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DXとAIの関係性をわかりやすく解説!DXをAI活用によりさらに加速する方法

近頃「DX」という言葉をよく耳にするようになりました。DXと合わせて注目されるのが「AI(人工知能)」の活用ですが、「DX=AI活用」ではありません。AIの活用はDXを成しえるための手段の一つです。「DX」と「AI」の関係性を正しく理解できれば、DXをスピーディーかつ効率的に進めることができます。

本記事ではDXとAIの関係性や、DXを成し遂げるためにAIをどのように活用していくのかについて事例も交えて解説します。

企業のDX推進担当者や新規事業担当者はぜひご参考にしてみてください。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、英語では「Digital Transformation」と書きます。なぜ「DT」と略すのではなく「DX」になるのかというと、これは英語圏において「Trans」が「X」と略されるためです。

DXの定義

DXは、2004年にエリック・ストルターマン氏が提唱した概念だとされています。エリック・ストルターマン氏はDXについて 「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しています。デジタル技術が進むことは、日常生活に影響を与えるものだと捉えられています。

またDXは、ビジネスに限定した意味合いで使われることもあります。2010年代にスイスのIMDビジネススクールのマイケル・ウェイド教授らは著書『DX実行戦略』の中で、「(DXとは)デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義しています。

出典:『Information Technology and The Good Life』2004年

経済産業省が定義するDX

経済産業省が公開した「デジタルガバナンス・コード2.0」の中で以下のようにDXを定義づけました。

【経済産業省レポートによるDXの定義】

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

この定義によるとDXとは「単純なAI化やデジタル化ではなく、AIなどのデジタル技術を活用し、企業のビジネスを根本から変革させる」と捉えられます。このレポートのなかで、「DXが実現できないことで2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と言及されていることから、日本でもDXを推進する動きが加速しました。

出典:『デジタルガバナンス・コード2.0』経済産業省2022年9月

出典: 『DXデジタルトランスフォーメーションレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』経済産業省 平成 30 年9月7日

AI(人工知能)とは

「AI」とは、「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。

AIの定義

一般的に、AIは「人間のような知能を持ったコンピューター」などといわれており、明確な定義を持っていません。そのため、国内では企業や研究者それぞれが、AIの定義を定めているのが現状です。

総務省では「『知性』や『知能』自体の定義が無いことから、人工的な知能を定義することもまた困難である」と言及しながら、「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術」と、AIを定義付けています。

出典:『情報通信白書|AIに関する基本的な仕組み』総務省 令和元年

AIでできること

AIは、大量のデータから特徴や規則を見出し、その特徴や規則をもとに特定のタスクを実行することができます。

「機械学習(マシンラーニング)」とは、AIの一つであり、与えられた膨大なデータをコンピューターが学習し、ルールやパターンを学習し、特定のタスクを実行する技術です。その際、学習結果に影響する特徴(特徴量)を人間が定義するのが機械学習になります。機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つにわけられます。

機械学習でできることとして、

  • 教師なし学習を用いたクラスタリング
  • 教師あり学習を用いた電子メールのスパム判定
  • 強化学習を用いた強いゲームの作成(囲碁・将棋など)

などがあります。

機械学習の手法の一つとしてディープラーニングがあります。人間の脳の神経細胞を模した学習方法から発展した技術です。ディープラーニングはコンピューターが特徴量を判断します。ディープラーニングを活用することで、従来の機械学習よりも高精度な判断が行えるようになります。ただし、機械学習に比べてディープラーニングが優れた機能というわけではなく、扱う課題によって向き不向きがあります。

機械学習について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ディープラーニングでできることとして

  • 自動運転技術・・・物体検出や距離の検出、運転中に起こる様々な事象への対応。
  • 音声合成・・・特定の人物と同じ声・話し方で音声を作成。
  • 食品の取り扱い・・・柔らかい食べ物を掴んだり、料理を美味しそうに盛り付けたりする。

などがあります。

ディープラーニングについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

DXとAIの関係性

DXとAIには、「AI=DX推進のための手段の一つ」という関係性が成り立ちます。

DXとAIの定義がそれぞれ下記の通りですので、AIとはDXの定義にある「デジタル技術」にあたります。

DXとは

デジタル技術を活用し、企業のビジネスを根本から変革させること

AIとは

人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術

DXとAIの関係性についてもう少し深掘りしてみましょう。

DXとAIの関係性とは

AIはDXを実現するためのデジタル技術の一つです。DXを実現するためにはIoTや5G、クラウド、ドローンなど、さまざまな最先端のデジタル技術を活用しなければいけません。AIもこのような最先端技術の一つです。他の技術と組み合わせて活用することで、DXを大きく進めることができます。

特に、AIはDXにおいて人間では対応できない膨大なデータの分析や処理を行う役割を担っています。IoTデバイスや5G回線、クラウドサーバーなどを通して集められたビッグデータをAIが分析することで、企業はビジネスを成功させるヒントを得て、新しいサービスや価値を展開させていくことができます。

AIはDXを実現する重要な要素の一つ

AIがDXを実現する重要な要素の一つとする理由には次のようにいくつかあります。

ビッグデータの高速処理が可能

AIを活用すると、人間では処理しきれない膨大なデータを分析し、行動の結果を予測することが可能です。分析対象となるデータは過去の蓄積だけでなく、現在の情報まで含みます。近年、企業のデータ活用に関連する動きが活発になるにつれて企業の保有するデータは量・種類ともに膨大になっています。そのため、人の手では処理できなくなりつつあります。しかし、AIを利用すれば膨大なデータの高精度な認識・分析が可能になるため、企業は有用な情報を得て新しいビジネスを展開することができます。

顧客への新しい価値の提供

AIを活用した精度の高い分析は、顧客ニーズや利便性を追求することで、顧客への新しい価値提供につなげることができます。例えば現在のスマートフォンに搭載されている顔認証などはセキュリティーをより強化するという新しい価値提供に繋がっています。通販サイトのレコメンド機能はAIによりユーザーに最適な商品をお勧めし、購買体験を向上させます。このように今まではできなかった高度な処理や追加機能が顧客に新たな価値を提供しているのです。

他社の参入を防ぐ

データの蓄積には時間と手間がかかるため、新規参入者がデータの収集量において既存業者に勝つことは困難です。既存業者がAIを活用してビッグデータを解析しサービスの付加価値を上げることは参入障壁になります。また、AIを高度に活用できる人材も市場では希少価値が高く参入障壁の一つと言えるでしょう。自社にAIを活用できるリソースがあるのであれば積極的にAIを活用したDXを推進することをおすすめします。

AIを活用したDX推進で重要なポイント

AIを活用したDXの推進を成功させるためには、どのようなことを重視していくべきなのでしょうか。ここからは重要になるポイントを説明していきます。

戦略・ロードマップを引く

DXを推進していく上で最も重要なのは、「目標を明確化すること」です。AIを導入しただけで満足していては、DXを進めたことにはなりません。ビジネスモデルに合わせてDX後の姿を具体的に決めた上で、AI導入の目的や導入によってやりたいことを経営層から担当者までが共有しておくことが大切です。

データを取得・保有・管理する

AI活用に欠かせないのが「データ」です。データが蓄積されていない状態ならば、まずデータを取得することから計画しましょう。

AIが実行するタスクによって必要なデータは異なりますが、認識や予測の精度を向上させるには、「データの質を上げる」ことが重要になります。AIに活用するデータはAIが分析しやすい形にデータが整備されている必要があります。必要に応じて保有しているデータの加工や修正なども必要になってくるでしょう。

例えば、工場など生産現場のIoTセンサーから得られたデータからは、異常値が取り除かれていないので精度が低い場合が多いです。しかし、AIは人間と違い、異常値もそのまま学習してしまいます。異常値の原因を探し、不要なデータを取り除くことで、学習データの品質を高めなければいけません。

また、データは、必要な時に必要な分だけ活用できるようにすることが重要です。どのデータのどの部分をどういう形で使えるようにするか、どのデータのアクセス権をどの部署に付与するか、なども考えて設計しましょう。

データ活用について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

人材の採用・育成

AIを活用してDXを進める上では、AIを適切に扱うことができるだけでなく、ビジネスにどう活かすかを考えることができる人材が重要です。外部から中途採用したり、新卒で採用したり、社内の人材を育成したり、社外のパートナーと仕事をするなどいくつか方法があります。重要なのは”AIが使える人材”だけでなく、”AIをビジネスに活かす人材”や、”新しい取り組みを推進できる人材”も重要である点です。組織に合った最適な組織・人材設計をしましょう。

DX人材育成について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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DXにAIを活用する際に注意すべきポイント

DXにAIを活用していくには、セキュリティー対策などいくつか注意すべきポイントがあります。

セキュリティー対策

AIにより正確な分析をしてもらうためには、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータ群が必要です。もちろんそこには、顧客情報などの機密情報が大量に集まることもあります。セキュリティー対策が不十分だと、サイバー攻撃などによって大量の機密データが一気に盗まれる恐れもあるでしょう。

AIを活用する際はセキュリティー対策も十分に検討・実装して推進していきましょう。

PoC倒れにならない

DX推進のためのAI活用のプロジェクトの難関といわれるのが、「PoC(ピーオーシー/ポック)」です。PoCとは、「Proof of Concept」の略で、「概念実証」という意味を持ちます。AI開発では必ず意図した通りの結果が得られるかはわからないため、事前に検証の段階を設けることが一般的で、PoCはこれにあたります。しかし、「PoC疲れ」「PoC死」のような言葉が生まれるほど、PoCの段階でAI実用化を断念してしまうことも少なくありません。というのも、PoCでは従来のシステム開発とは異なる進め方が求められるためです。

PoCでは事前のゴール設定はもちろんのこと、データの収集方法などプロジェクトの前提となる部分をきちんと関係者間で合意しておくことが必要です。同時に、AIが必ずしも想定通りに結果を出すとは限らないことから、トライ&エラーを繰り返しながら検証を進めるアジャイル型の開発が適しています。

時にはAIが求める精度に達しないこともありますが、そのような場合には人との協働の中でカバーすることはできないか検討するなど、様々な点において柔軟な思考が求められます。仕様を決めたら後は粛々と開発が進むウォーターフォール型のプロジェクトとは大きく違うと理解することが重要です。

 AIを活用したDXの事例

ここからは、AIを活用したDXの成功事例を2つご紹介していきます。

画像認識の事例

ユニフォームのレンタルや生産、販売を行っているユニメイトでは、AIを活用して画像から3Dモデルを作成し、サイズを予測するシステム「AI×R Tailor(エアテイラー)」を開発。身長や体重といった基本情報と背面、側面の写真があれば、適正な採寸が可能になりました。採寸ミスによる返品・交換がなくなることで生産性が向上し、さらに廃棄物が減ったことで環境への配慮にもつながっています。

参考:『エアテイラー』 株式会社ユニメイト

 

最適化の事例

ベネッセホールディングスは、AIを搭載した「進研ゼミ」専用の学習タブレット端末を提供しています。

ベネッセではこれまで、約200万会員の学習履歴データの蓄積と、小中高生指導ノウハウを50年以上培ってきました。その膨大なデータを活用したAIを学習タブレット端末に搭載することで、個別に最適化された学習を提供。学習時間や目標レベルなどをダブレットに設定しておくことで、AIが生徒の実力に合わせたトレーニング問題を自動で調整し、出題してくれるという仕組みです。これまでに、300万台以上の学習タブレットが全国の小中学生に提供されています。

出典:『デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021』経済産業省・株式会社東京証券取引所 2021年6月7日

AIを活用したDXの今後

DX推進は、今後もAI技術が進むとともに、加速・発展していくことが予想されます。ここからは、今後展開が予想される技術をご紹介します。

メタバース

メタバースは、「3DCGの技術で仮想空間を構築した上でアバターを用いて、人々がコミュニケーションをとりながら一緒に作業をしたり、プレゼンテーションを行ったり様々な交流や経済活動をする空間」です。現在よく見られるのは、eスポーツや音楽ライブ、展示会などに活用されているケースです。現実世界と同じようなスピードでデータが処理されるため裏では様々なAIが使われています。また、メタバースのように世界そのものがデジタルでできた空間では今まで以上に取得できるデータの量が増え、それにより様々な用途でAIが活用されサービスの進化がされていくでしょう。

日本では、KADOKAWAのイベント「ダ・ヴィンチストア Next Stage “未来の書店”」がよい例でしょう。ところざわサクラタウンにある「ダ・ヴィンチストア」をメタバースで再現し、仮想空間をアバターで歩きながら約5000点の在庫から本を探すことができます。また、AIを使った「全冊検索」や書籍の内容をAIが解析し、利用者との対話と表情分析によって、最適な本を提案してくれます。もちろん、仮想空間で選んだ本は実際に購入することが可能です。

参考:『VR・メタバース・AIでDX化された”未来の書店”を無料で体験できる「ダ・ヴィンチストア Next Stage “未来の書店”」角川武蔵野ミュージアム

スマートシティ

スマートシティとは、先進的技術の活用により都市の機能やサービスを効率化・高度化することで、便利で快適な街づくりを行う取組みです。

国土交通省では、スマートシティを以下のように定義しています。
都市の抱える諸課題に対して、ICTなどの新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営など)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区

出典:『都市交通調査・都市計画調査』国土交通省

スマートシティの取り組みの一つに、NTTドコモの「AI運行バス®」があります。AI運行バスはいつでも行きたい場所まで乗ることができる、オンデマンド型公共交通システムです。「乗降リクエスト」が入ると、AIがリアルタイムで複数の車両から効果的な配車・ルートを算出、最適な乗り合わせを判断し、効率的な移動を実現します。また、移動需要のある場所、時間、乗車人数をAIが予測し、それに応じた走行ルートや配車数の決定が可能です。AI運行バスが広く普及すれば、効率的な移動だけでなく、自動車交通量増加問題の解決にもつながっていくでしょう。

参考: 『AI運行バス®』NTTドコモ

まとめ

DXとAIの関係性や、AIを活用したDXの重要性、事例についてご紹介しました。

今後DX推進にはAIの導入が欠かせないものとなるでしょう。しかし、導入することだけがゴールではありません。ビジネスモデルに合わせた目的に沿ってAIを活用することで、DXを実現することができるのです。AIを活用したDXの事例はますます増えているため、自社で検討する前に先行事例をよく調査し、自社のDX推進もスムーズに進められるようにしましょう。