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製造業におけるDXの課題とポイントを最新事例と共に紹介!

製造業DXとは、製造業の企業においてデジタル技術を活用して工場や製造プロセスの業務を効率化・自動化し、最終的には製品やサービス、ビジネスモデルを変革し競争上の優位性を確立することです。

倉庫管理システム(WMS)を導入したり、AIを活用して熟練技術者の技術を学習させたりする事例が近年増えてきました。

製造業は他の業界に比べて働き手の高齢化や人手不足が進んでいる業界です。デジタライゼーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進がより急務となっています。

DXを推進する上で「DXを推進する課題は?」「必要な技術や導入までのステップが知りたい」「過去のDX成功事例を知りたい」といった疑問や悩みを持つ方も多いでしょう。

本記事では、製造業におけるDXの現状や具体的な導入方法を解説します。本記事で解説する内容をもとに、自社に合ったDXを進めてみてください。

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製造業におけるDXとは

そもそもDXは、「Digital Transformation」の略語であり、デジタル技術を用いたビジネスモデルや社会の変革を意味します。

しかし、一般的に言われる製造業DXは、デジタル技術によって工場の生産性向上、製品の品質向上、効率化や自動化によるコストダウンなどを目的とするデジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)やデジタライゼーション(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)を意味する場合が多いのが現状です。

多くの業界でDXが注目されていますが、特に製造業は昔からのやり方が継続している企業が多いことや、多くの機械を使っており多様なデータが取得できることから、製造業とDXは親和性が高く、積極的に推進すべき概念だと言えるでしょう

製造業DXを取り巻く環境や課題についてじっくり見ていきましょう。

製造業DXの現状と課題

製造業の現状としては、新型コロナウイルス感染症によって環境が著しく変化し、「一時休業」や「残業の抑制・停止」が多くの現場で発生しています。それに加え、少子高齢化の影響や働き手の高齢化もあって人材不足が加速しており、それによる技能伝承の問題も深刻です。さらに、既存システムの老朽化・ブラックボックス化も進んでいるので、課題は山積みです。

人材不足

製造業の深刻な課題の一つとして人材不足があげられます。『2021年版 ものづくり白書』によると 国内の製造業就業者数については、2002年の1,202万人から2020年には1,045万人と、約20年間で157万人減少し、全産業に占める製造業就業者の割合も減少傾向。また、若年就業者数も、2002年の384万人から2020年の259万人へと、約20年間で3割以上(125万人)減少しています。

出典:『2021年版 ものづくり白書』経済産業省 厚生労働省 文部科学省

特に34歳以下の就業者数の減少、割合の下落は2002年以降続いており、高齢化が進んでいることがわかります。

出典:『2021年版 ものづくり白書』経済産業省 厚生労働省 文部科学省

このまま人手不足と高齢化が進めば、働き手がおらず倒産に至る会社が増え、その会社に商品や部品の製造を依頼していた会社にまで影響が及ぶ可能性があります。よって人材を確保するか、生産性を上げることで少ない人数でも業務が回るようにする必要があります。

技能伝承

製造業では、いわゆる職人技と呼ばれるような熟練技能を持つベテラン従業員によって成り立っている企業も多いです。特殊な技能だけでなく、その場の状況に合わせた柔軟な意思決定などもベテラン従業員のなせる業と言えるでしょう。そういった技能や経験を持つ人材を短期間で育成することは難しく、育成できないまま従業員が退職する年齢になり技能が失われていくことは日本にとっての損失と言えます。

既存設備の老朽化

製造業では生産設備の老朽化も大きな課題です。

経済産業省製造産業局がとりまとめた『製造業を巡る動向と今後の課題』によると金属工作機械や鋳造装置の約50%が設備導入から15年以上経過、二次金属加工機械においては導入してから20年以上経過している設備が50%を超えているというデータもあります。

こうした昔からある設備が残っているままだと、

  • 設備の安定的な稼働が困難・メンテナンスに多くのコストがかる
  • 現状の業務・技術に即していない状態で生産性の悪い業務になってしまう
  • 人の手で作業する業務が継続し、属人化する

などの課題が発生しビジネス拡大の足かせになります。

参考:『製造業を巡る動向と今後の課題』経済産業省製造産業局

製造業でDXを推進する4つのメリット

製造業DXを推進するメリットは以下の4つが挙げられます。

メリット①技術・業務の属人化防止

技術が属人的になりやすい製造業ですが、デジタル技術を導入すれば多くの作業が標準化・自動化されるため、属人化の防止につながります。それに伴い、人手不足の解消や、育成コストの削減にも期待でき、技術自体の消失も防ぐことが可能です。

メリット②効率化・自動化による様々なメリット

デジタル技術やロボット、AIの導入により下記のような様々な効率化・自動化が行われます。

  • 在庫管理やメンテナンスなどの自動化
  • 人がやっていた作業をロボットに代替
  • AIによる品質検査や需要予測
  • 遠隔操作による離れた土地での業務

これにより以下のような多くのメリットが得られます。

  • 人員コストの削減
  • 残業の解消や従業員満足度の向上
  • 原価の低下による利益増加や提供価格の低下による競争優位性の確立
  • 従業員の工数をよりクリエイティブなことに集中させる

効率化や自動化は目的ではなく、空いた工数をどう使うかも含めて検討を進めましょう。

メリット③AI導入による精度向上

AIの導入によって今まで人が行っていた作業の精度が上がり様々なメリットがあります。

  • 品質検査をAIがすることで精度が向上
  • 需要予測の精度があがり無駄な発注・製造が減る
  • 画像解析により製造現場の異常を正確に検知できる

単なるコスト削減ではなく品質向上の観点でもAI導入は有効です。

メリット④提供サービスの変容による顧客満足度の向上

サービスの品質向上や製作期間の短縮といった既存提供価値のさらなる向上や、AIを活用することで今までできなかったことができるようになりサービスそのものの提供価値が変わることが考えられます。

製造業DXで活用される技術やユースケース

製造業DXで活用される技術として下記のような技術があげられます。DXを実施する上で重要な技術なので、推進予定の方は必ず押さえておきましょう。

ケース①倉庫管理システム(WMS)

倉庫管理システム(WMS)とは、倉庫内の入出庫や在庫状況、帳票の発行、返品管理などの運営全般をサポートするシステムのことです。倉庫内の在庫情報などを一元管理することで誤出荷を止めることができたり、倉庫内の探しものをする時間を短縮したり、入出庫業務全体をスピーディー行うことが可能になります。ピッキングロボットと連携すれば、在庫管理の業務がより効率化し、生産をスムーズに進めることができます。新人やヘルプの人でも一定の品質で業務を行うことも可能になります。

ケース②OCRを活用した文書管理システム

OCRを活用した文書管理システムを用いれば、紙の帳票などのデータをデジタル化できるため、検索性が向上したり、入出庫業務がより楽になったり、帳票データの管理保存も容易になります。

ケース③VR・AR

VRとARも製造業での活用が期待されています。

例えばARは保守点検作業などにおいて、熟練者が遠隔にいても現場の担当者をサポートしながら業務を行うことができるといった利点があります。

VRはバーチャル空間上に現場を再現し検証を行うことで事前にリスク検知ができるなど様々なシミュレーションを行うことが可能です。

ケース④AIにより熟練技術を再現・伝承

AIに熟練技術者の技術やノウハウを学習させ、後継者がいない場合でも技術の消失を防いだり、若手の育成に活用したりすることが可能です。

参考:AIで熟練技能の可視化・継承を支援する「exaBase スキルトランスファー」提供開始

【AI事例】日本製鉄の重機操業におけるAIロボットを使った技能伝承
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ケース⑤画像検査による不良検知

画像認識技術を使い、製造ラインの製品で不良品があれば自動で検知することが可能です。特にディープラーニングの登場でより多くの特徴を容易に学べるようになり、自動監視の精度が飛躍的に向上しました。異常検知には「分類問題」と「良品学習」の2つのアプローチがあります。

「分類問題」アプローチでは各異常の種類まで判定できますが、その分多くのカテゴリごとの学習データを必要とします。このため、稀にしか出現しない異常については気づきにくいという課題があります。

「良品学習」アプローチでは、正常データを活用して分布を定め、分布から外れたものを異常と判断します。そのため異常の種類は判断できませんが、分類問題に比べて稀な異常の検知に強いというメリットがあります。

参考:『画像AIが大きく進化 異常検知で増える選択肢』日経クロステック

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ケース⑥生産数予測

製造業では需要予測から生産のプロセスが始まります。「製品を作りすぎて無駄な在庫を持ってしまう。」「製品作成数が少なすぎて売上の機会損失が発生してしまう。」というリスクをなるべくなくしたいというのが生産管理部門のニーズとしてあるでしょう。今までは人が経験や勘で属人的な生産数予測をしていましたが、AIを活用した生産数予測技術を使えばその精度向上が見込まれます。これにより在庫の欠品や余剰を防止したり、適切な人員配置が可能になります。

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製造業で進むDX人材の育成

高齢化や人手不足が進む製造業で、DX人材の育成は喫緊の課題です。DX人材がいないとそもそもDXに投資すべきかの判断も正常にできず、仮にデジタルへの投資ができても、デジタルを扱える人材がいなければ成果も最大化されず失敗に終わります。

また製造現場のDXを進めようとするとハードウェアのこともわかっている人がソフトウェアエンジニアリングをした方が良い場合も多く、外部からの採用だけでなく社内のハードウェアエンジニアにソフトウェアエンジニアリングを学ぶことを推奨する企業もあります。

しかし、「人手不足を原因で育成に手が回らない」「DX人材を育成できる人材が社内にいない」といった、人材育成の課題を抱えている企業も多いでしょう。

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OFF-JTによる人材育成

2021年版 ものづくり白書によると、デジタル技術を上手く活用している企業は、未活用の企業に比べて、業務外での時間をうまく活用していることが特徴的です。下図で赤く囲われた項目はいずれもデジタル技術活用企業がそうでない企業に対して大きく差をつけています。現場で実務を通じて学ばせるOJTではなく、それ以外の時間での学習を重視している姿勢がうかがえます。

出典:『2021年版 ものづくり白書』経済産業省 厚生労働省 文部科学省

例えば、eラーニングなどを使えば誰でも動画で簡単に学ぶことができ、教える側の工数も最低限で済みます。何を学ぶか、どのように作業を行うかなどがすでに明文化されていれば従業員は明確なゴールに対して進むことができます。こうした労働者の主体的な学びを後押しする取り組みや環境構築を積極的に行うことが製造現場の人材育成をする上では重要です。

研修によるDX人材育成

製造業のDX人材育成の方法には、外部の研修施設を利用した研修も有効です。例えばポリテクカレッジ(職業能力開発大学校・職業能力開発短期大学校のこと)では学生だけでなく事業主向けに社会人の研修も実施しているので社内での育成が難しい場合は利用することも検討しましょう。ポリテクカレッジに設置されている生産性向上人材育成支援センターでは、個別企業の課題に合わせたオーダーメイド型の訓練コースも設けており、より自社に合った実践的な経験を積んでもらうことも可能です。

参考:「ポリテクカレッジ|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」

補助金の活用

厚生労働省は「人材開発支援助成金」という制度を設けており 雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を計画に沿って実施したり、教育訓練休暇制度を適用した事業主等に対して助成する制度です。 とあります。

  • 熟練技能の承継
  • 若年労働者の育成
  • 労働生産性の向上に直結

といった場合の訓練には助成率が高くなったり、2022年9月には助成金の利用しやすさを目的に提出書類が省略されたりするなど厚生労働省も製造業の人材育成を推奨しているのでぜひ利用しましょう。

参考:「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇等付与コース、特別育成訓練コース、人への投資促進コース)」厚生労働省

DX人材とは?DX人材の定義を4象限で解説。育成・採用方法と職種も紹介
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製造業でのDX推進事例

製造業でのDX推進事例を5つ紹介します。事例を詳しく知ることで、製造業DXの成功イメージがより明確になり自社のDX推進の一助になれば幸いです。

株式会社リコー 

実施内容・成果

株式会社リコーは、自社トナー工場へのAI導入によって、省力化や高品質化、従業員の満足度向上を実現しました。

長い工程の品質管理・制御、膨大な向上データの確認・監視などに課題を抱えていましたが、AI導入によってこれらの課題が解決に近づき、総生産量が5%Upするという結果を生みました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 自社トナー工場へのAI導入ノウハウを自社の他製品分野へ展開し、リコーのお客様へもサービスとして展開しました。こうした成功事例の横展開は参考にするといいでしょう。

参考:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」経済産業省 株式会社東京証券取引所 独立行政法人情報処理推進機構

キリンホールディングス株式会社

実施内容・成果

キリンホールディングス株式会社は、AI活用によってビール醸造計画の自動化システムを構築しました。

各工場の熟練者が1回につき最長6.5時間程度かけていた「濾過計画業務」を最短55分に短縮し、キリンビール全9工場に導入したことにより、「仕込・酵母計画」「濾過計画」合計で年間4,000時間以上の削減を見込んでいます。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 熟練者の経験に基づいた複雑な作業のため、各工場の熟練者へヒアリングを実施し様々な制約を洗い出しました。

参考:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」経済産業省 株式会社東京証券取引所 独立行政法人情報処理推進機構

トヨタ自動車株式会社

実施内容・成果

トヨタ自動車株式会社は、デジタル技術を活用して「工場IoT」を提供しています。

このツールでは、3DCADデータなどの既存デジタル化データを一元管理でき、現場や部署間の情報共有を容易にします。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 社員が困らないように、組織的な教育支援や、BI・AIなどの便利ツールの提供を実施しました。
  • 「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」というトヨタ生産方式の考え方に則り、データの収集や蓄積にもムダなデジタル化をせず、費用対効果を意識しています。

参考:『製造業DX取組事例集』 経済産業省

富士通株式会社

実施内容・成果

富士通株式会社が開発した「FTCP(設計開発プラットフォーム)」は、製品開発におけるプロセス変革のためのプラットフォームです。

3D技術を使うことで試作品を作らずにデザインや干渉具合の検証が可能になります。 これにより手戻り減少や品質向上、納期短縮、リアルタイムでのノウハウの共有などを実現しました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 「FTCP」上のツール活用を促進するために、活用に関するルールの整備、製品開発フローに3Dシミュレーションを組み込むなど環境を整備しました。
  • 開発期間を短縮するためにAIやCADなどは一部オープンソースを利用しました。

参考:『製造業DX取組事例集』 経済産業省

まとめ

今回は、製造業の現状や課題、製造業DXの人材育成や活用される技術、推進事例を詳しく解説しました。

各業界でDXが注目されていますが、製造業ではDX推進の伸びしろが大きく、特に注目されています。

これから製造業DXを推進していく方は、ぜひ本記事で紹介した推進事例を参考にし、自社に合った推進方法を探してみてください。