SBT②Web3がWeb2から抜け出せない理由
この原稿は、一般公開用の原稿の草稿のようなものです。一般公開用の原稿にする際に、多くの情報を削ぎ落とします。会員の皆様にはできるだけ多くの情報を提供したいと思いますので、草稿の段階で共有いたします。ですので、この原稿の一般公開はお控えください。
Web1がYahoo!に代表されるようなWebページからの情報の一方通行の時代。Web2がFacebookやGoogleなどのテクノロジー大手が、一般大衆が作ったコンテンツをネット上を流通させた時代だ。一般大衆が発言力を持ったのはいいことだが、その情報の流通をつかさどることで、テック大手が圧倒的な影響力と富を手にすることになった。
そのテック大手に集中し過ぎた富と権力を分散させて人々の手に取り戻そう、というのがWeb3の目指すところだ。Web2が中央集権的だとすれば、Web3は非中央集権(分散型とも呼ばれる)を目指している。
具体的にどういうサービスが中央集権型で、どういうサービスが分散型なのだろう。中央集権型は、企業、団体などの1つの組織がすべてのデータを保有し、データをどう扱うかを勝手に決める権限を持つタイプのサービスである。一方で分散型は、そういう権限を持つ中心的な企業、組織が存在せず、ユーザーが自分のデータをどう扱うかを決めることができるサービスだ。
FacebookやTwitterなどは中央集権型で、どの投稿を表示するのかを決める権限はFacebookやTwitterが持っている。トランプ元大統領の発言が不適切だとしてTwitterがトランプ氏のアカウントを使用停止にしたが、一国の大統領の発言さえ規制してしまう権限が中央集権型サービスにはあるわけだ。
一方でインターネット自体は分散型だ。どこかの政府や企業が独占的に運営しているわけではなく、決められた通信規約に基づいて自動的に運営されている。1つの国家がインターネットに接続しないと判断することは可能だが、1つの国家がインターネットそのものを止めることはできない。
ビットコインなどの暗号通貨も分散型だ。ビットコインのシステムを一元管理している組織は存在せず、最初に決められた通信規約に基づいてシステムが自動的に動いている。ビットコインが気に入らないからといって、だれもシステムを止めることはできない。
Web3は分散型を目指しているのが、実は中央集権型サービスがなければ成立しないところがある。Web3のオピニオンリーダーの一人ビタリック・ブテリン氏はホワイトペーパー「Decentralized Society」の中で、その例を3つほど挙げている。
【NFTアート】
NFTアートは、ファンがいるので値段がつく。ファンコミュニティが形成されているアーティストほど、作品の値段が上がる。
NFT自体はWeb3の中核技術であるブロックチェーンを使っているが、多くのアーチストはファンとつながるために、Web2の代表的サービスであるTwitterを利用している。
またNFTアートのマーケットプレイスOpenSeaは、Web3の代表的なサービスの1つとして知られているが、実はユーザーの活動データはすべてOpenSeaのサーバー上に記憶されている。つまりWeb2的な中央集権型であるわけだ。
【DAO(分散型自律組織)】
株式会社に変わるWeb3時代の組織形態と言われるDAO(分散型自律組織)も、実はWeb2のサービスに依存している。
DAOは、だれもがトークンを持つことで運営に参加できる組織で、株式会社のように株主と経営陣、雇用主と雇用人、生産者と消費者というような分断のない、フラットな組織として、今後が期待されている組織形態だ。
DAO では、組織運営により多様性を持たせるために、投票の際の1票の重み付けに工夫がこらされることがある。例えば、株式のようにその保有数をそのまま投票できる票数にすれば、トークンを多く保有する金持ちのメンバーの発言力が強くなる。そこである計算式を用いて、トークンの保有数が多い人の1票の重さが1.0以下になり、保有数が少ない人の1票の重さが1.0以上になるようにしている。
またトークン保有数ではなく、一人一票にすれば、男性メンバーの多いDAOだと男性に有利な運営になるだろうし、政治的に保守派のメンバーが多いDAO では保守的な組織になってしまう。そこでできるだけ少数意見を無視せずに多様な意見を取り入れるために、票の重さを調整することがある。例えば男性のメンバーが多いDAOでは男性の票の重さを1.0以下に設定し、保守派の多いDAOでは保守派の票の重さを1.0に設定したりしている。
ではどのようにしてメンバーの性別や政治的志向を調べているのかというと、Facebookなどでメンバーの属性を調べるしかない。Web2サービスがなければ成立しないのだ。
【ウォレット】
Web3サービスを利用するのには、ウォレットと呼ばれる暗号通貨やNFTデータを収納するアプリが一般的に必要になる。これらのウォレットは大手暗号通貨取引所が発行しているものが多い。ところが、こうした取引所はほとんどが、DAOではなく株式会社、つまり中央集権的な組織だ。
なぜ中央集権的な仕組みに頼らざるを得ないのだろう。このホワイトペーパー「Decentralied Society」によると、分散型の本人認証の仕組みが存在していないからだという。
戸籍は中央集権型である。国が国民全員のデータを管理し、そのデータをどう使うのかは国が決めることができる。
では分散型の本人認証の仕組みとは、どのようなものになるのだろう。このホワイトペーパーで取り上げているSBT(Soul Buond Token)は、そうした仕組みになりえる技術だという。
次の原稿では、そのSBTの仕組みについて、詳しく見ていきたい。