アナログな現場から、社員の思考力を拡張する組織へ。
尾州の老舗が挑む「職人技×生成AI」、付加価値で勝負するための実践的導入記

宮田毛織工業株式会社
- 業種
- 繊維製品製造業
- 従業員数
- 95名
- 用途
- デザイン・企画案の壁打ち、物流・仕入れ業務の判断支援、メール作成・文書校正、社員教育
事例概要
課題
・製造工程の物理的制約により多品種少量生産にならざるを得ず、差別化のための「企画力」強化が求められていた。
・アナログな業務慣習がボトルネックとなり、市場変化(EC化・トレーサビリティ対応)に伴う情報発信のスピードに追いつけなくなっていた。
導入の決め手
・入力データが学習に使われない高セキュリティな環境であり、機密情報を扱う上での絶対条件を満たしていた。
・管理が容易でコストメリットがある法人契約が可能だったこと。
・ITリテラシーが高くない従業員でも業務への適用が容易になる「テンプレート機能」が充実していたこと。
効果
- デザイン・企画の壁打ち:自分一人では思いつかないアイデアや配色を発見し、企画担当者の強力なパートナーとなった。
- 物流・業務の最適化:複雑な運送便の料金比較や仕入れ先の選定など、従来は経験や手作業で行っていた判断業務の効率化を実現した。
- 若手育成(OJT)の省力化:メール作成や敬語チェックに活用することで、上司の添削時間を削減し、若手が自律的に学ぶ環境となった。
世界有数の毛織物産地として知られる「尾州(びしゅう)」。この地で1954年に創業し、長きにわたり日本のファッション産業を支えてきた宮田毛織工業株式会社が、今、静かなる革命を起こしています。
それは、伝統的な職人技術と、生成AIとの融合です。
「AIを入れたら、俺たちの仕事はなくなるんじゃないか?」
多くの企業で囁かれるこの不安に対し、同社は明確な答えを持っています。「企業は人であり、AIを使える人が増えることで会社自体の価値もさらに高まる」。3代目社長の宮田貴史氏、DX推進のキーマンである山田崇統氏にお話を伺いました。そこには、急速なデジタル化の波に翻弄されるのではなく、それを自社の競争力へと転換し、「人間にしか生み出せない付加価値」で勝負し続けるための、極めて実践的なヒントがありました。
なぜ、織物の老舗に生成AIが必要だったのか?
~針の太さが決める運命と「多品種少量」への挑戦~
そもそも、なぜ宮田毛織工業は「企画力」の強化に生成AIを求めたのでしょうか。その背景には、織物とニットの決定的な構造の違いがあると、社長の宮田氏は語ります。
「織物というのは、ある程度機械を選ばず、一つの機械でいろんな太さの糸が織れる汎用性があります。しかし、ニットの場合はそうはいきません。機械に入っている『針の太さ』によって、編める糸が物理的に限られてしまうのです」
多様な風合いのニットを作ろうとすれば、針の太さが異なる機械を導入し、設備を広げていかなければなりません。その結果、どうしても多品種少量生産にならざるを得ず、「企画力」や「アイデアの総量」が競争力の源泉となります。
「設備を広げた先に、多岐にわたるモノづくりをし続けなければならない。だからこそ、人間の限界を超えてアイデアを出し続けるための『試行錯誤の相棒』が必要でした」(宮田氏)
「FAXと電話」では売れない時代。素材の裏にある「物語」のデータ化
さらに、尾州産地特有の課題もありました。生地の手触りや色を重視する現物主義、FAXでの受発注、そして分業制による縦割り構造。これらのアナログ文化が、DXの障壁となっていました。
しかし、市場は変化しています。
「コロナ禍を経て、ECでの販売が劇的に増えました。そこでは生地のスペックだけでなく、『どんな想いで作られたか』というストーリー性も伝えなければ売れません。また、SDGs対応としてのトレーサビリティ確保も必須です」(宮田氏)
かつてのように「糸の産地はどこ?」と電話で確認し、口頭でウンチクを語るだけでは、スピードも情報量も追いつかない。情報をデータとして集約し、瞬時に引き出せる環境を作らなければ、本来の「価値を伝える仕事」ができなくなる──。この危機感が、同社をDXへと突き動かしました。
衝撃のインフラ現状からのスタート
DX推進の旗振り役となったのは、勤続20年の山田氏です。デリバリー、営業、生産管理と現場のすべてを経験した彼が、3年前にシステム担当として直面したのは、衝撃的な現状でした。
「基幹システムは30〜40年前のもの。サーバー更新をしようにも、社内ネットワークの配線すら全貌が不明確。『このサーバーはやばい』という危機的な状況からのスタートでした」
山田氏は全PC、全回線を徹底的に調査し、まずはビジネスチャットの導入など、デジタル化の下地作りから着手しました。そして2025年、満を持して導入を決めたのが「exaBase 生成AI」でした。
exaBase 生成AIが選ばれた理由
数あるAIサービスの中で、なぜexaBase 生成AIだったのか。山田氏はexaBse 生成AI セールスパートナーである共立コンピューターサービスから紹介いただき「即決だった」と振り返ります。
- コストと管理のしやすさ:個別のチャットボット契約ではアカウント管理が煩雑になり、コストもかさむ。法人契約で一括管理できるメリットが大きかった。
- セキュリティへの信頼:入力データが学習に使われないセキュアな環境は、企業の機密情報を扱う上で絶対条件でした。
- 現場に優しい「テンプレート機能」:ITリテラシーが高くない従業員でも、テンプレートを使えば入力のハードルが下がり、業務への適用が容易である点が評価されました。
「あと、exaBase 生成AIの開発スピードにも感銘を受けました。頻繁にアップデートされ、新しい機能が追加されていく。エンジニアの方々の熱意を感じて、僕らもそれに呼応して使いこなさなきゃいけないなと」(山田氏)

宮田毛織工業独自の教育プログラム:「プロンプトで論理的思考を鍛える」
山田氏が特に力を入れたのが、社員への導入教育です。単なる操作説明ではなく、「思考力を鍛える」ためのユニークなカリキュラムが組まれました。
- 初級:マインドセットの変革
「AIは魔法の杖ではない」と明言。「ハルシネーション(嘘)」はAIの欠陥ではなく、使う側の指示(プロンプト)や知識不足が原因であると教え、AIへの過度な期待と依存を防ぎました。 - 中級:遊びを通じた成功体験
「桃太郎」の物語生成や、架空の「ナノバナナ」の画像生成など、遊び心のある課題で心理的ハードルを下げました。その上で、自社の生地画像を読み込ませ、「森の中にいるモデルに着せて」といった実践的なデザイン生成へステップアップさせました。 - 応用:プログラミング的思考の訓練
ユニークなのが「ITパスポート試験のクイズを作らせる」という課題です。「正解なら解説を表示、不正解なら再出題」という条件分岐を言葉で指示させることで、AIを動かすための論理構成力(プログラミング的思考)を養いました。
「AIを使うと仕事がなくなる」への回答
導入当初、現場からは「これを使ったら、自分はいらなくなるのではないか」という不安の声も上がりました。それに対し、山田氏はこう語りかけ続けました。
「違います。AIを使えば、ルーチンワークは半分になるかもしれない。でも、空いた時間で『人間にしかできない付加価値のある仕事』ができるようになる。自分の能力(レベル)が上がり、仕事の範囲が広がるんです」
具体的な成果事例
実際に、その言葉を裏付ける成果が出始めています。
- デザイン・企画の壁打ち
「ニットブリスター素材でゴルフウェアの柄案を5つ出して」と指示し、AIと対話を重ねることで、自分一人では思いつかなかったアイデアや配色を発見。企画担当者の発想を拡張する強力なパートナーとなっています。 - 物流・業務の最適化
複雑な運送便の料金比較や、最適な仕入れ先の選定など、これまで経験則や手作業で行っていた判断業務の効率化を模索しています。 - 若手育成(OJT)の省力化
若手社員のメール作成や敬語チェックに活用。上司がつきっきりで添削する時間を削減し、若手がAIを通じて自律的にビジネススキルを学ぶ環境が整いました。


企業は人であり、AIを使える人が会社の未来を創る
宮田毛織工業の挑戦はまだ始まったばかりです。
今後は、熟練職人の「カン・コツ」や過去の膨大な見本帳データをAIに学習させ、RAG(検索拡張生成)による「暗黙知の継承」を目指しています。
AI時代において、企業が生き残る条件。それは、AIに仕事を丸投げすることでも、AIを恐れて拒絶することでもありません。
「AIを使える人間」を育て、「AIを使える組織」へと変革することであると山田氏は説きます。
「AIに使われるな、AIを使え。」
尾州の地で編み上げられたこの新しい物語は、すべての日本企業に向けた、力強いエールのように響きました。私たちエクサウィザーズもまた、exaBase 生成AIを通じて、人が主役であり続けるためのDXを全力で支援してまいります。
共立コンピューターサービス株式会社
1980年の設立以来、OKB大垣共立銀行グループのIT戦略を担う中核企業として、岐阜・愛知・三重を中心にシステム開発・情報処理サービスを展開。 岐阜県大垣市に本社を置き、培ってきた金融システムの構築ノウハウを軸に、一般企業から地方自治体、学術機関まで、幅広いお客様の課題解決を支援するシステムインテグレーター(SIer)です。 自社パッケージ「PRISM」シリーズ(販売・生産・バックオフィス管理)の開発・販売を通じて企業の基幹業務を支えるとともに、強固なサイバーセキュリティ対策を提供。
さらに、昨今ではexaBase生成AIをはじめとする最新ソリューションを導入し、お客様のDX推進を力強くサポートしています。

【本事例で活用されたサービス】
exaBase 生成AI
AIエージェントNo.1※を獲得した、法人向けChatGPTサービス。
高セキュリティな環境での生成AI利用に加え、社内データと連携した高精度な回答生成(RAG)、利用状況の可視化など、企業の業務改革と生産性向上を強力にサポートします。
(※デロイト トーマツ ミック経済研究所「LLM(大規模言語モデル)を自律的に連携させ非定型業務を自動化するAIエージェント ソリューションサービスの市場動向」、発刊日2025年5月30日)