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巨大言語モデル時代 ニュースダイジェスト 2-10-2022

公開日
2022.02.14
更新日
2026.06.17
巨大言語モデル時代  ニュースダイジェスト 2-10-2022

ここ最近、個人的に気になった世界のテクノロジー関連ニュースを集めました。この記事は、会員向けの限定公開記事です。未確認の情報や個人的見解を含みますので、一般公開はご遠慮ください。

◎巨大言語モデル時代の幕開けとその課題

AIの領域に関して2021年は、巨大言語モデルの時代だった。OpenAIのGPTー3やGoogleのLaMDAといった巨大言語モデルが話題になった。

GPTー3はMicrosoftが独占契約し新たなサービスを始めようとしているし、GoogleはLaMDAをありとあらゆるサービスのフロントエンドに採用していく考え。またCohere社、Ada Support社、Aleph Alpha社など、多くのスタートアップが、テック大手の言語モデルを使って新しいサービスを開発中だ。

日本語の巨大言語モデルも登場したし、2022年はAIと自然な話し言葉でやり取りできる時代の幕開けになりそう。

一方で未解決の課題がいくつか残っている。巨大言語モデルは主にネット上のテキストデータをベースに学習している。ネット上のテキストに差別的な表現があれば、AIも差別的な表現をするようになる。実際に巨大言語モデルは医師を男性、看護師を女性として文章を生成する傾向にあり、こうしたステレオタイプの物の見方が性差別を継続させる可能性が指摘されている。

またモデルが巨大なので消費電力が半端ない。地球に優しくないわけだ。

大量の文章を自動で生成できるので、フェイクニュースの大量執筆に利用される可能性もある。フェイクニュースは、敵国の世論を分断させるために利用されることが増えてきており、軍事手段の一つとしてみなされるようになってきている。巨大言語モデルの登場で、フェイクニュースがより大きな社会問題になっていくことが予想されている。

こうした問題点をGoogleの倫理担当者が指摘したが、同社はこの担当者を解雇。このことがシリコンバレーで論争となっている。

テック大手としては巨大言語モデルに既に莫大な投資をしているし、またこれから巨大なリターンを期待できるところから、それを阻止しようという動きは早い段階で対処したいのだろう。

一方で、巨大言語モデルはこれからの社会インフラ的な技術になる可能性があるのに、その舵取りを少数のテック大手の経営者に委ねていいのか、という問題がある。

そこで世界中のAI研究者たちがThe BigScienceというプロジェクトに集まり、巨大言語モデルが抱える問題とその対処法の研究を始めた。今年5月までに、ある程度の研究の成果を発表する予定らしく、既に世界中の約500人の研究者が無給でこのプロジェクトに参加しているという。

AIが人間の話し相手になる。そんな時代の幕開けにわれわれは今立っている。AIの言動は、話し相手である我々人間の考え方にも大きな影響を与えるようになるだろう。AIをどう制御すべきかという決断は、今後の社会をどういう方向に導きたいかという決断でもある。その大きな決断が、民主主義の仕組みとは、まったく別のところで下されようとしている。急速に進化する技術と、緩やかな変化しかできない社会システムとのギャップがこんなところにも発生している。

技術の急速な進化と、社会システムのゆっくりとした進化のギャップが生む問題は、2月3日に開催したセミナー「グローバル化の流れが変わる?未訳のビジネス書『Exponential』を1時間で解説」の中で取り上げました。ご興味のあるかたは、アーカイブ動画をご覧ください。

(情報ソース MIT Technology Review

◎労使関係の変化は二極化

その「Exponential」という本の中には、経営が力を持ち労働者は搾取されるようになるという未来予測があったが、このMIT Tecchnology Reviewの記事は逆に労働者が強くなってきていると分析している。

例としてFacebookが英コンサル会社にデータを売った件でFacebookの社員が反発したことや、Googleが米軍に協力することにGoogle社員が反発した件、Androidの開発者がセクハラで首になったのに巨額の退職金を支払って社員がデモして反発した件、などを挙げている。

どうやら労使関係といっても、エンジニアなどのハイスキルを持った労働者と、ウーバーの運転手のようにロースキル労働者とでは、力関係が違うということなんだろう。ロースキル労働者は、センサーとAIで徹底的に管理される、というのがExponentialの本の中の予測だった。

ロースキルな労働者は搾取され、ハイスキルな労働者は経営に圧力をかけることのできる存在になる。労使関係は二極化するということなんだろう。

◎低軌道の宇宙開発は、億万長者間の争いに

宇宙開発はこれまで国家間の競争だったが、国際宇宙ステーション(ISS)の廃棄が2030年に予定される中で、これからは宇宙での事業を手掛けたい億万長者間の競争になりそう。
NASAは2019年に「民間低軌道経済」という計画を発表。宇宙開発を民間企業に移譲していく計画を進めている。まずはISSのリソースを民間企業へ売却することから始まり、最終的には民間企業が宇宙ステーションを打ち上げ、維持する方向を目指すという。
宇宙開発に興味を持つ民間人と言えば、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスといったテクノロジー長者たち。こうした資産家たちが、低軌道に各種ビジネスを展開できる「宇宙産業団地」を作っていくことになりそう。

◎Virgin Hyperloopは空港や港の貨物輸送に

トンネルの中を電磁波で浮いた状態の貨物自動運転車が時速1000kmで荷物を運ぶというのが、Virginグループの考えるハイパーループ。空港や港に設置する方向で当局と交渉を始めたらしい。
結局、自動運転車って100%の安全性を実現できないので、予測不可能な動きをする人間や自転車などの障害物がいない環境を作るしかないのだと思う。
そこでイーロン・マスクが考えたのがハイパーループというトンネルを作るやり方。それをバージングループが真似したわけ。まあ別に真似してもいいと思う。ちゃんとした価値を提供できるんだったら。
イーロン・マスクのほうは、ラスベガスやロサンゼルスでハイパーループを展開しようとしている。ちょうど今年の世界最大級家電見本市CESに何人かの友人が参加したので、ラスベガスのハイパーループを体験した感想を聞いてみた。
「うーん、微妙。あれがハイパーループなのかなあ。単なるトンネルを、テスラのタクシーで走るんだけど、自動運転じゃなくて運転手が運転していたよ」。なんじゃ、そりゃ。もちろん将来はテスラが完全自動運転になるんだろうけど、今は単なるトンネルということみたい。ウケる。

(情報ソース Freightwaves.com

◎電気自動車をワイヤレス充電する車線

米ミシガン州知事が発表。Electreon社が建設することになった。米国で初。
デトロイト市内の道路に約1マイルの充電道路を実験的に敷設する計画で、2023年完成を目指す。
実験が成功し、すべての道路にワイヤレス充電が設置されるようになれば、充電スタンドが不要になるし、大容量のバッテリーを自動車に搭載する必要もなくなる。こうした社会インフラに投資する国とそうでない国との間で大きな格差が生じるようになるような予感。
(情報ソース roboticsandautomationnews.com

◎医療データのやり取りにNFTを

米研究者や法律家によるチームが、医療データのやり取りにNFTを利用する方法を論文にまとめ学術誌Science上で発表した。
患者の医療データは、病院や民間企業のシステムの中にバラバラに格納されており、患者本人の意思で自由に取り出したり移動させたりするのが困難な状態になっている。同チームは医療データにNFTもしくはNFTのような技術を応用することで、患者の意思を尊重した形で、医療データをデータ・エクスチェンジに提供することなどを通じて有効利用できるようになる、と提案している。

◎高速DNAシーケンサー

これまで2週間から8週間もかかっていたDNAの塩基解析が、わずか7時間18分でできるようになった。これで多くの命が救えることになるという。
世界には7000の難病や奇病があり、3億人の患者がいるといわれている。80%が遺伝子に関連する病気で、患者の半分は子供。
こうした難病や奇病を診断するのに、これまで何年もかかっていて、その間に命を落とす人も多かったという。
オレゴン州に住む13歳の少年の心臓が、理由も分からないまま弱わり始め、カリフォルニア州のスタンフォード大学病院に搬送された。診断の結果、原因は2つ考えられたが、どちらかはっきりしなかった。そこで高速シーケンサーを使ったところ、遺伝子が原因であることが判明、すぐに心臓の移植手術の待機リストに載せることができた。3週間後には心臓提供者が見つかり、手術は成功。一命を取り留めたという。
(情報ソース innotechtoday.com

◎コロナと環境保全が3Dプリンティングを後押し

3Dプリンティングって試作品を作るための技術だと思っていたんだけど、ここ2、3年で製造業の中核的な技術になり始めているもよう。
コロナ禍で流通が乱れているので、アジアの工場にまかさずに顧客の近くで生産しようという動きが1つの要因。もう一つの要因は、環境保全に対する意識が世界的に高まっていること。ネジやボルトを見ても分かるように、これまでの製造技術って金属を削るのが基本なので、ゴミが大量に出ていた。一方で3Dプリンティングは素材を積み上げていく技術なので、ゴミが出ず、環境にやさしい。
この2つの要因で、3Dプリンティングの導入が進んでいるらしい。まずは航空業界や、医療機器の業界。最近では自動車業界にも導入が進んでいるらしい。
環境にやさしい新素材なども開発されており、製造過程でどの程度の二酸化炭素を排出するのか、などといったデータも取れるようになっている。
3Dプリンティングで大量生産よりも低コストを実現するには、デザインから流通まで、すべて新しく設計する必要がある。つまり3Dプリンティングが製造業のDXの柱になりそうな勢い。
そして3Dプリンティングが普及すれば、工場が都市部近郊に戻ってくることになり、グローバル化の流れが一気に逆転する、というのが「Exponential」の未来予測。地方と都市部の格差が拡大し、大都市と国家が対立する、というこの本の主張が現実味をおびてくる。
調べ始めたばかりだけど、確実にこの流れが来ているように思う。引き続き、いろいろ調べていきたい。
著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。