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【連載】株主総会を「壮大なPoC」の場に(後編) ~1人IR×AIエクセレンス推進室が挑んだ業務の自動化~

  • 國田 優(くにた・ゆう)
    広報・IRグループ IRシニアスペシャリスト
  • 上馬場 誠(かみばば・まこと)
    AIエクセレンス推進室 室長
【連載】株主総会を「壮大なPoC」の場に(後編) ~1人IR×AIエクセレンス推進室が挑んだ業務の自動化~

生成AIやAIエージェントの進化が、企業経営のあり方を大きく変えようとしている今、私たちエクサウィザーズは、自らが最前線の「実験場」となり、AIドリブン経営を日々実践しています。この「AIドリブンデイズ」のコーナーでは、自社を実験場としたエクサウィザーズ社内のAI活用事例を発信しています。
本連載「株主総会を「壮大なPoC」の場に」では、1人IRの担当者とAIドリブン経営を推進するAIエクセレンス室が、株主総会という1年の中でも重要なイベントをにおいて、AIを活用した自動化にどのように取り組んだのかをお伝えしています。

前編では、1人でIR業務を担う國田さんの相談から始まったプロジェクトの経緯と、決算説明動画の自動で生成できるようにし、まる1日かかっていた動画編集を約3分に短縮した取り組みについてお伝えしました。
後編のテーマは、株主総会の「当日」です。質疑応答をリアルタイムにサポートするAIの構築から、本番で起きたイレギュラーへの対応、そして2人がこの「壮大なPoC」から得た学びまでを聞きました。


株主総会Q&Aサポート——議長だけでなく、事務局を楽にする

もうひとつの大きなテーマが、株主総会当日の質疑応答をサポートするAIです。株主からの質問に対し、回答の参考情報をリアルタイムに議長に提示する仕組みで、もともとは昨年、社内の別チームが構築したものがベース。技術の進化やユーザビリティの観点から、今回リニューアルすることになりました。前編で紹介した動画生成が総会に向けた「準備」の効率化だとすれば、こちらは「本番」を支えるAIです。

――株主総会サポートAIでは、まず何に着手したのでしょう。

上馬場:ここでも、業務の棚卸しと可視化をして、全部絵に起こしました。すると、精度高く回答が出てくること以上に、質問を書き起こす作業や、そもそもチャットボットに渡すQ&Aの作成が大変といった、周辺業務に課題があることがわかりました。もともとは議長が回答しやすくするのが目的でしたが、途中で「いや待てと。株主総会の事務局の負担が大きいので、自動化することで少しでも楽にならないか」という考えになったのです。

――「回答の精度」だけを見ていたら気づけなかった課題ですね。本番までの準備はどのように進めたのですか?

上馬場:リハーサルを徹底しました。株主の想定質問をAIで自動生成し、それを音声合成で読み上げて、実際に書き起こしができるかを何度も検証したんです。議長役へのレビューも重ねました。

――リハーサルを重ねる中で、見えてきたことはありましたか?

上馬場:「文字をもっと大きく」といった要望に応えるうちにUIが複雑化してきたので、議長に見せる画面と会場に見せる画面を分けて、それぞれシンプルにする、といった工夫も加えていきました。

――議長用と会場用で画面を分けるというのは、実際に使う人の声があってこその工夫ですね。

上馬場:事務局の担当者、議長も含めたユーザーからフィードバックをクイックにもらって、クイックに返す。これができたのはすごく良かったし、他の会社だとなかなか難しいんじゃないかと思います。「AI First」というCredo(エクサウィザーズの行動指針)が、現場にもマネジメントにもあるからこそできるのだと考えています。

――こうして迎えた総会当日。手応えは、現場としてはいかがでしたか?

上馬場:今回こだわったのはスピードでした。いかに間を空けずに回答案を議長に提示するか。そこは評価をもらえたんですが、「一言一句読みたいわけではなく、喋るときに参考となる数字を中心に、サポートする情報をしっかり出してほしい」とも言われました。スピードはついてきたので、次は出てくる内容をもっと改善していきたいですね。

当日のイレギュラーも、「普段からAIを使っている会社」だから乗り越えられた

――本番はすべて順調だったのでしょうか?

上馬場:実は当日、想定外の処理でツールが一時停止し、1問だけ表示が抜けるトラブルがありました。私ともう1名、AIエクセレンス推進室の担当者が事務局に入りサポートしていたので、「システムが止まっている」とすぐに気が付き、なんとか復旧しようと対応していました。

――推進側のメンバーが事務局に入っていたからこそ、すぐに動けたんですね。現場は焦りませんでしたか?

國田:イレギュラーが起きるかもしれないと想定したうえで、いくつかパターンを作って練習もしていました。焦りはしつつも臨機応変に対応できたのは、普段からAIを使っている会社だからこそ、というところはあるかもしれません。

当日の会場では、株主の質問の要約がリアルタイムにスクリーンに表示されるAIも導入されました。実はこれ、総会の数日前に春田社長から「株主にもこのAIによる株主総会運営を見てほしい。見られるようにできないか」というコメントがあり、その日中に作り上げたものです。

――数日前の要望をその日中に、というのはすごいスピード感ですね。この取り組みからは、どんな気づきがありましたか?

國田:これまでの話はずっと社内の業務効率化でしたが、それを最終的にお客様にとっていいものとしてどのようにアウトプットできるか。自分の質問の要約が表示されれば、「そういうことじゃないんだよ」と株主の方が言うこともできたわけです。お客様目線でどうアウトプットしていくかという視点に、今回すごく気づかされました。

おわりに——「ハイブリッド」のバランスと、業務の前後まで捉える視点

「壮大なPoC(概念実証:新しい技術やアイデアが実際に機能するかを検証する取り組み)」の場となった株主総会。最後に、2人それぞれの学びと今後の展望を聞きました。

――今回の挑戦を通じた学びと、来年に向けた展望を聞かせてください。

國田:完全にAIで自動化することをポジティブに捉える人もいれば、これまでのような株主総会を求める株主の方も一定数いるというのが、世の中の反響を見ていて思うところです。全部が全部AIが喋ればいいわけでもない。人間として言わなければいけないことは何か、そのバランスを来年に向けて考えていかなければいけないと思っています。

上馬場:私の学びは、業務を「一気通貫」で捉えることの重要性です。株主総会が終わった後に議事録を作成する業務もあったことに気が付きました。最初から想定できていれば、始まりから終わりまで全部一気通貫でサポートできたはずなんです。ある業務があったとき、その前後にはどのような業務があるのかを確認した方がいい、と改めて思いました。

――業務の「前後」まで視野に入れる、ということですね。推進側として、ほかに感じたことはありますか?

上馬場:現場にぐっと入らないとわからない優先順位もある、ということです。形を見せて、忌憚のないフィードバックをもらい、クイックに取捨選択して次を届ける——これをやらないと、結果として使われないものになってしまう。チームのメンバーにも意識できるように伝えていきたいですね。

――現場と推進側、それぞれの視点があってこそのプロジェクトだったんですね。

國田:私たちはシステムのことがわからないから、どこからできてどこまでできないのかがわからない。それを直接調整してもらえるAIエクセレンス推進室の存在が本当にありがたかったです。

これに対して上馬場さんは「巻き込みを恐れずに」と応じます。経営層も含めて「どっちにしたってユーザーなんだから」と早めに巻き込み、関係づくりを事務局やエンジニアがしっかり行うこと。それが、現場に根づくAI活用の第一歩なのかもしれません。

守りの業務をAIで効率化し、攻めのIRへ。エクサウィザーズの「実験場」としての挑戦は、来年の株主総会に向けて、すでに次のフェーズへと動き始めています。1人IRとAIエクセレンス推進室の「実験」は、まだ始まったばかりです。

写真:左 広報IR担当の國田、右 AIエクセレンス推進室の上馬場
  • 國田 優(くにた・ゆう)
    広報・IRグループ IRシニアスペシャリスト
    1人でIR業務全般を担当。決算発表、株主総会、個人投資家向け説明会など、法定開示から任意のIR施策までを幅広く担う。今回のAI活用プロジェクトでは「現場側・実務側」として参画。
  • 上馬場 誠(かみばば・まこと)
    AIエクセレンス推進室 室長
    社内業務へのAI実装を推進するAIエクセレンス推進室をまとめる。今回のプロジェクトでは「推進側」として、IR業務の棚卸しから決算説明動画の自動生成、株主総会Q&Aサポートツールの構築までを担った。