万文字程度でしたが、Geminiの国内リージョンに対応していただいたことで、10万文字程度まで入力できるようになったのはありがたかったです。議事録を扱うとなると、このくらいの文字数がないと対応できないのです。私の場合は、精度を求める場合はGPT-4o、文字数が必要な場合はGeminiと使い分けています。

「『AIタマちゃん』に聞いてみよう」という声があちこちから聞こえるようになった

Q:具体的にはどのようなことに活用されていますか。

江尻氏:例えば会議などの議事録を作る際に、これまでは文字起こしをして内容を確認して校正して幹部にあげるというプロセスに、5〜6時間をかけていたのですが、別途導入した文字起こしシステムと生成AIの併用により1時間程度で完了できるようになりました。

アイデア出しで使っている職員も多いですね。手軽に使えるからか、何かアイデアが欲しいと思ったら、「ちょっと『AIタマちゃん』に聞いてみよう」などという声があちこちから聞こえてくるようになりました。

池田氏:我々は、新しい技術を庁内に導入し、職員に活用してもらう役割を担っているので、どのような方法であれば職員に分かりやすく伝わるかという点で、いつも試行錯誤しています。そうした企画をゼロから考えなくてはいけない時に、様々な角度のアイデアを出してもらえるとすごく助かりますね。

これまでは大まかな方向性だけがあって、個別の詳細については、職員で集まって議論していました。今は担当者が生成AIとやり取りをしたアイデアの叩き台をベースに、そこからみんなで検討するというプロセスになり、かなりの時間短縮につながっています。また、議論の充実度もまったく違いますね。

生成AIにはなんでも聞ける安心感がある

Q:生成AIの意外な活用方法などはありましたか。

池田氏:職員が、エクセルやパソコンなどの基礎的な使い方が分からない場合、ヘルプデスクに電話で聞けるようになっているのですが、それを生成AIに聞くという使い方は、なるほどと思いました。ネットで調べるよりも手軽に聞けるのというのは、ヘルプデスクの代わりになるのだと感動しましたね。簡単なことだと隣の人に聞くのは憚られますが、「AIタマちゃん」には、なんでも聞ける安心感があるのだと思います。

 

江尻氏:生成AIへのプロンプトの投げ方を、生成AIに聞くという使い方も面白かったですね。アンケートの自由記載などで、多いものだと1000件ぐらいになることもあるのですが、それを分析するのに、どういうプロンプトを入れればいいのか聞いているというのです。最終的には人間の確認が必要ですが、これは非常にいい使い方だと思いました。

Q:職員の皆様からは使い勝手などでどのような声をいただいているでしょうか。

江尻氏:多くの職員が業務の効率化につながっていると話しています。ユーザーインターフェースも使いやすく、入力ボックスも分かりやすいため、使用感はとてもいいという声をいろいろな職員から聞いています。

研修で一度触ってもらうことで、ログイン率が向上

Q:今職員の皆さんのログイン率が約4割とのこと。利用率を上げるためにどのような工夫をされてきたのでしょうか。

池田氏:まずは一度触ってもらおうと、各所属課所単位で生成AIの研修を行いました。その結果、ログイン率はかなり向上しました。今は、自分の担当業務において「生成AIを活用する」という選択肢が増えてきているところではないかと思っています。

職員の皆さんからは、使い方に関するアドバイスを求める声もよくいただいているので、週に一回のペースで活用事例などをブログで発信しています。まだ基礎的な内容しか発信できていませんが、「AIタマちゃん」自身が書いているという設定で発信しているので、皆さん親しみを込めて読んでくれているのではないでしょうか。

Q:エクサウィザーズのサポートへの評価はいかがでしょうか。

池田氏:研修の資料についても、行政の職員がよりイメージしやすいように修正をお願いしたところ、丁寧に対応していただきました。非常に効果的な研修ができていると感じていますし、とてもありがたく思っています。

「exaBase 生成AI for 自治体」の導入を検討している自治体様向けにメッセージをお願いいたします。

池田氏:SaaSのサービスということで、導入コストが少ないところが大きなポイントではないでしょうか。また、生成AIの技術の進歩は目まぐるしく早いので、それに合わせて、自動的に機能がアップデートされていくのはとてもありがたく感じています。

江尻氏:一般の職員にとって、生成AIを上手に活用するのが難しい面もあると思います。「exaBase 生成AI for 自治体」では、プロンプトテンプレートが用意されていて、それを使いさえすれば誰でも簡単に使えるように仕組みなっています。これが大きな魅力だと感じています。

「exaBase Studio」との組み合わせでSaaSと個別開発のいいとこ取りを実現

Q:今回は、AI開発環境「exaBase Studio」も合わせて導入いただきました。その経緯を教えてください。

江尻氏:「exaBase 生成AI for 自治体」だけではできない、柔軟なAIアプリの開発ができるという点で導入させていただきました。生成AIが、職員にとっての必須のツールとは言えない中で、業務フローの中のシステムに組み込んだ方が導入効果が高くなるだろうという考えもありました。 exaBase Studio を用いて議事録要約アプリを開発し、全庁にリリースしましたが、その他、どの業務を対象にAIアプリを開発していくか検討している最中です。

池田氏:現在構想しているのが、庁内で利用しているノーコードツールやクラウドストレージなどとの連携です。今、庁内の様々なシステムの使い方に対する問い合わせを、ノーコードツール上で行なっているのですが、そのデータを活用して自動回答するようなアプリができれば、かなりの効果が出ると考えています。電話での問い合わせの場合、1件の質問に回答するのに5〜10分かかっていて、それを毎月50〜100件ほど対応しているので、単純計算するだけでもかなりの時間削減につながるはずです。

Q:「exaBase Studio」への今後の期待についてお聞かせください。

池田氏:今回、議事録要約アプリを作るに当たって、さまざまな改善要望を出させてもらった中で、約3か月ほどで構築が完了したので、スクラッチで作ることを考えると、かなりのスピード感があり柔軟性も高いと感じました。「exaBase 生成AI for 自治体」はSaaSならではの導入や運用の容易さやアップデートの頻度の高さなどがメリットではありますが、一方で個々の要望に沿っての変更がなかなか難しいところがあります。その部分を補うものとして「exaBase Studio」と組み合わせることで、SaaSと個別開発両方のいいとこ取りができるのが大きいと感じています。今後もこのような技術を活用し、TX(タスク・トランスフォーメーション)を進め、より良い行政サービスの提供を目指していきたいと考えています。