導入事例
旭化成セラピューティクス株式会社「エクサベース ロープレ」
導入事例インタビュー「1ヶ月で半年分の経験」を生む擬似OJT
希少疾患領域のMR育成を標準化へ
導入事例インタビュー
希少疾患領域のMR育成を標準化へ

旭化成セラピューティクス株式会社
- 業種
- 製薬業
- 部署
- 医薬営業本部 エムパベリプロジェクト
- 育成対象人数
- 15〜20名(全国ブロック)
- 用途
- MR(医薬情報担当者)の営業トレーニング、面談ロールプレイング、教育標準化、暗黙知の形式知化
インタビューにご協力いただいた皆様
事例概要
課題
- 希少疾患領域ゆえに患者・専門医が少なく、実務(OJT)による成長機会が極端に限られる
- 専任担当をアサインしてから一人前になるまでに長い時間がかかり、成果が出にくい
- MRが全国に散らばり、年齢層も幅広いため、マンツーマンのリアルなOJTが物理的に困難
- 従来の研修はアウトプット機会が限られており、指導者ごとに判定基準・知識量がバラバラで標準化されていなかった
導入の決め手
- 患者・専門医との接点が少ない中でも、多様な症例・議論を擬似的に経験できる点
- OJTで「その場面が来てから教える」のではなく、想定される論点・切り返しを事前に準備・訓練できる点
- 全国に分散したメンバーがいつでも・どこでも・同じ基準でトレーニングできる点
効果
- 主体的に取り組んだメンバーは準備力・切り返し力が明確に向上(上司・本人ともに成長を実感)
- アンケートで「面談の心理的ハードルが下がった」「事前準備の感覚が高まった」といった声が多数
- 特に4月異動の新任メンバーに高い効果。経験ゼロでも専門領域の面談を擬似体験できている
- 体感として「exaBase ロープレ1ヶ月で、通常の半年分以上の経験ができている」
本文
プライマリー・スペシャリティー領域から希少疾患へ。残された課題に挑む「エムパベリプロジェクト」
──まずは御社の事業と、おふたりの役割を教えてください。
当社は2026年4月に、旭化成ファーマから旭化成セラピューティクスへ社名を変更いたしました。もともとは整形外科、特に骨粗鬆症の領域で業界に存在感を示してきた会社であり、その後は感染症(DIC・真菌)、リウマチ(免疫)という3領域を主軸に事業を進めてまいりました。
現在、製薬業界全体では、プライマリー(一般的な疾患)の課題はおおむね解決されつつあり、残された課題が血液・オンコロジー(がん)および希少疾患領域となっています。我々のエムパベリプロジェクトは、その希少疾患に取り組むプロジェクトチームです。これまでの血液・感染症領域における人脈とノウハウを生かし、希少疾患の中でも血液の病気であるPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)に焦点を当て、ビジネスチャンスを見出して事業を進めています。プライマリーとは違う活動が求められるため、AIロープレを用いて、MRの能力を早期に標準化することを軸に活用しています。
私は、この4月に発足したエムパベリプロジェクトの責任者を務めています。倉田は、長らくエムパベリという商品を扱ってきたMRであり、今回はブロック長として、ブロックの責任者と教育担当を兼務しています。
私は、営業とマネジメントを担いながら、本社の全社営業教育も担当する立場にあります。育成対象は全国ブロックで15〜20名ほどです。exaBase ロープレについては、関係者の協力も得ながら、企画から運用までを担当しています。

患者も医師も少ない希少疾患領域。“実務で経験を積めない”という育成のジレンマ
──導入前は、どのような課題を抱えていたのですか?
やはり希少疾患であるため、患者さんが少なく、複数の患者さんを診ている医師も限られています。例えばがんの場合は、多くの医師が数多くの患者さんを診ていますが、PNHでは担当患者が一人だけということも少なくありません。そのため、実務による成長機会が圧倒的に限られてしまう点が、最大の課題でした。専任担当をアサインしてから一人前になるまでに非常に時間がかかり、なかなか結果が出ない状況が続いていたのです。
さらに、MRは全国に分散しています。座学で知識をインプットしても、現場でのOJTをマンツーマンで行うことはできません。遠隔でのマネジメントが前提となる中で、いかにしてアウトプットの機会を作るかが、非常に大きな課題となっていました。
そこで、DXの一環として、AIロープレを活用し、医師との議論や多様な症例を擬似的に経験できる環境を構築できないかと考えました。これまでに蓄積してきた症例のノウハウがありますので、それを生かしてトレーニングを行いたいと考えたのです。
──exaBase ロープレのどこに、可能性を感じましたか?
自分でシナリオを作成していく中で、「これは使える」という実感を得ました。OJTでその場面が訪れて初めて指導できるという従来の在り方から、あらかじめ想定された論点に対して「このように切り返しましょう」と事前に準備・訓練できる在り方へと変わります。そこに大きな可能性を感じました。希少疾患における専門的なやり取りは、現場で経験を積もうとしても機会そのものが限られますので、擬似的にでも何度も練習できることの意義は大きいと考えています。

シナリオづくりは「理想形から逆算する」。営業ノウハウを形式知に変える設計術
──exaBase ロープレで一番こだわったのは、どこでしたか?
シナリオの設計です。最終的に確立した手順は、①理想のトークスクリプトを作る → ②シナリオに落とし込む → ③判定基準を作る → ④アバター(AIの医師役)を作ってexaBase ロープレに反映する、という4段階です。
ポイントは、まず理想のトークスクリプトを最初に作成し、そこに寄せた判定基準を組み立てていくという順番です。当初は順序が定まらず試行錯誤もありましたが、この型に行き着いたことで、シナリオを綺麗に作成できるようになりました。AIロープレの質は、この設計の土台で決まると感じています。
──トークスクリプトは、もともと倉田さんの中に暗黙知としてあったのでしょうか?
いえ、これはexaBase ロープレでシナリオ設計を行う際に、改めて言語化したものです。研修ではどうしても一問一答になりがちですが、実際の面談は「このような流れになれば、こうした質問が来るため、このように切り返す」という連続で成り立っています。これは面談経験がなければ作成できません。作成を進める中で、自分自身の思考の整理にも役立ったと感じています。製薬のMR活動は、論文や製品知識をどの順番で、どのように会話へ乗せるかという“流れ”が肝となりますので、それを形式知に落とし込めたことは大きな成果だと考えています。
──シナリオ作成は、お一人で進められたのでしょうか?
途中までは一人で進めていましたが、月に何本も作成するとなると一人では対応が難しく、一時的に最大4名で実施しました。私が「このような目的で、このように作ってほしい」と指示を出し、最後に私が調整するという分担です。現在は13種類のアバターと、約10〜12本のシナリオを運用しており、今後も定期的に増やしていく予定です。
取り組んでみて分かったのは、質の高いシナリオを作成するには、営業現場の経験と、生成AIのプロンプトスキルの両方が必要だということです。どこまで医師と議論を掘り下げられるかという観点は、現場を知っているほど深くなります。だからこそ、シナリオ作成の手順自体を細かく標準化し、誰でも一定の品質で作成できる形に整えたことが、体制づくりの鍵となりました。これからAIロープレを導入される企業には、営業現場を知る実務者を早い段階で巻き込むことをおすすめしたいです。
丁寧なインプットでスタート。成果を分けたのは「年齢」ではなく「主体性」だった
──メンバーの皆さんは、AIロープレを受け入れてくれましたか?
導入の背景やサービスの説明はもちろんのこと、私自身が模擬ロープレを実演し、「このようなフィードバックや点数が返ってくる」という点をお見せしました。誰も経験したことがないため、まずはやってみよう、という進め方です。こうした丁寧なインプットを重ね、2025年9月頃から、20名で利用を開始しました。

──AI利用は年齢差が出やすいとも言われますが、いかがでしたか?
利用開始当初は苦戦する年齢層の方もいましたが、慣れてしまえば、使う・使わないに年齢差はありませんでした。差が生じたのは、回数目標に対して早い段階で主体的に取り組むか、あるいは毎月ギリギリにまとめて取り組むか、という姿勢の違いです。前向きかつ、主体的に取り組んだメンバーほど、営業スキルが確実に向上していきました。
アンケートが示す「心理的ハードルの低下」と「アウトプット力の向上」
──導入後の効果は、どのように現れていますか?
毎月、新規シナリオを4回実施し、翌月には復習として80点以上の取得を目指す、という設計で運用しています。利用後のアンケートでは、次のような結果が得られました。
| 項目 | 傾向 |
|---|---|
| 回数・気軽さ | 最も高評価 |
| スキル向上レベルが十分だったか | 高評価 |
| 面談の心理的ハードルが下がった | 比較的高評価 |
| 反論にスムーズに対応できる | 比較的高評価 |
| アポイント増加に直接役立ったか | 低め(今後の課題) |
「実際の面談で役立った場面」としては、論点の説明精度の向上や、現場でのアウトプットの円滑化を挙げる声が約半数を占めました。アウトプットができるようになることは研修の本来の目的でもありますので、その点に価値を感じてもらえていることは大きな成果だと考えています。
経験ゼロの新任メンバーが、初日から専門領域の面談を擬似体験できる
──特に効果が大きかったのは、どのようなメンバーでしたか?
4月に新しい組織が発足し、新任メンバーが4名ほど加わりました。希少疾患は症例が少なく、担当変更で医師とのコンタクトも取りづらい状況です。そうした中で、早く成長させる方法としてexaBase ロープレが最適と考え、初日から取り組んでもらいました。すると、実際の面談を経験していないにもかかわらず、しっかりと提案や切り返しができるようになっていたのです。これは、本当にすごいことだと思います。
MRは異動も多く、担当地域や領域が変わるたびに、新しい疾患領域をゼロから学び直すことになります。その立ち上がりをいかに早めるかは、製薬の営業組織に共通する課題ですが、AIロープレはまさにその点に効果を発揮しました。

──上司の立場からは、どんな価値を感じていますか?
プライマリー製品担当から新しく配属になった新任MRや、他社から入社いただいたメンバーなど、様々なキャリアのMRが所属しておりますので、全員が一定のロジックを動かせるようになれば、組織として相当強くなります。人数が多く、上司が全員にOJTを行うことはできませんので、上司の立場からすると、AIロープレで底上げができる点が最もありがたいと感じています。
「教育を標準化する」という、組織を強くする最大の価値
──導入してよかったと感じる点はどこですか?
正直に申し上げると、これまでアウトプットの教育は非常に少ない状況でした。2ヶ月に1回、会議の30分でロープレを実施したとしても、判定基準も知識量もバラバラで、あまり意味をなさない状態だったのです。教育を標準化するうえで、アウトプットは絶対に必要だと考えていましたし、それがexaBase ロープレによって機械的に何度でも実施できるというのは、組織を強くするという意味で、非常に価値があると感じています。
感覚的には、わずか1ヶ月のAIロープレで、通常であれば半年以上かかる経験を積むことができています。exaBase ロープレの導入によって、営業スキルの習得スピードが圧倒的に速くなったという実感があります。
適用領域の拡大と、面談分析への発展
──今後は、どのように活用を広げていきたいですか?
適用範囲はまだまだ広がると考えています。血液や免疫領域といった、他の専門性の高い領域についても、同じように展開ができるのではないかと考えております。人事異動も多いため、AIロープレでノウハウを組織に蓄積していくという意味でも、アバターやシナリオを増やしていきたいと考えています。
──練習だけでなく、実際の面談での活用も視野に入れていますか?
今後は面談を録音して分析にかけ、医師のタイプ別に最適なアプローチを提案する仕組みも必要だと考えています。専門性の高い領域ほど、原稿を読むだけでは成長しきれません。だからこそ、AIロープレのようなツールで担当者をレベルアップさせ、自分の言葉で話せるようにするのは有効だと思っています。
しかしながら、医療業界においても個人情報保護の観点は重要になります。希少疾患領域は、医療関係者との対話の音声を取得する場合に患者個人の特定リスクがあるため、契約面の整備以外にも課題があり、慎重に進めていく必要があります。
これから導入を検討する製薬企業の方へ
本事例から見えてくる、exaBase ロープレ活用を成功させるポイントは次の3点です。ぜひ参考にしてみてください。
1. 設計の土台は“現場の経験”
シナリオの質は、MR活動を知る人がどれだけ関与できるかで決まる。実務者を早期に巻き込む体制づくりが重要。
2. 年齢ではなく主体性が成果を分ける
丁寧なインプットとAIロープレの実施回数目標で、誰もが主体的に取り組める環境を整える。
3. “いつでも・どこでも・同じ基準で”が組織を強くする
患者・専門医が少なくOJTが難しい領域や、全国に分散した組織こそ、AIロープレによる擬似経験とアウトプットの標準化が大きな効果を発揮する。

