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金融DXとは?課題とポイントを最新事例と共に紹介!

金融DXとは、金融業界の企業においてデジタル技術を活用して業務を効率化・自動化し、最終的にはデジタルやAIを活用した新規ビジネスの創出といったビジネスモデル自体を変革を成し遂げ、競争上の優位性を確立することを指します。

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金融業界では、デジタル技術の拡大によるユーザーの行動変容や、他業界の企業による金融事業への参入など、今までにない変化が起こっています。

また、日本の金融業界は他の産業と比べても昔からシステム化が進んでいる業界と言えますが、それも一つの要因として現在多くの課題を抱えている状況です。

そうした背景からデジタルを活用した変革「DX」の推進が急務となっています。そこで今回は、金融業界における現状と課題点を明確にし、推進するべきDXの方向性や先行事例を紹介します。

最後までご覧になれば、金融業界の現状を把握でき、自社にとって適切な改革案を見つけられるでしょう。

DXとは

DXとは、「Digital Transformation」の略語のことで、直訳すると「デジタルによる変容」を意味します。DXはデジタル技術を用いた業務効率化だけにとどまらず、その先にあるビジネスモデルの変革を目指します。

なお、経済産業省が発表した『デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)』によると、DXは以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

出典:「デジタルガバナンス・コード2.0」  経済産業省 2022年9⽉13⽇

金融業界では、DX推進にあたってさまざまな課題を抱えています。具体的な課題点について、詳しく解説していきます。

金融業界における現状と課題

金融機関における現状や課題は以下の通りです。

高度なシステムがDXの足かせに

1980年代に巨大システムが多くの金融機関で誕生しました。当時は最新のシステムによって業務の効率化を促していましたが、システムが大規模化・複雑化したためメンテナンスや改修に多大のコストがかかるばかりか、新しい変化への対応が難しくなっておりレガシーシステム化が進んでいます。

金融業界においては、顧客のお金や資産情報を含めた個人情報を管理する関係上、顧客からの信用や強固なセキュリティの基にあるシステムが最重要です。複雑化している既存システムを改修することは、金融業界においては大きなリスクに当たるため、慎重にならざるを得ません。

減少する融資先

減少する融資先も、金融業界の課題の一つです。企業数自体が減少傾向にあり、資金需要も減り続けています。

参考:総務省「平成11年、13年、16年、18年事業所・企業統計調査」、「平成21年、26年経済センサス‐基礎調査」、総務省・経済産業省「平成24年、28年、令和3年経済センサス‐活動調査」を基にエクサウィザーズでグラフ作成

出典:「地域金融の課題と競争のあり方」金融仲介の改善に向けた検討会議 平成30年4月11日

地域金融機関では今までの担当エリアだけだと案件の確保が難しくなり、対象エリアの拡大も進んだことで今まで競合しなかった他の金融機関とも競合してくるようになりました。それに伴い、低金利競争がより加速化し、融資によって利益を作ることが困難になりつつあります

参考:「地域金融の課題と競争のあり方」 金融仲介の改善に向けた検討会議  平成30年4月11日

参入企業の増加によるレッドオーシャン化

参入企業の増加によるレッドオーシャン化も深刻です。PayPayや楽天証券、auじぶん銀行などに代表される、今まで金融サービスを取り扱っていなかったIT企業などが、デジタル技術を駆使して金融ビジネスに参入しています。

さらに、環境変化のスピードに合わせ、顧客ニーズが日々とてつもないスピードで変化しています。その中で選ばれるサービスになるためには、サービスの体験価値を高めるなどの方法で競争優位性を担保し、改善を繰り返していかなければなりません。

暗号通貨の台頭

近年はビットコインやイーサリアムなど、暗号通貨(仮想通貨)が注目を浴びています。暗号通貨とは、インターネット上で取引される実物の存在しない電子的な通貨のことです。

銀行を介さない送金などにより、本来銀行間送金などで得られたはずの手数料が減少しています。暗号通貨は今後さらに主流になると予想されているため、一部銀行はブロックチェーン技術の検討を進めています。

人口構造の変化

金融資産を多く保有している層の高齢化が進んでいます。その状況下で継続して金融業界が利益を上げ続けるためには、将来のメイン顧客となる現在資産を形成している30代~40代を顧客にしていく必要があります。

出典:「DX/ニューノーマル時代における証券業界の将来展望」 PwC Japanグループ 2021年9月16日 

【三菱HCキャピタル様のDX人材育成事例】10年後に向けたDX人材の養成。
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しかし、若い世代の資産の使い方や投資先が多様化していることや、デジタル化により情報を自身で取得しやすくなったことで従来の営業マンの提供価値が下がっているなどの理由から、提供価値を今まで以上に高める必要も出てきています。

金融業界が実施するべきDX

前述したように、金融業界では課題点が多く存在し、今まで以上のデジタルの活用は避けられません。そのためDXの推進や、その前段階であるデジタイゼーション・デジタライゼーションの推進が急務です。

実施すべきDX推進の施策案は、以下の通りです。

クラウド導入による業務刷新とコスト削減

DX推進の第一歩として、クラウド導入による業務刷新とコスト削減があげられます。これまでオンプレミス型で運用していたサーバーやシステム環境をクラウドに置き換えることで、初期費用を抑えたり、ランニングコスト(電気代や運用者の人件費など)がクラウドサービスの利用料に変わったり(時には安くなったり)してコスト削減に繋がります。

クラウド導入が進んだ背景として

  • MUFGがクラウドを導入したこと
  • 金融情報システムセンター(FISC)がクラウド活用を前提にした安全対策基準を発表したこと
  • セキュリティの強化が進んだこと

などが理由で、多くの企業がクラウドを積極的に導入しています。

【金融機関のクラウド導入状況】

業態

2016年度

2017年度

増減

全体(証券・保険他を含む)

37.7%

44.3%

+6.6%ポイント

都銀、信託

100.0%

100.0%

地銀

76.2%

81.8%

+5.6%ポイント

第二地銀

56.8%

71.1%

+14.3%ポイント

ネット専業他

70.0%

82.0%

+12.0%ポイント

信用金庫

15.3%

20.6%

+5.3%ポイント

信用組合

14.6%

13.1%

-1.5%ポイント

 

出典:「金融分野におけるクラウドサービス」総務省

金融機関のクラウド導入状況を見ると多くの業態でクラウド活用が進んでいることがわかります。

以下は金融機関ごとのクラウド導入の動きの例です。各社細かい違いはあるものの、AIサービスの利用など部分的にクラウドを導入していることがわかります。AIサービスの活用増加に伴いこの動きはどんどん加速していくことでしょう。

分類

分類

金融機関名

概要

銀行

ネット銀行

株式会社ソニー銀行

2013年末に銀行業務のうち帳票管理やリスク管理、管理会計といった周辺系システムおよび開発環境の一部、そして一般社内業務システムをパブリッククラウド上に構築することを決定し、以降段階的に導入。

銀行

地方銀行

株式会社北國銀行

2018年夏を目途に、パブリッククラウドと勘定系システムとを連携し、セキュリティを確保しつつ、多様化する顧客ニーズに合わせた迅速なサービス拡充を実現することを目指す。

銀行

都市銀行

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

2017年9月に発表したデジタルトランスフォーメーション戦略の中でパブリッククラウドを優先的に活用することを発表。AI サービスの利用等、クラウドサービスの選択肢拡大を視野に入れている。

保険

第一生命保険株式会社

スマートフォンやウェアラブル端末などのデータから AI 等を活用することで、顧客の健康リスクを評価・分析し、最適なアドバイスを提供する「健康増進サービス」のシステム基盤として、パブリッククラウドを採用した。

証券

マネックス証券株式会社

基幹業務を扱うシステムに関してはオンプレミスだが、それ以外に関してはほとんどをパブリッククラウド上に移行済、または移行することを検討中である。

 

出典:『ICT によるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究』株式会社三菱総合研究所 2018年3月  

AIなどの最新技術導入による定型業務の効率化

金融業界は定型業務も多い業界です。AIを導入することで定型業務の効率化や、正確かつ迅速なデータ分析を可能にするなど、さまざまなメリットが見込めます。

例えば、

  • 顧客の過去の借入状況や延滞履歴など、属性データを学習して融資審査を自動化&標準化
  • 人の手で行ってきた業界・企業の動向分析をAIで実施しスピード向上
  • データを活用して顧客のニーズを掴み成約率を向上
  • チャットボット導入により、顧客問い合わせの対応を自動化
  • OCRによって書類をデータ化することで管理や分析を簡素化

などがあげられます。

IoTを活用した新たな投資基準

IoTを活用すれば、これまでにない新たな投資基準を設定可能です。IoTは「Internet of Things」の略語であり、「モノのインターネット」を意味します。

保険業界では、下記のようにIoTを活用したサービスが誕生しています。

  • 自動車のセンサーから得られた情報をもとに、運転の傾向を把握して保険料率を決める
  • 契約者の生活習慣や健康診断をポイント化し、保険料を増減させる仕組み

生体認証の活用

生体認証技術もDXでの導入が進んでいる技術です。主に本人確認が重要なサービス・業界で広がっており金融業界でも導入が広がっています。生体認証で利用される情報には、顔・指紋・静脈・声紋・色彩・掌紋などがあり、最近は特に顔認証の導入が進んでいます。

具体的な活用事例としては、本人確認書類に添付されている顔写真を、その場で撮影した顔写真と照らし合わせて完了させるものがあり、第三者のなりすましや画像データの悪用を防げます。

オープンAPIを活用した利便性向上

オープンAPIの活用によってさまざまなサービスを連携させ、顧客の利便性を向上させることも可能です。APIとはあるアプリケーションのデータや機能を他のアプリケーションで呼び出し利用するための仕組みをさします。

金融業界においては、下記のような場面でAPI連携が使われています。

  • 他アプリのID情報を連携してユーザー認証を行う
  • マネーフォワードなどの金融系プラットフォームアプリと銀行の残高を連携する

多種多様なサービスと連携させることで、銀行のみが提供してきたサービスを他企業も提供できるようになり、新しいサービスの発案やユーザーの体験価値向上にもつながります。

暗号資産のビジネス活用

暗号資産の主要銘柄は需要が大きく、徐々に信用性を高めていることから、今後はさらに市場が拡大すると予想されています。今は法整備が進んでいないなど課題も多いですが、いつでも進出できるよう準備を進めておくことが大切です。

新規事業・イノベーションの創出

DXは業務の効率化にとどまらず、前述したようなデジタル技術を活用し、最終的にはビジネスモデルの変革を目指します。変革を実現すれば、競争上の優位性を確立し、会社としての価値をさらに高められるでしょう

デジタル技術の導入と並行して新規事業の立案を進め、イノベーションの創出を目指しましょう。

 

競争優位を確立した企業が取り組むDX推進とは?

DXを実施するにあたっては、単に既存業務の効率化をおこなうだけでなく、どのように競合優位性を確立するかという経営観点にもとづいた推進が必要です。
先行してDX推進を成功させた企業は何を取り組んだのか?

年間300件以上のDX推進プロジェクトを支援した実績から、事例やノウハウをまとめた資料をご用意しました。
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  • 単なるAI導入やツール導入ではなく、ビジネスモデルを変革したい
  • 経営の観点でDXを推進したい

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金融DXを進める上での注意点

金融庁がとりまとめた「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」によると、DXを推進し新規事業を立ち上げる上で上手くいかなかった理由として以下の点があげられています。

  • システム的には実現可能であるが、マーケット規模が小さい 
  • 持続的にサービス提供できるような価格設定が難しい
  • 勘定系システムとの連携機能開発の負荷が高い
  • 遵守すべき規制や行内手続きのハードルが高い
  • PoCの段階で特定のベンダーに依存し過ぎたため、今後もそのベンダーに発注し続けなければいけない

これらの課題にあとから気づくのではなく、「事前に事業KPIを定め撤退基準を定めておく」、「PoCはベンダーに依存しないようになるべく内製で行うようにする」などの対策をあらかじめ検討しておくと良いでしょう。

参考:『金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート』2022年6月

金融業界のDX事例

実際にDX推進した事例を5つ紹介します。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

実施内容・成果

株式会社ふくおかフィナンシャルグループは、デジタル技術を活用し、国内初のデジタルバンク「みんなの銀行」をスタートさせ、顧客の銀行体験を変革させました。

みんなの銀行は多くのサービス(支払い、振り込み、ATMによる入出金、デビットカード機能、履歴管理、BOX機能によるお金の整理など)をスマートフォン上で完結させることが可能です。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 従来のシステムや業務プロセスの規約に縛られることなく、スマホ利用が増えた顧客のニーズの変化に対応し、スマホで多くの機能を活用可能としました。

参考:「みんなの銀行」

東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社

実施内容・成果

東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社は、独創性と優位性を持つ「東海東京デジタルワールド」を実現させました。

本サービスでは、ユーザー向けのさまざまなデジタル機能を展開し、その中で取得したデータをAIによるマーケティングにより、デジタル金融のエコシステムを構築しています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 地域金融機関や事業会社、地方自治体と協働しています。
  • AIやブロックチェーン技術などの最新技術をビジネスに活用しています。
  • 地方創生といった社会課題解決に取り組んでいます。

SBIインシュアランスグループ株式会社

実施内容・成果

SBIインシュアランスグループ株式会社は、ダイレクト損保から「AIドリブンカンパニー」へビジネスモデル変革を目指しています。

社内におけるさまざまなデータ活用とAI導入を実施したことで、AIによる保険金の不正請求探知、コールセンターの受電予測、AI活用により業務改善・社内改革を行う人材の育成など、各種AIプロジェクトを進めています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 外部のパートナー企業を介した保険販売において、プロセス全体のDX推進を図ることにより、業務の効率化や強固なエンゲージメントを構築しています。
  • SBIグループが戦略的に投資しているスタートアップのAI技術を積極的に導入・検証し、地域金融機関などの外部にも提供して「拡散」する取組みを推進しています。
  • 専門知識がなくてもツールを使ってAIを活用したデータ分析ができる人材を育成しています。

東京海上ホールディングス株式会社

実施内容・成果

東京海上ホールディングス株式会社は、「保険事業」から「社会課題解決事業」へのトランスフォームを試みています。社会変化や問題起点によってターゲットを定め、AI実装をはじめとしたデジタル技術の活用により新たな価値提供を実現しています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 他業種14社の参画法人によって構成される「防災コンソーシアム(CORE)」を発足しました。
  • 防災4要素の課題抽出や対策研究、新たなビジネスモデルの創出支援などを進めています。
  • 世界46か国に展開する事業プラットフォームを活用し、各国で磨いたソリューション

をグローバル展開することで、新しいビジネスモデルを構築しています。

【経営層インタビュー】データと内外人材によるDXで損保を再定義 東京海上ホールディングス株式会社 常務執行役員 グループデジタル戦略総括 生田目 雅史氏
【経営層インタビュー】データと内外人材によるDXで損保を再定義 東京海上ホールディングス株式会社 常務執行役員 グループデジタル戦略総括 生田目 雅史氏

東京センチュリー株式会社

実施内容・成果

既存ビジネスの深化を推進した東京センチュリー株式会社。これまで培ってきた金融・サービス事業の強みを活かし、サブスクリプションとDX共創モデルを掲げました。

従来までのリース顧客を事業パートナーとして再定義。そして、その共同活動を中心に、事業変革シナリオを実践しています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 同業他社も非競争領域においてはパートナーとする「共同利用システム」を検討しています。

参考:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」経済産業省 2022年6月7日

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響やスマートフォンの普及により、リモートワークや業務の効率化が求められたり、ユーザーの行動変容が激しくなる中、多くの企業がDX推進に注目しています。

金融業界では推進するにあたってさまざまな問題を抱えていますが、DXの前段階であるデジタイゼーションとデジタライゼーションから推進すれば、企業のDX化に一歩近づけるでしょう。

また、金融業界のDXを推進する際は、「クラウド導入による業務刷新とコスト削減」をはじめとし、AI導入やIoT活用など、複数の改革案が考えられます。金融業界のDX推進を目標にしている方は、本記事で紹介したDX推進事例を参考にした上で、改革案の実行を検討してみてください。

参考:『改革・改善のための戦略デザイン金融業DX』著:平木恭一 秀和システム 

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