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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?推進に必要なポイントと最新事例をわかりやすく解説!

DXとはデータとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に企業文化・風土も変革し、競争上の優位性を確立することです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は近年、国内外の多種多様な企業で推進され、新たなビジネスモデルやサービスを生んでいます。企業に大きな収益をもたらすDXを浸透させるため、経済産業省が中心になり国内の企業にDX推進を奨励しています。

それだけ身近になってきたDXですが、具体的にどのようなことができるのか、ビジネスにどう応用すればよいのかなど不明点がある方も多いのではないでしょうか。ここではDXについて知っておきたい必須ポイントやDXの最新事例について、わかりやすくご紹介します。

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目次

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXの定義・言葉の意味とは?

DX(Digital Transformation)は「デジタルトランスフォーメーション」と読み、略称は「DX(ディーエックス)」です。略称が「DT」でなく「DX」なのは、英語圏では「Trans」を略す際に「X」を使うためです。

DXという概念自体は2004年、スウェーデンの大学教授エリック・ストルターマン氏によって提唱されました。ストルターマン氏は当時、DXを「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しています。

出典:エリックストルターマン教授論文「Information technology and the good life」2004年

一方、ビジネスシーンでは、DXは「デジタル技術を用いたビジネスやサービスの変革」と捉えられています。日本でも経済産業省が2018年に「DX推進ガイドライン(現:デジタルガバナンス・コード2.0)」をまとめ、国内の企業が取り組むべき内容を示しました。

その中でDXは

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義されています。

出典:『デジタルガバナンス・コード2.0』経済産業省 2022年9⽉13⽇

デジタイゼーション/デジタライゼーション/デジタルトランスフォーメーションの関係

DXとよく似ている言葉としてあがるのが、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」です。ビジネスでDXを推進する際には、下記の3つの言葉の違いを知っておくとよいでしょう。

 

1.デジタイゼーション(Digitization)

「アナログ・物理データのデジタルデータ化」と定義されます。具体的にはITシステムを導入し、業務フローの一部をデジタルでおこなうことです。例えば紙でおこなってきた業務をデジタルでおこなうこともその一つです。

 

2.デジタライゼーション(Digitalization)

「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と定義されます。具体的には一つの業務プロセスをデジタルでおこなうことで、新たな利便性を生み出しサービスに新たな価値を付与することをさします。プロセスをアナログからデジタルへ変え、新たな価値を生み出してはいますが、まだ組織やビジネス全体を変革したとはいえません。

 

3.デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタイゼーションとデジタライゼーションを経て、製品やサービス、ビジネスモデル、企業文化までも変革し競争上の優位性を確立することを意味します。

 

よく「DX」という言葉がデジタイゼーションやデジタライゼーションと混同して用いられていることがありますが、企業が競争上の優位性を確立するためにはビジネスモデルや企業文化の変革までが重要だということを理解しておきましょう。

DXはなぜ重要?注目される4つの理由とメリット

DXが今、注目される4つの理由

DXが注目されている主な理由は4つあります。

 

①2025年の崖

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」(以下「DXレポート」といいます。)では、2025年までにDXが進まない場合、2025年から最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じると指摘しています。

その背景には、2025年に日本の基幹系システムが老朽化する上に、IT人材の不足が約45万人まで拡大することなどがあります。

なお、「DXレポート」は2022年7月に「DXレポート2.2」として最新版が出されています。その中で、DX推進における重要性は広まっているものの、デジタルへの投資が、適切に企業の利益拡大に対してまだなされていない現状が指摘されており、課題はまだまだ大きいものと考えられます。

参考:「DXレポート」経済産業省
参考:「DXレポート2.2」経済産業省

 

②コロナ禍による働き方の変化

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、テレワークの普及や、巣ごもり需要に対応するためにデジタル化が急速に進みましたが、これをきっかけにDXの必要性を実感した企業が増加しています。

 

③スマートフォンの普及による消費活動の変化

スマートフォンの普及によって、商品やサービスの購入をスマホだけで完結させることが可能になり、消費スタイルが大きく変化しました。こういった変化に柔軟に対応できるかどうかがビジネスにおける競争上の優位性を担保するためには必要です。

これは単純にスマホ向けサイトやアプリを作ればいいという話ではなく、位置情報やSNSの活用、音声入力やカメラの活用、他のアプリとの連動、リアルタイム性の追求、これらを総合的に考慮した顧客体験価値の向上などを実施する必要があります。

例えばECサイトアプリにおいては、スマホからパーソナルデータを多く集めてAIの精度を上げて的確なレコメンドをすることが売り上げの最大化に繋がりました。しかし最近はパーソナルデータの利用が制限されつつあり、新たな打ち手を考える必要もでてきおり、企業は更にデジタルの力を使って新しい競争力確保のために日々奔走しているのです。

 

④ビジネスを大きくするためにはデジタル化だけでは足りない

単なるデジタル化だけでは事業が大きく拡大することは難しく、DXを推進することで新たなビジネスモデルを確立し競合よりも圧倒的に優位に立つ事例が増えてきました。例えばNetflixは従来の「店舗でDVDを借りて映画・ドラマを見る」というスタイルを破壊し、オンラインでの動画視聴を可能にし大きく成長しました。今後、ビジネスにおいて圧倒的競争力をつけていくためにはDXは非常に有効になっていくでしょう。

企業がDXに取り組む4つのメリット

企業がDXに取り組むメリットとして、次の4点が挙げられます。

 

①品質向上によって、より顧客に選ばれるサービスを実現できる

DX推進によりサービスのUI/UXの向上につながり、現状よりも顧客に選ばれるサービスを提供できることになります。さらに既存サービスの深化だけでなく、まったく新しいサービスを開発することで、多くの顧客獲得にもつながります。

 

②競争上の優位性を担保でき、売上最大化につながる

DXによって顧客に選ばれるサービスになれば競争上の優位性を担保でき、サービスや製品の購入(利用)頻度や顧客単価も向上し、売上最大化に繋がる可能性が高まります。

 

③自社の株価上昇につながる

国を挙げてDX推進を促進している現在、投資家もDX推進に意欲的な企業の動向には敏感です。当然ながら企業は株主からもDX推進を求められることになります。DX推進していることを積極的に外部に発信すれば株主からの評価も高まることに繋がります。

 

④生産性・効率の上昇を実現できる

DX推進を一気に進めることは簡単ではありませんが、DXの前段階であるデジタイゼーション、デジタライゼーションまで進められれば、業務プロセスの自動化・効率化が可能になり、社員の長時間労働の解消やEX(Employee Experience)の向上、コスト削減にも役立ちます。

 

日本のDXの現状

世界に比べて遅れているといわれている日本のDX推進ですが、その現状はどうなっているのでしょうか。

「DXレポート」によると、国内企業はデジタル部門を設置するなどの取り組みが見られ、PoC(概念実証:戦略仮説・コンセプトの検証工程)は積極的に繰り返すものの、実際のビジネス変革にはつながっていないと記載されています。

日本のDX推進のため、経済産業省では「DX銘柄」の選定も行っています。DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDX推進のための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を、業種区分ごとに選定して経済産業省が紹介するものです。

DX銘柄に選定された企業は、単なる優れた情報システムの導入やデータの活用にとどまらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルそのものの変革および経営の変革に果敢にチャレンジし続けている企業として認定されます。

なお、「DX銘柄2024」についても、25社が選定されています。特に優れた「DX」の取組を行った企業をDXグランプリ2024として、以下の企業が選定されました。

  • 株式会社LIXIL
  • 三菱重工株式会社
  • 株式会社アシックス

詳しくは、「DX銘柄2024(経済産業省)」を確認してみてください。

日本のDX推進企業を紹介!「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」とは?
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日本のDXにおける課題

日本のDXの現状を見てきましたが、ここでは課題とその解決方法について考えていきます。

課題①:DXを経営戦略に落とし込めていない

DXを推進していくには、「新たなデジタル技術を用いてどのようにビジネスを変革していくか」という視点から経営戦略を作成・実行することが欠かせません。

近年、DXの必要性が高まり、部門や組織を立ち上げる動きは多くの企業であるものの、その影響はビジネスの一部分に留まっているという現状があります。DXによってビジネスをどう変革していくか、そのためにどのようなデータをどう活用するか、どのようなデジタル技術をどう活用すべきかについて、具体的な方向性を模索している企業が大多数といえるでしょう。

課題②:既存システムが足かせになっている

DXをスムーズに実行していくには、データを収集・蓄積・処理する IT システムによって業務を柔軟かつスピーディーに対応できるようにすることが必須です。

しかし現在、国内企業のおよそ8割が「レガシーシステム」と呼ばれる老朽化したシステムを抱え、なおかつ、およそ7割が「レガシーシステムが自社のデジタル化の足かせになっている」と認識しています。老朽化したシステムのままでは、新たなデジタル技術を導入してもデータを活用しきれず、DXを実現できない懸念があります。

解決には予算・時間的に大きなコストがかかるためリスクも大きく、自社内で解決するには困難な場合もあります。そのため解決にはユーザー企業とベンダー企業が新たな関係を構築し、DXに強い人材を共に育成していくことが必要になるかもしれません

課題③:経営層の危機意識とコミットにおける課題

多くの経営者はDXの必要性について理解していますが、その一方で新たなデジタル技術の活用に向け、既存システムの刷新を実施する企業はまだ少数です。しかし、そうした判断を行っている企業は、必ずといっていいほど経営層の強いコミットがあります。言い換えれば、DXに消極的な大多数の企業では経営層の関与やコミットが薄い傾向があります。

課題④:DX人材の不足

日本では7割以上のエンジニアがベンダー企業に在籍しており、ユーザー企業は多くの業務をベンダー企業に依存してきました。そのためユーザー企業の社内でIT人材の育成が進まず、人材不足が解消されにくくなっています。

参考:『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』 平成30年9月7日

DX人材不足の要因から紐解く、DX人材を確保するための8つの対処法!
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DX人材とは

DX人材とは、デジタル技術を用いてDXをリードできる人材を指します。デジタルスキルはもちろんのこと、周りを巻き込む推進力や、ビジネス観点を持っていることも重要です。

高水準なビジネススキルを有し、さらにはデジタル技術を扱える優秀な人材がDX人材といえます。

どのようなスキルが必要とされるのかなど、詳細は以下をチェックしてみてください。

DX人材とは?DX人材の定義を4象限で解説。育成・採用方法と職種も紹介
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DX人材に求められるスキル

DX人材には、デジタル技術に関する深い知識とともに、ビジネスに応用するための戦略的思考が不可欠です。データ分析能力やプログラミングスキル、AIや機械学習などの最先端技術への理解も含まれます。

また、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創出したり、顧客体験を向上させたりするためのアイデア思考も必要です。ビジネスの目的を達成するために、常に学び続ける姿勢も求められるスキルと言えるでしょう。

経済産業省が定義しているスキル要件とは

経済産業省が定義するDX人材のスキル要件には、デジタルリテラシーの基礎だけでなく以下の能力が含まれます。

  • データの収集・分析・活用能力
  • デジタル技術による問題解決能力
  • ビジネス戦略に組み込む能力

また、変化に対応し続けるための学習意欲だけでなく、新しい技術やアイデアを柔軟に取り入れる考え方も重視しています。デジタル化が進む現代のビジネス環境において、企業の競争力を高めるためにもDX人材は重要な存在です。

DX人材の主な職種

ここでは、DX人材の主な職種について紹介します。

  • プロダクトマネージャー
  • ビジネスデザイナー
  • アーキテクト
  • データサイエンティスト
  • 先端技術エンジニア
  • UI/UX デザイナー
  • エンジニア/プログラマー

プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは市場のニーズを理解し、製品のビジョンと戦略に変換する責任をもちます。機能要件の定義やロードマップの作成、チーム間の調整などをリードするのが主な仕事です。

技術的な知識とビジネスの洞察力を兼ね備え、製品が市場で成功するための戦略を策定し、実行する力が求められます。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、顧客の悩みを解決するアイデアを生み出し実現する人です。アイデアを具体化し、「必要なコストや収益はどのくらいか」「どのように販売していくか」を考えます。

デザイナーやエンジニア、マーケターなどが集まったチームをまとめ、サポートをするのが主な仕事です。

アーキテクト(エンジニアリングマネージャー、テックリード)

アーキテクトは、技術戦略の策定と実行において中心的な役割を担います。システムアーキテクチャの設計や技術選定、開発プロセスの最適化などを通じて、製品やサービスの技術的な基盤を構築します。

最新の技術トレンドを把握し、ビジネスの目標に合わせて適用することで、技術的な課題を解決へと導きます。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、膨大なデータの中から価値あるものだけを引き出し、ビジネス戦略や意思決定を支援するのが役割です。統計学や機械学習などの分析技術を駆使して、データからパターンを見つけ出し、予測モデルを構築します。

データの収集や分析能力だけでなく、結果をわかりやすく解釈し、非技術者にも理解できる形で伝える能力が求められます。

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、人工知能(AI)やブロックチェーンなどの最新技術を活用して、革新的な技術を開発するのが主な仕事です。新しい技術の可能性を探求し、実際の製品やサービスに応用することで、ビジネスモデルの変革や業務プロセスの効率化を実現します。

技術的な知識以外にも、技術がもたらす社会的かつ経済的影響を理解し、倫理的な観点から技術開発を進めることも重要です。

UI/UX デザイナー

UI/UX デザイナーは、ユーザーが製品やサービスを利用する際の体験を向上させる「UI/UX設計」を活用するのが主な役割です。ユーザーのニーズを深く理解し、直感的で理解しやすいデザインを創出します。

ユーザーがどのような目的で製品やサービスを利用するのか、テストを行いながら継続的に製品の改善を図り、利用率向上を目指します。

エンジニア/プログラマー

エンジニア/プログラマーはソフトウェアの設計や開発、保守などを行い、アプリやシステムの構築を実現するのが主な役割です。プログラミング言語や開発フレームワークを駆使して、要件に応じた機能を持つソフトウェアを開発します。

コーディングのスキルだけでなく、チームで協力してプロジェクトを進めるコミュニケーション能力や問題解決能力も重要です。

DX推進の具体的な6つの手順

ここでは、DX推進の具体的な手順をまとめます。

  1. 現状の調査
  2. DXに関するビジョン・中期経営計画の策定
  3. DXロードマップの策定
  4. DX推進体制の構築
  5. 実行
  6. PDCAを回し続け、ビジネスモデルの変革まで繋げる

手順1:現状の調査

DXを始める前の現状調査は、自社の立ち位置を正確に把握し、今後の方向性を定める上で不可欠です。自社の業務プロセスや従業員のデジタルスキルに加え、業界内外の成功事例や最新トレンドにも目を向けましょう。

成功事例から何がうまくいき、どのようなアプローチが効果的かを理解することで、適用するかどうかを判断できます。DXの基盤を固め、有効な戦略を立てるためにも必要な作業です。

手順2:DXに関するビジョン・中期経営計画の策定

DXにおけるビジョンの設定は、組織全体に方向性と意義を伝え、従業員や関わりのある組織に共通の理解と目標を提供します。ビジョンを基に、具体的な中期経営計画を策定しましょう。

計画には目標達成のための戦略や必要なリソース、期待できる成果を測定するためのKPIが含まれます。

手順3:DXロードマップの策定

DXロードマップの策定は、ビジョンと中期経営計画を実現するための具体的な計画を立てる過程です。ロードマップにはDXの各フェーズで達成すべき目標や、実施するプロジェクトの優先順位とタイムラインが明記されます。

ロードマップは、組織全体が一丸となってDXを推進するための共有ドキュメントとして機能し、必要に応じて更新が必要です。

手順4:DX推進体制の構築

DXを成功に導くためには、組織全体での取り組みが不可欠です。DXを牽引する専門チームや部門を設置し、役割と責任を明確にしましょう。

推進体制の構築には全体をまとめるリーダーが不可欠で、各部門からのフィードバックを柔軟に聞く姿勢が求められます。多様な背景を持つメンバーで構成することで、技術的な側面に加えて組織全体の変革も視野に入れた推進が可能です。

手順5:実行

計画を立てた後は、具体的な実行フェーズに移ります。設定されたタイムラインに沿って、各プロジェクトを進めていきましょう。

変化に対する組織の抵抗を乗り越えるために、従業員のコミュニケーションや教育にも注力する必要があります。実行フェーズでは、計画の柔軟な見直しも必要になるため、定期的なレビューが欠かせません。

手順6:PDCAを回し続け、ビジネスモデルの変革まで繋げる

DXの取り組みを進めていく際には、PDCAサイクルを効果的に回し続けましょう。初期の計画に基づいた成果を評価し、必要に応じて計画を見直し、改善策を講じます。

継続的な改善を通じて、企業は変化する市場や技術の進展に柔軟に対応し、ビジネスモデルの変革を実現していきます。中期的な視点を持ちながら、定期的な評価と改善を行うことが、持続可能なDX推進には不可欠です。

DX推進に必要なことは?

DX推進における課題の整理に続いては、それらの課題を解決するための施策についてご紹介します。

経営層のコミット

DXを推進するには全社的にかつ長期的に取り組む必要があります。そのため経営層がリードしてDXを進めていくことが非常に重要になります。具体的にはDXへの理解を深め、企業のビジョンや戦略、ロードマップにDXを組み込むことが重要です。

さらにその内容を社内外に向けて発信したり、他社との協力関係の構築を検討したりする必要もあります。もしDX推進の障害に現場が困っていれば経営層がドラスティックに意思決定をすることも求められます。

DX推進に関する組織・文化の形成

DX推進を行う専門の部署やチームを社内に立ち上げ、DX業務に関わる人材を配置します。適切な人材がいない場合は、外部の人材を採用するなどの方法も検討しましょう。

進め方のステップについては、まずデジタイゼーションによるツールのデジタル化からデジタライゼーションによる業務の効率化、そしてDXへと進みます。この過程では新たな取り組みを常に意識しておくことが重要です。さらに、日頃からDXを意識する仕組みを作っておくことも大切です。

DX人材の育成

DX人材の確保には大きく「中途採用」「新卒採用」「既存社員の育成」の3つがあります。DXは現業務の理解や自社サービスを深く理解していることが重要なため時間はかかりますが「既存社員の育成」が重要になることがあります。

DX人材を育成するステップとして、株式会社エクサウィザーズは下記5ステップを提唱しています。参考にしてみてください。

 

1.「スキルと素養の可視化」

アセスメントやアンケート・テストの実施により個人のデジタルスキルやイノベーティブの能力など可視化します。自社で実施しても、外部の診断ツールなどを活用してもよいでしょう。

 

2.人材育成計画の策定

次に人材育成計画を策定しましょう。何を目的に、いつまでに、どんな人を、何人育成するかを決めていきます。

 

3.知識のインプット

知識のインプットでは、まず「DXは重要」「DXは面白い」と感じてもらうDXマインドの醸成が重要です。その次は実際にデジタルリテラシーをインプットしていきます。学習方法には他社の成功事例を調べたり、動画コンテンツやオンライン学習ツールを活用したりするのがおすすめです。

 

4.実務スキルのアウトプット

インプットだけでは実践まで結びつかないため、実際に手を動かしながらアウトプットする研修なども、社員のDXスキルを高めるために効果的です。アウトプットとプロからのフィードバックを繰り返すことで活用するイメージが深まるメリットがあります。

 

5.実践力強化

リテラシー学習や研修などで身についたスキル内容を、実際のDXプロジェクトで実践していきます。新しいことの実践には失敗がつきものです。簡単にできるところからスピーディーに試行錯誤を繰り返し、小さな成功を積み上げながら精度を上げていきましょう。

5つのステップの詳細は下記の記事で紹介しています。

DX人材育成の方法を大公開|育成の課題・メリット・手法を徹底解説!
DX人材育成の方法を大公開|育成の課題・メリット・手法を徹底解説!
DX人材育成5つのステップを網羅
DX人材育成サービスの資料を見る

国内のDX成功事例

最後にDXの国内事例、海外事例を紹介します。

リクルートホールディングス

実施内容・成果

大学新聞専門の広告代理店からスタートしたリクルート社ですが、現在では「ホットペッパービューティー」や「タウンワーク」など、「リボンモデル」(カスタマーとクライアントのマッチングを目的に、各ステージのペルソナに喚起したい行動や施策、KPIなど詳細のチューニングから、全体的な俯瞰図を把握するためのフレームワーク)を活用したシステムソリューション販売事業の主体を転換しました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 同社の専門領域である個人ユーザーと企業クライアントのマッチングにおいて、テクノロジーの力でそのスピードと質を上げ、より多くのニーズに応えています。
  • インターネット・スマートフォンなどの普及により変化した消費者ニーズをすばやく把握・サービスに反映しビジネスモデルを進化させています。

参考:『ビジネスモデル』リクルートホールディングス

ヤマト株式会社

実施内容・成果

運輸量の業務量予測を行うためにAI(機械学習モデル)を活用していましたが、MLOps(機械学習オペレーション)環境を構築し、機械学習パイプラインを自動化することで、機械学習モデルの運用が高速化し、継続的な機能開発と機械学習モデルの精度改善が可能になりました。

参考にしたいポイント・アクション

  • 約3,500店ある宅急便センターの数ヶ月先の業務量予測にあたり、月次で手動実行していた「データ抽出→前処理→学習→予測→評価」など一連のプロセス(機械学習パイプライン)を自動化しています。
  • 手動で行っている業務の中にデジタル化できるプロセスがないかチェックし、効率化を図っています。

参考:『物流企業のMLOps環境を構築、機械学習パイプラインを自動化』株式会社エクサウィザーズ 2021年11月17日
参考:『ヤマト運輸、MLOpsで経営リソースの最適配置を実現』エクサウィザーズ 2022年8月3日

株式会社日立製作所

 

実施内容・成果

日立製作所が保有する、社会インフラを支える情報制御システムを提供する総合システム工場の大みか事業所において、IoT技術やデータ分析などを活用し、開発・設計から納入後の運用保守までを全体最適化する長年の取り組みが評価され、世界の先進工場「Lighthouse」に選出されるとともに、この取り組みをソリューションとして提供しています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード」に基づいた既存ビジネスの深化、業態変革・新規ビジネスモデル創出の実績、DX実現能力などが参考になるでしょう。
  • 自社や顧客とのDXから、グローバルでのビジネス展開につなげられないかを確認/DXを企業全体の変革のエンジンとしています。

参考:『経済産業省と東京証券取引所が選ぶデジタル活用の優れた実践企業「DX銘柄2021」において、「DXグランプリ2021」に選定』 株式会社日立製作所

富士通株式会社

 

実施内容・成果

富士通は全員参加型のDXを特長とした全社DXプロジェクトを立ち上げDXOの設置、アジャイルを用いたプロジェクト推進などをスタートしました。

中でも顧客・社員の声を活かしたデジタル経営を目指す「VOICEプログラム」では、定量・定性データの高頻度な収集・分析とアクションのマネジメント、ERPや人事データとの組み合わせなどを行い自社の課題をリアルタイムに分析し改善のアクションに繋げるといったことが可能になります。

また、製造業のDXを支援するクラウドサービスを提供する新会社である株式会社DUCNETを設立するなど、新規ビジネス創出も実施しています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 部門ごとにDXの責任者を設置し、「タテ(経営~現場)」×「ヨコ(部門横断)」の連携を取っています

参考:『【富士通社内実践事例】エクスペリエンス・マネジメント ソリューション Qualtrics(クアルトリクス)を活用した、全員参加型DX~現場の声とデータを活かしたマネジメント~』 富士通

海外のDX成功事例

Netflix

 

実施内容・成果

DVDの配送レンタルサービスからVODサブスクサービスへ、新たなビジネスモデルを創出しました。

さらに本サービスのデータ解析からヒット番組を自社で制作可能な環境を整えることで、当時他社にはない競争上の優位性を確立しました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • ブロードバンドの普及を活用してストリーミングサービスを実現し、視聴データなどのビッグデータ解析によって面白いコンテンツを分析。オリジナルコンテンツに反映するなど新たな試みを実現しました。
  • 現状の業務の効率化ではなく、顧客を満足させるために何ができるかを最終目的として考えています。

Airbnb

 

実施内容・成果

2008年からホストとゲストをマッチングさせるポータルサイトを開発し、宿泊費用を格安で抑えるビジネスモデルを創出しました。現在は数々の国で利用されています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 最大のポイントは、データ上で宿泊に関するやり取りが完結するようにデジタライゼーションを進めたこと。「空き部屋が多く有効活用したい」というホスト側のニーズに刺さったこと。
  • デジタル技術を導入する際、従来のサービスの効率化のみではなく、ユーザーニーズを満たすことを重要視する。

Domino’s Pizza

 

実施内容・成果

より多くの方法・デバイスで注文できるオンラインサービス「AnyWare」、タップ・クリックなどのアクションなしでピザを自動で注文できる「Zero Click」などを開発しました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • デジタル技術の導入やアプリの活用など、散発的にDXを取り入れるのではなく、まず企業としての戦略を明確化しました。

参考:『米ドミノ・ピザ、絵文字ツイートでの出前サービス開始へ』 ITmedia NEWS 2015年05月13日

DX事例集|国内外・自治体や中小企業まで自社に合ったDXの成功事例を見つけよう
DX事例集|国内外・自治体や中小企業まで自社に合ったDXの成功事例を見つけよう

まとめ

実態調査およびコンサルティングを提供する富士キメラ総研が2022年に発表した調査によると、2030年度には国内のDX市場が5兆円を突破する見通しとのことです。今後、企業として生き残るため、DX推進は必須となっていくでしょう。

DX推進は、単なるデジタル化ではなくビジネスモデルの変革や企業文化の変革、同業他社との競争上の優位性の担保までできて、初めてDXと呼べるのです。経営のコミットや組織開発・人材育成まで広くとらえた上で、DXを推進することが何よりも重要です。

出典:『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』株式会社富士キメラ総研 2022年3月15日