お客様の声

人手不足と技術継承の危機感を見据え生成AIを導入。経営層の意識変容と現場の自発的なAI活用を促す、組織としてAIを推進する仕組みとは?

西日本プラント工業株式会社

業種
建設、プラント・エンジニアリング
従業員数
2,024名(2025年4月現在)
用途
議事録・資料・報告書作成、文書要約・翻訳、マクロ作成補助 等

事例概要

課題

・人手不足が顕著であり、人を増やすのではなく、業務自体の省力化・省人化をしていく必要があった
・ベテラン技術者の暗黙知や豊富なノウハウは、言語化・文書化が難しく、若手への効果的な技術継承が困難
・安全性の観点から重要な記録やデータが紙ベースで管理され、アナログな状態で点在し、情報活用・共有がしにくく、デジタル化が進まない

導入の決め手

・原子力発電を含む重要インフラに関わる事業において、必須となるセキュリティ要件を満たしていた
・単一の生成AIモデルではなく、複数の生成AIモデルが選択でき、AI技術の進化の早さを気にせず最新モデルがすぐに利用できる
・ログ管理機能があることで、社員の利用状況が可視化でき、将来にわたり活用促進や活用阻害解消の展開が期待できる

効果

・生成AIで議事録や資料作成などの作業時間を概ね3〜4割削減。社員アンケートで6~7割が業務効率化を実感し、業務負担軽減と効率化を実現
・受講者の役割・ニーズに合わせた研修と、活用事例などの情報発信やこまめなユーザーサポートの組み合わせにより、経営層と現場双方でAIへの理解と活用意識が高まり、組織的なAI推進が加速
・現場から自発的なマクロ作成などの生成AI活用の事例が生まれ、業務課題の横断的な解消につながった

西日本プラント工業は、1954年の創業以来、九州電力のグループ企業として全国の火力・原子力発電設備の建設やメンテナンスを担う総合プラントであり、高い技術力で電力インフラを支えてきました。

同社は、少子化による人手不足や、アナログで保持している情報の利活用や管理、ベテラン技術者の技術継承の難しさ、現場のナレッジ蓄積といった建設業界特有の課題に直面し、exaBase生成AIを単なるツール導入ではなく、課題解消と組織文化を変える「仕組み」として導入しました。

生成AIの導入、活用事例などの情報発信、受講者の役割やニーズに合わせた研修、ユーザーへのこまめなサポートを組み合わせることで、経営層の意識変容と現場発の自発的な活用を促進。組織的なAI活用の仕組みづくりを進めてきました。2025年2月にはDX推進プロジェクトが立ち上がり、2026年1月には「社会の明日を創る」をコンセプトに約30年ぶりに制服をリニューアルするなど、全社的な改革が進む中でDXの流れとも重なり合い、取り組みはさらに加速しています。

アナログ資産をデジタル価値へと昇華させ、トップダウンと現場主導の両面からAI活用を推進する仕組みや工夫も踏まえ、技術戦略本部 技術統括部部長の井浦氏と技術統括部 技術開発Gの下脇氏に、これまでの挑戦や成果を伺いました。

導入の背景:人手不足と技術継承への危機感と、生成AIがもたらす変化の期待

生成AI導入にあたり、どのような課題意識をもっていましたか?

井浦氏:「前提になる課題意識として大きかったのは、人手不足と技術継承への危機感です。少子化でそもそも人が足りない中で、どのように業務の省力化・省人化を進めていくか、また現場を長年支えてきたベテランの方々が高齢化し、技術をどのように次の世代に残すかという課題がありました。また、長い歴史の中で培われた技術情報の多くが紙で保管されていたり、個人の頭の中にあったりして、アナログな資産が多いため、デジタル化やデータの活用が十分進んでいないという問題もありました。

そうした課題意識を背景に、2023年7月頃から技術統括部が中心となって、今後の中核技術のひとつとして生成AIに着目し、9月には試験的に導入を始めました。

技術戦略本部 技術統括部部長 井浦氏

 

下脇氏:当時は、まだ生成AIが今ほど成熟しておらず、できないことも多い状況でしたが、「AIやロボット技術は、将来的に劇的に状況を変えうるものになる」と強く感じ、導入を進めることにしました。

導入の決め手:堅牢な「セキュリティ」と将来の展開を見据えた「ログ活用」「複数の生成AIモデル」

「exaBase 生成AI」を選んだ決め手は何でしたか?

下脇氏:複数のサービスを検討しましたが、重視したのは「セキュリティ要件を満たしていること」「ログ管理機能が充実していること」「複数の生成AIモデルが利用できること」です。3つの要件を満たしていたのがexaBase生成AIだけだったので、すぐに決まりました。

原子力を扱うインフラ企業にとって、最優先はセキュリティの要件です。情報処理や保守管理において情報が国内環境で完結していること、学習データとして二次利用されないこと、通信経路の暗号化やアクセス権限の制御が実装されていることが必須要件でした。加えて、誰がいつどのような内容を扱ったかを追跡できる「ログ管理機能」を備えていることを重視して判断しました。

ログ管理の機能は、セキュリティ監査やコンプライアンス対応がしやすくなるだけでなく、利用状況が可視化できる利点もあります。「どの業務プロセスにAIを組み込むと効果が高いか」「社員がどこでつまずいているか」を理解し、効果の横展開や利用方法の改善につなげることができ、将来的なDX施策の設計にも活かせると考えています。

さらに、「AI技術の進化スピード」がリスクになりかねないという危機感から、柔軟に生成AIのモデル選択ができることを重視しました。生成AIはモデルによって得意・不得意が違います。exaBase生成AIは、複数のモデルから柔軟に選択ができるので、文章要約に強いモデル、マクロ生成に強いモデルを使い分けたり、将来より性能の高いモデルが出てきた際にも柔軟に切り替えたりしながら、常により良い選択肢を取り続けることができ、業務の質向上や効率化のメリットが大きいと感じました。

技術統括部 技術開発G 下脇氏

導入後の活用と成果:文書作成等の業務で、作業時間3〜4割削減を実感。利用率は右肩上がりに上昇。

exaBase生成AIをどのように活用いただきましたか?

下脇氏:まず試験導入期間を設け、「生成AIをどう業務に活用できるか」を考えてもらうために、あえて全社員を対象に利用環境を整えました。当初は様子見だったものの、次第に日常業務で使われる機会が増えてきて、アンケートでは6~7割の社員が業務効率化を実感しているという回答を得ました。そうしたアンケート結果や利用状況を踏まえ、2024年4月に700名規模で本格導入することになりました。

活用方法は、本店のバックオフィスでは、会議の議事録作成や報告書・提案資料のたたき台作成、長い技術文書やメールの要約・翻訳といった“文章仕事”から使われ始めました。また現場では、高度なExcelマクロを作成するなど、自発的な試行が早い段階から出てきました。

exaBase 生成AI のテンプレート活用イメージ

 

生成AI活用の成果はいかがでしたか?

下脇氏:議事録や資料作成にかかる時間の3〜4割は削減できているという声が上がっています。利用者の割合は社内全体で3〜4割程度に落ち着いていますが、その人たちの1人あたりの利用回数は明らかに右肩上がりで、日々の業務プロセスの中に組み込まれ始めていると感じています。

exaBase 生成AI 活用後アンケート

社内浸透の工夫:「現場フォローの仕組み+管理職向け研修」で社内の意識を変え、生成AI活用を加速

導入後の活用が進まないという悩みを他企業様からよく伺うことがありますが、活用促進のためにどのような工夫をされましたか?

井浦氏:単にツールを入れただけでは活用促進・社内浸透は難しく、また、ボトムアップだけではなく、トップダウンも推進することで、AI活用やDX推進が進むと考えています。

下脇氏:導入後は社内イントラ上での情報発信や受講者の役割・ニーズに合わせた研修、ユーザー現場へのきめ細かなフォローを組み合わせて行いました。
その中でも管理職向けの研修は、経営層・部長職に「AIがもたらす未来でどう企業が変わるのか」を考えてもらうことで理解と興味関心を持ってもらい、社内全体でのAI導入をトップダウンでも推進するきっかけ作りを狙いとして実施しました。そのため経営層・部長向けには内製の研修ではなく、外部講師としてエクサウィザーズの大植様をお招きすることで、より説得力が増すと考えました。

また、現場に対しては、現場から上がってくるユースケースのアイデアに対して、より良い活用方法を一緒に考え、活用を促すフォローを行っています。

社内イントラ(部分抜粋)

 

部長向けのAI研修は、社内浸透にどのような効果がありましたか?

井浦氏:生成AIの活用を社内の様々な業務に広げていく効果があったと思います。部長は現場と経営層をつなぐ立場であることから、生成AIの可能性を理解した上で自部門の活用を促し、役員層に活用の効果を示すことで、全社展開の布石になると考えました。

生成AIの基本的な使い方や活用事例だけでなく、生成AIが企業活動に与える影響や未来の可能性などを2時間程度でしっかり伝えた結果、活用のケースを理解し「うちの部署でももう少し踏み込んでいこうか」という前向きな反応が多数ありました。部長が生成AIに理解があることで、現場の活用を推進する後押しになったと思います。

また、部長向け研修の結果を社内で共有したところ、役員のほうから『自分たち向けの研修もやってほしい』というリクエストがきたことにも、上層部の意識が変わった手ごたえを感じました。

役員層がAIに対して前向きになると、現場としても『会社としてこの方向に進むんだ』というメッセージを受け取りやすくなりますし、予算面や制度面での後押しも得やすくなります。トップの意識と理解を引き上げることで、AI活用を“現場任せ”にしない雰囲気ができてきたと感じています。

 

現場での活用促進やフォローについて、くわしく教えてください。

下脇氏:導入後、いくつかの現場から、自発的に『マクロを作成した』といったボトムアップの活用事例が出てきました。興味や利用意向が高い社員やヘビーユーザーに対して個別にフォロー活動をしたり、出てきたアイデアに対し、私たち技術統括部が一緒になって、テンプレートや活用方法の改善に取り組んだりしています。

社内のイントラや研修でそのようなユースケースを紹介し、「こういうふうに使えばいいのか」と具体的なイメージがわいてくると、“興味はあるけど使い方が分からない”という層も利用することに対して積極性がでて、周囲にも使い方を教えたりと横展開もみられてきます。こういった地道な取り組みはかなり効いていると思います。

今後の展望:生成AIを「当たり前に使える道具」とし、技術継承と人手不足の解決に取り組む

今後、生成AIをどのように活用していきたいと思われますか?

井浦氏:まずは、まだアナログのまま残っている仕事をデジタル化していくことが出発点です。その上で、それらをデータベースとして整理し、生成AIが検索・要約・比較できる状態にしていくことで、DXとAI活用がつながるイメージをもっています。

下脇氏:今後特に重視しているのは、ベテランの暗黙知を形式知化し、技術伝承につなげる取り組みです。AIを使ってベテランがもつ“勘どころ”を抜き出して、ナレッジとして整理・蓄積し、AIを使ってナレッジを引き出していく。こうした仕組みを通じて、“社内の技術財産”を伝えていきたいと考えています。

同時に、ツールそのものの進化にどう対応するかも重要です。現場の人が使いこなすにはハードルになる部分を、現場のワークスタイルに合った方法やインターフェースに変えていく。技術やツールの進化をうまく取り込みながら、“人にしかできない判断やコミュニケーション”に時間を割けるようにしていくことが、人手不足解消の一つの鍵になるはずです。

最終的には、どんな姿を目指していきたいですか?

下脇氏:全社員が使いたいときに自然にAIを使える状態を目指したいです。特定の人だけが高度に使うのではなく、誰もが自分の業務の中で、議事録や資料作成、安全確認、技術の振り返りといった場面で当たり前のようにAIを利用できるようになると、会社全体の仕事の質やスピード、安全性が底上げされていきます。そうなれば、一部の人だけの取り組みではなく、現場と本店、ベテランと若手、全員が関わる“日常のDX”になっていくはずです。

これから生成AIに取り組む企業担当者の方へのメッセージ

生成AIの導入を検討している企業の担当者に向けて、メッセージをお願いします。

下脇氏:まずは議事録や資料作成など、効果が見えやすい業務から小さく試し、成功体験をつくることが大切だと思います。具体的なユースケースを示し、「あなたの業務がこれだけ楽になる」ということをメッセージしています。

同時に、AIを導入しただけでは現場の活用は進まないので、技術統括部がユーザーのやりたいことや困りごとをくみ取って、使ってみたくなる雰囲気を作ったり、直接の対話を通して技術を高め、質を上げたりする動きを積み重ねながら、進めていくことも必要だと思います。

生成AIはまだ発展途上ですし、正直“できないこと”もたくさんあります。ただ、それでも私たちは「人手不足と技術継承という本丸の課題に効く」と感じて一歩を踏み出しました。小さく試して、うまくいったところを伸ばしていく。その積み重ねが、気がつくと会社全体のDXや働き方の変化につながっていくのではないかと思います。