【金融AI経営セミナーレポート|後編】AIエージェント時代の営業変革。「守り」と「攻め」を両立する、金融営業の高度化
2026年7月21日、東京・日本橋兜町のKABUTO ONEにて、「金融業界向け AI経営セミナー〜AI戦略と現場実装のリアル〜(主催:エクサウィザーズ)」が開催されました。
前編はこちら
前編のレポートでは、第二部「AI駆動開発が変える金融システム開発の新常識」をご紹介しました。後編でお届けするのは、第三部「AIエージェント時代の営業変革 ―『トップ営業』の暗黙知を、組織の資産に―」です。
コンプライアンス徹底という「守り」と、提案力強化という「攻め」。金融営業に求められるこの2つの要請に、AIエージェントとAIロープレはどう応えるのか。デモンストレーションを交えて紹介されたセッションの模様をレポートします。
【講演・デモ】第三部:AIエージェント時代の営業変革 ―「トップ営業」の暗黙知を、組織の資産に―
第三部では、エクサウィザーズでSalesTech事業開発を率いる鏑木が登壇。営業研修やコンサルティング、大学との共同研究を通じて営業を探求してきた経験をもとに、金融営業における「守り」と「攻め」の課題と、それを解決する2つのプロダクトを紹介しました。後半では、プロダクト企画を担当する今吉が実際のデモンストレーションを披露しました。

「守り」の要請:顧客本位の徹底と、証跡を残すことの重み
セッションの前半、鏑木はまず金融営業を取り巻く「守り」の環境変化から解説しました。
顧客本位の業務運営の方針は、その内容の一部が法定化される流れにあり、コンプライアンス重視の要請は一段と強まっています。2026年には改正金融関連法をはじめ新しいルールが次々と登場し、対応すべき事項は増える一方です。
「重要なのは、顧客本位の観点から、しっかりと説明した上で顧客の意向を確認し、同意を得ていくという過程です。ここを徹底できるかが、守りとして求められています。加えて、交渉の記録を残し、社内に報告していくことも求められている。これが皆様の現状ではないでしょうか」
この課題に対し、AIエージェントができることは大きく2つあると鏑木は整理します。
- 人のスキルを鍛える:
説明し同意を得るのは人間である以上、教育が不可欠。しかし労働時間の制約で人による教育は難しくなっており、AIロープレによるトレーニングで営業品質を徹底する - 行動を証跡化する:
説明・同意という行動そのものを商談記録として残し、証跡化する。これはAIによって効率的に実現できる
「攻め」の要請:人が増やせない中で、人で差別化する
一方の「攻め」については、3つの観点から課題を提示しました。
- 人口減・採用難により営業人員の頭数を増やせない中で、いかに業務を効率化し、商談に向き合う時間を生み出すか
- プロダクトでの差別化が難しい金融業界では、人だからこそできる提案での差別化が必要。資産運用、金融商品、ライフプランなどの総合的な提案が求められ、多くの金融機関がコンサルティング営業への転換を掲げている
- 提案力が「売れる人」頼みになっているケースが多く、その人が辞めるとノウハウが消える。勝ちパターンが組織化されていない
「この3つの観点からも、一人ひとりの生産性と提案力を上げ、稼ぐ力を高めていくことが求められています。記録や報告といった作業はAIに任せて商談に向き合う時間を作る。そして人間がやるべき提案は、AIロープレで磨きをかけてより高度な営業を実現する。この仕分けが重要です」

2つのプロダクトで両面を支援:「エクサベース セールスエージェント」と「エクサベース ロープレ」
これら「守り」と「攻め」の両面を支援するのが、営業活動を支えるAIエージェント「エクサベース セールスエージェント」と、実践的な営業トレーニングを可能にする「エクサベース ロープレ」の2つのプロダクトです。両者は連携しており、エクサベース セールスエージェントで営業業務を効率化しながら証跡を残して勝ちパターンを蓄積し、エクサベース ロープレでコンサルティング・提案スキルを強化する。この両輪で売上向上につなげる構想が示されました。
AIへの「丸投げ」では成果につながらない。意思決定は人間が担う
続いて鏑木は、AI活用において見落とされがちな「向き合い方」について踏み込みました。
「AIエージェントを導入すれば営業がうまくいくかというと、そうではありません。AIにすべてを任せてしまうと、自分で考えない、判断ができないという状況が出てきます。丸投げは良くない。意思決定は人間がしっかり行うことが極めて重要です」
その前提となるのが、正しい営業の業務プロセスです。リサーチをして仮説を立て、プランニングし、お客様と商談した上で振り返り、次のプランを作る。この重要性はこれまでも研修などで説かれてきたものの、現場では多忙で実行しきれず、かつて教えてくれた教育熱心な先輩も、今の働き方の中では教えることが難しくなっています。
「AIエージェントがあるからこそ、作業を効率化しながら、このハイパフォーマンスな業務プロセスを実行できるようになっています。AIがたくさんの仮説を出してくれる。その中から何を使うか、どのプランでいくかを人間がレビューし、意思決定する。この原則を押さえずにAIエージェントを使っても、成果にはつながりません」
さらにエクサベース セールスエージェントでは、成果につながるベテランの意思決定を構造化した「コンテキスト」として蓄積し、誰もが参照できるようにする仕組みを紹介。「ハイパフォーマーの先輩社員が常に伴走しながら、業務プロセスを徹底させてくれるイメージです」と説明しました。
【デモ】商談レビュー:議事録ではなく「商談を前に進める」ための振り返り
後半は、今吉によるデモンストレーションです。個人向け保険の営業担当者が、結婚したての山田さん夫婦と初回商談を行うというシーンを題材に、エクサベース セールスエージェントの機能が紹介されました。

まず紹介されたのが「商談レビュー」機能です。これは商談の議事録ではなく、商談の振り返りのための機能です。音声を分類してAIがラベリングする文字起こしは、自社検証で約97%の精度が出ているといいます。デモでは、次のような機能が紹介されました。
- 天候マークによる全体感の可視化:商談の状況を5段階の天候で表示。上長は曇りや雨のマークを見て、フォローすべき案件をすぐに把握できる
- 次回アクション:商談中に合意された内容が自動で整理され、追加・修正も可能。AIによるネクストアクション提案から人が選択すると、タスクに連携される
- BANT情報の自動抽出:商談内容から予算・決裁権などの情報を導き出して表示。商談中に明確な言及があったか、なかったか、確度が低いかまでラベリングされる
「当社でもエクサベース セールスエージェントを使っていますが、BANT情報が集まっている案件ほどうまくいっている。逆に集まっていない案件は数字が足りなかったり、商談中に問題があったりする。勝負どころが非常に分かりやすくなります」(今吉)
このほか、商談の良し悪しや懸念・リスクを提示する商談分析、時系列で主要トピックを整理し上長が案件の全体感を把握できる核心発言の抽出、商談後の立ち話などを残せる現場メモも紹介。すべてをAIに任せるのではなく、人が補える設計になっています。
さらにカスタマイズ機能として、基本情報・職業・収入など任意の観点を設定できる属性ヒアリング情報や、社内フォーマットに合わせた議事録の定義も可能。注目を集めたのがコンプライアンスチェックで、デモでは「必ず元が取れる」「どんな手術でも大丈夫」といった問題発言をAIが指摘し、該当箇所を確認・修正できる様子が示されました。
【デモ】リアルタイムサポートから商談プラン、エクサベース ロープレ連携まで
開発中の機能として、商談中の発言をその場でチェックするリアルタイムサポートも披露されました。営業担当者が商談に集中して画面を見られない状況でも、問題発言があればAIが「訂正・補足しなさい」とその場で促す仕組みです。
「商談レビューは単なる議事録ツールではありません。商談を前に進める『攻め』と、コンプライアンスで会社を守る『守り』。その両面をAIが作業し、人が判断する。そういう作りになっています」(今吉)
続く商談プラン機能では、山田さん夫婦との2回目の商談を想定し、次回商談の進め方をAIが提案する様子が紹介されました。
- 商談のリスクと提案内容を踏まえたアジェンダ・シナリオの提案
- 深掘りすべきヒアリングポイントやアイスブレイクのネタ
- 「今月中に決めるのは急すぎる」「夫婦で相談してから決めたい」といった想定反応への切り返しトークと、受け止めつつ誘導するカウンタートークの案
- 商談後のネクストアクションを複数案から選び、ゴールとしてプランを確定
「当社の新卒も『自分が持っていない観点をヒアリングリストとして提案してくれて助かった』と言っています。我々は、商談の成約率の7割ほどは準備で決まると考えています。その準備を1から人がやるのは大変なので、作業はAIに任せ、インプットと判断、そしてトークは人が担う。この考え方で営業力を上げていきます」(今吉)
最後に紹介されたのがエクサベース ロープレ連携です。作成した商談プランからボタン一つでエクサベース ロープレに連携し、顧客の属性情報を引き継いだ状態で、その商談に合わせたヒアリング演習や切り返し演習ができます。
「作業はAIがやる。しかし意思決定と、関係構築のコミュニケーションは人がやる。ツールと人が連携しながら、営業活動の攻めも守りも高度化していく。そのようなソリューションです」(今吉)
現場実装は、すでに始まっている
クロージングで鏑木は、これらのプロダクトがパートナー企業を含め様々な企業で展開が始まっていることを紹介。2026年3月にリリースされたエクサベース セールスエージェントを、より早く多くの企業に届けることで、現場のAI実装を実現していきたいと語りました。
「続く第四部では、エクサベース ロープレに特化して、3社の金融機関様からどのような成果が出て、どのような課題を抱えているのか、生の声をお話しいただきます。ぜひ参考にしていただければと思います」
こうして第三部は、りそな銀行・商工中金・伊予銀行が登壇する第四部のパネルディスカッションへとバトンをつなぎました。
おわりに|「作業はAIに、意思決定は人に」。金融の現場実装はここまで来た
前編・後編を通じて浮き彫りになったのは、金融業界のAI活用が、もはや構想やPoCの段階ではなく、現場実装の具体論に入っているということです。
システム開発の領域では、レガシーシステムをホワイトボックス化し、テストケースという安全網を作った上でAI駆動開発に乗せていく実践的な手順が示されました。営業の領域では、コンプライアンスという「守り」と提案力という「攻め」を、AIエージェントとAIロープレの両輪で支える具体像が示されました。
両セッションに共通していたのは、「作業はAIに任せ、意思決定は人間が担う」という原則です。AIをPoCで終わらせず、経営変革と現場成果につなげる。そのための実践知が凝縮されたセミナーとなりました。
ご案内|エクサウィザーズについて
貴社のパートナーとして、企業変革に伴走します
エクサウィザーズは、東証グロース市場に上場し、累計2,000社以上のAI導入・開発・人材育成をご支援してきました。
戦略のロードマップ策定から、独自の特許技術を用いた現場でのプロダクト実装、そして組織全体のリテラシーを底上げする人材育成まで、私たちは「AIを経営の武器に変える」ための全プロセスを強力にバックアップします。
「自社のプロセスとAIをどう結びつけるべきか」「自社の課題にどうAIを掛け合わせるべきか」といった検討段階からのご相談も承っております。AIを経営の力に変え、新たな付加価値を共創していくパートナーとして、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本セミナーで事例として紹介された「エクサベース セールスエージェント」や、「エクサベース ロープレ」、AI駆動開発にご関心のある方は、ぜひお問い合わせください。
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