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COOが実践するAIドリブン経営 ~戦略リサーチから意思決定まで、AIをフル活用した経営業務のアップデート~

  • 大植 択真(おおうえ たくま)
    株式会社エクサウィザーズ 常務取締役COO 兼 株式会社Exa Enterprise AI 代表取締役
COOが実践するAIドリブン経営 ~戦略リサーチから意思決定まで、AIをフル活用した経営業務のアップデート~

エクサウィザーズの「AIエクセレンス推進室」では、一部のエンジニアだけでなく、経営層から現場の実務担当者まで、全社員がAIを活用する「AIドリブン経営」の実現に向けた取り組みを推進しています。本連載「AIドリブン経営の舞台裏」では、社内のリアルな実践知を発信しています。

第2回となる今回は、エクサウィザーズ 常務取締役COOの大植が、自身の経営業務をAIでどうアップデートしているのかをご紹介します。

※本記事は、2025年12月25日にエクサウィザーズ HR noteで公開した記事を再編集したものです。

意思決定の「質」と「速度」をAIの力で向上させる

 エクサウィザーズが推進するAIドリブン経営の本質は、意思決定の質と速度を同時に上げることにあると考えています。

 常務取締役COOとして日々の経営や執行の舵取りを担う中で、昨今のAI市場の進化に伴い、個別の判断に求められるスピード感は日々高まっています。そうした判断を支えるための社内外の情報収集やリサーチ、稟議や資料レビューという一連のプロセスをAIでより良くしたいと思っていました。

 私自身がAIを使い倒し、自分の分身とも言えるワークフローを構築することで、現場との往復を減らし、組織全体の生産性をどう高めていけるのか。大学卒業以来、コードを書いたことがほとんどない私の視点から、経営の仕事に手触り感のあるAI実装について共有させていただきます。

【リサーチ】評価しながら使い分ける。AIが「一次分析」を肩代わりする

 経営方針を練る際、社内外の「情報の収集と分析」は言うまでもなく重要です。特に、数百ページにも及ぶ調査レポート(英語であることが多い)の読解や公開情報の少ない未上場企業の戦略調査は日常的に行う仕事のひとつです。

 現在は、複数のAIツールを自ら評価しながら、適材適所で使い分けています。日常的な生成AIの利用には自社サービスでマルチLLM対応の「exaBase 生成AI」を、並行してGoogleの「NotebookLM」も活用しています。あえて複数のツールを立ち上げるのは、それぞれに得意領域があるからです。

 例えば、AI業界における他社調査です。特に非公開企業の数値やKPI概算や推定などをAIに行わせているのですが、その精度の高さやロジックの立て方には目を見張るものがありました。かつて数時間かけていた調査や論理構成を、AIは数分で、しかも納得感のある形で出力してくるからです。

 また、講演資料を作成する際も、対象地域の公開情報をAIに一括でリサーチさせました。ソースを読み取らせ、1枚のサマリーにまとめ上げる。この事例は非常に精度が高く、人間が「情報を探して読む」時間を、「情報を解釈して戦略を練る」時間へと転換できている実感があります。

NotebookLMでリサーチして作成した地方創生の講演資料用の1枚サマリー

※ 新潟日報社とエクサウィザーズの公開記事をAIに収集させ、下記のプロンプトで出力
「イベント登壇の際の事例紹介スライドとして、新潟日報とエクサウィザーズの取り組み事例スライドを1枚お願いします。特に、地域創生ビジネスやオープンイノベーションの事例として紹介したいです。」
※ 図は、生成AIによって作成されたスライドイメージのため、一部文字の崩れが含まれます。現時点では詳細な日本語表現に改善の余地があるものの、スライドの設計図(構成案)を即座に可視化できる実例として掲載しています。

【資料作成】「美麗な文章」は不要。再定義される「ドキュメント能力」

 情報のインプットが加速すると、次に求められるのは「思考の出力(資料作成)」です。

 実際、私が代表をつとめるグループ会社の株式会社Exa Enterprise AIの経営合宿で使用したスライドも、AIとの共創で作成しました。3年後の成長目線などの大まかな構想をテキストで入力し、AIと壁打ちを繰り返しながら論理や抜け漏れを整理させます。AIが提示したロジックに自分の経験からくる「違和感」がないかを徹底的に検証しています。その上で、最終的にAIが整理した構成の妥当性が非常に高かったため、合宿の発表資料としてほとんどそのまま活用しています。

 AI時代に求められるスキルも大きく変化してきていると感じています。AIが資料を作ってくれる時代、人間に求められるのは、「ターゲットは誰か」「現状の課題は何か」「それに対してどんな解決策を提示し、どのような成長を描くのか」といった要素を箇条書きでシンプルに書き出し、その関係性や因果関係を明確に構造化する能力です。

 ここで重要なことは言語化をシンプルに研ぎ澄ますこと。まさに、”Simple is not easy”であり、Easyに試しつつも、Simpleに捉えるのが大事かと思っています。

 参考: https://qiita.com/kobori_akira/items/bd204d13b9aa83491f85

 構造を捉え、言語化する力さえあれば、情報収集やビジュアル化はAIがどんどん進めてくれます。現在、自社プロダクトにおいても、より高度な図解やビジュアルを生成できるGoogleのモデル「Nano Banana Pro」を実装し、“現場で使える”資料作成エージェントの開発を強力に進めています。

 ツールで表現の自動化が進むからこそ、人間が描く「言語化」と「設計図の質」が、アウトプットの差を分けることになるのです。

【レビュー】「終わらない修正ラリー」を、自分の分身(AI)で解消する

 リサーチと資料作成が整っても、最後に立ちはだかるのが「レビュー」の壁です。例えば経営会議に上げる資料に対し、「事前の論点出しを含むレビュー」がAIでできると現場の効率化は大きく進むと思います。

 これまでは、頭の中にある言語化されていない「観点」でチェックを行っていました。そのため、起案者にとっては「どこを見られるのか」が事前には分からず、指摘を受けてから修正する往復や心理的な負担があったかもしれません。

 チャット型生成AIで都度指示を出す手間を省くため、社内ツールの「AIフローデザイナー」でワークフローを構築しました。NotebookLMが「理解」に強いのに対し、こちらは特定の観点に沿って、決まったステップで「処理」を走らせるのに適しています。資料を投入すれば、あらかじめ設定した「大植のレビュー観点」に沿って、自動でチェックが実行される仕組みです。

※「AIフローデザイナー」はエクサウィザーズのAIドリブン経営を実現するために設置された専門組織「AIエクセレンス推進室」が社内開発したワークフロー型LLM

経営会議資料のレビューAIの実装画面

 大学院を卒業後にプログラミングをした経験は私自身ほぼありませんが、開発において重要だったのは、AIの出力に対する「違和感」を逃さないことでした。AIの指摘がズレていると感じたとき、「なぜ違うのか?」を突き詰め、プロンプトを書き換えていく。

 例えば、確認の順番を「市場の定義」から「競合との差別化」へと論理構造に沿って整理させたり、指摘の粒度をより具体的に落とし込むように整えたりしました。過去の経営会議の資料と照らし合わせながらこの調整を繰り返す。この反復が、AIに自らの観点を実装する唯一の道でした。

 データがしっかり入ることで説得力が増す。その「コンテキストエンジニアリング」の手前にある情報整備の重要性を、この過程を通じて実体験として掴みました。

【組織への展開】自走を促し、マネジメントの「機動力」を高める

 この「レビューAI」の真価は、個人の効率化に留まらない点にあります。

 磨き上げたAIを経営会議の起案者にも開放しました。現場で自らAIと壁打ちをして「想定される論点や課題」を解消しておく。いわば「大植の視点をセルフチェックできるガイド」として活用してもらうのです。経営企画や私との往復にかかる時間的コストが軽減されることを期待しています。

 属人的なチェック観点をAIに渡して再現性をつくり、現場が自走できるようになれば、マネージャーが本来注力すべき戦略的な判断や、組織の未来を描くための時間をより確保できるようになります。マネジメントの機動力が高まり、一人の管理者が本質的な意思決定に向き合える範囲も広がります。

 レビューAIは単なる個人の効率化ではなく、意思決定の質向上も含めた生産性向上を組織全体で享受するためのアプローチなのです。

展望:現場データと経営判断が直結する「AIドリブン経営」の形

 これらの取組みは、経営判断の質を磨くための第一歩に過ぎません。私たちが目指しているのは、社内外に散らばる膨大なデータ(現場の日報やコミュニケーション、あるいは市場の動向など)をAIが常時解析し、経営が「今この瞬間のチャンスとリスク」を即座に捉えられる状態をつくることです。

 その変革の中核を担うのが、自社のプロダクト群です。日常的なリサーチや思考を加速させる「exaBase 生成AI」、そして属人的な業務を仕組み化し再現性を持たせる「AIフローデザイナー」。これらを自社プロダクトとして磨き上げ、経営の意思決定を支えるインフラとして機能させることを目指しています。

 私自身、他社サービスの研究の一環として内外のあらゆるツールを自分で触って評価しておりますが、日々現場で感じる「ここが不便だ」「もっとこうしたい」という実体験こそが、自社プロダクトを進化させる最強のフィードバックになります。

 リサーチから資料作成、そして高度なワークフローデザインまで。社内外の知見を貪欲に取り込み、自社プロダクトの機能として昇華させることで、現場の一次データと経営判断が直結するスマートな意思決定プロセスを構築していきます。

 「小さく作って、回して、広げる」。経営層自らが手を動かし、実務の「違和感」をAIに落とし込んでいく。その積み重ねの先に、意思決定の質と速度が究極まで高まった、真のAIドリブン経営があると確信しています。

※ 本文章もインタビューに基づき、素案をAIで作成しています。