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【連載】株主総会を「壮大なPoC」の場に(前編) ~1人IR×AIエクセレンス推進室が挑んだ業務の自動化~

  • 國田 優(くにた・ゆう)
    広報・IRグループ IRシニアスペシャリスト
  • 上馬場 誠(かみばば・まこと)
    AIエクセレンス推進室 室長
【連載】株主総会を「壮大なPoC」の場に(前編) ~1人IR×AIエクセレンス推進室が挑んだ業務の自動化~

生成AIやAIエージェントの進化が、企業経営のあり方を大きく変えようとしている今、私たちエクサウィザーズは、自らが最前線の「実験場」となり、AIドリブン経営を日々実践しています。この「AIドリブンデイズ」のコーナーでは、自社を実験場としたエクサウィザーズ社内のAI活用事例を発信しています。今回お届けするのは、連載「広報が聞く、実験場のリアル」。広報担当が、AIドリブン経営を日々実践する社員たちに、現場でのAI活用のリアルを聞きます。今回のテーマは「IR・株主総会業務のAI活用」。広報・IRグループでIR業務を一人で担う國田さん、社内のAIドリブン経営を推進するAIエクセレンス推進室の上馬場さんに話を聞きました。

株主総会は、IR(インベスター・リレーションズ:投資家向け広報)業務の中でも、年に一度、最も多くの業務が集中するイベントです。通期の決算業務と並行して総会業務に向けた準備もしなければいけないという多忙な業務を、AIでどこまで自動化できるのか。この課題に挑戦したIR担当の國田さんと、その実装を推進したAIエクセレンス推進室の上馬場さんに、挑戦のプロセスを聞きました。


「人が増えないなら、AIを活用する」——1人IRの現場から始まった

――今日はよろしくお願いします。まず、IR業務のAI自動化に取り組むことになったきっかけを教えてください。

國田:会社として、IR業務のAIによる自動化に力を入れていこうとなったきっかけは、社内でのささやかな相談でした。昨年末に春田社長に「IR担当者を増やしたいです」と相談をしたら、「まずはAIを活用してIR業務を自動化しよう」と言われたんです。その会話がきっかけとなった、と思っています。

――増員の相談が、AI活用の本格活用に繋がったのですね。上馬場さんは、推進側としてどう動き出したのでしょうか。

上馬場:会社としてIR業務の自動化に取り組むことが決まり、AIエクセレンス推進室の大きなテーマを「IR業務をAIで自動化する」と設定しました。すでに販売しているIR業務特化型のAIプロダクト「エクサベース IRアシスタント」の機能をより拡張していこう、というところから始めていき、IR業務の全体像を整理する中で目をつけたのが年1回の業務として最も大きい株主総会でした。

――数あるIR業務の中で、なぜ株主総会だったのですか?

上馬場:昨年から株主総会の質疑応答時に回答案を自動生成する取り組みはありました。しかし、AI技術も進化しているので、できることも増えたのではないかと。勝手に思い、勝手にやってました、という感じです。

背景には、春田社長の「攻めのIR」への意志があったと上馬場さんは語ります。法定開示資料の作成のように、ルールとして正確にやらなければならない「守り」の業務をAIで楽にし、投資家との対話といった「攻め」に時間を振り向けたい——そんな考え方が、社長との定期的な対話の中で共有されていたそうです。

――この取り組みは、エクサウィザーズ社内だけの課題解決にとどまらないと聞きました。

國田:1人IRって、日本の上場企業に結構多いんですよ。専任がいなくて兼務で回している会社もすごく多い。絶対にやらなければいけない法定開示の業務をある程度自動化できたら、他の会社のIR担当者もだいぶ救われるのではないかと思っています。

まずは業務の棚卸しから——「型化された業務」はAIと相性がいい

とはいえ、「株主総会をAIで自動化する」と一口に言っても、業務は多岐にわたります。プロジェクトはまず、IR業務の棚卸しから始まったそうです。

――プロジェクトの最初の一歩は何だったのでしょうか。

國田:まずIR業務の棚卸しです。四半期ごとに繰り返す決算関連業務、株主総会や統合報告書のような年1回の業務という「時間軸」と、法律上必須のものか任意のものかという「必須性」の2軸で業務を整理しました。

写真:IR担当の國田

上馬場:私はIR業務の知見がなかったのですが、最初のヒアリングで、ちゃんとした業務プロセスの棚卸しをしていただけて、「これだとやりやすいな」と思ったのはすごく記憶にあります。

――現場側の整理が、推進側の設計図になったわけですね。AIによる自動化を進めるうえで、対象業務を選ぶポイントはあるのでしょうか。

上馬場:業務が「型化」されているかどうかは大きな分かれ目です。あまりにも型化しきれていない業務だと、結局試行錯誤が続いてしまう。業務がプロセスとしてはっきりしているものはAIで自動化しやすいので、そこからターゲットを定めました。さらに「こういうアウトプットだといいな」というアイデアが現場にあると、単なる自動化にプラスして「こんなのできるんじゃないか」という伸びしろが生まれるんです。

こうして、昨年から取り組んでいた質疑応答の回答自動生成のブラッシュアップに加え、これまで手つかずだった資料作成の自動化——特に決算説明動画の生成が、優先的なターゲットとして定まっていきました。

まる1日かかる動画編集を、数分で自動生成可能に

最初のテーマとなったのは、決算説明資料のPDFから説明動画を自動生成する仕組みです。実はこの動画づくり、以前は國田さん自身が手作業で行っていたといいます。

――決算説明動画は、もともとどう作っていたのですか?

國田:2026年2月の決算のときは、私自身がGeminiのAI Studioなどを活用して一人で作りました。社内で情報収集をして、社員から教わったツールを使って、自力で挑んだんです。「意外と簡単にできるぞ」と聞いて、自分でいろいろと試してみて……結果、すごく時間がかかりました。決算前日の1日をまるまる使って、ずっと動画編集をしていました。

――決算前日にまる1日は、かなり大変ですね……。上馬場さんは、その様子をどう見ていたのですか?

上馬場:その実体験が、私にとっては貴重なインプットでした。使っている様子からやりたいことが大体わかったし、課題も具体的にもらえた。それをベースにやればいけるじゃん、という話になったんです。

――具体的には、どんな仕組みを作ったのでしょうか。

上馬場:PDFを読み込むと、プレゼンに必要なナレーションテキストを生成し、内容を確認したうえでテキスト・トゥ・スピーチ(テキストを音声に変換する技術)で音声化、最後に動画として出力するという仕組みです。開発にはコーディングエージェント(対話しながらプログラムを自動生成するAI)のClaude Codeを活用しました。エクサウィザーズのデザインシステムを読み込ませて、「エクサウィザーズのアプリらしい」UIを最初から生成させています。

――最初からうまくいったのですか?

上馬場:いえ、順風満帆ではなかったです。初期バージョンは、PDFの読み込みに30分、1動画を作るのにさらに30分とかかかっていたんです。発音に違和感がある箇所を焼き直すたびにそれだけかかると、業務が回らない。初回はダメでした。そこでブラッシュアップ期間を設けてやり方をガラッと見直したら、今は3分ぐらいでできるようになりました。

――1動画30分から3分へ、大幅な短縮ですね。他に改善した点はありますか?

上馬場:「資料が完成したと思ったら『このページのここの言葉を変えたい』という意見が出てくる」という現場のフィードバックから、一部差し替えや削除の機能も追加しました。単に生成するだけでは業務では使えない、という気づきの反映です。使いづらい点を継続的に改善していきました。

写真:AIエクセレンス推進室 上馬場

機微情報を扱うIRに最適なexaBase Studioという「守られた環境」

決算情報という機微な情報を扱うIR業務。AI活用にあたっては、セキュリティの担保が大前提になります。

――IRは公表前の決算情報など、非常にセンシティブな情報を扱いますよね。開発・運用環境はどうしたのですか?

上馬場:Claude Codeと、自社のAIエージェント開発・運用プラットフォームである「exaBase Studio」を併用しました。ローカルで作って確認し、exaBase Studio上にデプロイして動かす、というサイクルです。

――exaBase Studioを使う意味は、どこにあったのでしょうか。

上馬場:特定のアクセスのみ許可する仕組みを簡単に作れるので、開発したアプリケーションを外からのアクセスからしっかり守られた状態にできるのが大きかったですね。 コーディングエージェントに言われるがままに進めると、認証基盤もなくネットワークに晒されたサービスに公開してしまいかねない。そういうことが全くない、隔離された環境をすぐに準備できたのは、エクサウィザーズがすでにお客様にも提供しているexaBase Studioという基盤と、それを使い続けてきた経験があったからです。

國田:現場としても、そこは強く同意するところです。IRはすごく機微な情報を扱っているので、どこまでAIを使えるかは、まさにそこだと思うんです。守られた環境で作業できるという信頼性がないと、なかなか活用できない。

「AIの声は単調で眠くなる」——株主の声から見えた次の課題

生成時間が30分から3分に短縮されたことで、國田さんの関心は「量」から「質」へと移っていったといいます。

――生成時間が短くなって、現場の仕事の仕方はどう変わりましたか?

國田:工程が短くなったので、クオリティに時間を割けるようになりました。以前は1個出力するまでの時間が長すぎて、「言えていない発音があっても、それっぽく聞こえるし1回目だからいいでしょ」と甘えた作りになっていた。すぐ出せるとわかっていると、もっと中身を重視できるんです。

――実際に動画を見た株主や投資家からは、どんな反応がありましたか?

國田:「AIが喋っている動画だと単調すぎて眠くなる」「長くてだらだら聞かされても頭に入ってこない」という声は、SNSも含めて見ています。今後は人間が聞きやすい文章、聞きやすい音のアップダウンといった「人間っぽさ」にフォーカスした作りを検討するフェーズに入ったと思いました。

――「人間っぽさ」のチューニングというのは、推進側にとっても想定内だったのでしょうか。

上馬場:いえ、「間の取り方」「音と音の空け方」のチューニング要望は、自分で実装しようと思っても思いつかなかったことです。現場でやってきたからこそ「こうチューニングできればより聞きやすい」というアイデアが出てくる。それをパッと聞いてパッと実装するやり取りができたのが、よかったのかなと。

記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。

  • 國田 優(くにた・ゆう)
    広報・IRグループ IRシニアスペシャリスト
    1人でIR業務全般を担当。決算発表、株主総会、個人投資家向け説明会など、法定開示から任意のIR施策までを幅広く担う。今回のAI活用プロジェクトでは「現場側・実務側」として参画。
  • 上馬場 誠(かみばば・まこと)
    AIエクセレンス推進室 室長
    社内業務へのAI実装を推進するAIエクセレンス推進室をまとめる。今回のプロジェクトでは「推進側」として、IR業務の棚卸しから決算説明動画の自動生成、株主総会Q&Aサポートツールの構築までを担った。