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DX認定制度とは?DX認定制度の概要と取得するメリットや難易度を分かりやすく解説

DX認定の取得により、自社のDXへの取り組みが進んでいることを広く世間に示すことができます。近年、DX推進は企業価値向上に欠かせない施策となっているため、DX認定取得は、さまざまなステークホルダーへのアピール要素にもなりえるでしょう。

この記事では、DX認定制度の概要と取得するメリット、取得までの流れや手続きの方法を解説します。

そもそもDXとは

DXとは、経済産業省によると以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:『デジタルガバナンス・コード2.0』経済産業省 2022年9月13日

DXは単なるデータとデジタル技術の活用にとどまらず、これらを用いてビジネスそのものに変革をもたらすことです。近年、DX推進は企業価値を測る重要な要素のひとつとなっており、多くの企業が積極的に取り組みはじめています。

こうしたなか、DX推進の準備が整っている企業を国が認定する制度として「DX認定制度」が制定されました。

DX認定制度とは

DX認定制度は「情報処理の促進に関する法律第三十一条」に基づく認定制度で、運用機関である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、制度の概要を以下のように解説しています。

DX認定制度は、デジタル技術による社会変革に対して経営者に求められる事項を取りまとめた「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度です。認定事業者は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」とされ、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができます。

出典:『DX認定制度のご案内』独立行政法人 情報処理推進機構 2024年1月30日

2024年1月時点の認定事業者は、912社者(大企業575・中小企業337)であり、直近1年で1.6倍もの伸びを示しています。なかでも中小企業は2.3倍の伸びがあり、全体の認定事業者数増加を牽引している状態です。大手企業にとどまらず、中小企業においてもDXの取り組みが加速していることが推察できるでしょう。

出典:『DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)』経済産業省 2024年2月1日

DX認定制度が設立された背景

DX認定制度が設立された背景には、国内企業のDX推進の遅れがあります。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、多くの経営者がDXの重要性を理解しているなか、既存システムの複雑化・ブラックボックス化が解消できず思うようにDXが進んでいない現状を捉えています。また同レポートでは、こうした課題を2025年までに解決できない場合、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると示唆しました。

「2025年の崖」と称されるこの問題が解決できない場合、企業の多くが競争力を失うと危惧したことから、国内企業のDX推進のテコ入れ策としてDX認定制度を設立したといわれています。

参考:『DXレポート』経済産業省 2018年9月7日

DXを取り巻く課題についてさらに知りたい方は、「日本のDXにおける課題とその解決策。DXには経営のコミットが不可欠?」の記事で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。

DX認定制度の認定機関

DX認定制度において最終的な認定を行うのは経済産業省ですが、認定事業者との直接のやり取りや認定審査等の運営は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が行います。

独立行政法人 情報処理推進機構内に「DX認定制度事務局」が設けられ、ほぼ全ての手続きが行われます。経済産業省は、事務局の審査結果に最終判断を下すのみという位置づけです。

DX認定制度の概要

ここで、DX認定制度の概要を整理しておきましょう。申請対象となる事業者や申請期間等の概要を以下の表で整理しています。

申請対象 全ての事業者(個人事業と法人)※公益法人を含む
申請期間 通年(1年を通じていつでも可能)
申請方法 Webサイト「DX推進ポータル」から申請
https://dx-portal.ipa.go.jp/i/signin/top?d=%2Fu
審査期間 約60日
認定の有効期限 2年間
認定の更新 認定後2年を経過する日の60日前までに更新書類を提出
認定要件 認定基準を満たしていること

参考:『DX認定制度 申請要綱』経済産業省・独立行政法人 情報処理推進機構 2022年11月

認定要件は「認定基準を満たしていること」とありますが、その認定基準の根拠となるのが「デジタルガバナンス・コード」です。

DX認定の審査基準である「デジタルガバナンス・コード」とは

DX認定の審査基準である「デジタルガバナンス・コード」とは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営戦略の策定・公表を経営者に求めたもので、経済産業省により作成されました。

  • ビジョン・ビジネスモデル
  • 戦略(組織・人材・企業文化とITシステム・デジタル技術の整備)
  • 成果と重要な指標
  • ガバナンスシステム

これらの項目で構成され、それぞれに「柱となる考え方」「認定基準」「望ましい方向性」「取り組み例」が記載されています。DX認定に関わってくるのは「柱となる考え方」と「認定基準」の部分です。

ビジョン・ビジネスモデル

ビジョン・ビジネスモデルにおける「柱となる考え方」には以下のように記されています。

企業は、ビジネスと IT システムを一体的に捉え、デジタル技術による社会及び競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク・機会)を踏まえた、経営ビジョンの策定及び経営ビジョンの実現に向けたビジネスモデルの設計を行い、価値創造ストーリーとして、ステークホルダーに示していくべきである。

デジタル技術がもたらす、あらゆる変化に対応しうる経営ビジョンの策定と、それに準じたビジネスモデルの必要性を示唆しており、そのビジョン・ビジネスモデルをステークホルダーに適宜開示することも求めています。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえた経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

戦略

戦略における「柱となる考え方」は、以下のように記されています。

企業は、社会及び競争環境の変化を踏まえて目指すビジネスモデルを実現するための方策としてデジタル技術を活用する戦略を策定し、ステークホルダーに示していくべきである。

目指すビジネスモデルの実現のために、デジタル技術の活用戦略を策定し、ステークホルダーに公表することを求めています。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえて設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用する戦略を公表していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

戦略の項目は、さらに組織や人材に関する部分と、ITシステムやデジタル技術活用に関する部分に細分化されます。

組織づくり・⼈材・企業⽂化に関する⽅策

戦略における「組織づくり・⼈材・企業⽂化に関する⽅策」に対する「柱となる考え方」には、以下のように記されています。

企業は、デジタル技術を活用する戦略の推進に必要な体制を構築するとともに、組織設計・運営の在り方について、ステークホルダーに示していくべきである。その際、人材の育成・確保や外部組織との関係構築・協業も、重要な要素として捉えるべきである。

デジタル技術の活用に際して、組織としての体制構築、人材活用の重要性を説いています。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

デジタル技術を活用する戦略において、特に、戦略の推進に必要な体制・組織及び人材の育成・確保に関する事項を示していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

ITシステム・デジタル技術活⽤環境の整備に関する⽅策

もう一つの戦略における「IT システム・デジタル技術活⽤環境の整備に関する⽅策」に対する「柱となる考え方」には、以下の記載があります。

企業は、デジタル技術を活用する戦略の推進に必要な IT システム・デジタル技術活用環境の整備に向けたプロジェクトやマネジメント方策、利用する技術・標準・アーキテクチャ、運用、投資計画等を明確化し、ステークホルダーに示していくべきである。

ITシステム・デジタル技術環境整備に向けた取り組みの詳細を明確化し、ステークホルダーに示すべきとしています。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

デジタル技術を活用する戦略において、特に、IT システム・デジタル技術活用環境の整備に向けた方策を示していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

成果と重要な成果指標

成果と重要な成果指標の項目における「柱となる考え方」には、以下のように記されています。

企業は、デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標を定め、ステークホルダーに対し、指標に基づく成果についての自己評価を示すべきである。

デジタル技術活用戦略において自社の目指すべき目標を策定すること、そしてその目標に対する成果をジャッジしステークホルダーと共有するべきとしています。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標について公表していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

ガバナンスシステム

ガバナンスシステムの項目における「柱となる考え方」は、以下の通り記載されています。

  • 経営者は、デジタル技術を活用する戦略の実施に当たり、ステークホルダーへの情報発信を含め、リーダーシップを発揮するべきである。
  • 経営者は、事業部門(担当)や IT システム部門(担当)等とも協力し、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題を把握・分析し、戦略の見直しに反映していくべきである。また、経営者は、事業実施の前提となるサイバーセキュリティリスク等に対しても適切に対応を行うべきである。
  • [取締役会設置会社の場合]取締役会は、経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略の方向性等を示すにあたり、その役割・責務を適切に果たし、また、これらの実現に向けた経営者の取り組みを適切に監督するべきである。

デジタル技術の活用に関するあらゆる管理において、経営者が積極的にコミットするべきということが示唆されています。また、サイバーリスクにも言及し、適切な対策を経営者自らが主導して行うことを求めるものです。

この基本的な考えをもとにした認定基準が、以下の文言です。

  • 経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っていること。
  • 経営者のリーダーシップの下で、デジタル技術に係る動向や自社の ITシステムの現状を踏まえた課題の把握を行っていること。
  • 戦略の実施の前提となるサイバーセキュリティ対策を推進していること。

出典:『デジタルガバナンス・コード 2.0』経済産業省 2022年9月13日

DX認定の基準・認定レベル

経済産業省では企業におけるDX推進の取り組み状況に応じて、4段階のレベルを設けています。認定の対象になるのは上位3段階で、DX認定は上から3番目のDX-Readyレベルを認定します。

DX-Excellentレベル
(DXエクセレントレベル)
認定事業者のうち、ステークホルダーとの対話(情報開示)を積極的に行っており、優れたプラクティスとなるとともに、優れたデジタル活用実績も既に現れている事業者
DX-Emergingレベル
(DXエマージングレベル)
認定事業者のうち、ステークホルダーとの対話(情報開示)を積極的に行っており、優れたプラクティスとなる(将来性を評価できる)事業者
DX-Readyレベル
(DXレディレベル)
ビジョンの策定や、戦略・体制の整備等を既に行い、ステークホルダーとの対話を通じて、デジタル変革を進め、デジタルガバナンスを向上していく準備が整っている事業者
DX-Ready以前レベル ビジョンの策定や、戦略・体制等の整備に、これから取り組む事業者。まずはDXの進捗状況をDX推進指標を用いて自己診断することにより自律的に推進自己診断結果はIPAにて収集し、ベンチマーク提供・政策立案へ活用

出典:『DX認定制度概要』経済産業省 2022年10月1日

DX-Readyレベルとは、DX推進において戦略・体制が整い、ステークホルダーとの対話を通じてデジタル化の取り組みが進められる準備が整った状態を指します。本格的にDXを進めるスタートラインに立っていることを認定するものと捉えるとよいでしょう。

その他上位2つの認定レベルはより取り組みが進み、モデルケースとして他企業に影響を及ぼすレベル、もしくは将来的にそのレベルに達する可能性がある事業者が認定されます。

DX-ExcellentレベルとDX-Emergingレベルに認定された企業のなかから、特に優れた取り組みを行っている企業は、上場企業を対象に「DX銘柄」、未上場の中小企業は「DX Selection」として経済産業省より認定され社名が公表されます。

DX銘柄を取得した企業や事例を詳しく知りたい方は、「DX推進企業「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を紹介!」の記事で紹介していますので合わせてお読みください。

 

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企業がDX認定を取得するメリット

ここでは、経済産業省がDX認定取得企業に実施したアンケートより、DX認定のメリットを紐解いていきます。

企業がDX認定の取得を目指すのは、なんらかのメリットがあるからに他なりません。各企業が認定を目指す動機を見ることで、どのような効果を期待しているのかが分かります。

「DX認定を取得しようと思った動機について教えてください」という設問に対して、以下の回答が上位を占めています。

  • DX戦略策定・推進の一環として  78.5%
  • 顧客に対するイメージ向上のため 65.9%

自社のDX推進取り組みの一環として、また対外的なイメージアップを動機に取り組んだ企業が多いことが分かります。

また「DX認定を取得したことによるメリットは、何があると思われますか」と、実感したメリットに対する設問に対する回答も同様の傾向でした。

  • DX戦略の推進 78.0%
  • 顧客に対する企業イメージ向上 72.1%

出典:『DX認定事業者アンケート結果』経済産業省 2023年

認定取得に取り組んだ企業は、ほぼ希望した通りの効果を得られていることは分かるでしょう。

DX戦略の推進が加速する

DX認定を取得することによって、DX推進が加速したと実感している企業は多いようです。アンケートによると約95%の企業が、DX推進体制や戦略の構築・見直しに役立ったと回答していました。また、認定取得後、DX推進が順調に進んでいると実感する企業も約半数にのぼっています。

【アンケート結果】

設問 回答
DX認定取得に向けたプロセスが貴社のDX推進体制や戦略の構築・見直しに役立ちましたか
  • 役立った    56%
  • 少し役に立った 39%
  • 役立たなかった  5%
DX認定を取得した後、DXの取り組みは進んでいますか
  • 大いに進んだ        5%
  • 予定通り順調に進んでいる  43%
  • 徐々に進んでいる      45%
  • 予定通り進んでいない部分が多い 7%

出典:『DX認定事業者アンケート結果』経済産業省 2023年

企業イメージの向上

DX認定の取得により、企業イメージの向上を実感する企業も多いようです。アンケートでは以下のような声が上がっています。

  • 会社のブランド力が上がり企業信用度も向上したことで、商談数が増加して売上アップになった。
  • 新規営業において、大手企業様からの反応が良くなり売上増につながった。

出典:『DX認定事業者アンケート結果』経済産業省 2023年

また、認定事業所には認定ロゴマークの使用が許可されます。DX推進ポータル(IPAのホームページ)に企業名が公表されるため、対外的なイメージアップにつながっていくでしょう。

顧客との関係性向上

アンケート結果からは、顧客との関係性が向上が実感できた企業が9割近くにのぼることが見て取れます。

【アンケート結果】

設問 回答
DX認定を取得したことにより、事業への良い影響(貴社内や取引先等からの好反応等)はありましたか。
  • あった      39%
  • すこしあった   49%
  • なかった     12%

具体的には以下のような声が上がっています。

  • 弊社事例を参考にDX認定を取得されたお客さまも多数おり、顧客関係力の向上に役立った。
  • DX認定により、同様にDX認定を取得している、これまでご縁のなかった企業との繋がりや情報交換ができるようになった。

出典:『DX認定事業者アンケート結果』経済産業省 2023年

DX人材育成・獲得施策に好影響を及ぼす

DX人材の育成や採用に好影響を感じている企業は7割以上にのぼります。応募者増や採用ホームページの閲覧数増加など、ポジティブな影響を実感しています。

【アンケート結果】

設問 回答
DX認定を取得したことにより、人材の育成・確保に良い影響(応募者や採用PV数の増加、その他ポジティブな反応)はありましたか。
  • あった      24%
  • すこしあった   49%
  • なかった     26%

具体的には以下のような反応があったようです。

  • 人財採用時に認定を受けていることが企業選択の理由の一つになったとコメントがあった。
  • 人材採用活動において認定企業として応募理由に挙げられることが増えた。 
  • 新卒採用にて、学生からDX認定とDX銘柄が応募のきっかけとなったと多々いわれたことがある。

出典:『DX認定事業者アンケート結果』経済産業省 2023年

中小企業を対象とした金融支援措置がある

DX認定企業には様々な恩恵がありますが、その一つが中小企業を対象にした金融支援措置です。設備投資等に必要な資金について、日本政策金融公庫からの借入に対し、基準金利1.2%よりも低い、0.65%の特別金利で融資を受けられます。

また情報システム関連の設備整備に必要な資金に限り、中小企業信用保険法の特例として民間金融業者からの借り入れに対し、保証枠の拡大や追加保証の対象となります。

参考:『DX認定制度』経済産業省 2024年2月1日

税制面での優遇がある

税制による支援措置の対象になる点も大きなメリットです。DX促進税制による優遇措置で、積極的な攻めの姿勢のデジタル投資を促すことを目的に行われます。DX実現に向けたクラウド技術を活用したデジタル投資に対し、税額控除(3%・5%)もしくは、特別償却30%の対象となります。

参考:『DX認定制度』経済産業省 2024年2月1日

人材育成・訓練の助成がある

人材育成・訓練の助成が受けられることもメリットです。DX認定を受けた事業者は高度デジタル人材訓練の対象事業主としての要件を満たすため、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の対象となります。この制度が適用されることにより、訓練経費の75%もしくは、訓練中の賃金の一部(960円/時間)が助成されます。

参考:『DX認定制度』経済産業省 2024年2月1日

DX認定申請から認定のプロセス

DX認定のプロセスは、デジタルガバナンスコードの各項目への取り組みを進めることと同義です。DX認定の申請項目は、デジタルガバナンスコードの各項目と対応しており、まずはそれぞれの認定基準を満たすことから始める必要があります。

DX認定取得のために必要なフローのイメージは以下の通りです。

  1. 「経営ビジョン」を策定する
  2. 「DX戦略」を策定する
  3. 「DX戦略」の達成度を測る指標を決定する
  4. 経営者による「DX戦略」の推進状況等の対外発信を行う
  5. 「DX推進指標」等による自己分析を行い課題把握する
  6. サイバーセキュリティ対策を推進する

参考:『DX認定制度 申請要綱』経済産業省・独立行政法人 情報処理推進機構 2022年9月13日

上記のように「経営ビジョンの策定⇒DX戦略の策定⇒達成指標の決定⇒管理(ガバナンス)」というプロセスで進めていくとスムーズです。

申請項目に対する取り組みが認定基準に達しているか確認する

デジタルガバナンス・コードに準拠した取り組みが進んだら、各項目が認定基準に達しているかを確認します。

なお、DX認定における審査項目と、認定基準の関係は以下の表の通りです。実際の申請手続きでは各認定項目ごとに、認定基準を満たしたことが分かる対外的な資料を添付して提出することになります。

【参考 DX認定の基準】

DX認定の項目 認定基準(デジタルガバナンス・コード)
(1)企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定 デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえた経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表していること
(2)企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定 デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえて設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用する戦略を公表していること
(2) ①戦略を効果的に進めるための体制の提示 デジタル技術を活用する戦略において、特に、戦略の推進に必要な体制・組織及び人材の育成・確保に関する事項を示していること
(2) ②最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策の提示 デジタル技術を活用する戦略において、特に、ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に向けた方策を示していること
(3)戦略の達成状況に係る指標の決定 デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標について公表していること
(4)実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信 経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っていること
(5)実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握 経営者のリーダーシップの下で、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題の把握を行っていること
(6)サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び 実施  戦略の実施の前提となるサイバーセキュリティ対策を推進していること

出典:『DX認定制度概要』経済産業省 2022年10月1日

申請書類作成と申請手続き

各取り組みに対する確認が終わったら、申請の手続きに移ります。DXポータルより認定申請書と申請チェックシートをダウンロードします。チェックシートには各項目ごとの確認事項が記載され、その内容に基づき申請チェックシートを作成、内容を要約して認定申請書に記載していきましょう。

【設問(1)に対する確認事項】

以下の確認事項を踏まえた取組内容を「申請チェックシート(Excelファイル)」に記入してください。その内容を要約して申請書へ記入してください。
NO. 確認事項 備考
1-1 デジタル技術が社会や自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかについて認識し、その内容について公表しているか。  
1-2 1-2 1-1を踏まえ、経営ビジョンを示し、公表しているか。 例えば、顧客視点での価値創出について記入してください。
1-3 経営ビジョンを実現するためのビジネスモデルの方向性を示し、公表しているか。  

上記確認事項を申請チェックシートに記載し終えたら、申請書には以下の項目を簡潔に記載します。

  • 公表媒体(文書等)の名称
  • 公表日
  • 公表方法・公表場所・記載箇所・ページ
  • 記載内容抜粋
  • 意思決定機関の決定に基づいていることの証明

出典:『DX認定制度 申請要項』経済産業省 独立行政法人 情報処理推進機構 2022年9月13日

設問項目ごとに申請書を作成し、必要に応じて書類を添付します。不明点は、よくある不備や問い合わせに対する「DX認定制度FAQ」も参考にしながら、抜け漏れがないよう記入していきましょう。

提出~認定

申請書の作成が終了したらDXポータルより提出し、約60日で認定結果の通知がメールで届きます。不認定の場合もメールが届き、不認定の理由と不認定決定日の通知がされます。不認定であっても再申請は可能です。認定された場合は、以後2年ごとの更新手続きが必要になります。

まとめ

DX認定を取得することにより、DXに対する意識が高く取り組みを推進している企業として、広く世間にアピールすることができます。自社のDX推進が加速するだけでなく、会社のイメージや顧客との関係性の向上、DX人材の育成・確保が促進されるといった恩恵も期待できるでしょう。

近年、DXの取り組み度合いが、企業価値を測る重要な指標になりつつあります。DX認定制度取得に向けた取り組みはステークホルダーとの関係性を良好なものにし、さらなる企業価値向上につながっていくでしょう。