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【DXで再注目】データドリブン経営とは?事例から学ぶ課題と構築する要素

DX時代において、10年以上前から使用されている「データドリブン」という言葉が再び注目されています。デジタルの活用が前提になるDX時代では、分析したデータを適切にビジネスに活用することが求められるからです。本記事では、データドリブンの重要性や仕組み、注意事項などを詳しく解説します。

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データドリブン経営とは

以下では、DX時代に重要視されているデータドリブン経営の概要と、日本企業におけるデータ活用の現状 について解説します。

データドリブン経営とは

データドリブン経営という言葉に明確に定義はありませんが、本記事において、データドリブン経営とはデータを蓄積・解析して経営戦略などの意思決定を行い、業績の向上を図る経営手法のことと定義します。

デジタル化によって情報量が膨大となった現代では、多様化・複雑化した消費者行動に柔軟に対応するためにビッグデータを用いた需要予測を行うなど、会社全体としてデータ活用を前提として経営が求められます。

日本企業におけるデータ活用の現状

デジタル化の進展に伴い、データを活用したデータドリブン経営への転換が急務となっています。しかしながら、ガートナージャパンが2021年6月に行なった「日本におけるデータ利活用の実情」に関する調査の結果では、データを活用したビジネスの成果が「十分に得ている」または「ある程度得ている」とした回答の割合は、2018年以降あまり変わっていないとのことです。同調査でデータ活用の現状を尋ねたところ、60%以上はデータに対する課題意識があり、20%は組織全体の課題(経営課題)として認識していることがわかっています。

この結果から、データ活用に関して意識は高いもののビジネス成果には結びついていない現状が見て取れます。

本調査ではビジネス成果獲得に貢献した要因や取り組みを選択式で3つ尋ねており、成功要因1位は「活用できるデータの種類・量・品質」で59%となりました。2位にも「データ分析のスキル」41%、4位「統合データ分析基盤」、など、データ活用に関する項目が上位を獲得しています。

このように、成功要因としてデータ活用の貢献度が高いとされている一方で、その成果の阻害要因も選択式で尋ねており、1位「関連スキルや人員の不足」、2位「組織全体のデータ・リテラシー不足」と、データ活用できる人材・スキルが追い付いていないことも明らかになりました。

この結果から、ビジネス成果獲得に繋がるのはデータの質と量だと認識しているが、そのデータを扱うスキルがまだ不足していることが見て取れます。

出典:『日本におけるデータ利活用の実情』 ガートナー 2021年6月

データドリブン経営のメリット

データドリブン経営には、以下3つのメリットがあります。

リアルタイムに状況が把握できスピードが上がる

データドリブン経営へ転換すると、リアルタイムにデータに基づいた判断ができます。今まではデータを取得し共有するまでに数日~数週間かかっていたようなデータでも今の技術を使えば数秒で綺麗な状態で見えるようになってきました。

例えばBtoBビジネスにおいては、SFAツールを使うことで現時点の会社の売上予実や高確度案件の見込みなどがリアルタイムにわかります。それによりスピードのある意思決定が実現できます。

客観的で根拠のある意思決定ができる

データドリブン経営では、主観や定性的な判断がなくなり、スムーズな意思決定につながります。

従来の企業文化では、勘・経験・度胸の「KKD経営」となってしまっている企業も多かったですが、説得力に欠け、「あの人が言っているから正しそう」と本質的でない意思決定になる傾向があったため、周囲の納得を得るのが難しいという課題がありました。一方で、データドリブン経営では、主張を裏付けるデータや数値を用いた意思決定ができ、周りもその意思決定に納得しやすいメリットがあります。

新たな気づきが得られる

データドリブン経営では、今まで思いつかなかった、もしくは知らなかったことに気づけるようになります。今まで重要視していなかった指標が実は重要だったことに気づきKPIを変更したり、戦略を変更したりすることもあるでしょう。今まで気づかなかった顧客ニーズや課題に気づき経営方針に反映させるべきことも出てくるかもしれません。

データドリブン経営で陥りがちな課題

デードリブン経営に転換すると、先述したようなさまざまなメリットを得られます。しかし、データドリブン経営への取り組みだけでは思うような成果は得られません。以下では、データドリブン経営で陥りがちな課題を4つ紹介します。

経営がコミットしない

データドリブン経営を成功へと導くためには、経営者および経営陣のコミットメントが重要です。今までデータ活用があまりされていなかった会社で急に方針転換をして現場社員に丸投げしてしまうと、部署間で軋轢(あつれき)が発生したりデータドリブン経営を反対する声が高まったりする恐れがあります。

そのため、まずはトップがデータドリブン経営について正しく理解し、ビジョンや経営方針、重要性を社員に発信し、社内に浸透させることが大切です。それでも現場だけだとスピードが遅くなることがあるので、経営が介入してドラスティックに推進することが求められる場面もあるでしょう。

ツール導入先行で進めてしまう

目的がはっきりしないままツールを導入してしまうとうまく活用できず、社員にも浸透せず、結果として成果につながらない可能性があります。抱える顧客や課題、ビジネス手法などは会社によって異なるため、ツール導入前には「なぜこのツールを導入するのか」「このツールを活用してどんな課題を解説したいのか」などを明確にしましょう。

今あるデータの活用から考えてしまう

コスト削減や時間の短縮などで、「今あるデータで何とかできないか」と考えてしまうのは危険です。なんとなくスタートを切ってしまうと成果が出ないことに加え、業務効率も落ちてしまいます。また、成果が出たとしても正しい測定を行えないでしょう。

そのため、目標や目的、課題、仮説をしっかり持って必要なツールやデータなどの環境を揃えていくことが大切です。

データのサイロ化

データのサイロ化とは、社内データの保管先が分散しており、システム間・部門間のデータ連携が行われない状態です。サイロ化している場合、データ連携がされていれば得られたはずの示唆が得られなかったり、管理コストが膨大になっていたりと非常に勿体無い状況と言えます。

データがサイロ化せずシステム間・部門間で綺麗にデータが連動し、各部署が一定の権限で自由に分析したり施策に活用できる場合、業務の効率化・自動化、サービスの品質向上、コストダウンなど大きなメリットが得られます。

データドリブン経営を構築する要素

データドリブン経営を実現するにあたって、どのような思想や人材、ツールが必要なのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。

データを扱う組織文化

データドリブン経営を成功させるためには、企業文化全体を変えることが重要です。経営やリーダーがいくら優秀で推進していこうとしても文化のせいで失敗に終わるケースがあります。

企業文化を構成する要素としてはビジョンや習慣、人材、マネジメント方法、オフィスや場所、歴史(創業背景や吸収合併、成功した事業や大きな失敗など)など多岐にわたります。

企業がまだ小さいフェーズや、DX推進の機運が立ち上がり始めたとき、ワンマン経営の場合などは経営層などのリーダーの強烈なコミットで前進しますが、大きい会社で長期的にデータドリブン経営を根付かせるためには組織文化の変革も欠かせません。

例えば、データ活用することのメリットをよく理解してもらい、データ活用やスキルを評価制度に組み込むことで社員が自らデータ活用を推進するようになるかもしれません。

データを扱える人材

先ほどの「日本におけるデータ利活用の実情」に関する調査で、ビジネス成果獲得の阻害要因に「スキルや人員の不足(58%)」と「データ・リテラシーの不足(58%)」とあったとおり、データドリブン経営を取り入れるにあたって、データを扱える人材は不可欠です。

データドリブン経営では、データを実際のビジネスに落とし込むことが重要です。そのため、データ分析やデータ処理に関する知識だけではなく、マーケティングの知識や論理的思考力、統計学の知識などを持っている人材や、仮説思想を用いたデータを基にPDCAを回せる人材、関係各署を巻き込みながら推進していく力のある人材がいると安心でしょう。

データを扱う職種としては「データサイエンティスト」が近年注目されています。データサイエンティストとは統計学や最新の技術などを用いてデータを分析し有益な示唆やビジネス課題の解決策を導き出す職種のことです。

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データを取得・蓄積・分析する環境

データを解析するためにはまず、データを適切な形で取得して蓄積できるシステムが必要です。データの取得・蓄積には主に「データレイク(ローデータを保存)」→「データウェアハハウス(データを時系列や目的別に整理)」→「利用部門や用途に応じて必要なものだけを抽出したデータセット」という順番で整理します。

データを取得・蓄積ができたら次は分析をします。データ取得・蓄積するシステムに分析機能までついている場合もあれば、BIツールなどのように分析やビジュアライズに特化したものもあります。

これらができるツールの例としては下記のようなものがあります。

 

Azure Synapse Analytics

データ統合・データ整理・分析ができるツールです。Microsoftのツールを使っている企業は扱いやすいでしょう。

 

Amazon Redshift

SQLを使用してデータウェアハウス、運用データベース、データレイクなどを分析します。AWSが設計したハードウェアと機械学習を利用できるツール。AWSを利用している企業は導入を検討してみましょう。

データを分析するツール

蓄積したデータを分析するためのツールも不可欠です。よく使用されているツールには、以下のようなものがあります。

  • BI:社内に蓄積しているデータを分析・見える化するツール。
  • MA:マーケティング活動をサポートするためのツール。 顧客情報の取得・蓄積・管理のほか、見込み顧客を育成するための施策などを自動化・効率化することが可能。
  • SFA:営業活動全般を効率化できるツール。主に案件管理や顧客管理などの効率化・自動化ができる。
  • CRM:顧客管理を行うツール。顧客の基本情報や購買・クレーム履歴などを管理できたり、購入単価やポイント使用率などが分析できたりする。

ツールにはさまざまな種類のものがあるため、用途に合ったものを選びましょう。

データドリブン経営の進め方

データドリブン経営の流れについて、詳しく見ていきましょう。

データ活用の目的・ロードマップを策定

まずは、データドリブンの組織文化の構築やツール導入などの軸となるデータ活用の目的を明確にしましょう。「経営判断にどのようなデータが必要なのか」「どのようなデータが影響を及ぼすのか」を精査して必要なデータを定義し、ロードマップに落とし込みます。

DXで重要なデータの活用方法とポイントを解説!データを活用する職種やデータ一覧も紹介

データを活用する人材のアサイン・チームの構築

次に、データを活用する人材のアサインとチームを構成し、データ分析を行います。データ分析についての知識ある人材が社内にいない場合は、人材育成にも注力しましょう。

成功事例を社内で共有・展開する

データドリブン経営に対する意識を高めるためにも、成功事例を積極的に展開・共有しましょう。成功の秘訣を紐解いてより具体的に伝えていくことで、社内にもノウハウが溜まっていきます。

データドリブンな意識を全社に定着させる

データドリブンの重要性や成功事例を繰り返し伝え、徐々にデータドリブンなマインドを全社に定着させましょう。データデブリン経営を全社に定着させると、自社の経営状況を客観的なデータとして可視化でき、現状の課題や解決すべき問題を具体的な数値として把握できます。

それによって、社員一人ひとりの役割も明確になり、組織全体の成長促進につながるでしょう。

データドリブン経営の実現事例

以下では、データドリブン経営の実現事例を3つ紹介します。

JTB

JTBはデータドリブン経営を推進するにあたり、その中心核となる「データサイエンスセントラル」を立ち上げました。この組織は統合データ基盤と顧客分析、マーケティングアクションの3つのチームを統合したもので、CVR45%増の事例を生み出しているとのことです。JTBは基盤となる組織を作り、事業をデータドリブンに変革した代表的な企業と言えるでしょう。

出典:「JTBが挑むデータドリブン戦略 立ち上げから運用まで一覧」MarkeZine(マーケジン) 出典:「Web担当者Forum 記事:CVR45%増の事例も! JTBのDMPを用いたデータドリブン成功の秘訣」2019年6月27日

ユニバーサルスタジオジャパン

ユニバーサルスタジオジャパンは、データドリブンの社内浸透に成功した企業です。担当の柿丸繁氏は「2014年に私が入社した頃は、良い意味でとても堅実でレガシーなマーケティングスタイルで成功を収めていた。その反面、デジタルだとか、データドリブン型のマーケティングを社内に浸透させるために非常に苦労した」と語っています。

まずは幹部陣と徹底したヒアリングを行い、各部署の決裁権者にデータドリブンの重要性やメリットを訴求し続けたことが功をなし、データドリブンの実現に至っています。

出典:『USJ柿丸氏が語る、データドリブンマーケティングで必要なコト「経営層を巻き込む力」「やりきる覚悟」 | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2018 in 大阪』 Web担当者Forum 2018年12月4日

三菱地所リアルエステートサービス

三菱地所リアルエステートサービスは、2019年にデジタル戦略部が立ち上って以降、既存ツールの見直しや新しいツールの導入を行いました。データ分析とAIを活用した新たなビジネス形態も構想し、CRM・SFAとSalesforce、Pardot(現:Account Engagement)の活用で取り扱い物件数は1.5倍に増加、Web経由での商談獲得数も倍増したということです。

出典:「三菱地所リアルエステートサービス」 セールスフォース・ジャパン 2020年6月

まとめ

データドリブン経営とは、データを蓄積・解析して経営戦略などの意思決定を行い、業績の向上を図ることです。新たにデータドリブンに取り組む場合は、社内の理解やデータ分析ができる人材の確保、目的に合ったツール導入が必要であるため、まずはデータ活用の目的を明確にして、ロードマップを策定するところから始めましょう。