建築業界で生成AIは何ができる?活用例・ツール8選と選び方を解説
建築の現場でも、外観のデザイン案づくりやパースの作成、仕様書の下書きといった場面で生成AIを使う動きが広がっています。ただ、調べ始めると画像生成ツールの名前が次々に出てきて、自社のどの業務で何を使えばよいのかを判断しにくいのが実情です。
建築で生成AIが役立つ場面は、企画段階のデザイン検討から実施設計の性能検討、バックオフィスの書類作成まで及びます。成果を分けるのは目新しいツールを選ぶことではなく、業務ごとの向き不向きを見極め、社内で安全に使う運用を整えることです。
本記事では、建築業界で生成AIが注目される理由とメリットを整理したうえで、設計プロセス別の活用例と主要ツール8選を紹介します。選定基準と注意点まで、公的な調査や各社の公式情報をもとに整理しました。
建築業界で生成AIが注目される理由

建築業界が生成AIに向き合う背景には、現場の構造的な事情があります。帝国データバンクの調査によると、生成AIを業務で活用している企業は全体で34.5%でしたが、建設は26.4%にとどまり、サービス業の47.8%や金融の38.6%を下回りました。

図1 業界別に見た生成AIを活用している企業の割合(2026年3月)
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
活用が遅れている一方で、建築業界が抱える課題は、生成AIが得意とする領域と重なっています。理由は主に次の3つです。
- 人手不足と高齢化で担い手が足りない
- 熟練者の技術を継承する必要がある
- 設計や書類の作業に時間がかかっている
人手不足と高齢化で担い手が足りない
最も切迫しているのは担い手の不足です。国土交通省はi-Construction 2.0において、2040年度に生産年齢人口が2020年度比で約2割減少すると見込んでいます。この見通しを踏まえ、2040年度までに建設現場の省人化を3割進める目標を掲げました。建設業の高齢化は全産業の平均より進んでおり、若手の入職も限られるのが現状です。
人員を増やして補う運営には限界があります。一人あたりが扱える業務量を仕組みで増やす発想が欠かせません。この不足に直接効く手段として、生成AIが検討されています。
出典:国土交通省「i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化」(令和6年4月)
熟練者の技術を若手へ継承する必要がある
熟練者が持つ技術の継承も、担い手の不足と並ぶ建築業界の課題です。建築の業務は経験にもとづく判断の比重が大きく、分量の多い施工要領書や社内基準から必要な記載を探し当てるにも慣れが要ります。清水建設は、施工要領書や基準書を検索できる技術文書アシスタントを開発し、検索時間が短くなる効果を確認しました。
熟練者の退職が進むと、個人にとどまった知見が失われ、事業の継続にも影響しかねません。判断のもとになる文書を検索できる形で社内に残す手段として、生成AIが選ばれています。
出典:Lightblue「清水建設、生成AIアシスタントを全社に導入」(2025年7月)
設計や書類の作業に時間がかかっている
設計や書類の作業に時間がかかる一因は、成果物づくりに直接は関わらない周辺作業の多さです。特記仕様書や打合せ議事録、近隣への案内文、社内報告の作成は、担当者の時間を大きく使います。帝国データバンクの調査には、建設業の大企業から、情報収集や自身の見解の確認に生成AIが役立っているという声が寄せられました。
図面と現場の判断は人が担い、その周りの文章作業を生成AIが引き受ける分担であれば、導入の障壁は高くありません。建築で着手しやすいのはこの領域です。
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
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建築業界で生成AIを使うメリット

導入した企業は、実際にどのような手応えを得ているのでしょうか。帝国データバンクの調査では、生成AIを活用する企業の86.7%が業務への効果が出ていると回答しています。
効果の出方は業務の性質で変わります。生成AIが力を出すのは、下書きをそろえる作業と、蓄積された情報を探す作業です。建築の業務に引き寄せると、得られるものは次の3つにまとめられます
- 設計初期の検討が速くなり手戻りが減る
- 熟練者の知見を共有できる
- 人手不足の負担が軽くなる
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
設計初期の検討が速くなり手戻りが減る
効果が見えやすいのは、企画から基本設計にかけての検討です。大林組が米国のSRI Internationalと共同で開発したAiCorbは、手描きのスケッチや3Dモデルから複数のファサードデザイン案を自動生成できます。生成した案はHypar上で3Dモデルとして扱えるため、施主との打合せで、その場で方向性を確かめられるのが特徴です。
案出しの回数を増やせれば、施主の要望とのずれを早い段階で見つけられます。基本設計が進んだ後の手戻りを防げるため、期間と費用の無駄も膨らみません。
出典:大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化するAiCorbを開発」(2022年3月)
熟練者の知見を共有できる
社内に蓄積された熟練者の知見を全社で共有できるのもメリットです。清水建設は、施工要領書や基準書をRAGで検索できるアシスタントを開発し、効果の確認を経て全社へ広げています。RAGとは、社内の文書を検索し、その内容にもとづいて回答を作る仕組みのことです。利用者は2025年7月時点で2,000名を超えました。
これにより経験の浅い担当者でも、熟練者に尋ねる前に自力で調べられる状態になります。質問に応じる側の時間も節約できるため、効果は組織全体に及びます。
出典:Lightblue「清水建設、生成AIアシスタントを全社に導入」(2025年7月)
人手不足の負担が軽くなる
生成AIの活用により、建築業界の人手不足を軽減できるのもメリットです。人手が限られるほど、文章の作成や情報整理を任せられる相手の価値が大きくなります。実際、帝国データバンクの調査では、大いに効果が出ていると答えた割合は小規模企業で29.7%となり、大企業の20.8%を上回りました。
少人数の設計事務所や工務店では、設計者が図面と書類の両方を抱えがちです。書類の下書きを生成AIが担えば、その分の時間を図面の検討へ回せます。
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
建築業務における生成AIの活用例
建築の業務は、企画から実施設計、施工、バックオフィスまで幅があります。全産業の傾向を見ると、生成AIが使われているのは判断そのものよりも、その手前にある情報整理や文章化です。

出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
建築も、この傾向から外れていません。企画と基本設計、実施設計、バックオフィスの3段階に分け、それぞれで何を任せられるのかを整理します。
企画と基本設計でコンセプト案とパースを作る
建築ならではの活用が進むのは、企画から基本設計にかけてのビジュアル作成です。画像生成AIにキーワードや条件を与えれば、外観のコンセプト案を短時間で複数枚そろえられます。建築に特化したサービスは入力の幅が広く、アクチュアルのArchiXは、スケッチのほか立面図や平面図、模型の写真からもパースを生成できる仕様です。
ただし、この段階の出力は検討用の素材にすぎません。汎用の画像生成AIでは、窓の割り付けや階段の納まりといった建築的な整合が崩れることもあります。実施設計の図面づくりは人に残しつつ、方向性を施主と早くそろえる道具として活用するのがポイントです。
実施設計で性能と法規への適合を検討する
実施設計で中心になるのは、生成した案を条件に照らして絞り込む使い方です。アイデアを広げる企画段階と異なり、性能や法規への適合が案を選ぶ基準になります。Autodesk Formaのもとになったのは、同社が買収したSpacemakerです。建物の配置や形状を変えながら日照や風、騒音、CO2への影響を解析し、条件に合う案を比較できます。
また、Revitと連携すれば、初期検討の成果をBIM(建物の情報を3次元モデルに統合して扱う手法)へ引き渡せる点も強みです。
日影規制や斜線制限のように敷地条件から機械的に導ける制約は、AIの解析になじみます。ただし、確認申請に用いる判断は有資格者にしか担えません。解析の結果はあくまで検討の材料で、適合の可否は人が決めます。
出典:Autodesk「Autodesk Forma」(2026年7月時点)
バックオフィスと営業の書類を効率化する
図面から離れた業務にも、生成AIに任せられる作業は多く残っています。特記仕様書のたたき台、打合せ議事録の要約、近隣説明の案内文、補助金申請の理由書、提案書の構成案は、いずれも大規模言語モデル(大量の文章を学習し、文章の生成や要約を行うAI)が下書きを作れる作業です。社内の文書を検索できる環境と組み合わせれば、過去の類似案件を参照しながら書き進められます。
この領域は、成果を測りやすい点でも着手に向いています。作成にかかっていた時間を前後で比べれば、効果を数値で確認できます。図面や現場の判断に踏み込まないため、社内の合意も得られやすくなります。
なお、図面や施主情報を含む社内データを安全に扱いながら文書の作成を進めたいときは、法人向けの生成AIサービスが役立ちます。詳しくはエクサベース AIのサービス資料をご覧ください。
建築業界で使える生成AIツール8選
実際に使えるサービスを、デザインとパースを作る系統と、文書と社内ナレッジを扱う系統の2つに分けて紹介します。用途の異なるツールを同じ物差しで比べても判断できないため、群ごとに整理しました。
画像を作る系統は表現の幅と建築的な整合のどちらを取るかで分かれ、文書の系統は入力する情報の機密性で選択肢が絞られます。本記事の内容は2026年7月時点のもので、契約前に各公式サイトで最新の内容をご確認ください。
デザインとパースを作る系統の7つは次のとおりです。
| ツール | 主な用途 | 無料の範囲 | 商用利用 | 建築での位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| Midjourney | 外観コンセプトの画像生成 | なし | 全プランで可 | 表現力が高く建築的な整合は弱い |
| Stable Diffusion | 下絵を反映した画像生成 | ローカル利用は無料 | モデルの条件による | スケッチや立面図を反映しやすい |
| Adobe Firefly | 提出物向けの画像生成 | 無料枠あり | 正式版は可 | 権利に配慮した学習データ |
| ArchiX | スケッチや図面からのパース生成 | 2週間・1,000クレジット | 可 | 建築特化で構図が崩れにくい |
| D5 Render | 3Dモデルのレンダリング | Community版 | Pro以上で可 | RevitやArchicadと連携 |
| Autodesk Forma | 設計最適化と環境解析 | 試用と学生向け | 有償プランで可 | 日照や風などを解析 |
| Archicad AI Visualizer | BIMモデルからの案生成 | 学生向けに提供 | ライセンス内で可 | Archicad上で初期案を生成 |
表のとおり、汎用の画像生成AIは表現の幅で優位に立ち、建築特化やBIM連携型は形状の再現で優位に立ちます。施主へ方向性を示すまでなら前者、図面との整合を保った検討まで求めるなら後者が選択肢になります。
文書と社内ナレッジを扱う系統は次のとおりです。
| ツール | 主な用途 | 無料の範囲 | 商用利用 | 建築での位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| エクサベース AI | 文書作成と社内情報の検索 | 資料請求 | 法人向け | 入力データを学習に使わず全社で統制 |
この系統を1つに絞ったのは、図面や施主情報を扱う前提では、入力データを学習に使わない仕様と全社での統制機能の両方が条件になるためです。
Midjourney
Midjourneyは、文章で指示した内容から画像を生成するサービスです。表現力の高さで知られ、建築では外観のコンセプト案やイメージボードづくりに活用できます。指示に素材や時間帯を加えれば、雰囲気の異なる案を短時間でそろえられる点が持ち味です。
生成した画像は有料プランの契約者が商用利用できますが、年間の売上が100万ドルを超える事業者には上位プランが求められます。窓の割り付けや構造の整合までは期待できないため、施主と方向性を固めるまでの案出しに適したツールです。
出典:Midjourney「Using Images & Videos Commercially」(2026年7月時点)
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、自分の環境で動かせる画像生成モデルです。拡張機能を組み合わせると、手描きのスケッチや立面図の輪郭を保ったまま質感だけを変えられます。建築では、既存の構図を崩さずに外観の見え方を検討する場面で使えます。
自分のパソコンで動かせば利用そのものに料金はかかりません。ただし、相応の性能を持つ機材が必要です。使うモデルのライセンスによって、商用利用の可否が決まります。手元のデータを外部へ送らずに扱えるため、機密性の高い案件にも使えます。
出典:Stability AI(公式サイト)(2026年7月時点)
Adobe Firefly
Adobe Fireflyは、Adobeが提供する画像生成AIです。Adobe Stockやオープンライセンスの素材、著作権の保護期間が終了した作品で商用版のモデルを学習させたと同社は説明しており、権利面に配慮した設計になっています。
建築で出番が多いのは、施主や社内に提出する資料の画像づくりです。Photoshopから直接呼び出せるため、パースの背景や人物を差し替える編集ともつなげやすくなっています。
出典:Adobe「Adobe Firefly に関する FAQ」(2026年7月時点)
ArchiX
ArchiXは、建築に特化したパース生成サービスです。アクチュアルが開発しメガソフトが販売しており、スケッチのほか立面図や平面図、CG、模型の写真からフォトリアルなパースを生成できます。
生成した画像の著作権は作成者に帰属し、商用利用も可能です。図面を入力に使えるため、実施設計の途中でも見え方を確かめられます。日本語にも対応しており、社内へ広げるときも操作の説明に手間取りません。
D5 Render
D5 Renderは、建築とインテリア向けのリアルタイムレンダラーです。AI機能を備えており、素材の生成やテクスチャの補完、画質の向上に使えます。活用シーンは、BIMや3Dモデルを持ち込み、光の入り方を確かめながら仕上げる作業などです。
SketchUpやRevit、Archicadとの連携に対応しており、既存の作業手順へ無理なく組み込めます。無償のCommunity版は学習と評価の用途に限られ、案件で使うにはPro以上の契約が必要です。
出典:D5 Render「Pricing」(2026年7月時点)
Autodesk Forma
Autodesk Formaは、企画から基本設計の検討を支えるクラウドサービスです。Autodeskが買収したSpacemakerを引き継いでおり、建物の配置や形状を変えながら、日照や風、騒音、CO2排出量への影響を短時間で解析できます。
力を発揮するのは、意匠の見栄えではなく性能の面から案を絞り込みたい場面です。学生や教育機関に向けた無償の枠もあり、業務で使うなら有償のサブスクリプション契約を選びます。
出典:Autodesk「Autodesk Forma」(2026年7月時点)
Archicad AI Visualizer
Archicad AI Visualizerは、GraphisoftがArchicadに統合している機能です。Stable Diffusionを基盤としており、Archicad上の3Dモデルから初期のデザイン案を生成できます。建築とインテリアの用途に合わせて調整されている点が、汎用のツールとの違いです。
Archicad 28以降には標準で組み込まれ、クラウド上で動くため別途の購入やインストールは要りません。ただし前提としてArchicadのライセンスが必要で、単体では動かない仕組みです。設計中のモデルをそのまま起点にできるため、案出しにかかる労力を削減できます。
出典:Graphisoft「Archicad AI Visualizer」(2026年7月時点)
エクサベース AI
エクサベース AIは、株式会社Exa Enterprise AIが提供する法人向けの生成AIサービスです。文書の作成や要約、社内文書の検索に対応し、部門をまたいで同じ環境を使えるように設計されています。建築で対象になるのは、特記仕様書や報告書の下書き、過去案件の資料検索といった業務です。
入力したデータが学習に使われない仕様で、禁止ワードの登録や利用ログの記録、部門ごとの利用状況の把握に対応しています。図面や施主情報のように外部へ出せない情報も、社内の統制を保ったまま扱える設計です。導入企業は1,700社、利用者は15万IDに達しています(2026年7月時点)。
出典:エクサウィザーズ「エクサベース AI」サービスサイト(2026年7月時点)
建築業界向け生成AIツールの選定基準

ツールの数は多く、機能の差も年単位で変わるのが実情です。個々の機能を追いかけるより、変わりにくい判断軸を先に決めるほうが選定は速く進みます。
建築業で軸になるのは、次の3点です。業務で使ってよいかという法的な条件、成り立つ絵が出るかという精度、社内の情報を預けられるかという安全性を確認します。
- 商用利用と著作権
- 再現精度とCAD・BIM連携
- 社内データの安全性
商用利用と著作権
最初に確認したいのが、生成した画像を業務で使えるかどうかです。D5 RenderのCommunity版は無料の範囲では商用利用を認めておらず、Midjourneyは事業の規模で必要なプランが変わります。
あわせて見たいのが、学習データの出所を公表しているかどうかです。Adobe Fireflyのように学習素材の範囲を示すサービスなら、提出物に使う際に社内や施主へ説明しやすくなります。
再現精度とCAD・BIM連携
次に見るのは、建築として成り立つ絵を描けるかどうかです。汎用の画像生成AIは印象的な外観を作れる一方、窓の位置や階段の段数、構造の整合が崩れることもあります。崩れを抑えるなら、建築に特化したArchiXや、BIMを起点にするArchicad AI Visualizer、3Dモデルを読み込むD5 Renderが候補です。
既存のCADやBIMと行き来できるかも、作業量を大きく左右します。連携が弱いと、書き出しと読み込みの往復に時間を取られるのが難点です。使っているソフトとの接続を先に確かめておけば、時間短縮の効果を打ち消さずに済みます。
社内データの安全性
3つ目は、入力した情報がどう扱われるかです。入力データを学習に使わない仕様か、利用ログを記録できるか、部門単位で権限を分けられるか、この3点を比べます。一般向けの無料サービスはこの3点を満たさないことが多く、機密を含む業務には向きません。
社内で使うツールを1つに決められない場合でも、機密を含む業務で使う環境だけは条件を満たすものにそろえます。
図面や社内資料を安全に扱いながら生成AIを使うなら
エクサベース AIは、入力データを学習に使わない仕様と、部門単位での利用状況の把握に対応しています。全社で同じ環境をそろえたい場合の選択肢になります。
建築業界で生成AIを利用するときの注意点

建築は、人の安全と法令への適合に直結する仕事です。帝国データバンクの調査でも、懸念として情報の正確性が50.4%で最も多く、情報漏洩のリスクが33.5%、トラブル時の責任の所在などルールの整備が25.5%で続きました。
こうした不安を理由に、社内での利用そのものを認めない企業もあります。取り組みやすいのは、扱ってよい情報の線引きと最終確認の担い手を先に決め、使う場面を限って始める進め方です。業務に組み込む前に、次の3点を押さえてください。
- 誤りは人の確認で止め安全の責任は有資格者が負う
- 図面と施主情報を守る
- 生成物の著作権に注意する
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月)
誤りは人の確認で止め安全の責任は有資格者が負う
見過ごせないのが、生成AIが誤った内容をもっともらしく書いてしまう性質です。こうした誤りが混じる現象を、ハルシネーションと呼びます。建築で厄介なのは、誤りが見抜きにくい形で現れる点です。たとえば改正前の基準の数値を現行のものとして示したり、存在しない製品名や条文番号を実在するものとして並べたりします。文章として整っているため、確認を省くと誤りに気づけません。
対策は、生成AIの出力を成果物ではなく素案として扱うことです。法令への適合や構造の安全に関わる判断は、建築士をはじめとする有資格者が確認します。大林組も、AiCorbを設計者の業務を補助する機能と位置づけ、設計者の新たな働き方の実現に貢献するものとして公表しました。生成AIを使ったかどうかにかかわらず、設計と施工の責任は人が負います。
出典:大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化するAiCorbを開発」(2022年3月)
図面と施主情報を守る
図面や施主情報をどこまで入力してよいかの線引きも重要です。図面には敷地や構造の情報が含まれ、案件によっては施主の氏名や住所、資金計画などが付随します。一般向けの無料サービスでは、入力した内容が学習に使われる場合もあり、契約上の守秘義務に触れかねません。
扱ってよい情報の範囲を業務ごとに定め、機密を含む場合は入力データを学習に使わない環境に限定します。誰がどの環境を使うかを決めないまま始めると、判断が個人任せになりかねません。導入と同時にルールを整えておくことが、現場の迷いをなくす近道です。
なお、こうした情報管理の要件を満たした環境を全社でそろえたい場合は、エクサベース AIのような法人向けサービスが選択肢になります。
生成物の著作権に注意する
生成した画像やデザインの権利関係にも注意が必要です。文化庁は、AIによる生成物が既存の著作物に類似し、依拠して作られたと認められる場合には著作権の侵害となり得るとの考え方を示しています。学習の段階と、生成や利用の段階は分けて考える必要があるとの整理も示されました。
実務では、特定の建築家や実在の建築物を名指しして生成しない、提出の前に類似の有無を確かめるといった運用が有効です。効果や優位性を対外的に示す場合も、根拠のない断定や最上級の表現は避けます。
出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月)
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建設会社3社の導入事例
実際に導入した企業は、どの業務から着手し何を得たのでしょうか。設計、技術文書、全社の基盤という異なる領域から3社を取り上げます。
3社に共通するのは、図面や現場の判断そのものではなく、その手前と周辺から入っている点です。着手した領域と時期は異なりますが、いずれも人の確認を残す設計になっています。
大林組はスケッチから外観デザイン案を生成し合意形成を早めた
大林組が2022年に米国のSRI Internationalと共同で開発したAiCorbは、建築設計の初期段階を支援する機能です。手描きのスケッチや簡単な3Dモデルから、複数のファサードデザイン案を自動で生成します。生成した案はHyparと連携して3Dモデルへ展開でき、外観の検討をそのまま次の工程へつなげられる仕組みです。
同社は、AiCorbを含む設計の効率化手法について、設計者の業務を補助するオープンな機能として公開する方針を示しました。施主との打合せで要望をその場で形にできれば、方向性の確認が早まり、後の工程での手戻りを抑えられます。
出典:大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化するAiCorbを開発」(2022年3月)
清水建設はRAG検索で施工要領書を探す時間を縮めた
清水建設が2025年4月に全社へ導入したのは、社内文書を検索できる生成AIアシスタントです。首都圏の建設現場で実施したトライアルでは、施工要領書や基準書をRAGで検索できる技術文書アシスタントを開発し、検索の時間が短くなる効果を確認しています。
全社導入を決めた理由には、若手への知識の継承が進む可能性を見いだしたことが挙げられました。2025年5月以降は説明会やハンズオンセミナーを重ね、利用者は2,000名を超えています。探す時間を短くした取り組みが、熟練者の知見を引き継ぐ土台づくりにもつながりました。
出典:Lightblue「清水建設、生成AIアシスタントを全社に導入」(2025年7月)
鹿島建設は専用AIを2万人に展開し禁止から活用へ転じた
鹿島建設が2023年に運用を始めたKajima ChatAIは、自社専用の対話型AIです。国内外のグループ会社を含む従業員約2万人を対象とし、Azure OpenAI Serviceを使ってイントラネット内に環境を構築しています。入力した情報が外部の学習に使われない状態も確保しました。
安全性を担保した自社の環境を用意し、禁止から活用へ方針を切り替えた形です。従業員の認証と利用履歴の記録を加えた設計は、規模の大きい組織が全社へ広げるときの参考になります。
出典:鹿島建設「グループ従業員2万人を対象に専用対話型AI Kajima ChatAI の運用を開始」(2023年8月)
自社ではどの業務から着手し、どの環境を使えばよいかを検討する場合は、サービス資料をご覧ください。
まとめ
建築で生成AIが使える範囲は、企画段階のコンセプト案づくりから実施設計の性能検討、バックオフィスの書類作成まで広がっています。ただし、成果を左右するのは目新しいツールを選ぶことではありません。どの業務なら任せられるかを見極め、社内で安全に使える環境とルールをそろえた企業が、先に成果を得ています。
建設業の活用率は他の業種より低く、着手の余地はまだ大きく残された状態です。図面の判断に踏み込まない書類の作成や情報の検索から始め、効果を確かめながら設計の検討へ広げる進め方であれば、企業の規模を問わず取り組めます。
図面や施主情報を扱う以上、使う環境の選定は機能の比較より先に決めるべき項目です。扱う情報の線引きを定め、その条件を満たす環境を選んだうえで、活用の幅を広げてください。
※ 記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※ 料金やモデルの仕様、利用上限などの最新情報は変更される可能性があるため、導入検討の際は必ず各サービスの公式ウェブサイトにて最新の金額・情報をご確認ください。


