DX人材とはデジタルに関するスキルや業務経験を有し、リーダーシップなどの素養も持ちながら周りを巻き込んで推進することができる人材のことです。
DXを進める上で最も重要な要素の一つといえるのがDXを推進するDX人材です。デジタルに精通し、変革を推進できる人材がいてこそDXプロジェクトは推進します。しかし、「DX人材の採用や育成が難しい」「DX人材ってそもそもどういう人材なの?」とお悩みの企業も多いでしょう。
そこで今回は、DX人材とは何なのか、DX人材に求められるスキルやマインド、採用や育成の方法について解説します。
<この記事の要点>
DX人材とは「技術×ビジネス変革力」を備えた推進役
単なるITスキルだけでなく、デジタル技術を活用して業務・組織・ビジネスモデルを変革できる人材。経産省の定義やエクサウィザーズの4象限分類では、スキルとマインドの両面が重視される。
日本はDX人材の深刻な不足に直面中
日本企業の約9割がDX人材不足を感じており、特に「ビジネスアーキテクト」など全体を推進する中核人材の確保が困難。国の支援策やリスキリング施策の活用が必須となる。
採用と育成はセットで進めるべき
DX人材確保には、「業務魅力の訴求」「柔軟な働き方の提供」「スキル・マインドの可視化」による育成体制がカギ。外部支援や資格制度の活用、社内の巻き込みも成功の決め手になる。
DX人材の定義
まずはDX人材の定義について解説します。
DX人材の定義とは
DX人材に明確な定義はありませんが、デジタル技術を用いてDXをリードする人材を指すことが多いです。
そもそもDXは、経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン」によると、以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
出典:『デジタルガバナンスコード3.0』経済産業省 2024年9⽉19⽇
つまり、DX人材には大きく下記のようなスキルが求められるといえます。
- 目的達成のためにデータやデジタル技術を活用できる
- 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革できる
- 顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革できる
ただ「デジタルスキルがあるだけ」「データが扱えるだけ」ではDX人材は務まりません。周りを巻き込む推進力や、ビジネス観点を持っていることも重要です。分解すると、結果達成や新しいことも学び対応していくマインドセットやリーダーシップ、高いコミュニケーション能力などの特性も求められます。
上記のことから、DX人材は高水準なビジネススキルを有し、さらにはデジタル技術を扱える優秀な人材だといえるでしょう。

経済産業省調査によるDX人材不足の実態とデータ
日本のDX人材不足は構造的かつ深刻な課題となっています。経済産業省とIPAが実施した最新調査により、2023年度には「大幅に不足している」と回答した企業が62.1%に達し、調査開始以降初めて過半数を突破しました。この数値は企業規模や業界を問わず広がっており、日本企業のDX推進にとって最大の障壁となっていると言えるでしょう。
IPAの「DX動向調査2024」によると、日本では85.7%の企業が「不足感」を感じている一方、米国では「過不足ない」企業が5割を超えるという対照的な結果が浮き彫りになっています。
米国企業の半数以上が人材確保に成功している中、日本企業の約9割が人材不足に悩んでいる現状は、日本のDX推進における構造的な課題を示していると言えるでしょう。
また、経済産業省が策定した「DX推進スキル標準」の5つの人材類型では、最も不足感が高いのがビジネスアーキテクトです。つまり、DXの取り組み全体を一気通貫して推進する中核人材の確保が特に困難となっていると言えます。次いでデータサイエンティストの不足感が高く、データ活用による業務変革を担う専門人材の絶対数が不足している状況です。
経済産業省の長期予測では、2030年には最大79万人のIT人材不足が予想されており、その中でもDX関連人材の不足は特に深刻となる見込みです。
最も楽観的なシナリオでも約16万人の不足が見込まれており、現在の人材確保策だけでは日本全体で根本的な解決は困難と言えるでしょう。
参考:『DX 動向 2024 – 深刻化する DX を推進する人材不足と課題』独立行政法人 情報処理推進機構
参考:『参考資料 (IT人材育成の状況等について)』経済産業省
DX人材に必要なスキル
DX人材に必要なスキルや素養は複数ありますが、細かく設定しすぎると育成や評価のフェーズで運用が回らなくなります。ここでは経済産業省が公開している「デジタルリテラシー標準」と、株式会社エクサウィザーズが開発・販売しているexaBase DXアセスメント&ラーニングで定義しているDX人材に求められるスキルと素養について紹介します。
経済産業省によるDX人材育成の指針となる「デジタルリテラシー標準」は、対象とする人材に応じた二部構成になっています。
DXリテラシー標準 | あらゆるビジネスパーソンに求められる知識・スキル |
---|---|
DX推進スキル標準 | DX推進における特定の役割を担う人材に 求められる知識・スキル |
DXリテラシーの詳細は、「DXリテラシーとは|DXリテラシー標準の概要や人材育成の方法を解説」でもご確認いただけます。ぜひご一読ください。
DXリテラシー標準が定義しているスキル要件
経済産業省によるDXリテラシー標準では、すべての人材に求められるスキル要件として、「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」を定義しています。
【マインド・スタンス】
「マインド・スタンスでは、社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動を定義しています。いわゆるデザイン思考やアジャイルな働き方が推奨されています。DXリテラシー標準では次のような項目が必要だとされています。
- 顧客・ユーザーへの共感
- 常識にとらわれない発想
- 反復的なアプローチ
- 変化への適応
- コラボレーション
- 柔軟な意思決定
- 事実に基づく判断
【Why】
Whyの項目では「なぜDXが必要なのか?」、つまり「DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化に関する知識を定義」しています。学習のゴールは「人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか知っており、DXの重要性を理解している」ことになります。
- 社会の変化
- 顧客価値の変化
- 競争環境の変化
【What】
Whatの項目では「ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識を定義」しています。学習のゴールは「DX推進の手段としてのデータやデジタル技術について知っている」になります。ここでは次のような知識が必要とされています。
- データ
- 社会におけるデータ
- データを読む・説明する
- データを扱う
- データによって判断する
- デジタル技術
- AI
- クラウド
- ハードウェア・ソフトウェア
- ネットワーク
何について学ぶかが決まれば次はどのように学ぶか「How」になります。
DXのデータの定義と活用方法については、「DXで重要なデータの活用方法とポイントを解説!データを活用する職種やデータ一覧も紹介」を合わせてご確認ください。
【How】
Howの項目では「ビジネスの場でデータやデジタル技術を活用する方法や留意点に関する知識を定義」しています。学習のゴールは「人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか知っており、DXの重要性を理解している」ことになります。DXの推進においては次のようなポイントが重要とされています。
- データ・デジタル技術の活用事例
- ツール活用
- セキュリティ
- モラル
- コンプライアンス
スキルはインプットだけしてもアウトプット(ビジネスへの活用)ができなければ意味がありません。上記の項目をしっかり意識してビジネスで活用できるようにしましょう。
DX推進スキル標準が定義するスキル要件
DXスキル標準では、DX推進人材を5つの類型に分類し、それぞれに求められるスキル要件を定義しています。
DX推進人材に必要なスキル要件は共通スキルリストにまとめられ、求められるスキルを5つのカテゴリ・12のサブカテゴリに分類しています。
共通スキルリストのカテゴリとスキル要件は以下のとおりです。
カテゴリ | サブカテゴリ | スキル要件 | カテゴリ | サブカテゴリ | スキル要件 |
---|---|---|---|---|---|
ビジネス変革 | 戦略・マネジメント・システム | ビジネス戦略策定・実行 | テクノロジー | ソフトウェア開発 | コンピュータサイエンス |
プロダクトマネジメント | チーム開発 | ||||
変革マネジメント | ソフトウェア設計手法 | ||||
システムズエンジニアリング | ソフトウェア開発プロセス | ||||
エンタープライズアーキテクチャ | Webアプリケーション基本技術 | ||||
プロジェクトマネジメント | ロントエンドシステム開発 | ||||
ビジネスモデル・プロセス | ビジネス調査 | バックエンドシステム開発 | |||
ビジネスモデル設計 | クラウドインフラ活用 | ||||
ビジネスアナリシス | SREプロセス | ||||
検証(ビジネス視点) | サービス活用 | ||||
マーケティング | デジタルテクノロジー | フィジカルコンピューティング | |||
ブランディング | その他先端技術 | ||||
デザイン | 顧客・ユーザー理解 | テクノロジートレンド | |||
価値発見・定義 | セキュリティ | セキュリティマネジメント | セキュリティ体制構築・運営 | ||
設計 | セキュリティマネジメント | ||||
検証(顧客・ユーザー視点) | インシデント対応と事業継続 | ||||
その他デザイン技術 | プライバシー保護 | ||||
データ活用 | データ・AIの戦略的活用 | データ理解・活用 データ・ | セキュリティ技術 | セキュア設計・開発・構築 | |
AI活用戦略 データ・AI活用 | セキュリティ運用・保守・監視 | ||||
業務の設計・事業実装・評価 | パーソナル スキル | ヒューマンスキル | リーダーシップ | ||
AI・データサイエンス | 数理統計・多変量解析・ | コラボレーション | |||
データ可視化 機械学習・深層学習 | コンセプチュアルスキル | ゴール設定 | |||
データエンジニアリング | データ活用基盤設計 データ | 創造的な問題解決 | |||
活用基盤実装・運用 | 批判的思考 | ||||
適応力 |
出典:『デジタルスキル標準Ver1.2』独立行政法人情報処理推進機構 経済産業省 2024年7月
この共通スキルリストをもとに、各類型の人材が果たすべき役割に対してのスキル要件の重要度を「a~eの5段階」に分類し定義しています。
DXのスキルマップについては、「DX人材のスキルマップの作り方~スキルと素養を可視化し効率的な育成を~」が大変参考になりますので、ぜひご確認ください。
エクサウィザーズが定義しているDX人材のスキルと素養の4象限
エクサウィザーズでは企業が効率的にDX人材を育成・評価するのに重要なスキルと素養を策定していますのでご紹介します。
エクサウィザーズでは個人の持つ「スキル」と「素養(ポテンシャル)」を「デジタル」と「イノベーティブ」という2つの軸で分解し4つの象限でDX人材を捉えています。それぞれ順にご説明します。
各スキルと素養の説明は以下の通りです。
このように大きく4つ、全部で18のスキルと素養に分けて定義すると多すぎず少なすぎず可視化が可能になり、デジタルに強い人だけではなく改革を推進できる人も見極めることができるようになります。
エクサウィザーズでは、経済産業省の提起するデジタルスキル標準をもとに、上記のようにDX人材のスキルと素養を整理し育成の支援をしています。
DX人材に必要なマインドとは
マインドとはある物事に対する見方や考え方、意向などを指します。DX人材には「デジタル」や「変革」に対してポジティブで積極的なマインドが必要になります。
前述した「テクノロジー好き」「技術活用意欲」「ユーザー理解」「数学的素養」「好奇心」「ポジティブ精神」「自己肯定感」「やりぬく意志」などもいわゆるDXマインドにあたります。DXマインドはなぜ重要なのか、どうしたら身につくのかを解説します。
DXマインドの重要性
DXを実現するためには新しいことにチャレンジしたり、多くの失敗をしたり、多くの関係者と連携したりすることが必要になります。どんどん新しいテクノロジーが現れるため、「今デジタル技術・スキルを保有していること」は競争力を持たなくなってきており、「新しいテクノロジーも貪欲に学び、成長し、創造していくこと」がDX時代には求められます。そのためには「デジタルに興味がある」「変わり続けたい」「学び続けたい」と考えていることが重要です。
よく、DX人材育成の一環としてeラーニング動画によるスキル学習から入る例がありますが、そもそも社員がデジタル技術を学ぶことの重要性や必要性を感じていなければ学習が継続しません。その前にまずDXマインドの醸成が重要なのです。
DXマインドの醸成方法とは?
DXマインドを醸成する方法としては、対象者の状況に沿った様々な方法がありますが、大きく「外発的な動機」「内発的な動機」と2つに分かれます。
外発的な動機が生まれるきっかけ
- DX推進担当者になり、業務でデジタル技術を使う必要性が出てきた
- 会社のトップ層からDX推進するようにメッセージ発信があった
- チームで毎朝DX関連の事例共有をする取り組みが始まった
- 会社の制度で、無料でDXに関する勉強ができるようになった
- 自分のキャリアアップのためにDX学習が必要になる
内発的な動機を持つ人の特徴
現在の職務が一見DXとは関係なくても、個人的にITのことを学んでいたり過去にそういった経験を積んだりした方というのは、自発的にスキルを獲得する傾向があります。こういった方を発掘することで、加速度的にチーム全体のDXマインドを高めることができます。
- DX事例に関する動画を見ることでDXについて学ぶことが面白いと感じる
- 趣味でプログラムを書いていたことが仕事でも活かせそうだと感じワクワクする
既存社員にマインド醸成するのは困難だと思われがちですが、会社の制度・環境で十分にサポート可能です。
DX人材の育成方法
DX人材の育成方法には様々ありますが、何を、どのように、どの順番でやるのかが非常に重要です。
エクサウィザーズでは「DX人材育成5つのステップ」として下記ステップを発信しています。
- 「スキルと素養の可視化」
- 人材育成計画の策定
- 知識のインプット
- 実務スキルのアウトプット
- 実践力強化

DX人材の採用方法
DX人材の採用競争は激化しているため、優秀な人材は簡単には確保できません。DX人材を求めている方は、以下のような工夫を施しましょう。
①働く環境を訴求
募集内容を掲載する際は、働く環境を訴求しましょう。DX人材は、デジタルの活用が前提となっている環境で、最大限のパフォーマンスを発揮します。 様々なデータやツールの活用ができることや優秀な社員がいることなどDX人材が働きやすいような環境をアピールしましょう。
また、「フレックス制度」「テレワーク制度」「私服勤務」「副業OK」など、多様な働き方と柔軟さをアピールすることも大切です。
②業務内容の魅力を伝える
「DX推進をお任せします」だけだと伝わらないため、業務内容の魅力をわかりやすく伝えましょう。
DX戦略を任せたい場合は自社の現状と課題、今後目指す方向性などを提示した上で、「具体的に何をしてほしいのか」「どういう成長環境があるのか」「どういった経験ができるのか」を明確化すれば、候補者からは会社がより魅力的に映ります。
③リファラル採用やダイレクトリクルーティングの活用
リファラル採用やダイレクトリクルーティングも有効です。DX人材はSNSなどを駆使している割合も多く、採用市場に出る前にアプローチできれば効果的でしょう。
社内の伝手で優秀な人材を紹介してもらうリファラル採用では、メモリーパレスの活用をおすすめします。また、SNSなどを活用して直接本人にアプローチするダイレクトリクルーティングは、欲しい人材に的確にアプローチできるのが利点です。
※メモリーパレスとは、社員の前職の知り合いや、ビジネスパーソンの知り合い、友人、SNSで繋がりのある人などをシートに書き出し、その中から採用したい人に声をかけていく方法です。この方法で忘れていた人脈を思い出し採用につながる可能性があります。
DX人材の育成方法については、「DX人材育成の方法を大公開。DX人材育成5つのステップはスキルと素養の可視化から」でより詳しく説明していますのでぜひご確認ください。
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DXを実施するにあたっては、単に既存業務の効率化を行うだけでなく、どのように競合優位性を確立するかという経営観点にもとづいた推進が必要です。
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DX人材の職種
DX人材に該当するような職種で、代表的なものは下記の通りです。DX人材の採用や育成を検討している担当者は下記のような職種を社内に設置できるか検討しましょう。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは、プロダクト(製品やサービス)の価値を最大化することを目的に、企画・開発・マーケティング・販売・改善など全般に携わります。幅広い領域の知見や、経営層的な視点が求められます
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、ビジネスアイデアを具体的に企画や実現可能なビジネスモデルに落とし込む役割になります。事業計画を策定したり、関係者にわかりやすく説明して巻き込み事業実現に向けて推進していくことが求められます。
アーキテクト(エンジニアリングマネージャー、テックリード)
アーキテクトはDXに関するシステムの設計などを主に行います。ハードウェアやソフトウェアに関する技術的観点から、状況や課題を分析し、「どのようにデジタル技術を導入すればDXが実現するのか」という視点で設計します。
データサイエンティスト
データサイエンティストは統計学などを用いてデータを分析し有益な示唆やビジネス課題の解決策を導き出します。統計解析やデジタルのスキルに加えてビジネストレンドを把握していたり、高い課題解決能力などが求められます。
先端技術エンジニア
先端技術エンジニアはその名前の通り、AIや機械学習、ブロックチェーンなど最先端の技術を扱うエンジニアの総称です。AIやWeb3の普及に伴いその需要や求められる技術も変化しています。
UI/UX デザイナー
UI/UX デザイナーは、システムやサービスのインターフェースや顧客体験をデザインする人材です。
昨今、機能での差別化が難しくなっていることやサブスクリプションサービスの普及などを背景に、よりユーザーの体験価値を向上し長く使われるサービスが求められています。それによりUI/UXデザイナーの需要も増えています。
エンジニア/プログラマー
エンジニア/プログラマーは、テックリードが設計した内容をもとに、システムやインフラを実際に構築・運用する人材です。
DXプロジェクトにおいては、既存システムとの連携やデータベース構築、Webアプリケーション開発などの基盤技術を担当します。Java、Python、JavaScript、SQLなど様々なプログラミング言語を駆使し、安定性と拡張性を重視したシステム開発を行います。
DX人材に対し企業が取り組むべきこと
DXを推進していくには、人材をはじめとした社内のあらゆるリソースを活用し、全社的な施策として進めていく必要があります。こうしたなか、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は最新版の「DX動向2025」で、企業が取り組むべき以下3つのアクションを示唆しています。
- デジタルを、省力化・効率化ではなく経営成果の最大化や事業成長に直結する手段として活用すべきであること
- DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく具体的な意思決定プロセスや推進体制における「関与の姿勢」そのものを明確に示すこと
- 個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らが自社の価値観や取り組み方針を外部に発信し、共通の目標を持つパートナーと共創関係を築くこと
出典:『DX動向2025(データ集)』独立行政法人情報処理推進機構 2025年6月26日
これらのアクションは、企業が取り組むべきDX人材への働きかけとリンクするものでもあります。
DXは収益向上のための施策であることを再認識する
これまでDXを推進してきた企業では業務の省力化に主眼が置かれ、具体的な事業成長につながらないケースもあるようです。
本来DXの目的は「デジタル技術を用いて競争優位性を生み出すこと」であり、新規事業の創出や既存事業の付加価値化を進めるべきものでなくてはなりません。
IPAの「DX動向2025」によると、DXを推進している企業の多くが売上成長率や利益率などの経営指標を明確に設定してDXを推進している一方、一般企業では依然として「効率化」が中心で、収益目標までつながっていない事例が多く見られます。
こうした状況を踏まえ、DXの目的が、「収益向上=競争力強化」であることを、再認識する必要性を示唆していると言えるでしょう。
参考:『DX動向2025(データ集)』独立行政法人情報処理推進機構 2025年6月26日
DX推進の具体的な行動指針を現場に落とし込む
IPA「DX動向2025」でも、DXによる収益向上の成否は、経営トップによる具体的な行動指針の発信に大きく依存する可能性を示唆しています。
経営層がビジョンとともに具体的な行動指針を示すことで、現場の従業員が取るべき行動を理解してもらわなくてはなりません。行動レベルまで咀嚼し周知することで、会社がDXで実現したいとするビジョン(収益向上・競争優位性の確保)の共有が進みます。
DXに向けた社内の一体感を高める意味でも、重要なアクションといえるでしょう。
参考:『DX動向2025(データ集)』独立行政法人情報処理推進機構 2025年6月26日
企業間の連携を深めDX人材の交流を図る
IPA「DX動向2025」や経済産業省の「DX調査2025」では、DX推進の高度化には企業間での知見共有・価値観の共創が不可欠であるとしています。
特に、DXを推進している企業では、経営層が自社のDX戦略や人材育成方針を積極的に外部に発信する傾向が強く、こうした行動が他企業への刺激や産業横断的なネットワーク形成につながっていると報告されました。
このような相互連携の動きは、DX人材の企業間交流を促進する土壌にもなります。価値観や課題を共有できる企業同士での人材流動・プロジェクト連携が活性化すれば、イノベーション創出の機会が広がり、結果としてDXの加速につながる好循環を生む可能性があるのです。
参考:『DX動向2025(データ集)』独立行政法人情報処理推進機構 2025年6月26日
DX推進を成功させる、社内を動かす・うまく巻き込むコツとは?
組織的にDXを推進し、事業変革を進めるためには「社内をうまく巻き込んでいく」ことが重要となります。
しかし、思ったように社内の協力を得られず、DXが進まないと悩んでいる担当者は少なくないものです。
本資料では、「DX推進における社内巻き込みの重要性」、「巻き込みを成功させる3つのポイント」など、全社的なDX推進に必要となってくる「社内の巻き込み」にご紹介していますので、ぜひダウンロードしてお役立てください。
\こんな方におすすめの資料です/
- DX推進に他部署の協力が得られない
- 一部のDXではなく全社的なDXを推進したい
DX人材不足解消のために活用できる外部施策
DX人材不足という全国的な課題に対して、政府・自治体では、資金面から人材育成、資格取得まで包括的な支援体制を構築しています。
その中から企業の規模や状況に応じて適切な制度を選択することで、効率的なDX人材確保・育成が可能です。
ここでは大きく分けて3つの観点から解説していきます。
経済産業省・IPAによるリスキリング支援事業
経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構では「マナビDX」という、デジタル人材育成プラットフォームの中核となるポータルサイトを運営しています。現在約220の事業者による700以上の講座が提供されており、全ての講座は経済産業省とIPAの審査を通過した質の高いものとなっています。受講料無料の講座や受講費用の補助がある講座も多数含まれているのが特徴です。
さらに「マナビDX Quest」というさらに発展的な取り組みも重要です。企業データに基づく実践的なケーススタディ教育プログラムと、地域の中小企業との協働による現場研修プログラムが提供されており、2024年度は受講生のべ2,439名が参加し、満足度84%を達成するという実績があります。
これらの取り組みの基盤が「デジタルスキル標準」です。全てのビジネスパーソンが身につけるべき「DXリテラシー標準」と、DXを推進する専門人材向けの「DX推進スキル標準」の2種類で構成されており、生成AIを含む新技術への向き合い方や具体的なアクションについて詳細な指針が示されています。
マナビDXの学習コンテンツはこの標準に基づいて体系化されているため、企業は自社のDX推進状況に応じて効果的な人材育成プランを策定できるのです。
厚生労働省・自治体などの助成金・補助金制度
厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、DX人材育成において最も活用しやすい資金支援制度と言えるでしょう。その中の、「人材育成支援コース」は最も利用しやすく、様々なテーマの研修に対応しており、新卒研修からDX研修まで幅広く活用可能です。
「人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)」では、経済産業省が認定する講座の受講に対して高い助成率が適用されます。また、DX認定を受けている企業の場合はさらに幅広い訓練が対象となります。
「事業展開等リスキリング支援コース」は最も助成率が高く、中小企業の場合は訓練経費の75%と賃金の一部が助成され、年間最大1億円の助成を受けられます。企業のDX化に関連する業務に従事させるための専門知識習得が要件となっているため、本格的なDX人材育成には非常に有効な制度と言えるでしょう。
参考:『人材開発支援助成金』厚生労働省
参考:『人材開発支援助成金 人への投資促進コース のご案内(詳細版)』厚生労働省
参考:『人材開発支援助成金に 事業展開等リスキリング支援コース を創設しました』厚生労働省
資格・認定制度
DX人材のスキルを客観的に証明し、育成の方向性を明確にするため、各種資格・認定制度の活用も重要です。
ITパスポート試験はその中で最も基本的なもので、ITを利活用するすべての社会人が備えておくべき基礎的な知識を証明する国家試験です。年間応募者数が25万人を突破しており、IT業界に限らず幅広い業種で取得が推奨されています。
参考:ITパスポート試験
データサイエンティスト検定は、データサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力についてリテラシーレベルの総合的な実務能力と知識を証明する検定です。合格率は約40%とITパスポートより難易度は高いものの、データ活用による業務変革を担う人材育成には必須の資格となっています。
G検定は日本ディープラーニング協会が実施するAI・ディープラーニングの基礎知識を証明する資格です。この資格では、AI技術の事業活用に必要な知識・能力を体系的に学び、AI・データを活用したビジネスを推進する総合的知識の習得を目指します。
参考:G検定
これら3つの資格を組み合わせた「DX推進パスポート」も2024年から発行が開始されました。3試験の合格数に応じてDX推進パスポート1・2・3のデジタルバッジが発行され、DXを推進するプロフェッショナル人材に必要な基本的スキルを総合的に証明できる制度となっています。
参考:DX推進パスポート
まとめ
本記事では、DX人材に必要なスキル・マインド、採用方法や育成方法を解説しました。
DX人材を欲しいと考えている企業のDX推進担当者や人事の方は本記事の内容を踏まえ、
- 欲しい人材を明確に定義
- 育成と採用両方の軸で検討
- 環境や文化の変革も並行して行う
ことを意識して活動していくことをおすすめします。