パーソナルAIの新星、米InstinctがAIに自分のメアドを持たせた
米AIスタートアップInstinctが、AIエージェント専用のメールアドレスをユーザーごとに持たせ始めた。レストランへの問い合わせやサービスへの登録などを、人間のメールアドレスを使わずにAIが処理できるようにする。
Instinctはまだ限定ユーザー向けにしか公開されていない。それでも8月には2億5000万ドルを調達し、評価額は25億ドルに達した。累計調達額は3億5000万ドル。投資家が期待しているのは、質問に答えるだけでなく、ユーザーに代わって日常の用事を片付けるパーソナルAIエージェントだ。
メッセージを送ればAIが実行
Instinctは、専用アプリの複雑な操作を前提にしていない。
ユーザーはSMSなどでメッセージを送ったり、電話をかけたりする。Instinctは許可を受けたメール、メッセージ、画面、音声、位置情報などにアクセスし、スマートフォンやパソコンを操作する。
空港までの車の手配、修理業者の予約、買い物、旅行の計画などが想定されている。公式サイトは「新しい操作画面はない」と説明しており、普段使っている電話やパソコンをAIが代わりに操作することを特徴としている。
創業者は23歳のNoah Shinn氏。AIエージェント企業Sierraの初期メンバーとして研究に携わり、外部ツールを使って仕事を完了するAIエージェントの能力を測る評価手法「τ-bench」の共同研究者でもある。
AIに「自分の連絡先」を持たせる
Instinctが9月8日に追加したのが、AI専用のメールアドレスだ。
例えば商品の返品を頼まれた場合、Instinct自身のアドレスで注文確認メールを受け取り、サポート窓口とやり取りし、返品用ラベルを受け取るところまで進められる。
Shinn氏は、この機能を「Instinct自身がアカウントを持ち、運用できるようにする最初の一歩」と説明している。
これまでAIエージェントが外部サービスを利用する際は、人間のアカウントを借りて操作する形が中心だった。InstinctはAI自身に連絡先を持たせることで、外部とのやり取りを継続しやすくしようとしている。
同社は1Passwordとも連携し、既存アカウントへのログインをAIに任せやすくしている。Stripeとも提携し、決済を伴う作業まで処理できる仕組みを整えている。
出典:
https://techcrunch.com/2026/09/09/viral-ai-assistant-instinct-now-has-its-own-email-address/
最大の課題は「どこまで任せるか」
一方で、Instinctは早くもセキュリティとプライバシーを巡る問題に直面している。
AIに実際の作業を任せるには、メールやメッセージだけでなく、場合によってはパスワードや決済情報にもアクセスさせる必要がある。
初期利用者からは、Instinctが確認せずにメールを送った事例や、接続を解除した後も保存済みのメール情報を利用していた事例などが報告された。外部から送られたメールの指示によってAIの行動を誘導できるのではないか、との懸念も出ている。
Instinct自身もプライバシーポリシーで、自律型AIには「意図しない決済や外部への通信」「誤った操作」「AIを誘導しようとする第三者との接触」といった危険があると明記している。
出典:
https://instinct.com/privacy-policy
Instinctへの高い評価は、AIエージェントの競争軸がモデルの賢さだけではなくなりつつあることを示している。
AIが現実のサービスに接続し、人間の代わりに行動するようになれば、次に問われるのは「何ができるか」だけではない。どこまで権限を渡しても安全なのか。その設計が、パーソナルAI普及の条件になりそうだ。