SBT④広がる用途 アート、フェイク対策、無担保ローン、鍵の復活
この原稿は、一般公開用の原稿の草稿のようなものです。一般公開用の原稿にする際に、多くの情報を削ぎ落とします。会員の皆様にはできるだけ多くの情報を提供したいと思いますので、草稿の段階で共有いたします。ですので、この原稿の一般公開はお控えください。
▼アートとDeepFake
NFTは、アート作品の所有権を示すことのできるデータだ。油絵や水彩画などのリアルなアート作品の所有者を示すために発行される場合もあるが、デジタルアートの場合はアート作品そのものをNFTデータの中に含むこともある。
ところがNFTはだれでも発行できる。そこで、他人のアート作品のNFTを勝手に発行して売るという詐欺が横行している。そのことに本物の作者が気づき、売買されたNFTは無効であると宣言すれば、その作品はNFTを購入した人のものではなくなるわけだ。
そういう詐欺は、SBTの登場で一掃される。NFTを発行している人物のソウルの中に、アートに関連するSBTがほとんどなければ、明らかに怪しい。一方で本物のアーチストなら、美術学校の卒業証書や、展覧会での賞状といったSBTがソウルの中に格納されていることだろう。そうしたソウルから発行されたNFTならば、安心して購入できることになる。
またアーチストは、NFTではなくSBTを発行することもできる。SBTにすることで、自分の作品のコレクションとその販売価格、現在の所有者といったデータを自分のソウル内に保存すると同時に、世間にも公開できる。そうすることで、アーチストとしてどの程度社会で評価されているのかが、誰の目にも分かるようになる。
こうした使い方は、アート以外の分野でも、希少性、世間の評判、信頼、信憑性が重要である分野なら活用できるはずだ。
例えば本物であるという証明ができればフェイク情報の問題に対する解決策にもなる。
フェイク情報は21世紀の軍事兵器の1つと言われるほどに大きな問題になっている。ロシアのウクライナ侵攻に関しても、国際世論を味方につけたり、敵国兵士の士気を低下させる目的で、フェイク情報が飛び交っている。
最もやっかいなのが、DeepFakeと呼ばれるフェイク動画作成AIだ。2018年に米のニュースサイトがDeepFakeを使ってオバマ元米大統領のフェイク動画を作って話題になった。そのフェイク動画の中でオバマ氏が「トランプ(元大統領)はクソ野郎だ」と語っている。
この動画自体は、オバマ氏の話し方がどこかぎこちなく、なんとなく怪しい感じがする。しかしその後AIの精度が急速に向上しており、今では本物の動画とフェイク動画の見分けがなかなかつかなくなっている。
冗談として作られているものならまだいいが、証拠動画として裁判所に提出されたり、ニュース映像としてネット上で拡散されれば、社会が大混乱に陥る可能性がある。
人間の目でフェイク動画を見抜けなければ、フェイク動画を見抜けるAI を作るしかない。フェイク動画を作る側はより高性能のDeepFakeの開発を続け、見破ろうとする側はより高性能なフェイク発見AIの開発を続ける。元Googleの中国支社長で「AI2041」の著者のカイフ・リー氏は、イタチごっこが続くので抜本的な解決策はあと何十年も出てこないだろうと予測している。
リー氏は「解決策として可能性があるとすればブロックチェーンだが、今のブロックチェーンでは無理で、ブロックチェーンが2041年までにそこまで進化することはないだろう」と予測している。
SBTの登場でDeepFake問題の兆しが見えてきた。専門家にとっても、未来予測は難しい時代になってきた。
▼担保なしコミュニティーローン
銀行、クレジット会社、消費者金融会社などの金融機関が個人に担保なしで融資するとき、金融機関はクレジットカードの返済履歴(クレジットヒストリー)などをベースに個人の信用格付を決める。
逆に言えばクレジットカードの返済履歴ぐらいしか個人の返済能力を示す情報がないと言える。消費者側も自分の情報がどのように使われるのか分からないので、できるだけ情報を出したくないと考えている。
そんな中、消費者が学歴や、職歴、レンタル契約書などをSBT化して、自分のソウルの中で管理するようになれば、ローンの返済能力の有無がより正確に予測できるようになるだろう。
ローンの契約書と返済記録もSBT化されてソウルの中に格納され、ローンの返済能力がより明らかになる。
また世の中のソウルのSBTをすべてAIに学習させれば、返済できるかどうかをより正確に予測するAIモデルが完成するだろう。いろいろなAI モデルが登場するだろうし、そうしたAI モデルをベースにしたいろいろな金融商品も出てくることだろう。
関係性のある友人、知人に対してみんなでお金を貸すようなコミュニティ内金融も出てくるかもしれない。お金を貸すだけでなくて、お金以外の方法で相互に助け合うようなサポート体制も構築できる。お金やサポートを提供してくれそうな人を探し出すことも可能になるだろう。
芳しくないクレジットヒストリーを隠すために新しいソウルを作っても、そのソウルの中に十分なSBTデータが蓄積されていないと返済能力をAIが予測できず、どちらにせよお金は借りれないだろう。
大都会の住民は地域コミュニティーとの関係性が希薄だと言われるが、SBTを通じて関係性を大事にするようになるだろう。一方で所属コミュニティーは、地域コミュニティーに限定されない。趣味や興味、信条などが自分とあった世界中のコミュニティーとオンラインを通じて関係性を持てることになる。閉鎖的な村社会のように地域コミュニティーに拘束される必要はない。
こうしたことが可能になるのも、自分の信用度を示すことのできるSBTを自分自身で管理できるからだ。
▼コミュニティーがソウルを復元
暗号通貨のデータを入れておくアプリをウォレットと呼ぶが、ウォレットを誤って削除してしまえば、ウォレットに入っていたすべての暗号資産を失うことになる。大変な損害だ。
同様にSBTをしまっておくアプリであるソウルを誤って削除すれば、これもまた大変な問題になる。
削除したウォレットやソウルを復元するためには秘密鍵が必要なのだが、その秘密鍵を保管する技術がいろいろと開発されている。
(1)シードフレーズ
最も一般的なのが、英単語12か24個のシードフレーズだ。英単語は、あらかじめ定められているAのaboutからZのzibraまでの2048個の単語リストの中から選ばれる。つまり英単語を1つ選ぶだけで2048通りある。それが12個なら2048の12乗、24個なら24乗。天文学的数字になるので、今日のAIではとても解読できない長さの数字になる。それを数字として記録しておくのは大変だが、12個の単語なら比較的扱いやすい。なので、暗号通貨のウォレットに利用されることが多い。
(2)マルチシグ
ただシードフレーズは全部覚えるのも大変。パソコンやスマホに記憶させておけばいいが、それを失ったり、盗まれる可能性がある。
そこで登場したのが、マルチシグ。マルチシグは複数の鍵を使う方法。例えば3つの鍵のうち2つの鍵がそろっていれば解錠できるようにしておけば、1つの鍵を失ってもあと2つの鍵があれば解錠できる。だれかが鍵を1つ盗んでも、それだけでは解錠できないので、セキュリティが向上する。
といっても複数の鍵を1つのデバイスに入れておくのは危険。なので、例えば1つはパソコン、1つはスマホといった具合に、異なるデバイスに記憶させておく必要がある。ただ鍵の数が多くなるだけ、管理の手間が大きくなるというデメリットがある。
(3)ソーシャルリカバリー
そこで最近注目を集めているのが、ソーシャルリカバリーと呼ばれる手法。
複数の個人、組織、ウォレットを鍵の管理人に指定。鍵を盗まれたり、失った場合、大多数の鍵の管理人が合意すれば、すぐに新しい鍵に変更できる。
ただ誰を鍵の管理人にするのかが重要。管理人が結託しないようにある程度の数の管理人を指定しないといけないし、管理人が亡くなったり、関係性が悪化したり、連絡が取れなくなったりする可能性がある。
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4)コミュニティーリカバリー
そこでこのホワイトペーパーでは、SBTを使ったコミュニティーリカバリーという方法を提案している。
SBTは、会社や、大学、宗教団体、趣味のサークルなど、いろいろなコミュニティーの関係性の中で発行されるトークンなので、そうした関係性の中からその時々にランダムに選ばれた人たちに、鍵を再発行すべきかどうかを判断してもらおうという仕組みだ。
判断してもらう人は誰がいいのか、何人がいいのか、などの詳細は、今後実験を重ねていく上で明らかになっていくだろう。ただユーザー一人ひとりが、いろいろなコミュニティーとの関係性を持ち、いい関係性を築けた方が、セキュリティが向上することは間違いない。