OpenAI「自動研究インターン」目標を達成 完全自動AIの制御方法は「まだ分からない」
米OpenAIは9月6日、昨年秋に掲げた「2026年9月までに自動研究インターンを実現する」という目標に到達したと発表した。同社の研究部門では8月中旬時点で、人間の1労働日あたり3.1日分のエージェント労働が投入されている。次の目標は2028年3月の「自動AI研究者」の実現。AIがAI研究を加速させる「再帰的自己改善(RSI)」の進み具合を、フロンティア研究所が数字付きで公開するのは異例。ただAIが自分自身を改善し、進化が加速するようになった場合の制御方法に関しては「まだ分からない」と正直に認めている。
「研究インターン」とは、人間の指示のもとで明確に定義された研究タスクをこなせるシステムを指す。熟練研究者なら数日かかる作業も含まれる。ただ研究の優先順位を決め、どのアイデアや結果を追うかを判断し、システムを拡大・停止・展開するかを決めるのは、依然として人間だとしている。
この目標はSam Altman氏が2025年10月28日のライブ配信で示したものだ。同氏は当時「2026年9月までにインターン級のAI研究アシスタント、2028年3月までに本物のAI研究者を持つことは十分あり得る」と語っていた。
研究者1人あたり1日600ドル超、上位は7,000ドル超
発表文で最も注目を集めたのは、社内利用の実額だ。年初の時点で、平均的な研究者はコーディングエージェントをわずかにしか使っていなかった。それが8月中旬には、平均的な研究者が毎日エージェントを業務に組み込み、API価格換算で1日600ドル超の推論を消費するまでになった。研究部門の上位10%の利用者は1日7,000ドル超のトークンを使う。
稼働時間の総量でみると、2026年6月以前は研究部門全体のエージェント稼働時間が人間の総労働時間を下回っていた。それが逆転し、8月中旬には8時間労働日換算で、人間の1労働日につき3.1日分のエージェント労働が投入されている。4体以上のエージェントを同時に走らせる研究者の数も増え続けている。
実験の回数も増えた。研究者1人あたりの実験数は2026年を通じて増加し、2026年8月は追跡を始めた2025年1月以来の最高を記録した。
エージェントに任せる仕事の質も変わりつつある。AI調査機関の米Epoch AIが公開したAI研究開発の仕事の分類に沿ってエージェントの利用内容を分けたところ、1月時点で最大だった研究・インフラ向けコード作成に加え、技術的な問い合わせ対応や学習ジョブの監視が大きく伸びた。一方で、何を研究するかを決める高次の計画はいまだにごくわずかにとどまる。コードを書く、不具合を直す、学習の進み具合を見守るといった手足の仕事はAIに移りつつあるが、何を研究すべきかを考える頭の仕事は、まだ人間の手に残っているということだ。
社内では、実験のトラブル解決のために研究者向けの相談時間を設けていた複数チームが2026年に出席者の減少を報告し、一つのチームは相談時間そのものを廃止した。研究者が他チームに技術支援を求める主要な社内チャンネルへの投稿数も減っている。AIが賢くなったことで、人間がトラブル解決に乗り出すことが少なくなったということだろう。
ただし自律性には限界がある。タスクの成功率は1月から7月にかけて難易度別に見ても上昇したが、複雑な作業ほど人間の手直しが必要で、直近6カ月では、人間なら4〜8時間かかる作業のうち成功した案件の半数以上で1回以上の人間による介入があった。
安全のために開発を減速した記録も公開
発表文は、加速の数字と並べて、安全のためにブレーキを踏んだ記録も示した。7月20日、エージェントが自社の研究インフラに侵入したことが判明し、学習用のコンテナサービスを一時停止、大幅な制限を加えてから復旧した。これで強化学習(RL)の計算量が急減し、展開予定の最新モデルについては2週間RL学習を止めた。
さらに8月7日、GPT-6 Astraが同社のPreparedness Frameworkで最高区分「Critical(重大)」に相当するサイバー能力を持つ可能性が示されたことを受け、Astraをより高度なセキュリティ環境でしか動かせなくした。翌週、Astra系のGPU割り当ては59.2%減った。ただし研究者たちは空いた計算資源を規制対象外のモデルの実験に回し、他のモデル系への割り当てが17.2%増えた。減少分の約85%が埋まり、研究部門全体の計算量はほとんど変わらなかった。同社はこれを「危険なモデルに制限をかけても計算資源を遊ばせることなく、研究部門内で自然に別の用途に流れる」証拠だとみる。安全のための規制が研究全体を止めるわけではない、という主張だ。
同時に同社は、AIが自分で自分を賢くしていく段階まで進んだとき、それを安全に制御しきる方法を「まだ分からない」と率直に認めた。AIの能力が伸びる速さに、安全対策の進歩が追いつくとは限らないという。だからこそ、危険が大きすぎると判断した時点で開発や公開を遅らせる、あるいは止めると約束している。さらに、AIがAI研究をどこまで担っているかは各社とも社外からは見えないため、自社を含むすべてのAI企業に進捗の公表を義務付けるべきだと改めて主張した。
Noam Brown氏「この傾向は続く」
OpenAIの推論研究を率いるNoam Brown氏はXで「我々が公開した中で最も興味深いブログ記事の一つ。この傾向は今後も続くと見ている。監視、アラインメント、セキュリティを優先するためにモデル開発をどう調整したかの詳細も共有した」と投稿した。同社の研究者Boaz Barak氏は「AIでAI研究を加速することは、AIの軌道を理解するうえで最も重要でありながら、その性質上最も見えにくい要素だ」と述べ、データ公開を歓迎した。発表を執筆したKevin Liu氏は「AIによるAI研究の加速は今後数年でAI能力への最大の寄与要因になり得るが、放っておけば一握りのフロンティア研究所の内側でしか見えない」と透明性の意義を強調した。
「自動AI研究者」が実現すれば、人間というボトルネックがなくなるので、AIの進化は指数関数的に加速すると言われている。そして「自動研究AI」は、科学の他の分野にも応用され、科学の発明発見も指数関数的に増えていく。シンギュラリティと呼ばれる急激な社会変化のフェーズに入るわけだ。
「自動研究インターン」は計画通りに実現した。OpenAIは「自動AI研究者」の実現時期の目標を2028年3月と定めて研究を続けている。あと1年半だ。急激な社会変化は本当に目前に迫っているのだろうか。
だからこそ、最先端AI企業が技術の進展とそのリスクを継続的に開示することは、社会が来るべき変化に備えるための前提となるだろう。
参考ソース
- OpenAI発表文: https://openai.com/index/research-acceleration-view-inside-openai/
- Altman氏の2025年10月ライブ配信(TechCrunch): https://techcrunch.com/2025/10/28/sam-altman-says-openai-will-have-a-legitimate-ai-researcher-by-2028/
- 各氏のX投稿一覧(Techmeme): https://www.techmeme.com/260906/p6
- Engadget(Hugging Face事件との文脈): https://www.engadget.com/2251859/openai-says-it-reached-its-goal-of-creating-an-automated-research-intern/