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【金融AI経営セミナーレポート|前編】AI駆動開発が変える金融システム開発の新常識。レガシーシステムを「ホワイトボックス化」する実践知

  • 福田 政史
    株式会社Exa Frontier Edge 代表取締役 株式会社エクサウィザーズ 執行役員
【金融AI経営セミナーレポート|前編】AI駆動開発が変える金融システム開発の新常識。レガシーシステムを「ホワイトボックス化」する実践知

2026年7月21日、東京・日本橋兜町のKABUTO ONEにて、「金融業界向け AI経営セミナー〜AI戦略と現場実装のリアル〜(主催:エクサウィザーズ)」(以下、本セミナー)が開催されました。

金融業界ではいま、AI活用が実証段階から本格実装のフェーズへ進みつつあります。業務変革、システム開発、営業高度化、人材育成、顧客対応など活用領域が広がる一方で、戦略をどう描き、現場にどう定着させ、成果につなげるかが重要な経営課題となっています。

本セミナーでは、AI活用に積極的に取り組む三井住友フィナンシャルグループ、りそな銀行、商工中金、伊予銀行が登壇。第一部では三井住友フィナンシャルグループとエクサウィザーズの共創型パートナーシップによるAI戦略、第四部では金融3社によるAIロープレ活用のパネルディスカッションが行われ、大盛況のうちに幕を閉じました。

本レポートでは、金融機関におけるAI実装の「現場のリアル」に迫った第二部・第三部の模様を、前編・後編の2回にわたってご紹介します。
前編でお届けするのは、第二部「AI駆動開発が変える金融システム開発の新常識」です。

会場となったKABUTO ONE ホールAの様子
会場となったKABUTO ONE ホールAの様子

【講演】第二部:AI駆動開発が変える金融システム開発の新常識
⚫︎ 登壇者:福田 政史(株式会社Exa Frontier Edge 代表取締役)

第二部では、エクサウィザーズグループでAI駆動開発を担う新会社、Exa Frontier Edge代表の福田が登壇。AI駆動開発の新規事業を切り出す形で2026年4月に設立された同社の知見をもとに、金融システム開発がAIによってどう変わるのか、そしてブラックボックス化したレガシーシステムをいかにAIが扱える状態へと再生し、AI駆動開発へ移行していくのかを、実践に基づいて語りました。

第二部に登壇したExa Frontier Edge 代表取締役 福田

技術進化が早い時代は「実践あるのみ」
効果が実証されたものだけを提案する

冒頭、福田は同社の提供価値を紹介しながら、AI駆動開発への向き合い方を語りました。

「技術の進化が早く、情報が溢れ返っている今は、本当に実践あるのみです。実践する中でこそ、本当に使える情報や仕組みが分かる。我々は自ら先んじて実践し、本当に効果があったものだけをお客様に提案しています」

また、同社のスタンスとして、AI駆動開発を代行するのではなく、お客様自身がAI駆動開発をできるよう内製化を支援すること、そして開発プロセス全体を見渡し、どこがボトルネックになっているのかというプロセス変革の視点で取り組むことを挙げました。既存システムの保守に大きなコストがかかっている現状を改善し、新規開発・新規投資に資金を回せるようにする支援も行っているといいます。

さらに福田は、アジャイル開発をはじめ、これまで培われてきた開発プロセスの手法・メソドロジーは「AI駆動開発の時代にもそのまま活きる」と指摘。これらを改めてAIに落とし込み、プロセス設計、ツールの組み合わせ、そしてデータ設計を重視して取り組んでいると述べました。

「AI駆動開発といっても、開発の手前には企画があり、要件定義があり、設計があります。その上流から開発、テスト、運用保守まで一連のデータがつながるように設計しておかないと、AIがスムーズに開発プロセスを回せません。データ設計は非常に重要です。加えて、AIだけで完結するのではなく、要所要所で人がきちんとレビューする形になります」

「AI駆動開発」という言葉はミスリード
効率化できるのはシステムライフサイクル全体

続いて福田は、「AI駆動開発」というワード自体が誤解を招きかねないと指摘します。

「AIが使えるのは開発だけではありません。IT戦略から要件定義、設計、そして保守まで、すでにAIによって効率化・高度化できる状態になっています。我々はお客様と開発する際、システムライフサイクル全体をAIでどう効率化するかという視点で提供しています」

従来のシステム開発が抱えてきた課題として、福田はスピードの壁、コスト、内製化の停滞、そしてセキュリティ対応の負荷増大を挙げ、AIによる変化を次のように説明しました。

  • スピード:これまで数ヶ月かかっていた要件定義も、早い段階からモックやプロトタイプを作り、動くものをベースに実際に使用する方と会話することで大幅に短縮できる
  • コスト:多くの人手を要した作業が、AIによる並列開発で置き換え可能に
  • 手戻り:モックベースで進めることで、認識のずれによる手戻りが大幅に減少

人が「書ききる」からAIに任せられる
ドキュメントとシステムをシンクし続ける

では、AI駆動開発において人は何をすべきなのか。福田はその要点を「仕様書を書くこと」だと語ります。

「何を作るのかは人間が決める。だからこそ仕様書やデザインドキュメント(技術設計書)は人がきちんと書く必要があります。その際にモック、つまり動くものを作ることで、ものすごいスピードで仕様書を正確に整理できます。ここをきちんと書ききれば、あとは実装と検証・テストをAIに任せることができるのです」

一方、AIのアウトプットのレビューは人が担いますが、すべてを人がやるとレビューがボトルネックになるため、機械的にチェックできる部分と人がやるべき部分を仕分けして整理することが大事だと述べました。

さらに福田が「非常に重要」と強調したのが仕様の更新です。

「システムがブラックボックス化する大きな理由は、アプリケーションだけがどんどん変更され、ドキュメントの更新が置き去りになってしまうことです。アプリケーションが更新されたらドキュメントも更新される。AIを使って、ドキュメントとシステムをシンクし続ける状態を作ることが重要です」

IT人材70万人不足の未来
要件と管理は事業会社側が握るべき

2030年にIT人材が79万人不足する(経済産業省:IT人材需給に関する調査 調査報告書 )という予測に触れ、福田は「これはほぼ確実な未来としてやってきます」と警鐘を鳴らしました。その中で取りうる道は、非エンジニアがシステム開発に踏み込んでいくか、一人ひとりの生産性を上げるかの2つだといいます。

そのうえで、これまでベンダー依存だった部分を自社側に引き戻す必要性を訴えました。

「少なくとも要件と管理は、事業会社側で握るべきです。ベンダーに丸投げしてシステム開発を進めてしまうのは、後で後悔することになります。なぜ、どういうシステムを作りたいのかは事業会社側で握る。ベンダーに任せる部分があってもいいのですが、どこを自分たちで握り、どこを任せるのかを仕分けして把握しておく必要があります」

レガシーシステムの仕様書を「逆生成」する
ソースコードだけでは6割しか復元できない

講演の後半では、金融機関をはじめ多くの企業が直面する課題、既存システムのブラックボックス化に対する実践的な取り組みが紹介されました。

「既存システムがブラックボックスになっていて、ベンダーさんや特定の人に聞かないと要件や仕様が分からない、という状況が起きています。運用コストは年々膨らみ、セキュリティ対応の要請も高まる。同じ仕組みのままではコストは上がり続けます。そこで、今あるシステムやアプリケーション、残っているドキュメントをもとにレガシーシステムの仕様書を逆生成し、既存システムをAI駆動開発に移行していく取り組みを始めています*」
*ソースコードから仕様を再定義する「Living Spec(リビングスペック)生成サービス」の提供をスタート:https://exawizards.com/archives/32538/

実際にドキュメントが失われたレガシーシステムの仕様書復元に取り組んだ経験から、福田は率直な学びを共有しました。

「最初は正直、甘く見ていました。ソースコードをAIに一気に読み込ませればいいドキュメントができるだろうと。しかし、作ったものをお客様に見せたら『これでは6割くらいの情報しかない』と言われてしまったのです」

その原因は、ソースコードには「何を(What)」は表現されていても、「なぜそのロジックにしたのか(Why)」が書かれていないことでした。そこで同社は、複数の情報源を組み合わせるアプローチを採ったといいます。

  • ソースコードからの逆生成でベースとなるドキュメントを作成
  • 既存の残存ドキュメントを組み合わせる
    (記載されたWhatはシステムと乖離していても、「なぜそうしたのか」という理由は参考になった)
  • 実機の設定情報やシステム上のログメッセージを組み合わせる
  • 運用の中で蓄積されたチケット情報を組み合わせる
  • それでも埋まらない部分はヒアリングで補完

「これらを組み合わせることで、WhatとWhyが揃い、そのシステムがなぜそのロジックで動いているのかを理解できる状態に持っていける。ここでようやく、レガシーシステムをAI駆動開発で扱えるようになるのです」

レガシーシステム再生の取り組みを説明する福田

既存システムを「絶対に壊さない」
テストケースという安全網を先に作る

最後に福田は、実際の顧客事例に基づくステップを紹介しました。

  1. 既存システムから仕様を復元し、ドキュメントとして起こす
  2. AIが認識できるフォーマットに分割・整理する
  3. 仕様書から現行システムの振る舞いを網羅するテストケースを生成し、「これが通る限り現行システムは壊れていない」と証明できる安全網を先に作る
  4. その上で、小さな修正作業をAIで実行し、現行の仕組みを壊さないことを確認しながら進める

「基幹システムなど既存の仕組みは、絶対に壊してはいけません。現場の方々は、AIに既存システムを壊されたらたまらない。だからこそ、AIで修正する前に、壊れていないことを証明できるテストケースをまず作るのです」

まとめ

金融機関の生命線であるシステムを守りながら、AI駆動開発へ移行していく。理想論ではなく、顧客との実践から得られた具体的な手順が示され、参加者が熱心にメモを取る姿が印象的なセッションとなりました。

続く後編では、第三部「AIエージェント時代の営業変革 ―『トップ営業』の暗黙知を、組織の資産に―」の模様をお届けします。

コンプライアンス徹底という「守り」と、提案力強化という「攻め」。この両立が求められる金融営業の現場を、AIエージェントとAIロープレの2つのプロダクトでどう変革するのか。デモンストレーションを交えた具体的なソリューション像をご紹介します。