SBT①お金中心のWeb3から関係性のWeb3へ
この原稿は、一般公開用の原稿の草稿のようなものです。一般公開用の原稿にする際に、多くの情報を削ぎ落とします。会員の皆様にはできるだけ多くの情報を提供したいと思いますので、草稿の段階で共有いたします。ですので、この原稿の一般公開はお控えください。
これまでのWeb3の先行事例って、お金を中心にしたものが多かった。暗号通貨はもちろんそうだし、NFTアートもアーチストの地位向上というメリットはあったが、投機が話題となった。プレイすればお金が稼げるStepNなどのX To Earnゲームも、お金というインセンティブを使った集客装置だ。
「今までの資本主義と何ら変わらないどころか、一番ネガティブな部分が拡大されているだけではないか」という批判にも一理あると思う。
ところが5/11にイーサリアムの提唱者、ビタリック・ブテリン氏などによって論文が発表されたばかりのSoul Bound Token(SBT)は、人間社会の関係性で本人認証を行なったり、信頼して助け合う仕組みだ。SBTはNFTを補完し、Web3最大のイノベーションになっていくことだろう。お金が経済の血液だった時代から、人間の関係性が社会の基盤になる時代へ。今、われわれは大きな時代の変革期に立っているのかもしれない。
仮想通貨の相場が暴落しているこの時期にSBTが提案されたというのが、驚くべき偶然だと思う。仮想通貨のトレーダーにとっては最悪の時期なのかもしれないが、社会課題解決を目指している人たちにとっては、仮想通貨が底値のこの時期が仮想通貨経済に参入する最高のタイミングだ。
SBTをベースにしたDAO(非中央集権自律組織)運営のツールが今後続々と登場し、世界中に社会課題解決のためのDAOが雨後の筍のように出てくることだろう。
SBTとはどんな技術なのか。何回かに分けて解説していこうと思う。
【SBT原稿その1】◎SBTは、分散型社会の魂になる
Web3が大きな可能性を秘めている理由は主に2つ。1つは、その中核技術であるブロックチェーンが、機能を追加できる技術であり、機能の追加が順調に進んでいるから。もう1つは、その技術的な可能性に気づいた世界中の優秀な人材が、こぞってこの領域に参加してきているからだ。
優秀な人材が、機能を追加できる技術に群がれば、当然技術は急速に進化する。それが今、Web3の領域で起こっていることだ。
もともとブロックチェーンは代替可能なトークンしか発行できなかった。代替可能とは、「私の持っている1ビットコインと、あなたの持っている1ビットコインは、取り替えることが可能だ」というような意味だ。
そこに非代替性トークンを発行できる機能が開発された。それがNFT(非代替性トークン)だ。非代替性とは「私の持っている絵は価格が1ビットコインで、あなたの持っている絵も1ビットコインなので、金銭的価値は同じ。でも全然違う絵なので、取り替えるわけにはいかない」というような意味だ。
そして2022年5月11日付の論文で、イーサリアムの提唱者ビタリック・ブテリン氏などが正式発表したのが、非譲渡性トークンのSBT(Soul Bound Token)だ。
非譲渡性とは、本人以外が持っていても仕方ないというような意味だ。例えば、運転免許証やパスポートを譲ってもらっても、詐欺などの犯罪目的以外には使えない。卒業証書、社員証、健康診断の結果、過去に書いたブログ記事なども、SBTにできる。
こうしたSBTデータが数多く集まってくると、その人がどのような人物なのかが分かってくる。社会の関係性の中で、その人の人物像が浮かび上がってくるわけだ。
すべてのSBTのデータセットが完全に一致する人などいない。なので、このデータセットは本人認証に使える。
この本人認証の機能がないので、これまでのWeb3のサービスではできないことが多かった。例えば交通違反歴がない人は、自動車保険の保険料が割り引かれるなどといった、リアル社会では当たり前に行われていることが、本人認証の技術がないためにWeb3の世界ではまだ実装されていないのだ。
本人認証の仕組みさえできれば、リアルな社会で行われている様々な経済活動がオンライン空間上で可能になるだけでなく、リアルな社会では到底実現できないような新しい分散型サービスが次々と登場してくるはずだという。
地球の長い歴史の中で、約5億年前の古代カンブリア期に、今日見られる動物の祖先が一気に出揃った。カンブリア爆発と呼ばれる現象だ。本人認証の仕組みが誕生すればWeb3サービスが爆発的に増え、分散型社会という新しい社会の基盤になる。この論文はそう主張する。
その本人認証の仕組みが非譲渡性トークンである「SBT(Soul Bound Token)」だと言うのだ。
その人の経歴、スキル、人となりが分かる本人認証データ。こうしたデータが利用可能になることで、社会がどのように変化するのだろうか。
そのことを正しく理解するには、SBTの仕組みや可能性をより詳しく知る必要がある。
これから何回かに分けて、この論文「Decentralized Society: Finding Web3’s Soul(分散型社会、Web3の魂を見つける)」を読み解いていきたい。