1. トップ
  2. トレンド
  3. Web2、Web3のビジネスモデルの違いとその次

Web2、Web3のビジネスモデルの違いとその次

公開日
2022.06.06
更新日
2026.06.17
Web2、Web3のビジネスモデルの違いとその次

Web2、Web3のビジネスモデルの違いとその次

Web2とWeb3は、実はユーザーに与える価値の推移の形が真逆。Web 2は時間とともにユーザーに与える価値が上昇するが、Web3は反対に減少する。なのでWeb3のビジネスは途中からWeb2モデルに切り替える必要があるのだと思う。


もう少し詳しく見てみよう。

Web2、例えばFacebookのようなSNSコミュニティーだったりLineのようなメッセージングアプリのようなサービスだと、時間とともに一人のユーザーが受け取る価値は向上する。

サービスのスタート当初は、ユーザーにとってあまり利用価値がない。友人、知人がそのサービスに加入していなければ、使っていてもあまり楽しくないからだ。

一方でサービス開始から時間が経つにつれ、メンバーは増えていく。友人、知人、仲良しグループのメンバーのほとんどがLINEにいれば、LINEは生活必需品になる。つまり時間やメンバー数の増加にともなって、一人のユーザーにとってそのサービスの価値が増加していく。ネットワーク外部性、ネットワーク効果などと呼ばれるメカニズムだ。

またGoogleのようにAIをベースにしたWeb2ビジネスでも時間と共にサービスの質が向上していく。AIはデータが増えれば増えるほど賢くなる。AIが賢くなればサービスの利便性が向上し、利便性が向上すれば、ユーザーが増える。ユーザーが増えればデータが増え、AIがさらに賢くなる。さらにサービスの利便性が向上し・・・という具合に、正の無限ループに入る。

SNSのようなコミュニティでも検索エンジンのようなAIでも、最初はそれほど利用価値がなくても、だんだん利用価値が増していくわけだ。

そしてその利用価値の向上は、右肩上がりの単純な直線を描くのではなく、指数関数的伸びを示す。これがWeb2サービスの強さの秘訣だ。

一方でWeb3のビジネスは、真逆の曲線を描く。時間が経ちビジネスが成長すればするほど、一人のユーザーが享受するメリットは減少する。

Web3ビジネスはその会社や組織が発行するトークンを購入することで、だれでもそのビジネスの所有権の一部を手にすることができる。サービスが立ち上がってまもないころならトークンを比較的安価に購入できるが、サービスが人気になれば、その将来性を見込んでトークンを購入したい人が増える。トークンに対する需要が増えるのでトークンの価格が向上する。

価格が向上すれば早い時点でトークンを購入した人には大きく儲かるが、後から購入した人は初期購入者に比べて儲けが少なくなる。購入する時期が遅くなればなるほど、享受できる金銭的メリットが減少することになる。

▼初動で一気にブーストするのがWeb3

早く参入したほうが金銭的メリットが大きいので、Web3型のビジネスはあっという間に急成長する可能性がある。

例えばWeb3型ゲームとして一世を風靡したAxieInfinityは、かわいいキャラクター同士をバトルさせるポケモンのようなゲーム。比較的高額な入会金を原資として、高得点プレーヤーや長時間プレーヤーにトークンを分配するというplay to earn(プレーすればするほど稼げる)というビジネスモデルを編み出した。これが、コロナ禍でリアル社会での働き口がなくなった途上国の若者に受けて急成長した。

ところがその後、ハッキングの被害に遭ったり、暗号通貨の相場が下落したりしたことで、稼げなくなったユーザーが離脱。2021年11月には約160ドルだったトークンの価格が2022年5月には8割以上下落し、売上高も7億5400万ドルから500万ドルに急降下した。

しかし何かをすれば稼げるというビジネスモデルに対する注目が集まり、その後〇〇to Earnと謳ったビジネスが多数登場してきている。

勉強すれば稼げる、睡眠を十分にとれば稼げる、健康的にダイエットすれば稼げる、瞑想すれば稼げるなど、2022年後半から2023年は、〇〇To Earnビジネスの百花繚乱時代に入ろうとしている。

▼外的動機から内的動機へ

それほど大きな広告、マーケティング費用をかけなくても、お金というインセンティブで最初から一気にユーザーを増やすことができるのがWeb3ビジネスの1つの特徴であることが分かってきた。

運営者にとっての問題は、一人のユーザーへの金銭的価値が下がってきたときの対処方法だ。

〇〇To Earnで今最も人気のあるStepNというアプリの運営者は、ユーザーがアプリを利用する理由を外的動機、内的動機として分けていると言われる。

StepNは、歩いたり、走ったりすればするほどお金が稼げるアプリで日本を含む先進国の若者に人気で2022年5月半ばほどまで順調にトークン価格を伸ばしていたが、ここにきて下落。稼げなくなったユーザーからの運営者への批判の声が高まっている。

StepNの運営者は、お金が稼げるというインセンティブを外的動機と呼び、トークン価格の伸び率が鈍化した場合でも、内的動機を高めることができればユーザーはアプリを続けると考えていたという。内的動機とは、運動することの気持ちよさなどだ。たとえ儲けが少なくなっても、運動すること自体が習慣化し、気持ちよくなったので、アプリを使い続けているという声は確かにある。

しかしそれだけで本当にStepNは運営を継続中できるのだろうか。今まさに現在進行形で、その問いに対する答えが出ようとしている。

▼Web3からWeb2へ

私はWeb3のビジネスを継続させるには、Web3の集客力が弱まってきた時点で、Web2のネットワーク効果やAIの正のスパイラルという価値創造の力に切り替えていく必要があるのではないか、と考えている。

具体的にどうすればいいのかは、まだはっきりとしたイメージはないのだが、ユーザーコミュニティーの活性化や、AIによるレコメンデーションなどだろうか。

著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『生成AIで心が折れた』(2025年)、『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。