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DX検定とは?DX人材育成において資格取得は不可欠|DX検定の概要と企業として取り組むメリットを解説

DX人材の育成を急務とする企業において、従業員の意識付けに苦慮している企業も多いのではないでしょうか。ひとつの解決策として、DX関連の資格取得に取り組むという方法もあります。

代表的なDX関連資格である「DX検定」は、ビジネストレンドと先端IT技術トレンドの両方の知識レベル向上に役立つ資格です。DX推進に向けた従業員の意識と知識向上の施策として、多くの企業で取り組みがなされています。

この記事ではDX検定の概要と、企業として取り組むメリットを解説します。

DX人材の育成には資格取得が不可欠

まず、経済産業省によるDXの定義は以下の通りです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:『デジタルガバナンスコード2.0』経済産業省 2022年9月22日

DXとは単なるデジタルツールの活用にとどまらず、デジタルを利用して「製品やビジネスのあり方」に変革をもたらし、組織の文化として根付かせ競争優位性を確保することです。

一方、DX人材については明確な定義はありませんが、単にデジタル技術が扱えるだけでなく、高度なビジネススキルを合わせ持ち、自社のビジネスモデルや組織文化の変革にまで影響を及ぼす人材と捉えることができます。

しかし、DX人材の確保・育成は多くの企業で急務でありながら、うまく進んでいない現状があり、組織を挙げての取り組みが求められます。

そこで注目すべきものが「DX検定」です。

DX検定は、DX人材に必要なビジネス知識とデジタル技術の両方が試される検定です。全社的な取り組みとして、DX検定資格取得を目指すことで、所属する人材のDXに対する意識とスキル向上が図れるでしょう。

DX人材育成に役立つ資格を他にも知りたい方は、DX人材に必要な資格とは? 社内でDX人材を育成する注意点も解説の記事も合わせてご参照ください。

DX検定とは

DX検定は、これからDXを推進し社会やビジネスの発展を担う人材が、先端IT技術トレンドとビジネストレンド、両面の知識を習得することを目的に設立された知識検定です。

日々増え続けるIT技術やビジネスのトレンド用語を正しく理解し、確かな知識として確立するために2018年7月に創設されました。

DX検定の実施団体

DX検定の実施団体は「一般社団法人 日本イノベーション融合学会」です。

2014年4月に任意団体として設立され、2022年1月に一般社団法人化、200名の会員と学生会員、13の法人会員とその他後援団体で構成される組織です。

設立の目的として、同団体のホームページには以下のように記載されています。

グローバル化時代に、変化と競争へ果敢にチャレンジする創造的なイノベーティブ人財を多方面から結集し、相互のコラボレーションに基づき異分野間の融合領域で新たなイノベーションを創出させること

出典:一般社団法人 日本イノベーション融合学会ホームページ

各分野の優秀な人材の積極的な交流を図り、相互に影響しあうことによってイノベーションを創出させることを目指しています。

DX検定試験の受験要綱

ここで、DX検定試験の受験要綱を整理しておきましょう。

項目 内容
名称 DX検定™(日本イノベーション融合学会*ITBT(R)検定)
受験資格 制限なし
概要 IT先端技術トレンド(IT)とビジネストレンド(BT)の知識検定
試験概要 試験時間:60分
試験内容:知識問題(多肢選択式 120問)
実施方法:Web受験(自宅・会社のPC・タブレットで受験)
実施時期 年2回 (1月・7月)
受験料 6600円(税込)
申し込み方法 公式Webサイトより申し込み
https://www.nextet.net/kentei/test/application.html
※個人・法人で申し込み可

※2024年5月29日時点の情報
参考:『DX検定2024年パンフレット』一般社団法人日本イノベーション融合学会 2024年3月1日

DX検定の出題範囲

DX検定で出題されるのは、ビジネストレンド、先端IT技術トレンド2つの分野の知識です。それぞれの分野は、検定委員会による定期的な検討が実施され、毎回、最新項目が出題されます。

出題範囲は、ビジネストレンド、先端IT技術トレンドそれぞれの「シラバス」として公開されています。

※シラバス
一般的には大学における「授業計画」のことで、授業の目的や到達目標、授業内容・方法などが統一した書式で示されたもの。

ビジネストレンドのシラバス

ビジネストレンドに関するシラバスは以下のように示されています。

【区分 ビジネス】

大分類 中分類
A.次世代ビジネストレンド A1.社会イノベーション
A2.科学技術イノベーション
B.戦略・理論
(経営革新としてのIT)
B1.ビジネスイノベーション
B2.理論・方法論
C.業務
(仕組みとしてのIT)
C1.プロセス・イノベーション
D.商品
(商品としてのIT)
D1.プロダクト・イノベーション
E.サービス
(サービスとしてのIT)
E1.ビジネスモデル・イノベーション
F.IT機器
(道具としてのIT)
F1.IT機器・サービスのイノベーション

出典:『DX検定シラバス2023』一般社団法人日本イノベーション融合学会 2023年9月28日

それぞれの項目に小分類が設けられ、内容の説明と知識項目(代表的な用語例)が示されています。

先端IT技術のシラバス

先端IT技術に関するシラバスは以下のように示されています。

【区分 技術】

G.ロボットとスマートマシーン G1.ロボットとロボット技術
G2.スマートマシーン
H.AIとソフトウェア H1.AI
H2.ソフトウェア
I.IoTとハードウェア I1.IoT
I2.ハードウェア
J.ビッグデータとデータサイエンス J1.ビッグデータ
J2.データサイエンス
K.クラウドとIT開発/運用 K1.クラウド・コンピューティング
K2.IT開発/運用
L.サイバーセキュリティとネットワーク L1.サイバーセキュリティ
L2.ネットワーク

出典:『DX検定シラバス2023』一般社団法人日本イノベーション融合学会 2023年9月28日

それぞれの項目に小分類が設けられ、内容の説明と知識項目(代表的な用語例)が示されています。

DX検定の認定レベル

DX検定を受験すると、結果は検定ホームページで発表されます。得点に応じて3段階のレベルに認定され、それぞれのレベルに応じて認定証とオープンバッジが交付されます。

オープンバッジは、世界標準規格に準拠したデジタル証明書であり、ブロックチェーン技術を使用しているため偽造や改ざんが困難なものになっています。手続きをすることで名刺やプロフィールへの掲載が可能になり、DX時代のデジタル証明書として活用できます。

参考:『「DX検定™」シリーズ レベル認定者へのオープンバッジ発行開始』検定事務局:株式会社ネクストエデュケーションシンク ニュースリリース 2022年5月12日

DX検定は3段階の認定レベルがある

DX検定の認定レベルは3段階あり、一度認定されると有効期限は2年間となります。

検定試験のスコアに応じて認定されるレベルは以下の通りです。

スコア(1000点満点) 認定レベル
800点以上 DXプロフェッショナル レベル
(DXの全体像をデザインしリードするレベル)
700点以上 DXエキスパート レベル
(データ解析・AI・IoT・システムデザインなど、個別の業務をリードするレベル)
600点以上 DXスタンダード レベル
(システムの実装・運営などを現場で担当するレベル)

出典:『DX検定ホームページ』一般社団法人 日本イノベーション融合学会

認定レベルとIPAのDX人材像定義の役割との相関

3段階あるDX検定の認定レベルですが、日本イノベーション融合学会では、社内のDX人材育成の目標としての活用を推奨しています。

多くの会社が目標として活用できるように、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の定義する「DX推進人材像」の各役割との相関関係を示し、必要な目標レベルを提示しています。

IPAの定義によるDX推進人材像 DX検定目標スコアレベル
人材の呼称例 役割
プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む) 850以上
(CDOは900以上)
ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材 800以上
アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 800以上
データサイエンティスト DXやデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材 750以上
UXデザイナー DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 700以上
エンジニア/プログラマ 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築を担う人材 650以上

出典:『第12回「DX検定」検定結果と検定概要について』一般社団法人 日本イノベーション融合学会 2024年2月

各レベルの難易度

ここでは各認定レベルの合格率を確認していきましょう。2018年の検定開始から直近の第12回までの各レベルの認定者の割合は以下の通りです。

認定クラス 認定者割合
DXプロフェッショナル レベル(800以上) 6.1%
DXエキスパート レベル(700~799) 10.1%
DXスタンダード レベル(600~699) 18.2%
未達 65.6%

出典:『「DX検定」検定結果と検定概要について(累計データ)』一般社団法人 日本イノベーション融合学会 2024年2月

DXスタンダードレベル以上の到達率が34.4%と、かなり高難易度の検定であることが分かります。最高レベルのDXプロフェッショナルレベルにいたっては、これまでで6.1%の受験者しか到達しておらず、認定されればDXのスペシャリストとして認識されることは間違いありません。

DX検定の出題形式とサンプル問題

DX検定は高難易度の検定であるため、事前に入念な学習を行わなければ認定を受けることは難しいでしょう。出題形式は記述問題ではなく多肢選択形式ではありますが、60分で120問と設問数が多く解答にスピードが求められます。

過去問題は現在のところ公式ホームページでの公開はありません。問題のサンプルが掲載されているため引用して紹介します。

問:ブロックチェーンの記述として、最適なものを選びなさい。

  1. ブロックチェーンは、「オープンな分散型の元帳」であり、2者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録ができ、 暗号通貨「ビットコイン」に特化した技術である
  2. ブロックチェーンは、「オープンな集中型の元帳」であり、2者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録ができ、 改ざん困難な記録の方式として通貨以外への応用もある
  3. ブロックチェーンは、「オープンな分散型の元帳」であり、2者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録ができる
  4. ブロックチェーンは、「オープンな集中型の元帳」であり、2者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録ができ、 暗号通貨「ビットコイン」に特化した技術である

解答

正解:
3.ブロックチェーンは、「オープンな分散型の元帳」であり、2者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録ができる

出典:『DX検定ホームページ』一般社団法人 日本イノベーション融合学会

DX検定合格に向けた勉強方法

DX検定のホームページには、検定受験に向けた効果的な勉強方法が記載されています。日進月歩で新しい技術が開発されるDX分野の検定であるため、問題は定期的に更新されていきます。常に最新の情報を感度よく捉えておくことも求められるでしょう。

最新のシラバスを参照し、記載されている内容を網羅的に学ぶと効果的な対策となります。

DX用語の理解は必須

DX検定では、シラバスに出てくるDX用語を網羅的に理解しておくことが必要です。なぜならDXプロジェクトにおいて、DX関連用語は会話のなかで頻出するものであり、理解できなければ全く仕事にならないからです。さらにデジタルの分野では日常では使用しない専門用語が多く、また新しい技術が開発されるたびに新しい用語が生まれます。

DX検定は、これらDX用語への理解度を測る検定であり、対策を続けることで用語に対する理解を深めていけます。分からない用語は地道に調べ、人に説明できるレベルの知識にまで高めていきましょう。

DX検定推薦図書で勉強する

DX検定ホームページでは、検定合格に向けた学習に役立つ参考書籍を紹介しています。シラバスと合わせて、こうした書籍を活用し勉強すれば、レベル認定の合格率もアップするでしょう。

DXを初めて学ぶ人や、初回の受験を目指す人向けの書籍を4冊、学びを深めたい人やレベル認定を目指す人向けに7冊の書籍を紹介しています。

検定準拠eラーニング教材「DXstudy」を活用する

検定準拠のeラーニング教材を使用すれば、先端IT技術のトレンドと最新のビジネストレンドを効率よく学べます。両分野から厳選した必須用語の理解度の向上が期待できる教材です。

検定対策だけでなく、新入社員教育や社員のIT・ビジネスリテラシー教育に必要な用語学習にも使えます。また、SEや営業担当者など実務を担当している人材に対する、先端技術項目の学習強化ツールとしても使用可能です。

3ヶ月の利用期間で約20時間の標準学習コンテンツが提供され、300に及ぶ最新のDX用語の習得を目指します。検定とeラーニングの同時申し込みで割引が入るセット購入も可能です。

参考:『DXリテラシー育成・認定パック(DX検定+eラーニング2024)』検定事務局:株式会社ネクストエデュケーションシンク

企業としてDX検定取得を推奨するメリット

DX検定事務局では、企業が施策としてDX検定の受験に取り組む際に、どのような効果を期待しているかアンケート調査を行っています。

「DX検定の結果はどのように使えると思いますか」の問いに対して、多かった解答は以下の3つです。

  • 社員のDXへの興味のきっかけに(75%)
  • 社内のDX人材育成の入口に(58%)
  • 社員のDX知識の把握・状況確認に(46%)

出典:『DX検定ホームページ 企業での活用方法』一般社団法人 日本イノベーション融合学会

やはり、DX検定を受験することで社員のDXに対する意識の向上や、学習のきっかけ作りとしての効果を期待しているようです。実際に会社を挙げての取り組みとして、検定受験を行った企業のインタビューからは、様々なメリットが垣間見られます。

従業員のDX推進に対する関心が高まる

会社としてDX検定の受験に取り組むことで、従業員のDX推進に対する意識・関心が高まることが期待できます。eラーニング教材等を用いて勉強を進めるなかで、これまで不明確であったDX関連用語の意味が分かるにつれ、DXの必要性を強く認識するように意識が変化してきます。

検定で高スコアをマークするには、最新のIT・ビジネストレンドにもアンテナを張っておかなくてはなりません。そのため、受検する社員はDX関連ニュースや話題に対して敏感になり、積極的に情報収集するように姿勢が変わっていくことが期待できます。

DXを学ぶ文化が醸成される

社員にDX検定の受験を推奨したり、レベル認定をミッションとして課した企業では、従業員の自発的な学びが促されました。多くの社員が受験しレベル認定を目指すなかで、勉強方法に対する気づきや、効果的な検定対策に関する情報共有が自発的に行われるようになります。

すでにレベル認定を受けた人材が、これから受験する従業員に対し勉強会を開催するなど、自発的にDXを学ぶ雰囲気や風土が醸成されていくでしょう。

ビジネストレンドへの敏感さが養われる

DX検定受験の準備を進めていけば、これまで理解が薄かったDX関連用語の意味が分かるようになります。用語の理解度が深まるにつれ、これまで「分からないから」という理由で興味や関心が湧かなかった、先端技術やビジネストレンドのトピックスにも関心を持つようになるのです。

DX検定をきっかけに先端技術やビジネストレンドへの敏感さが養われ、顧客との商談における会話にも役立てられます。

 

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DX人材の育成は自社の現状を知ることから

会社の施策として従業員にDX検定の受験を推奨したり、レベル認定をミッションとして課すことで、全社的なDX推進の気運を高めることにつながります。ただ、こうした取り組みは、やみくもに行うだけでは思うような効果は得られません。

まずは、自社の人材と組織の現状を把握することが必要になってきます。そのためには、高精度のアセスメントを実施することが確実な方法です。自社の現状を把握し、自社に見合ったDX人材育成の施策を講じることで、さらに育成がしやすい環境を構築できるでしょう。

自社の人材を登用し、DX人材に育成するノウハウを知りたい方は、DX人材育成の方法を大公開|育成の課題・メリット・手法を徹底解説!の記事も合わせてご参照ください。

まとめ

DX人材の育成は急務でありながら、思うように進まないことにジレンマを抱える企業は多いのではないでしょうか。DXが進まない原因は、従業員のDXに対する意識や関心が向上しないことが挙げられます。このことは、DX推進において解決すべき大きな課題です。

DXに対して関心が薄くなるのは「よく分からない」という、心理的なハードルがあるからに他なりません。そのハードルを取り払うためには、DXに対し学びを深め、知識を蓄積することが必要です。

会社を挙げてDX検定のような認定資格に取り組むことは、個々の従業員のDXに対する理解を深め、意識・関心を向上させるきっかけになります。DX人材育成の施策のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。