1. トップ
  2. 解説AI
  3. 金融機関で生成AIはどの業務から使う?効果の出やすい領域や導入手順・注意点を解説

金融機関で生成AIはどの業務から使う?効果の出やすい領域や導入手順・注意点を解説

公開日
2026.09.03
金融機関で生成AIはどの業務から使う?効果の出やすい領域や導入手順・注意点を解説

銀行・証券・保険の各社で、生成AIを業務に取り入れる動きが広がっています。ただ、顧客の資産や契約を預かる金融業では、他の業種のように「まず全社で自由に試す」とは進めにくいのが実情でしょう。

成果が見えているのは、与信・投資助言・保険募集といった顧客向けの判断業務ではなく、文書作成や社内問い合わせといった内部業務の取り組みです。金融庁の調査でも、生成AIの利用は社内業務が中心で、顧客への直接利用はごく限定的にとどまります。

本記事は、こうした利用実態を踏まえ、内部業務から段階的に広げる進め方を軸に、金融機関のAI活用状況、業務ごとの規制とリスク、導入の手順を金融庁の一次資料から整理します。

目次

金融機関で成果が出ているのは判断業務でなく内部業務

金融機関のAI活用は、試すかどうかを議論する段階を過ぎています。金融庁が2024年10月から11月に実施した130社へのアンケートでは、9割以上が従来型AIまたは生成AIを活用していると回答し、7割以上は一般社員向けに生成AIの利用を広く認めていました。

図1 金融機関におけるAI・生成AIの活用状況(金融庁アンケート・130社、2024年10〜11月調査)

出典:金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)

一方で、「金融のAI=与信審査や不正検知」という理解は、生成AIの実際の使われ方と異なっています。与信や不正検知で主に使われているのは従来型AIです。生成AIの利用先は、文書作成や社内の情報検索といった内部業務が中心で、顧客への直接対応は限られています。

環境の整備が進んだにもかかわらず、成果と利用が集まっているのは文書作成や社内検索といった内部業務です。この章では、AIの役割分担と、顧客対応での使われ方という2つの面から現状を確かめます。

従来型AIは判断業務を担い生成AIは文書と検索を担う

金融機関で使われるAIは、担う業務がはっきり分かれます。従来型AIは、あらかじめ与えたデータの規則性をもとに数値の予測や検知を行う仕組みで、与信審査やマネー・ローンダリング対策の取引モニタリングといった判断業務にすでに定着しています。

一方の生成AIが力を発揮するのは、判断そのものではなく、文章を作る作業と情報を探す作業です。金融庁の整理でも、社内利用の中心は文書の要約・翻訳・校正、社内規程やマニュアルを対象にした情報検索でした。場面ごとに整理すると次のとおりです。

場面 主に使われるAI 具体例
与信審査・不正検知 従来型AI 与信判定モデル、取引モニタリング、保証審査モデル
文書作成・社内検索 生成AI 稟議書や照会応答文のドラフト、規程・マニュアルの横断検索
顧客対応 生成AI(従業員の支援) 照会に応じた回答候補の提示、参照すべき規程の提示

「金融のAI=与信や不正検知」という理解のまま生成AIを判断業務に持ち込むと、この役割分担を踏み外します。生成AIの導入は、文書と検索という得意分野から検討を始めるのが適切です。

顧客対応でも生成AIは従業員の支援にとどまる

顧客に関わる場面での使われ方は、金融庁のペーパーに具体的な記述があります。ハルシネーションのリスクや社内のガバナンス整理が途上であることを踏まえ、顧客に直接サービスを提供する分野では保守的に運用する金融機関が大半だ、という整理です。

実際に広がっているのは、コールセンターで照会内容に応じた回答候補を画面に示す、営業店で該当する社内規程を素早く探し出すといった、従業員を支える使い方です。出力が従業員の目を通ってから顧客に届くため、誤った案内がそのまま顧客に渡ることを防げます。なお一部のフィンテック事業者は、ライフプランのアドバイスなど生成AIの出力を顧客に直接示すサービスを始めており、先行例も生まれつつあります。

裏を返せば、社内では広く開放が進んだ一方で、顧客に近づくほど利用は閉じています。この開き方の差は偶然ではなく、出力の影響度と規制という金融ならではの壁の表れです。どの業務から使うかの判断は、この壁を軸に組み立てられます。

出典:金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)

生成AIの導入領域は顧客への影響度で3段階に分ける

生成AIをどの業務から取り入れるかは、出力が顧客に及ぼす影響と、業態・業務ごとの規制によって決まります。顧客に届く出力ほど、誤りを後から取り消せず、勧誘や表示に関する規制の射程にも入るためです。

次の表は、生成AIの利用領域を顧客への近さで3つに分け、影響と統制、導入の優先度を整理したものです。

利用領域 具体的な業務 顧客への影響 規制リスク 人の確認 導入優先度
社内・事務業務 文書要約・翻訳、文書校正・添削、社内FAQ検索 出力を顧客へ直接提示しない 比較的低い 業務利用前に担当者が確認 高い
顧客対応の間接支援 応対支援、稟議書・対外文書のドラフト 従業員を介して顧客へ届く 業務内容によって高まる 顧客への提示前に担当者が確認 条件付き
顧客への直接対応 自動応答、定型的な案内 出力が顧客へ直接届く 高い 回答範囲を限定し人へ引き継ぐ 慎重に判断

表のとおり、顧客に近い領域ほど誤りの影響と規制リスクが大きくなります。与信審査・投資助言・保険募集などの判断業務は、顧客の権利や取引結果を直接左右するため、顧客への直接対応と同等かそれ以上に慎重な検討を要します。

なお、利用領域の切り分けやデータを安全に扱う環境の整備から相談したい場合は、法人向け生成AIの提供元に導入設計ごと相談する方法もあります。当社グループの「エクサベース AI」でも、社内データの権限管理や活用定着までを含めて支援しています。

社内・事務業務から導入する

最初の段階は、出力が顧客に届かない社内・事務業務です。要約や下書きの誤りは担当者の確認で直せるため、規制リスクを抑えながら効果と運用を確かめられます。

金融の現場でいえば、稟議書や照会応答文のドラフト、監査対応資料の下書き、社内規程の要約が代表例です。文書のたたき台づくりは効果を数値で測りやすく、最初の検証対象に向いています。

顧客対応を行う従業員の支援へ広げる

次の段階が、顧客対応を担う従業員の支援です。照会内容に応じた回答候補や、参照すべき規程・マニュアルを画面に示す使い方で、出力は必ず従業員の判断を経てから顧客に届きます。

回答を探す時間が減り、経験の浅い担当者でも案内の品質を保ちやすくなります。誤りが顧客に届く前に人が止められる構造を保ったまま、顧客接点の生産性を高められる段階です。

顧客への直接対応は慎重に検討する

チャットボットなどによる顧客への自動応答は、省力化の効果が大きい反面、誤った出力がそのまま顧客の判断や取引に影響します。対象を定型的な手続き案内などに絞り、判断を伴う相談は人へ引き継ぐ設計が前提になります。

金融庁も、AI対応と人による対応を顧客が選べるようにすることや、生成AIによる回答であり誤りを含みうると注意喚起することを、共通的な目線として挙げています。最初から一次応答のすべてをAIに置き換える進め方は、影響範囲が大きく立て直しも難しくなります。

生成AIの活用領域は銀行・証券・保険で異なる

業態 効果が出やすい領域の例 規制上の注意
銀行 稟議書・照会応答文のドラフト、事務手続き文書の作成、社内規程の検索 顧客情報の取り扱い(個人情報保護)。融資の判断は人の審査が前提
証券 社内文書・商品資料の横断検索、レポートや資料の下書き 断定的判断の提供の禁止(金融商品取引法)。相場の見通しを断定する出力を顧客に出さない
保険 査定関連書類や照会対応文書の下書き、約款・マニュアルの検索 保険募集の規制(保険業法)。募集行為にあたる説明を生成AIに直接させない

金融庁のアンケートに回答した130社の内訳は、約4割が銀行などの預金取扱金融機関、証券会社などの金融商品取引業者と保険会社がそれぞれ1割強で、主要3業態が全体の約7割を占めます。文書作成や社内検索から始めやすい点はどの業態にも共通する一方、業務の中身と規制の重心が違うため、効果の出やすい領域と注意すべき場面は業態ごとに変わります。

出典:金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)

銀行は稟議書や照会応答文の下書きで効果が出やすい

銀行業務は、稟議書・照会応答文・事務手続き文書など、複数の記録を集めて整える文書作成の比重が大きい業態です。文書のたたき台づくりと社内規程の検索は、支店網を持つ銀行ほど照会対応の件数が多く、時間削減の効果が積み上がりやすい領域といえます。

注意すべきは顧客情報の扱いと、融資判断そのものには使わない線引きです。稟議書の下書き支援はあくまで文書作成の支援であり、与信の判断は人の審査が前提になります。

証券は断定的判断を避けつつ社内検索から進める

証券会社では、社内規程・商品資料・事務マニュアルの横断検索と、レポートや資料の下書きが取り組みやすい領域です。商品や規程が頻繁に改定されるため、最新の文書へ素早くたどり着ける仕組みの価値が大きくなります。

規制面の要は、不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘することの禁止(金融商品取引法)です。相場の見通しを断定するような出力が顧客向けの文面に紛れ込まない設計を、社内利用の段階から徹底してください。

出典:金融商品取引法(e-Gov法令検索)

保険は募集規制に触れない査定・照会文書から始める

保険会社では、査定関連書類や照会対応文書の下書き、約款・マニュアルの検索が入りやすい領域です。約款のように長く複雑な文書を扱う業務が多く、要約と検索の効果を実感しやすい業態でもあります。

一方で、保険募集には保険業法上の禁止行為が定められており、募集行為にあたる説明を生成AIに直接させることはできません。顧客向けの説明文を作る場合も、募集人による確認と説明を前提にした運用が必要です。

出典:保険業法(e-Gov法令検索)

どの業態でも、内部業務で先に成果を出す進め方は共通の土台になります。顧客接点へ広げる段階では、ここで挙げた業態固有の規制を確認項目に加えてください。

金融機関が備えるべき生成AIのリスクと対策

生成AIの導入判断には、リスクと備えを対で押さえることが欠かせません。金融庁は生成AIの課題を、従来型AIと共通の課題、生成AIで難しくなった課題、生成AIが新たに生んだ課題に分けて示しています。金融業で特に重いものを、備えとあわせて3つに絞ります。

リスク 起きること 主な備え
誤った出力・根拠の不明 誤った条件の案内が顧客の判断や取引に影響する。理由を説明できず推奨が使われない 出力を業務で使う前の人の確認と、参照元の表示。確認の重さは用途のリスクで変える
情報漏えい 入力した顧客情報が学習や外部保存で社外に残る 入力範囲の制限、学習に使わせない設定、利用環境と委託先の管理
規制違反・偏り 断定的な勧誘表現や不公平な評価が規制・信頼の問題になる 回答範囲と禁止事項の設計、ログによる継続的な検証

誤った出力は人の確認と根拠の表示で顧客に届く前に止める

生成AIは、事実と異なる内容をもっともらしく出力することがあります(ハルシネーション)。たとえば商品説明や照会対応で、旧規定の金利や手数料の条件を現行のものとして自信ありげに答えれば、誤案内はその場で顧客に伝わり、後から取り消せません。金融庁も、信用リスクや法的リスクに直結する回答の誤りによる信頼低下を課題に挙げています。

備えの軸は2つです。第一に、出力を業務で使う前に人が確認する時点を用途ごとに決めること。社内の下書きは担当者の確認、顧客へ届く回答は送付前の確認を必須にするなど、リスクの高さで確認の重さを変えます。第二に、回答の根拠となった文書を参照元として表示させることです。根拠をたどれば、行員は確認を素早く済ませられ、顧客にも理由を説明できます。

情報漏えいは入力の制限と利用環境の選定で防ぐ

通話や照会には、氏名や契約情報などの個人情報が含まれます。入力したデータが学習に使われたり外部に保存されたりすれば、顧客情報が意図せず社外に残ります。外部委託では、データの提供が個人情報保護法上の第三者提供に当たるかの整理も必要です。

備えは、入力できる情報の範囲を先に定め、学習に使わせない設定と利用環境の選定で固めることです。機密情報の入力をシステム側で制限する仕組みや、国内で処理が完結する環境の利用が具体策になります。海外にサーバーを置くサービスでは、データの越境移転の扱いを契約前に確かめてください。

規制違反と偏りは回答範囲の設計と継続的な検証で抑える

規制の面では、証券業で不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘することが金融商品取引法で禁じられ、保険では募集に関する禁止行為が保険業法に定められています。生成AIがこうした表現をそのまま出力すれば、金融機関が規制違反に問われかねません。あわせて、学習データの偏りが特定の属性の顧客への不公平な評価につながるおそれも、審査や提案に関わる業務では見過ごせない論点です。

備えは、出力の設計と検証の継続です。断定表現を禁止ワードで排除し、回答できる説明の範囲を先に定義したうえで、範囲を超える照会は人へ引き継ぎます。運用が始まったら、特定の商品に偏った勧誘や不公平な評価が起きていないかをログで点検し、見つかった問題をサービス設計の改善へ戻します。モデル更新後の再検証も忘れずに組み込んでください。

なお、こうした管理を一つずつ整えるのは負担が大きいため、学習への利用を遮断する設定や権限管理を標準で備えた法人向けサービスを選ぶと、運用設計を簡素にできます。「エクサベース AI」もその一つです。

金融機関が生成AIを導入する手順

導入がうまくいくかどうかは、ツールの性能だけでは決まりません。金融庁の整理でも、経営陣が主体的に関与している金融機関ほど導入が進むと示されています。経営の関与のもと、対象業務の選定から本番運用までを4つのステップで設計します。

出典:金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)

  1. 活用する業務と検証指標を決める
  2. 利用するデータと禁止事項を整理する
  3. 対象を絞ってPoCを実施する
  4. 効果とリスクを確かめて段階的に広げる

1. 活用する業務と検証指標を決める

最初に取り組むのは、どの業務で何を改善したいのかの言語化です。目的が曖昧なまま始めると、効果を判断できず活用が止まります。文書作成の時間を何割縮めたいのか、社内照会への回答時間をどこまで短縮したいのかを、数値の目標として先に置きます。

目標の例は「稟議書の下書き時間を半減する」「社内照会への一次回答を当日中に返す」といった具体的な水準です。数値で置いた目標が、後のPoCで効果を判定する物差しになります。

2. 利用するデータと禁止事項を整理する

次に整理するのは、AIに渡してよいデータと渡さないデータの線引きです。社内ナレッジを回答に使わせるなら、参照させる文書の範囲と鮮度がそのまま回答の質を決めます。

古い社内規程が参照対象に残っていれば、AIは廃止済みのルールを現行として答えてしまいます。文書の棚卸しと更新の担当をこの段階で決めておくと、運用開始後の誤答を減らせます。

3. 対象を絞ってPoCを実施する

PoC(概念実証)は、効果が出やすい社内・事務業務に対象を絞って行います。導入前後の作業時間や品質を比較し、最初に置いた指標で効果を測ります。

重要なのは、比較する指標と期間を先に固定しておくことです。後から指標を選び直すと、都合のよい数字だけを拾う検証になりかねません。

4. 効果とリスクを確かめて段階的に広げる

PoCの結果を効果とリスクの両面で評価し、事前に置いた指標を満たしたら本番運用へ移します。移行にあわせて、誤回答や障害を検知した際の一次対応と、顧客への訂正連絡までの手順を決めておくと、問題が起きても影響を小さく抑えられます。

効果が指標に届いていても、誤りの検知や人の確認が回っていなければ、広げるのはまだ早い段階です。利用が定着した業務の次に応対の下書き支援へ、と段階を追って対象を広げれば、現場の混乱と誤回答のリスクを同時に抱えずに済みます。

なお、PoCから本番・定着までを自社だけで進めるのが難しい場合は、導入設計から伴走する提供元に相談する方法もあります。「エクサベース AI」では、活用定着までを含めた支援を行っています。

金融機関における生成AIの活用事例

公表事例を3つ紹介します。並びは社内文書、社内問い合わせ、そして顧客に影響する文書と、本記事で示した影響度の段階を上る順です。いずれもAIの出力を人が確認する運用を守りながら、成果を数値で公表しています。

企業 取り組み 公表されている成果 人の確認の置き方
七十七銀行 文書作成・情報収集・データ集計に生成AIを導入 本部55業務以上で年間約3.2万時間の効率化を見込む 出力を業務で使う前に担当者が確認
みずほ証券 社内規程・マニュアル約4千件超をRAGで横断検索 テストで解決率約96%、検索時間を最大約6割削減 回答と参照元文書の確認を利用者に義務づけ
宮崎銀行 融資稟議書の作成を生成AIで支援 稟議書作成の作業時間を約95%削減 担当者と決裁者が内容を確認して使用

七十七銀行は本部55業務で年約3.2万時間の効率化を見込む

七十七銀行は、経営計画「Vision 2030」の生産性倍増戦略の一環として、文書作成・情報収集・データ集計に生成AIを導入しました。本部の55以上の業務を対象に、年間およそ3.2万時間の効率化を見込むと公表しています。

対象は顧客に出力が届かない社内業務が中心です。1つずつの削減は小さくても、55業務まで広げれば経営計画に載る規模になることを示す事例といえます。

出典:七十七銀行「生成AIを活用した生産性向上の取組みについて」(2024年11月)

みずほ証券は社内文書検索の解決率を約96%まで高めた

みずほ証券は、社内規程や事務マニュアルなど4千件を超える文書をRAGで横断検索する仕組みを構築しました。テストでは照会の解決率が約96%に達し、検索時間を最大約6割削減しています。

精度を100%にはできないため、回答と参照元文書の確認を利用者に義務づける運用も欠かしていません。人の確認を前提に置く設計が、金融業での実装を支えています。

出典:みずほフィナンシャルグループ「MIZUHO DX|社内文書検索システム『MOAIサーチ』」(2025年4月)

宮崎銀行は融資稟議書の作成時間を約95%削減した

宮崎銀行は日本IBMと共同で、融資稟議書の作成を支援する生成AIアプリケーションを開発しました。稟議書作成の作業時間を約95%削減したと公表されています。

稟議書は融資判断に使われる、顧客に影響しうる文書です。それでも担当者と決裁者の確認を挟む設計により、効率化と安全を両立しています。影響度の高い工程へ広げる際の、人の確認の置き方を示す事例です。

出典:日本IBM「宮崎銀行と日本IBM、融資業務における生成AIの活用を開始し、融資稟議書の作成時間を95%削減」(2024年6月)

金融業界で見込まれるAIエージェントの活用

生成AIの次の論点として、AIエージェントへの関心が金融業界でも高まっています。導入を検討する立場で押さえたいのは、いま何が議論され、これまでの生成AI活用と何が変わるのかという2点です。

2025年はAIエージェント元年とされ論点整理が始まった

金融庁のディスカッションペーパー第1.1版は、2025年が「AIエージェント元年」とされると指摘し、特定の目標のために自律的に行動するAIシステムの論点を新たに整理しました。LLMを頭脳として複数の処理を自律的に実行する仕組みで、AI官民フォーラムでは、複数のエージェントが連携して金融業務の多くのプロセスを自動化できる可能性への期待も示されています。

出典:金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)

この文書から読み取れるのは、金融のエージェント活用がまだルールの確立前にあるという現状です。ペーパー自体が規制文書ではなく論点整理と位置づけられており、確立された基準は存在しません。期待が示される一方で実務の型は固まっていない、いまはその段階だと押さえておくのが正確です。

生成AIの支援と違い出力が直接業務へ反映される

現在の金融機関の生成AI活用と、AIエージェントの違いを整理すると次のとおりです。

観点 現在の生成AI活用 AIエージェント
出力の使われ方 下書きや回答候補として人に渡る 判断と処理が連鎖し業務へ直接反映されうる
人の確認 出力ごとに担当者が確認して使う 処理の途中に確認を挟む設計が別途必要
求められる統制 入力制限・確認手順・ログの運用 上記に加え、処理の連鎖を追跡・停止できる仕組み

表のとおり、エージェントでは人の確認を挟む場所を意図して設計しない限り、誤った出力がそのまま業務や顧客に届きます。求められる統制の水準は一段上がるため、人の確認・ログ・検証といった運用をいま内部業務で固めておくことが、そのまま将来の土台です。業務単位の効率化にとどまらず、AIを前提に業務全体を組み替えるAX(AIトランスフォーメーション)へ視野を広げる動きも、こうした準備の延長で生まれています。

▼関連記事|AX(AIトランスフォーメーション)とは|DXとの関係性や推進のメリットを解説

金融機関向け生成AIサービスを選ぶ際の確認項目

自社に合うサービスを選ぶには、機能の一覧だけでなく、安全性と運用の観点で確かめます。選定時の要件に含めたい確認項目は次の3点です。

  • 入力データの利用目的と保存条件を確認する
  • 認証・権限管理・ログ機能を確認する
  • 社内データの参照と導入支援の体制を確認する

入力データの利用目的と保存条件を確認する

入力データが学習に使われないか、どの地域のサーバーに、どれくらいの期間保存されるかを確認します。国内サーバーでの処理や、学習への利用を遮断する設定があるかは、金融機関にとって基本要件です。

契約前に確かめたいのは、データの保存期間や削除の可否、再学習に使わない旨が明文化されているかどうかです。海外にサーバーを置くサービスでは、越境移転に関する取り扱いも確認の対象に含めてください。

認証・権限管理・ログ機能を確認する

確認したいのは、利用者や部署ごとの権限管理と、利用ログの取得です。禁止ワードの制御や入力内容の監査ができれば、ルールを仕組みで担保できます。

部署ごとに参照できる範囲を分け、誰がいつ何を入力したかを追える状態にしておくと、問題が起きた際の原因究明と是正が速くなります。

社内データの参照と導入支援の体制を確認する

まず確かめたいのは、社内規程や各種資料を安全に参照できるかです。権限管理のうえでRAGを利用でき、部署ごとに参照範囲を分けられること、参照元を回答に併記でき古い情報を除外できることが、回答精度と統制の両面の要件になります。

あわせて、導入から定着までの支援体制と障害時の対応窓口を確かめます。AI活用のノウハウが社内に乏しい段階ほど伴走支援の有無が定着の分かれ目になり、要件定義から運用まで一貫した支援があれば少人数の担当でも導入を進められます。障害時の連絡先と対応の流れも、契約前の確認事項に含めてください。

▼関連記事|生成AIの著作権侵害リスクとは?企業が策定すべきガイドラインと対策
▼関連記事|生成AI利用におけるセキュリティリスクとは?対策や導入方法を紹介

これらの要件に対応する選択肢の一つが「エクサベース AI」です。データ処理を国内リージョンで行い、入力データを学習に使わせない設定や、社内文書を権限管理のうえで参照するRAGに対応しています。2026年6月には、自社のノウハウや業務フォーマットを組み込んだ専用AIエージェントを作成できる「カスタムエージェント機能」の提供も始まりました。導入企業1,700社・15万IDで利用されています(2026年7月時点)。

まとめ

金融機関で成果が出ているのは、与信・投資助言・保険募集といった顧客向けの判断業務ではなく、文書作成や社内問い合わせといった内部業務です。銀行・証券・保険で効果の出やすい領域は異なるものの、影響度の低い業務から入り、リスクと備えを対で確かめながら段階的に広げる進め方は共通します。その先には、AIエージェントの活用という次の段階も見え始めています。

自社のどの業務から始めるべきか、どう効果を測り、どう安全に運用するかを検討したい場合は、サービス資料をご覧ください。

※ 記載されている会社名、製品・サービス名、ロゴ等は、各社の商標または登録商標です。 ※ 本記事に掲載されている情報、法令解釈、各種調査データ等は作成時点のものであり、今後の法改正や金融庁の指針等により変更される場合があります。最新の規制・ガイドライン等につきましては公式情報をご確認ください。