中国はAI開発を減速しない SemiAnalysisが安全政策と主要9社を調査
中国はAIの危険性を認めているものの、最先端モデルの開発を減速する政策には踏み込んでいない。半導体・AI分野の調査会社、米SemiAnalysisは10月8日、調査レポートを公表し、中国の安全政策は技術開発の速さを優先していると分析した。主要9社による857件のモデル公開を調べたところ、安全性評価の結果を公開時点までに示していたのは1.1%だった。newsletter.semianalysis.com
AI開発の減速を巡っては、米AI開発企業AnthropicのCEO、Dario Amodei氏が9月に提言を発表している。同氏は、AIが次世代のAI開発を担うことで進歩が加速し、安全対策が追いつかなくなる可能性を指摘。米国の技術的な優位を維持しながら開発速度を抑え、将来的には中国との協調も目指す構想を示していた。darioamodei.com
公開時に安全性評価の結果を示したのは9件
SemiAnalysisは、中国の主要AI開発企業9社が2021年から2026年9月15日までに公開した857件のモデルについて、モデルの説明資料、公開時の案内、技術報告書を調べた。対象には、電子商取引・クラウド大手の中Alibaba、インターネットサービス大手の中Tencent、AI開発企業の中DeepSeekなどが含まれる。
安全性評価の結果が公表されていたのは31件、全体の3.6%だった。このうち、モデル公開時点までに結果を示していたのは9件にとどまった。newsletter.semianalysis.com
調査では、具体的な結果を伴わない「安全性を評価した」といった説明は数えていない。ただし、結果が見つからなかったことは、評価を実施していないことを意味しない。また、企業によってモデルの派生版などの数え方が異なるため、会社別の公表率をそのまま順位付けに使うべきではないとしている。newsletter.semianalysis.com
制御喪失に警戒しながら開発を優先
中国の公式文書は、人間がAIの行動を抑えたり、必要なときに停止させたりできなくなる危険性にも言及している。9月14日に公表された「AI安全ガバナンス枠組み3.0」は、AIが自ら学習・改良することで進歩を加速させ、人間の予測や制御を超える可能性に警戒を促した。許可なくシステム権限を取得する、評価担当者を欺く、実際の能力を隠すといった行動もリスクとして挙げている。tc260.org.cn
同じ文書は、安全対策の原則の冒頭で「AIのイノベーションと発展の促進を最優先とする」と明記した。国務院の「AI+」行動方針も、AI搭載端末や、人に代わって作業するAIエージェントなどの普及率を2027年に70%超、2030年に90%超とする目標を掲げている。tc260.org.cn
SemiAnalysisは、中国ではAIの出力内容や利用者向けサービスへの規制が厳しい一方、訓練に使う計算量やモデルの能力が一定水準を超えた場合に、最先端AIのリスク対策を義務付ける制度はないと指摘した。利用段階の規制を守っていることだけでは、モデルが危険な能力を持つかどうかを評価したことにはならない、という見方だ。newsletter.semianalysis.com
安全性を評価する能力と権限に隔たり
レポートは、中国の評価機関が持つ技術と権限の隔たりも指摘した。上海人工知能実験室には最先端モデルの評価能力があるものの、他社にモデルへのアクセスを要求する権限はない。中国情報通信研究院の評価も任意で、結果はモデル名を伏せて公表されているという。
中国の科学者らは、大規模な訓練の登録、独立した第三者による監査、危険なモデルを停止させる権限などを求めてきたが、レポートによると、こうした提案は法的拘束力のある義務にはなっていない。newsletter.semianalysis.com
中国科学院自動化研究所の研究者Yi Zeng氏らは、レポートでも引用された4月の学術誌「National Science Review」の社説で、商業上の利益や個人の利害があることを理由に、「開発企業の自主的な対応だけでAIの安全を確保できると考えるのは幻想だ」と指摘していた。PubMed