会社のDXを推進する上では、その会社に適した手順で進めることが重要です。具体的な手順を明確にせずに進めてしまうと、思い描いた結果を生み出せないため、事前に確認しておく必要があります。
今回は、DXの進め方を6つの手順で解説し、その上で並行して実施すべき項目を紹介します。最後まで読むことで、DXを実現させるまでの手順を明確に理解でき、自社に合った適切な方法でDXを推進できるようになるでしょう。
DXを進める前に理解すべきこと
DXを進めるにあたっては、推進担当者をはじめ幹部社員や経営層にいたるまで、DXの定義や目的、目指すべきゴールを共通認識としなくてはなりません。
ここでは、DX推進にあたり理解しておくべきことを解説します。
DXの定義
そもそもDXは、「Digital Transformation」の略語であり、単なる業務改善の取り組みではなく、「デジタル技術を用いたビジネスやサービスの変革」と捉えられています。
経済産業省がまとめたデジタルガバナンス・コード2.0では、DXとは
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
と定義されています。
出典:『デジタル・ガバナンスコード2.0』経済産業省 2022年9月13日
DXを進める上での障害
企業のDXは決して容易なプロジェクトではありません。実現までに時間もかかりますし、そのためには社内外を含む多くの関係者を巻き込みながら推進していく必要があります。経営層のコミット、現場社員の巻き込み、環境の整備、最新技術の活用、顧客体験価値を向上させる本質的なビジネスモデルなど検討すべき項目は多岐にわたります。
DXを進める前に意識すべきこと
多くの企業がDXに取り組むなかで、成功事例や失敗事例もここ数年で溜まってきており、DXの実現に必要な事項やDX実現の可能性を高める手順も確立されつつあります。そういった他社事例の研究やDX実現までのステップ、意識すべきポイントを事前に知ることで最短距離でDXを実現できるようにしていきましょう。
DXの定義や事例については、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ、合わせてお読み下さい。
DXを支える主要技術
DXを成功に導くためには、それを支えるデジタル技術の理解と活用も重要です。以下に、DX推進で鍵となる主要技術とその役割をまとめます。
技術 | DXにおける役割・メリット |
---|---|
クラウド | 柔軟なITインフラを提供し、リモートワーク環境の整備や迅速なシステム拡張を可能にします。オンプレミスより初期投資を抑えつつスケーラビリティや可用性を確保でき、DX推進の基盤となります。 |
データ活用 | 膨大な業務データや顧客データを統合・分析し、事実に基づく戦略立案や意思決定を実現します。ビッグデータ解析やBIツールの導入によって、隠れたパターンを発見し新たなビジネス洞察を得ることができます。 |
AI(人工知能) | 大量のデータ解析や将来予測の自動化によって、業務の効率化・高度化を図り、新たな付加価値を創出する技術です。例えばチャットボットによる顧客対応の自動化や需要予測による在庫最適化など、DXを加速させる様々な活用例があります。 |
セキュリティ | デジタル化による新たなリスクからデータやシステムを保護します。DX推進時には同時に強固なセキュリティ体制の構築が必要であり、外部との接点拡大に伴い増大するサイバー攻撃リスクに備えなければなりません。 |
上記の技術はDXを支える基盤ですが、導入にあたっては自社の目的に合った技術を選定し、段階的に展開していくことが重要です。単に最新技術を導入するだけでなく、それぞれのビジネス目標に最適な技術か、既存システムとの整合性やセキュリティ要件を満たすかを慎重に見極めましょう。
技術導入の進め方と選定のポイント
新たな技術の導入は小さく始めて徐々に拡大するのが得策です。まずは限定的な範囲でパイロットプロジェクト(PoC:概念実証)を実施し、効果を検証してから本格展開する流れを築きます。アジャイル手法を取り入れて小規模な実験と改善を繰り返すことで、変化に柔軟に対応しながら着実にDXを進められます。例えば、新しいツールを一部署で試験運用し、得られたフィードバックを基に全社展開へ計画修正するといった段階的アプローチが有効です。
また、技術選定の際のポイントとして以下を意識しましょう。
- 経営戦略との整合性:導入する技術が自社の事業戦略・DXビジョンに合致しているか評価します。「その技術導入によって何を実現したいのか」を明確にし、ビジネスゴールに適した技術を選定します
- 既存環境との適合:レガシーシステムとの連携が可能か、既存業務への影響や移行コストは許容範囲かを検討します。現在のシステム資産を活かしつつ拡張できる技術であれば、DX移行期の混乱を最小化できます。
- セキュリティとガバナンス:クラウド利用時のデータ保護やアクセス制御、AI活用時の説明責任やコンプライアンスなど、安全性・信頼性の観点で問題のない技術か確認します。特にDXでは扱うデータ量が増えるため、セキュリティ基準を満たすソリューション選びが不可欠です。
- 運用体制とスキル:自社のITスキルや運用リソースで十分に扱える技術もポイントです。高度すぎる技術は現場が使いこなせず形骸化する恐れがあるため、必要に応じてベンダー支援体制や社外パートナーの活用も検討します。将来的な拡張性やサポート体制(コミュニティの成熟度やベンダーの信頼性)も考慮しましょう。
技術の導入目的と適合性を吟味し、スモールスタートで効果を確認しながら拡大していけば、DX推進の成功率を高められるでしょう。
取り組み事例から見るDX推進のメリット
DX推進は事業の収益構造を変革させるだけでなく、業務の効率化や標準化などさまざまなメリットがあります。DX推進の気運を高めるには、これらのメリットを経営層から現場の社員にいたるまで、くまなく実感してもらうことが欠かせません。
経済産業省が中小企業向けに発表している「デジタルガバナンス・コード実践の手引き2.1」には、企業のDX取り組み事例が紹介されています。
その事例をもとに、DX推進のメリットを紐解いてみましょう。
業績の拡大が見込める
三重県伊勢市に本店を構える「有限会社ゑびす屋」は、創業150年を超える老舗の飲食店です。同社はDXの取り組みを始め、7年間で売上高5倍、利益は50倍と業績を急拡大し「世界一IT化された食堂」と称されるに至っています。
取り組み以前の売上管理は、紙の食券・手書きの記帳・計算はそろばんでなされており、DXとは対極にあるような状況でした。同社はまず地道なデータ収集から着手し、これまでの勘と経験に頼る営業からデータに基づく店舗運営へと変革していきます。
その後、労務管理や経理などのバックオフィス業務を外注やクラウドサービスでまかなうことにより、社長をはじめとした従業員が付加価値の向上や新規ビジネスの検討に専念できる体制を構築しました。
その結果、伊勢産の食材を活用したブランディングや、メニューの高付加価値化による客単価向上、店頭での海産物の販売などにより業績を向上させます。また、それだけにとどまらず、自社向けに開発したデジタルツールを他社に提供する新会社を設立するまでに至りました。
参考:中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き 経済産業省
業務プロセスの見直しが進む
「マツモトプレシジョン株式会社」は、1948年創業の福島県喜多方市に居を構える精密機械部品メーカーです。DXの取り組み以前、同社は従業員規模に応じた収益が上がらず、時間外労働や休日出勤が常態化するものの、十分な給料が払えていないという課題がありました。抜本的な生産性向上を図る必要があると危機感を募らせた社長は、地域のフォーラムに出席し、DX推進の重要性を意識するようになります。
歴史のある企業では、それぞれの部門でノウハウが確立されており、変革を起こすことは容易ではありません。創業70年を超える同社も例外ではなく、業務改革の気運を高めるのに2年程の時間を費やします。粘り強く意識変革に取り組みつつ、業務のデジタル化に向けた資金として、年間の営業利益の15%を捻出しました。
同社が具体的に実施したのは、基幹システムの変更です。しかも、自社の業務に合わせカスタマイズされたものではなく、あえて既製品のシステムを導入します。当然、これまでの業務の進め方をシステムに合わせる必要性が出てきました。しかし、そのことが功を奏し、業務プロセスの見直しが進みます。無理な生産計画や無駄な業務が把握できたことや、また部門間でデータの共有が進むなど、大幅な生産性の向上につながりました。
参考:中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き 経済産業省
業務の属人化・ブラックボックス化の解消が見込める
「株式会社ヒサノ」は、熊本市に居を構える運送業者で、精密機械の輸送・運搬・設置を主な業務としています。事業拡大を目指すにあたり、九州一円を営業範囲とする倉庫業兼運送業への成長を経営ビジョンに掲げました。しかし、そのビジョンを実現するには、運送業の要である配車プロセスに問題があることに気が付きます。
これまでは「横便箋」という紙の台帳を手書きして、トラックやドライバーの手配をおこなってきましたが、大型案件を受注したときや繁忙期などは、全体の状況を把握できないことによりトラブルも発生していました。しかも、横便箋を用いた配車手配はベテラン配車係のノウハウに頼る部分が多く属人化しており、拠点を拡大するにあたって解決しなければならない課題とも認識されます。
同社は運送業の要である紙の横便箋による配車手配を、クラウド上のシステムに構築することを決断します。クラウドの横便箋システムを導入した結果、社内の稼働状況が一覧で把握できるようになりました。熊本と福岡の2拠点で同じデータを参照するため、トラックやドライバーを融通するなど業務効率化も進みます。なにより、ベテラン配車係のノウハウがシステム上に再現できたことにより、将来の拠点拡大に向けた課題の解決につながっています。
参考:中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き 経済産業省
DXの進め方|具体的な6つの手順
DXの進め方を6つの手順で解説します。実現するまでのステップを明確にすれば、プロジェクトが的確かつスムーズに進行するでしょう。
手順1:現状の調査
まずは現状の調査を始めましょう。現状の調査には3C(市場・競合・自社)・PEST(政治・経済・社会・技術)・SWOT(強み・弱み・脅威・機会)などの、基本的なフレームワークの内容は抑えつつ、特に
- DXに成功/失敗している会社の要因を調査
- 市場(顧客)のニーズやインサイトの深堀
- 自社のリソース(技術・人材・システム・データなど)の整理
の調査は丁寧に行いましょう。
DXに成功/失敗している会社の要因を調査
DXはビジネスの変革に向けて長い期間、全社で取り組む必要がありハードルは高いため、過去に多くの企業のDXが失敗や中途半端に終わっています。他社事例をよく調査し同じ轍を踏まないようにすることが重要です。成功事例も多く出てきたため、最短距離でDXを成功させるためにも成功要因はよく調査しましょう。
市場(顧客)のニーズやインサイトの深堀
ビジネスは顧客ありきです。時代の変化とともに顧客の消費行動やインサイト(ニーズほど顕在化していない、消費者自身も認識できていない欲求)も変わるため顧客の消費行動やインサイトの深掘りは必要不可欠です。アンケートなどのデータやWebのトラッキングデータだけでは全て見えないため
- 実際に顧客と同じ行動をしてみる
- 顧客の行動を細かに観察する
- 実際に顧客にインタビューしてみる
などして顧客の消費行動やインサイトを見極めましょう。
自社のリソース(技術・人材・システム・データなど)の整理
自社のリソースを完全に把握している会社は実は少ないのではないでしょうか。しかし、DXを進める上で、
- 活用できるデータはどういうものがあるのか、何が足りないのか?
- DX人材(デジタル技術が使えるだけではなく、周りを巻き込み推進していける人材)はどのレベルの人が、どのくらい、どこにいるのか?
- どのシステムにどういう状態のデータが溜まっていて、どのシステムと連携しているのか、誰がアクセスできるのか?
といった情報は準備段階として非常に重要です。
手順2:DXに関するビジョン・中期経営計画の策定
現状・課題の整理が完了したら、DXに関するビジョンの策定や、中期経営計画の策定に移ります。「DXを実現して何をしたいのか」を明確にすれば、プロジェクトの進行途中でも軸がブレず、最後まで目的に向かって邁進できます。
反対に、このビジョンや中期経営計画においてDXのゴールが不明確なまま進行させると、想定していない結果を招いたり、DX推進が行き詰まったりします。そのため必ず目標を策定し、ゴールから逆算した進行を心がけましょう。
この手順で役に立つフレームワークとして以下のようなフレームワークが経済産業省の「DXレポート2中間とりまとめ」から出ているので紹介します。
手順3:DXロードマップの策定
ビジョンや中期経営計画を策定した後は、戦略の内容をもう一段階細かく落とし込みましょう。「どこの部署が何をいつまでに」「予算はいくらかけるのか」など、具体的な計画を明確化します。
このDXロードマップによって、今後の進行が大きく左右されるため、慎重に検討する必要があります。また、経営層だけでは判断しきれない部分もあるため、場合によっては現場社員と連携しながら計画を進めましょう。
手順4:DX推進体制の構築
DXロードマップが完成したら、DX推進体制の構築を行います。組織体制・人材配置を検討し、DXを推進しやすい環境・制度を整えましょう。主な推進体制としては、以下の3つが挙げられます。
●IT部門拡張型:従来のIT部門を拡張する方法
既存の情報システム部門などの部署が、既存業務の延長線上でDXを進めていく方法です。デジタルスキルを保有しているメンバーが進めるので、社内のシステムの変更などはスムーズに進むと思われます。しかし、技術者が多くビジネス職のスキルを保有している人が少ないため、ビジネスモデルの変革を目的としたDXまでは難しい可能性があります。
●事業部門拡張型:各部門内にDX推進部門を設立する方法
事業部門がDXを手動し、システム部門がサポートを行いながら進めていく方法です。
現場をよく知っている人が手動するため顧客のインサイトを捉えて企画できるメリットがありますが、事業部門に技術に精通した人材がいないと、デジタル技術の活用をするフェーズで躓く可能性があります。
●専門組織設置型:DX推進を専門で行う部署を設置する方法
DX推進を専門で行う部署を垂直立ち上げする方法です。一気にDXを進めていきたい場合は、経営の直下型組織として優秀な人材をアサインして立ち上げる場合も多いです。現在DXで成功している会社はこの方法でDXを推進しているケースが多いでしょう。しかし、経営とDX推進部署だけが独断で進んでしまい、周りの部署と軋轢が生じて失敗する先行事例もあるため、他部署との連携は丁寧に行っていくことが前提になります。
この3つのなかでは、特に専門組織設置型が主流です。DXの専門部署を立ち上げ、そこに経営層も深く関われば会社のDXがスムーズに進められるでしょう。
とはいえ、企業方針や規模、状況に応じて最適解は異なります。自社の状況を踏まえた上でご選択ください。
DX推進リーダーの役割
DX推進の組織体制を整えるにあたっては、体制の種類に関わらずプロジェクトを統括するリーダーの存在が極めて重要です。専門部署を立ち上げる場合でも各部門で進める場合でも、経営層の強い支持のもとDX推進を牽引できる責任者を明確に任命しましょう。DX推進リーダーは組織横断的な視点でDX戦略を推進し、以下のような役割を担います。
- DX戦略ビジョンの策定と共有: デジタル技術を活用した将来像(DXビジョン)を描き、ロードマップに落とし込んで全社に提示します。全社員が共通の目標を認識できるようにし、DX推進の指針を示すことがリーダーの重要な役割です。
- 統率力・リーダーシップの発揮: 部門横断でプロジェクトを統制し、困難に直面しても最後までやり遂げる強い意志で組織を牽引します。現場と経営層の橋渡し役となり、必要に応じて意思決定を下してDXを前に進めます。
- 最新デジタル技術の調査と導入判断: 常にアンテナを張り、AIやクラウドなど最新のデジタル技術や市場動向を調査・分析して、自社に有用なソリューションかを見極めます。適切な技術選定とタイムリーな導入判断でDXの成果を最大化します。
- ステークホルダーとの協働: 社内外の関係者(各事業部門、ITベンダー、パートナー企業など)との連携体制を構築し、協力を得る役割です。必要なリソース確保や抵抗勢力の調整など、DX推進に関わる様々な利害関係者を巻き込んでプロジェクトを支えます。
- イノベーションと変革の推進: 新しい発想でビジネスモデルや業務プロセスの変革を促します。DX推進リーダー自らが変革の旗振り役となり、社内に革新的な文化を根付かせることで、DXによる継続的な価値創出をリードします。
このようにDX推進リーダーは「ヒト・モノ・カネ・情報」を束ねてDX戦略を遂行する要となる存在です。適任者を選出し、経営層直轄で十分な権限とリソースを与えることで、組織として迅速かつ統合的にDXを進める土台が整います。仮に社内に適切な人材がいない場合でも、外部から専門人材を招へいすることや経営幹部自らが旗振り役を務めることを検討し、強力なリーダーシップのもとでDXを推進できる体制を築きましょう。
手順5:実行
DXを推進できる環境が整ったら、実行に移りましょう。いきなり大規模なDXに取り掛かるのは、莫大な時間がかかり、なおかつコストセンターになりがちです。
他部署の協力・理解を得るためにも、前段階であるデジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)やデジタライゼーション(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)を推進し、業務効率化・生産性向上に寄与する小さな成功を着実に進たり、いきなり全社で実施するのではなく、1つの部署・事業から進めることもおすすめです。
手順6:PDCAを回し続け、ビジネスモデルの変革まで繋げる
DXには多くの時間と多くの人材の巻き込みが重要です。手順5で成功事例ができたら、他の部署や事業に横展開したりより規模を大きくしたりして全社に影響を広げていきましょう。成功例が全社規模で増えることで、会社としてもDXの気運が高まり、この後の最終的なDXのゴールに近づきます。
推進していく途中では、
- 他部署との連携が上手くいかずハレーションが起きる
- 人材の採用や育成が上手くいかない
- システム改修が想定通りに進まない
など、計画通りにいかないことが多々あります。
DXはそう簡単に達成できるわけではありません。継続的にPDCAサイクルを回し、長期的な視点でプロジェクトを遂行しましょう。
DX推進のプロセスと並行して実施すべきこと
DX推進は決められたプロセスを実行することが大切ですが、並行して行うべき項目が複数あります。スムーズに推進したい方は、以下詳細をご確認ください。
DXマインド・文化の醸成
DXを実現するまでには時間がかかり、新しいチャレンジの回数も増えます。社内一丸となりスムーズに進める過程で多くの壁に突き当たります。それらの壁を乗り越えるためには社員のマインドや企業の文化を根本から変える必要があるでしょう。社員に必要なマインドセットは以下のようなものがあります。
- 失敗を恐れず挑戦する
- 何としてもやりきる強い意志
- 変化に抵抗がない
- オープンマインド
- 新しいことを学習し続ける
これらのマインドセットを持ってもらうためにも、経営層の積極的な発信や、環境・制度の変更、一部の既にこうしたマインドを持っている人材から文化を醸成することも有効です。
DXをリードする人材の採用・育成
DXをリードする人材がいない場合は、採用か育成に力を入れましょう。DX人材は簡単に確保できず、貴重であるがゆえ採用市場で奪い合いになります。ある程度のコストは許容したり、アウトソーシングを活用したりするなど、採用の仕方にも工夫しましょう。
また、DXは現業務や商品・顧客への理解が重要であるため、既存社員の育成も必要です。DX人材の育成で大事なポイントはいきなりeラーニングから入らず育成の戦略を立てたり、学習が継続するようにマインドを醸成することです。
既存社員を優秀なDX人材に育て上げるまでには時間がかかります。そのため、DX人材の育成は長期的な視点を持って実施しましょう。
DX人材の育成に成功した企業モデルとは?
DX人材の育成を進めるうえでは、実際にどのような企業が成功しているのか、実例を知ることが大切です。これまで1500社を超える企業様のDX人材育成を支援してきたエクサウィザーズが導き出した成功モデルをご紹介します。無料で資料を配布しているので、ぜひ以下よりご覧ください。
\こんな方におすすめの資料です/
- DX人材育成の型を知りたい
- DX人材が育つ組織について知りたい
- DX人材育成の事例を知りたい
全社的なデジタルリテラシーの向上
デジタルリテラシーとは、デジタル技術に対する理解を深め、適切に扱えるスキルを指します。DX推進には、個々の社員のデジタルリテラシーを高める取り組みが欠かせません。
全社的な取り組みとして、全ての従業員にデジタル技術活用の有用性と意義、正しい活用方法を浸透させましょう。社内研修の実施やeラーニングの導入など、教育機会を設けることにより、全社的なDX推進の気運を高めていくとよいでしょう。
社員一人ひとりのデジタルスキル底上げのために、具体的な教育・スキル向上施策を講じます。例えばDX人材育成を担当する部署(DX推進室など)が中心となり、全社的な教育計画を策定するとよいでしょう。主な施策例を以下に挙げます。
- DX研修プログラムの実施: 社員向けにDXや最新IT技術に関する体系的な研修を提供します。集合研修やオンライン学習(eラーニング)を活用し、DX推進に必要な基礎知識から実践的なスキルまで段階的に習得させます。部署横断のワークショップを開催し、自社の課題をテーマにデジタルソリューションを検討する場を設けるのも有効です。
- 新技術に慣れる実践機会の提供: 単なる座学だけでなく、実務を通じてデジタルスキルを磨ける機会を用意します。例えばRPAやデータ分析ツールを試行導入して現場社員が触れてみる、小規模なDXプロジェクトにメンバーとして参加させる、といったOJT型の施策で「新しい働き方やツールに対応できる柔軟性」を養います。社内ハッカソンやアイデアソンを開催して自発的な技術習得を促すことも一案です。
- リスキリングと人材育成計画の推進: 社員のスキル棚卸し(スキルマッピング)を行い、DXに必要な能力とのギャップを可視化したうえで計画的に育成します。特にIT未経験分野の再教育(リスキリング)にも注力し、文系出身社員を含め幅広い層のデジタルリテラシーを底上げします。同時に、最新スキルを持つ即戦力人材の採用も並行して行い、既存社員のスキルアップと新規人材の登用をバランス良く進めることが肝要です。
「文系社員」をDX人材に導く、リスキリングの取り組みとは?
企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、直面する課題の1つに「DX⼈材の不足」があります。
採用だけでなく、既存社員の育成、リスキリングに取り組む企業も少なくありません。
その中で、文系社員に対し、デジタルスキルやリテラシーをリスキリングしてもらうには、どのような取り組みをすべきなのでしょうか。
本資料では、DX推進に必要な⼈材の定義、具体的な育成プラン、リスキリングについて株式会社PeopleX 代表取締役CEO橘氏との議論の内容を紹介します。
\こんな方におすすめの資料です/
- DX人材育成の進め方のポイントを知りたい
- ビジネスアーキテクトの概要を知りたい
- 「文系社員」のリスキリングを検討している
DXを進める上でよくある失敗パターン7つ
DXの進行プロセスが明確になったところで、DXを進める上でよくある失敗パターンを紹介します。問題なくDXを推進するためにも、以下のポイントを事前にご確認ください。
- 失敗パターン①業務の効率化や生産性の向上をゴールにしてしまう
- 失敗パターン②経営層がコミットしない
- 失敗パターン③DX推進部署だけで取り組んでしまう(社内一丸となってとり組まない)
- 失敗パターン④DXをリードする役に適切な権限・環境を与えない
- 失敗パターン⑤必要人材を集めるために適切な人事制度になっていない
- 失敗パターン⑥必要な予算を確保できていない
- 失敗パターン⑦ツールを導入しただけで満足してしまう
失敗パターン①業務の効率化や生産性の向上をゴールにしてしまう
DXを推進する過程では、業務の効率化や生産性の向上が見込めます。確かにこれらは重要な項目ですが、あくまでDXの前準備に過ぎません。
効率化の後にはビジネスモデルそのものを変革し、顧客への提供価値向上、圧倒的な競争優位性の担保、常に進化し続ける文化・仕組みづくりを目指しましょう。
また、最初はビジネスモデルの変革などを目的にしていても、実行している途中で手段が目的化するということはよくあります。そのためにも、明確なロードマップ策定が重要になります。
失敗パターン②経営層がコミットしない
DXには経営層のコミットメントが重要です。経営層がコミットせずになんとなく戦略を立てて、後は部下に丸投げしてしまうと、真のDXの成功は難しいので注意しましょう。
経営層が積極的にDXを推進することで大きな意思決定や、全社の巻き込み、長期的で本質的なDX推進が可能になります。
失敗パターン③DX推進部署だけで取り組んでしまう(社内一丸となってとり組まない)
DXは大規模かつ複雑なプロジェクトであるため、社内一丸となってとり組まなければなりません。経営層と社員の連携を怠ってしまうと、当初のビジョンと施策が乖離してしまいますし、DX推進部署だけでことを進め他部署との連携を怠ってしまうと無駄が発生したり、軋轢が生じたりして大きな機会損失を生んでしまいます。
DX推進を成功させる、社内を動かす・うまく巻き込むコツとは?
組織的にDXを推進し、事業変革を進めるためには「社内をうまく巻き込んでいく」ことが重要となります。
しかし、思ったように社内の協力を得られず、DXが進まないと悩んでいる担当者は少なくないものです。
本資料では、「DX推進における社内巻き込みの重要性」、「巻き込みを成功させる3つのポイント」など、全社的なDX推進に必要となってくる「社内の巻き込み」にご紹介していますので、ぜひダウンロードしてお役立てください。
\こんな方におすすめの資料です/
- DX推進に他部署の協力が得られない
- 一部のDXではなく全社的なDXを推進したい
失敗パターン④DXをリードする役に適切な権限・環境を与えない
優秀なDX人材には適切な権限や環境を与えなければ、その能力に見合った成果が得られません。例えば、セキュリティ意識を持ちすぎて、DX担当者が必要なデータにアクセスできない(使えない)場合は、DX推進の障害になるためアクセス制限を改めることも検討しましょう。
失敗パターン⑤必要人材を集めるために適切な人事制度になっていない
人事制度も柔軟に変えていかなければDX人材が集まりません。会社の方針によっても異なりますが、ジョブ型人事制度の導入や副業の解禁、人材の育成・研修制度の拡充などを導入し、よりDX人材が働きやすい環境を用意するようにしましょう。受け入れ体制を整えれば、多様な専門人材が社内に参画してくれるようになります。働き方に制約をかけてDX人材が集まらない状況はなるべく避けましょう。
失敗パターン⑥必要な予算を確保できていない
「DXを低予算で成功させたい」という考えは、難しい場合が多いです。そもそもDXは大規模で長期的な取り組みなので、ある程度の予算は必要になってきますし、予算を出し渋ると現場社員の不満も募ります。低予算でできることから試してみるフェーズはあっても良いですが、DXを実現したいのであればどこかのタイミングで一定の予算を確保することに努めましょう。そのためにも経営層に動いてもらうことが重要になります。
失敗パターン⑦ツールを導入しただけで満足してしまう
陥りがちな失敗パターンの最後は、デジタルツールを導入したことでDXが推進したと満足してしまうことです。確かに既存業務の省力化が進むことで、多くの社員はDXの恩恵を実感できるでしょう。
しかし本来は、省力化により空いたリソースを新たな価値創造に振り向けなくては、意味がないのです。デジタル化により競争優位性をもたらす新たなビジネスを構築するという、DX本来の目的を見失ってはなりません。
DXを進める上で導入を検討すると良いツール
ツールの導入により省力化が実現しただけでは、本来の意味でDXが推進したとはいえません。とはいえ、デジタルツールの導入が、DXの足掛かりになることも確かです。
社員の意識をDX推進に向け、デジタル化の気運を高める上では、ツールの導入は適した施策といえます。以下に挙げるような、多くの社員がデジタル化の恩恵を実感できるツールを導入するとよいでしょう。
- グループウェアツール
- 営業支援ツール
- バックオフィス業務支援ツール
グループウェアツール
グループウェアとは、社内のコミュニケーションと情報共有を促進させるITツールを指します。具体的には、スケジュールやファイル・データの共有、社内SNSやデジタル掲示板、チャットなどによるコミュニケーション、稟議承認のワークフローなどの機能を備えています。
社内のコミュニケーション・情報共有が大幅に進めば、社内の風通しも良くなり働きやすい環境が醸成されるでしょう。また、個人が携帯するモバイル端末からアクセスできるため、外出先の空き時間に業務を処理するなど、多くの社員が業務効率化を実感できます。テレワークにも親和性が高く、多様な働き方を望む従業員からは特に支持を得られます。
営業支援ツール
営業支援ツールの導入が営業成績の向上につながれば、営業部門だけでなく経営層の支持も得やすくなります。営業支援ツールには、マーケティングに特化したものや、顧客管理に力を発揮するもの、営業プロセスを可視化・改善するものまでさまざまです。
自社の提供する製品やサービス、マーケットや顧客にマッチしたツールを導入すると良いでしょう。営業に関するデータが蓄積していけば、経験と勘に頼らないノウハウが構築されます。誰もが成果を上げやすい、再現性の高い営業手法が確立できるのです。
バックオフィス業務支援ツール
バックオフィス系の業務こそDXを進めやすく、その恩恵をダイレクトに実感できます。人事・労務管理、経理・会計業務など、細かなデータ処理を自動化できれば、日常業務が大幅に効率化されるでしょう。
ただ、ツール導入にあたって各部署単位で動いていては、全体の整合性がとれなくなる恐れがあります。互換性がなく、それぞれの部門で別のデータを管理するような状況は本末転倒です。
それぞれの部門で発生・処理するデータを集約し、一元的に管理することを視野に入れながら進めなくてはなりません。そのためにも、DXを推進する人材を選任し、全体の調整を図る必要があるのです。
まとめ
会社のDXをスムーズに進めるためには、事前に自社の状況を調査し、手順を明確にしておくことが重要です。改めて具体的な6つのステップは以下の通りです。
- 手順1:現状の調査
- 手順2:DXに関するビジョン・中期経営計画の策定
- 手順3:DXロードマップの策定
- 手順4:DX推進体制の構築
- 手順5:実行
- 手順6:PDCAを回し続け、ビジネスモデルの変革まで繋げる
これらの推進プロセスとは別に、並行して進めるべき「DX人材の育成」「DXマインド・文化の醸成」もしっかり行いましょう。ぜひ本記事の内容を参考にし、自社に合った適切な手順でDXを推進してください。