Web3が無視できないフェーズに ニュースダイジェスト 2-21-2022
公開日
2022.02.21
更新日
2026.06.17
ここ最近、個人的に気になった世界のテクノロジー関連ニュースを集めました。この記事は、会員向けの限定公開記事です。未確認の情報や個人的見解を含みますので、一般公開はご遠慮ください。

「Web3の正体」という記事を読んでいただければ分かるように、今最も旬なバスワード「Web3」に関して、僕自身これまで懐疑的な発言を繰り返してきた。
Web1は、Yahoo!や一般企業のホームページに見られるような情報が一方通行の時代。Web2は、FacebookやTwitterのように一般ユーザーも情報発信する時代。そのユーザーの情報交換や物品売買を取りまとめるようなFacebookやAmazonなどといった中間業者が巨大になった時代だ。その中間業者、つまりテック大手があまりに巨大になり、民主主義にまで影響を与えるようになった。それに対する反動として生まれてきたのが「Web3」という非中央集権のWebを作ろうというムーブメントだ。
日本に住んでいるとテック大手がどの程度社会に影響を与えるようになったのかが分かりづらいが、2月3日に行った「未訳のビジネス書『Exponential』を1時間で解説」というセミナーの中で詳しく解説したので、興味ある方はアーカイブ動画を見てください。
Web3は時代を変えるムーブメントになるのか。単なる流行りのバズワードで終わるのか。その行方をウォッチしていたんだけど、いよいよ無視できないレベルにまできているように思う。
自分の関連する領域で、どのような新しいサービスが登場してきているのかに注意する必要があると思うし、なんなら新しいサービスにいち早く乗り出すことで大きなビジネスチャンスをつかめるかもしれない。
伊藤穰一氏のWeb3解説動画
Web3に関する情報は日本語ではまだまだ少ない。そんな中、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの元所長・伊藤穰一氏が自民党の政治家グループに向けて行った講演の動画がYouTube上で公開されている。今現在この時点で、最も最新の情報を盛り込んだ日本語の解説だと思う。Web3の最新の状況を知りたい人には、おすすめの動画になっている。
ExaBaseコミュニティでも「大企業にとってのメタバース、Web3」というテーマのオンラインセミナーを4月5日(仮)に開催する方向で準備を進めています。この領域は急速に展開し続けているので4月までに大きな進展があるかも知れませんが、それまでは伊藤氏のYouTube動画を見ていただければと思います。
さて伊藤氏の動画の話に戻ろう。見る時間のない方のために、僕が気になったポイントを幾つかリストアップしたい。
・「Web3に不利な税制を避けて、Web3関連の技術を持つ日本のベンチャー企業や起業家がシンガポールへ移住し始めた。日本企業はWeb2時代には活躍できず、GoogleやAppleといった米国企業にビジネスを奪われたが、Web3になり戦いのルールが変わって日本企業にとってもチャンスがやってきた。Web3ベンチャーが活躍できるように制度を整えないと、Web3でも日本は負けてしまう。日本的なコンテンツは世界でも人気なので、日本にもチャンスはある」
・「世界中のWeb3ベンチャーと話をしているんだが、彼らは『シリコンバレーのトップのVCだとしても、 Web3のことを理解していない連中からの出資がほしいとは思わない。説明している時間がない』と言ってる」。シリコンバレーが有利なわけではない。Web3を理解してWeb3を支援できる環境のある国が有利
・「DAO(Web3的な非中央集権的な組織形態)と株式会社の違い。株式会社は年に一度の株主総会で会社の方針を決めるけど、DAOだと今すぐに採決できる。規則を全部プログラムにして自動化できる。今は、DAOで決めたことを顧問弁護士が法定書類に変換しないといけないが、いずれ会社法をDAO寄りに変えていかないといけない」
・Web3の時代にはだれが勝者になるのか?「個人情報をプラットフォームに残さなくてよくなるので、プラットフォームが弱体化する。やはりコンテンツを持っているところが強くなる。でも今はウォレット事業者の間ではメタマスク社が強いが、強いままなのか、ウォレット機能がブラウザでも実装されるようになるのか。まだ分からない。ベンチャー投資もDAOになりブロックチェーンで投資されるようになる。暗号通貨はいろいろ出てきているが、いずれビットコインやイーサリアムに統合されるかも。まだまだ黎明期なので、どんなビジネスが有利なのかもわからない」
伊藤氏の動画を見て感じたのは、社会システムのすべてがweb3に置き換わることはないだろうけど、社会のかなりの部分を非中央集権、スマートコントラスト的に作り替えることができるかもしれないということ。実際にそうなれば、かなり大きな社会変化になるかもしれない。ネット企業だけでなく、従来型の一般企業には大きな影響がでるだろう。見かけ倒しの可能性もあるけれど、大変化に足元をすくわれないように、準備しておく必要があると思う。
伊藤氏は、全米を震撼させた児童売春スキャンダルで有罪判決を受けた大富豪ジェフリー・エプスタインから、大学への寄付金を受け取った責任を取ってMITメディアラボの所長を辞任。日本に帰国している。
もともと東京出身ながらアメリカンスクールに行っていたので、どちらかといえば日本語より英語が得意。早くからアメリカのIT業界で論客として活躍し、特にメディアラボの所長に就任してからはIT業界やアカデミアのみならず米国の政治経済の世界にまで人脈が広がったようだ。
米国では表舞台にしばらくは復帰できそうにないので、日本での活動が中心になりそう。これは日本にとって非常にプラスのことだと思う。
動画
https://youtu.be/ilXWVdI4Kfk
単純なハッキングでも被害が増大するのがWeb3
Web3時代になると、スマートコントラクトで取引が全自動になるので便利にはなるんだけど、一方でハッキングなどの被害が莫大になることが予想される。
暗号通貨を預けていれば運用してくれて利息を稼げるWeb3型のサービスBadgerDAOが昨年末、ハッキングの被害に遭った。被害総額は日本円に換算して136億円にのぼった。
安全性と便利さのトレードオフ。タンス預金するのか、銀行のオンライン口座に預金するのかのトレードオフと同じようなもの。ただしWeb3になれば、その額が一気に膨れ上がるし、銀行のように責任を取ってくれる中間業者もいなくなる。
ということでWeb3時代には、セキュリティがますます重要になるだろう。(関連記事 nextmoney.jp)
NFTに対するゲームファンと音楽ファンの態度の違い
ゲームの愛好者たちがNFTのデジタルグッズ事業に大反発。EAやTeam17などのゲーム会社もこれに従う形でNFTプロジェクトを停止している。
NFTは、コピーしほうだいのネット文化の中で、所有権を確立できる技術。NFTで所有できるアバターの衣装や武器などのデジタルグッズをゲーム内で販売して収益を得ようというゲーム運営会社と、これ以上課金されたくないゲーマーとの思惑のずれが、ゲーマーによる反発を招いているようだ。それに加えて環境に悪い(暗号通貨に電気代がかかる)、詐欺が多いなどの問題もゲーマーに指摘されている。
音楽業界では、それほど反発はない。
音楽フェスを運営する米Coachella社が、購入すれば同社のフェスに生涯参加できる生涯パスポートをNFTで発売したが、それほどの騒ぎにはならなかった。
ゲーム業界と音楽業界。NFTに対する反応の違いは何なのか。
1つには音楽業界は以前から、ファン向けにグッズを販売していて、ファンはNFTグッズもその一種だと認識しているから。
2つ目は、音楽ファンはアーチストを応援したいと思っているから。ゲーム会社は既に儲かっているように見えるので、応援する必要がないとみられているから。
3つ目は、音楽ファンにとってNFTグッズは不可欠ではないから。NFTを購入しなくても音楽を楽しめる。一方で、ゲームの中ではNFTグッズを購入したプレーヤーのほうが有利に戦えるから。
(情報ソース the Verge)
音楽の印税よりNFT
米国の鉄板焼きチェーン大手「ベニハナ」の創業者ロッキー青木氏の息子で人気DJのSteve Aoki氏によると、彼の過去10年間の音楽の印税収入より、NFTで楽曲を販売するほうが圧倒的に儲かると語っている。「NFTが音楽業界を変える」とまで言ってる。
話が脱線するけど、米国の若者の間では、ロッキー青木氏よりSteve Aoki氏のほうが有名みたい。日本でも落合信彦氏より落合陽一氏のほうが若者には知られているし、森しんいち氏よりワンオクのtaka氏の方が有名だったり、なんか自分が歳とったなって感じる瞬間。
(情報ソース decrypt)
CRISPRにブレークスルー
遺伝子編集技術CRISPR-Cas9 は、生物学における過去10年間での最大のブレークスルーって言われてるけど、その関連技術CRISPRaも同等のブレークスルーとして注目を集めているらしい。CRISPR-Cas9は不要な遺伝子をハサミで切り取るような技術だけど、CRISPRaは反対に不活性な遺伝子を活性化する技術。この技術を使えば、免疫細胞ののなぞがかなり解明されるとして期待されている。
(情報ソース longevity technology)
数学者もAIと協働
AIって人間の仕事を奪うのではなく、人間をサポートするよね、というのが最近の流行りの言説。プログラミングやデザインなどの領域でもAIと人間の協働という例が出始めているけど、数学者もAIと一緒に働くことで成果を出し始めているみたい。
(情報ソース quantamagazine)
米で低所得者世帯にネット接続料を補填
米政府が低所得者世帯にネット接続料として月30ドルを補填するプロジェクトで既に1000万人が申し込んだらしい。
ネット接続は社会インフラで、基本的人権に含まれるべきものなので、国がしっかりと保証すべきだと思う。インフラが整備されれば、教育、福祉などのビジネスやサービスがその上で展開できるようになるだろうし。
(情報ソース cnet)
サイケドラッグをAI創薬
AI創薬ベンチャーのMindstate社が1150万ドルの出資を受けて、変性意識を作り出す薬の開発に乗り出している。
変性意識を作り出す薬物としてはLSDやDMTなどが有名。LSDは中毒性があるので違法。DMTは確かまだ合法だったように思う。
Mindstate社はAIを使って、LSDなどと同様の変性意識を生む一方で、副作用がほとんどない薬を設計するという。
変性意識は、瞑想やサウナなんかでも感じることは可能だけど、薬だともっと簡単に経験できる。
離婚の危機の夫婦がエクスタシーと呼ばれる薬で夫婦仲がよくなったというニューヨークタイムズの記事を最近読んだばかり。アメリカでは、サイケドラッグに対する関心が高まってきているのかも。
これからAIが人間に代わって富を産んでくれるユートピアに向かっていくと言われているけど、その直前には貧富の差が拡大するディストピアが不可避だという予測もある。もしディストピアに向かっていくのだとしたら、鬱などの精神疾患にかかる人も増えるだろうから、こうした薬物に対するニーズが高まるのかも。
(情報ソース benzinga.com )