AIロボット協会、ロボット動作データ5000時間分を一般公開 基盤モデルの土台は米国製VLA
一般社団法人AIロボット協会(AIRoA、理事長・尾形哲也氏)は7月31日、ロボット動作データセット「AIRoA MoMa 5k」と、それを用いて学習したロボット基盤モデル「pi05_hsr_base」、学習用ソースコード「AiroPi」を一般公開した。経済産業省とNEDOが実施するGENIACの採択事業の成果で、8月3日に発表した。
公開されたデータは、トヨタ自動車の生活支援ロボットHSRを人間が遠隔操作して集めたもの。データセットの公開ページによると、収録時間は5025時間、成功エピソード数は118万4259件、フレーム数は1億8090万件に達する。5拠点に置かれた44台の実機を使い、2025年4月から2026年1月にかけて収集した。容量は約4テラバイト。
データは「容器まで移動する」「ペットボトルをつかむ」といった基本動作を1エピソードとして格納し、それらを束ねた作業単位のメタデータを併せ持つ階層構造をとる。作業のテンプレートは93種類で、うち68種類が全体の99.6%を占める。拠点別の内訳はTelexistenceが60.7%、九州工業大学が30.6%で、この2カ所で9割を超える。カメラ映像に映り込んだ通行人については、236万本の動画のうち8.6%にあたる20万3211本にぼかし処理を施したうえで公開している。
同時に公開したモデルpi05_hsr_baseは、モデルカードによれば、ロボット基盤モデル開発の米Physical Intelligence社が公開しているVLAモデル「π0.5」のチェックポイントを出発点とし、AIRoAの75タスク分のデータで継続事前学習した。言語モデル部分は凍結したまま、行動生成部分とカメラ映像の処理部分だけを更新する設計で、学習には米NVIDIA社のH200を64基使い、約0.8エポックを回した。ライセンスはπ0.5の系譜を引き継ぎ、米Google社のGemma利用規約が適用される。
データセットの利用規約は研究開発目的に限定され、第三者への有償販売や再配布を禁じている。学習して作った派生モデルも再配布できない。一方でAIRoAは、利用者が作成した派生モデルとその出力をAIRoAに提供するよう努めることを求め、提供されたものについては商用・非商用を問わず用途の制限なく利用できると定めた。データを開くかわりに、そこから生まれた成果を協会に環流させる設計である。
政府が3月26日にまとめたAIロボティクス戦略は、AIRoAが開発する国産ロボット基盤モデルについて、2027年6月頃をめどにベータ版をオープンソースで公開するとしている。今回の公開はその前段にあたる。同戦略は2040年までに多用途ロボットの世界シェア3割超、20兆円規模の市場獲得を掲げ、6月30日の改定では対象を18分野に広げ、国内導入目標を1000万台とした。
データ量では米中との差が大きい。中国のスマートフォン大手Xiaomiは8月、1700以上のシーンで集めた10万時間超の実機操作データで学習したVLA「Xiaomi-Robotics-1」を公開した(Open Source For You)。Ant Group傘下のロボット企業Robbyantが7月に出した「LingBot-VLA 2.0」も、約6万時間分のデータを整備したとしている(論文)。いずれもコードや重みをApache 2.0など制約の緩い条件で公開している。AIRoAの5025時間はHSR1機種に絞った実機データであり、機種の多様性でも差がある。
AIRoAは9月16日、NEDO委託事業として実施する国産汎用ロボット開発コンペティションの試作機を、東京都内で開かれる「フィジカルAI Summit」で公開する予定。