ビジネスにおける人材の重要性が改めて認識されるなか、人材にまつわるデータを活用し、さまざまな人事施策に役立てようとするピープルアナリティクスの手法に注目が集まっています。
社会構造の変化スピードは速く、またAIやビッグデータの活用が進むなか、データに基づいた意思決定は企業の競争力維持に欠かせない要素です。これは企業発展の根幹となる人材にとっても例外ではありません。この記事では、ピープルアナリティクスが注目される背景から活用分野とメリット、進め方や注意点についても解説します。
ピープルアナリティクスとは
ピープルアナリティクスとは、自社の従業員に関わるさまざまな情報を収集・蓄積・分析することにより、直面している人事課題の解決に役立てる活動を指します。ピープルアナリティクスは、従業員の属性といった基本データだけでなく、業務行動や普段のコミュニケーションなどの細かなデータを収集・分析することが特徴です。
こうした詳細なデータを用い、採用活動の最適化、適材適所の人材配置、従業員満足度の向上といった人事課題の解決を図っていきます。経営やマーケティングの分野で主流となっている「データドリブン」の概念を、人事領域にも持ち込んだ手法ともいえるでしょう。
海外におけるピープルアナリティクス
ピープルアナリティクスは、まず欧米諸国を中心に注目が集まり、普及が始まった経緯があります。2010年ごろから大手IT企業から普及が始まり、2017年ごろにはほとんどの大企業がほとんどの大企業が何らかの取り組みを実践するに至っています。
欧米で先行してピープルアナリティクスが普及した要因には、ジョブ型の人事管理がおこなわれてきたことが背景にあるようです。職群ごとにジョブ・ディスクリプションが定義され、求められるスキル要件も細かく決められています。こうしたことが背景にあり、個々の従業員のスキルをはじめとしたデータの蓄積が進んでいたことが、ピープルアナリティクスが先行して普及した要因だと思われます。
ピープルアナリティクスとタレントマネジメントの違い
ピープルアナリティクスと混同しがちなものに「タレントマネジメント」があります。どちらも従業員データを用いた人事施策といえるのですが、ピープルアナリティクスは、よりデータ分析に比重をおいた取り組みです。前述の通り、日常の業務行動やコミュニケーションの特性といった、詳細な情報を収集・分析し、幅広い人事施策に活用します。
これに対し、タレントマネジメントは従業員のスキルや経験をデータ化・共有し、人材の力を最大限活かすべく、戦略的な人員配置や業務分担に活用するものです。よりマネジメントに比重をおいた取り組みといえるでしょう。
ピープルアナリティクスに注目が集まる背景
ピープルアナリティクスに注目が集まる背景には、多くの企業が人材確保に苦慮するなか、「人材」の重要性に対する認識の深まりがあります。加えて、多様化する「労働に対する価値観」への対応が、強く求められることも挙げられるでしょう。
人的資本経営の重要度の高まり
上場企業4000社に対し2023年度の有価証券報告書から、人的資本に関する情報開示が義務付けられたのは記憶に新しいところです。人材を資源ではなく資本と捉え、投資の対象とすること、そして人材を活かすための取り組み状況が、企業価値を判断する一つの指針となりました。
こうした流れのなか、従来の勘と経験による人事施策では不十分であることは明白でしょう。有効な取り組みを実施するためには、データに基づいた人事施策が不可欠という意識が高まったのです。
働き方の多様化
かつての終身雇用・年功序列といった働き方は消滅し、働くことに対する価値観は多様化の一途をたどりました。加えて、外国人労働者やパートタイマーなど、さまざまな属性の人材を活用しなければ、事業活動の継続が困難になる状況も生まれています。
こうした社会構造の変化により、企業の人材活用は流動化しているといっても過言ではないでしょう。限られた人材の力を最大化することが、企業力の強化・維持に欠かせないなか、データに基づいた人材の把握と、的を射た施策が求められるのです。
AIの発展と活用推進
ピープルアナリティクスが注目を集めるのは、企業のDX進展やAIの活用が推進されたことも背景にあります。特にAIの発展は目覚ましく、手軽に膨大なデータを定量分析できる環境が整いました。
AIの登場によりデータ分析に対するハードルが下がったことも、人事施策に対するデータ活用の意識が高まった一因として挙げられるでしょう。
ピープルアナリティクスのメリット
ここでは、ピープルアナリティクスを実施するメリットについて検証します。企業側、従業員側、双方のメリットについて見ていきましょう。
企業側のメリット
企業側のメリットとしては、第一に人材活用が活性化することが挙げられます。個々の人材のパフォーマンスや特性を正確に把握できることにより、組織としての強み・弱みも明確になります。こうした人材データから、自社で力を発揮している人材の特性を抽出し採用基準に反映させれば、採用活動に役立つでしょう。
適切な評価制度の設計や、適材適所の人員配置が可能になるなど、モチベーションの向上にも寄与します。人材の持てるポテンシャルを最大限に引き出すことで、組織全体の活性化につながっていくでしょう。
従業員側のメリット
一方で従業員にとっての大きなメリットは、働きやすさの向上が挙げられます。企業がピープルアナリティクスで従業員のスキルや特性を明確にするため、個々の従業員が力を発揮しやすい環境を整備しやすくなります。こうした環境が整備されることでキャリアアップの機会が増大し、モチベーション高く日々の仕事に臨めるようになるでしょう。
また、個々の人材の業務負荷やストレスをデータとして可視化すれば、パフォーマンス維持やストレスの軽減を図るための微調整も可能です。ピープルアナリティクスを実施することにより、健康で活力を持って働ける「働きやすい職場」が実現するでしょう。
ピープルアナリティクスの活用分野
ピープルアナリティクスは、幅広い人事施策にデータを用いる手法ですが、主に以下4つの分野において活用されます。
- 人材採用
- 人材配置
- 人材育成
- 人材定着
人材採用
採用活動に精度の高いデータを活用することにより、ミスマッチの防止が図りやすくなります。自社で活躍している人材の特性をデータから導くことで、適正な採用基準を策定できるためです。特に採用においては人材の流動化が進むなか、ダイレクトリクルーティングなどの採用手法を用いて、高スキル人材をキャリア採用するケースも多くなっており、明確な採用基準を設ける必要性が高まっています。
従来のアナログな手法では、各フェーズで採用に関わった担当者の主観が採用基準に反映されがちです。結果としてミスマッチによる早期離職や、適切なパフォーマンスを発揮できない人材を採用してしまうといった問題が生じます。ピープルアナリティクスによる、人材データを採用に活用すればこうした問題の多くは、解決に向かうでしょう。
人材配置
ピープルアナリティクスによって、個々の人材の特性がデータ化されることにより、客観的な基準に基づいた適材適所の人員配置が可能になります。こうした環境が整備されれば、従業員の多くは、自身の得意分野で能力を発揮でき、モチベーション高く仕事に臨めるようになるでしょう。
人材の力を最大化する人材配置が可能になることで、業績の向上や業務の効率化が進み、企業としての成長が加速します。ピープルアナリティクスによって、自社で高い成果を上げ続けているハイパフォーマーの特性を持つ人材を選抜し、将来の幹部候補として育成することもできます。将来の経営幹部育成に主眼をおいた、戦略的なジョブローテーションを実施するなど、長期的な視点での人材配置も可能になるでしょう。
人材育成
ピープルアナリティクスにより集約された人材データを活用することにより、効果の高い人材育成の施策を講じられるようになります。個々の研修カリキュラムに反映させることはもちろん、全社的な育成計画から部署ごと、業務ごとに細分化された育成プランの策定も可能になるでしょう。
また、個々の人材に応じた、育成プランをカスタマイズすることもできます。こうした育成活動によりキャリア形成に対する意識が向上し、人材の成長スピードも加速するでしょう。
人材定着
人材採用を取り巻く環境が厳しいなか、既存人材の定着化は企業として取り組むべき人事課題であるといえます。従業員が辞めない環境を整えるには、個々の従業員の業務負荷やストレスに目を配らなくてはなりません。こうした労務管理においても、ピープルアナリティクスによる分析は役立ちます。
また、納得度の高い処遇や、その処遇を決定する人事制度の構築も重要な課題です。人事評価制度や評価基準の策定にも、客観的なデータを活用することにより納得度の高い施策が可能になり、定着率の向上に寄与するでしょう。
ピープルアナリティクスで活用されるデータ
ピープルアナリティクスでは、属性データだけでなく従業員の行動や思考に至るまでの詳細なデータが収集されることは前述の通りです。ここでは、ピープルアナリティクスで活用されるデータの主な種類を確認していきましょう。
【ピープルアナリティクスで収集・分析されるデータ】
データ | 内容 | 主な用途・目的 |
---|---|---|
人材データ | 基盤となる属性情報 ・氏名・年齢・所属・勤続年数 など |
基礎情報として活用 |
勤務データ | 従業員の勤怠データ 休職率 年次有給休暇の取得率 など |
労務改善や離職防止施策に活用 |
デバイスデータ | 従業員に貸与しているデバイスの使用履歴/ログ など | 具体的な業務内容の把握や勤務状況の把握に活用 |
オフィスデータ | 社内設備の利用状況 会議室や休憩室、複合機の利用状況など |
最適な設備数の設定やコミュニケーション状況の把握 |
認知データ | ストレスチェックや各種サーベイ キャリアの希望申告、研修のアンケートなど |
業務改善や組織編成 人事異動の基礎資料 研修カリキュラムの構築・改善 |
行動データ | 社内イントラの活用状況 メールやチャットの履歴 オフィス内の行動データ スマートデバイスによる健康情 GPSによる位置情報報 |
従業員の特性把握 働き方やスキルの把握 人事施策の課題抽出 |
コミュニケーションデータ | コミュニケーションツールの利用状況 休憩室の利用状況など |
社内コミュニケーションの状態把握 ハラスメントの早期発見 報告・連絡・相談の頻度・質の確認 |
ピープルアナリティクスの実施目的に合わせ、こうしたデータのなかから必要な情報を収集し分析・活用していきます。
ピープルアナリティクスの進め方
では、実際にピープルアナリティクスを実施する際の、進め方について解説します。ピープルアナリティクスは人事部門が主導し、経営層や現場を巻き込んだ形で実施することが理想です。
以下のフローで実施することが望ましいでしょう。
- 活用分野と目的の明確化
- 目的に合ったデータの収集と分析
- 人事施策の立案と実施
- 効果検証と改善策の立案
各フローを詳しく見ていきます。
1.活用分野と目的の明確化
ピープルアナリティクスを活用する分野と、利用目的を明確にすることが第一です。ピープルアナリティクスにおいて陥りがちな失敗として、データの収集・分析に主眼を置くあまり、具体的な課題の解決に至らないケースが挙げられます。こうした失敗は、実施の初期段階で目的が明確になっていないことが原因です。
まず、人事部門が主導して経営層から現場まで、各階層で認識されている人事課題を抽出します。多くの人事課題は複雑に絡みあっているものです。そうした人事課題を紐解きながら言語化し、優先度・重要度に沿って分類します。早急に解決したい課題、もしくは解決を図ることで大きな改善をもたらす課題を、目的として選択するとよいでしょう。
2.目的に合ったデータの収集
まず解決を図りたい人事課題=目的が定まったら、次にそのために収集すべきデータの選別に移ります。
例えば以下のような課題と解決策を想定したとします。
- 社員の離職対策として従業員満足度を向上させたい
- 採用のミスマッチによる早期離職を防ぐため、採用基準のブラッシュアップを図る
- 従業員の早期戦力化のために教育カリキュラムを刷新する
離職対策であれば勤怠データから勤務実態を把握したり、サーベイの実施により従業員の意識調査をおこなう必要があるでしょう。採用のミスマッチ防止であれば、自社で活躍している従業員の特性や思考パターンなどのデータが求められます。早期戦力化が課題であれば、ハイパフォーマーのコンピテンシーをデータとして把握し、カリキュラムに反映することが必要です。
また、収集するデータは人事部門で管理しているものだけでなく、現場に点在しているものや、新たにコストをかけて収集しなければならないものもあります。効率的な収集には、全社的な協力体制を構築する必要が出てくるでしょう。
3.データの分析と人事施策の立案・実施
収集したデータを分析し、課題に対する大まかな傾向をつかみ取ります。例えば離職率の改善が課題であれば、社内のどの年齢層や部署で離職率が高いのかといった傾向をつかみ、その原因は高い業務負荷にあるのではないか、といった仮説を立てていきます。
なおデータの分析において留意すべきは、読み取れる事象を鵜呑みにしないことです。あくまでデータは参考として、最終的な判断は人間が下しましょう。さまざまな仮説をもとに具体的な対策を人事施策として立案し、実行に移していきます。
4.効果検証と改善策の立案
施策を実施したら、一定の期間が経過した後に必ず効果検証をおこないます。施策の実施により離職率がどの程度軽減したかなど、実施前と実施後の状態を比較し、効果があった取り組みは何だったか、あるいは効果を発揮できなかった原因は何かなど、具体的に洗い出していきましょう。
ピープルアナリティクスで重要なのは、施策を実施するなかで得られた新たな知見やデータを、さらなる改善策に反映させることにあります。効果検証を経て得られたデータを活用することで、データ活用の基盤が整備され、より高度で効果のある施策への反映が可能になります。
ピープルアナリティクスを実施する際の課題
ピープルアナリティクスを実施するにあたっては、いくつかの注意すべきポイントや課題が存在します。先に述べた、データの収集・分析が目的化してしまい、具体的な課題解決に至らない現象が起きないようにしなくてはなりません。
データを用いた大掛かりな改革となるため、経営層から従業員まで理解を得つつ、以下に挙げる問題も考慮しながら進めていく必要があります。
- セキュリティ環境の構築
- データ取り扱いルールの整備
- データ品質の担保
- 分析スキルの向上
それぞれ具体的に見ていきましょう。
セキュリティ環境の構築
ピープルアナリティクスで扱うデータのほとんどが、個人情報です。そのため、厳重なセキュリティ環境の構築は大前提となります。データを蓄積する環境や分析するソフトウェア、ネットワーク環境など技術的な対策においては、必ず専門家の判断を仰ぐようにしましょう。
情報を扱う人材へのセキュリティ意識向上教育といった、人的対策も合わせておこないます。また、情報を扱うデバイスに生体認証や二段階認証を設定するなど、物理的な対策を講じておくことも必要です。
データ取り扱いルールの整備
ピープルアナリティクスで扱うデータには、デリケートな性質のものも多くあります。従業員の行動データやコミュニケーションデータなどは、その部類に該当するでしょう。データ収集においては、ピープルアナリティクスの目的に合わせて、必要なもののみを収集するようにルール化することが必要です。
収集に際しては従業員に使用目的を説明し、同意を得る必要もあります。合わせてデータの取扱者の権限を定めるなど、取り扱いに関するあらゆる事柄をルール化し、規程に定めることを検討しましょう。
データ品質の担保
精度の高いピープルアナリティクスを実施するためには、データの品質に留意する必要があります。人事部門で管理しているデータであれば、ある程度整備が進んでいるかもしれません。しかし、現場に点在しているデータを活用しようとする場合、データの形式がまちまちであったり、一部欠損が生じていたりとそのままでは活用できないケースも想定されます。
こうした不完全なデータをそのまま活用すれば、誤った判断の原因となるためコストをかけてでもデータの整備をおこない、品質を担保することが欠かせません。
分析スキルの向上
ピープルアナリティクスにおいて、データの収集・蓄積がうまくいったとしても、分析スキルが不足していたため満足のいく成果が得られないことはよく起きます。成果に直結するデータ活用をおこなうには、人事領域に明るいデータサイエンティストのような人材が必要です。
自社人材の育成を図ることが難しい場合は、ピープルアナリティクスに強い外部企業の力を借りることを検討しなくてはならないでしょう。自社の人材から育成を図る場合は、適切な人選をおこない教育を施していく必要があります。
ピープルアナリティクスの実践事例①(北海道ガス株式会社)
背景
北海道ガスでは、2030年および2050年を見据えた中期経営計画『Challenge 2030』において、事業構造の抜本的改革とカーボンニュートラルへの取り組みを進めています。
その実現のためにはDX人材の育成が欠かせないと考え、従来の人事データだけでは把握できなかったスキルや特性を可視化する手段として弊社サービス「exaBase DXアセスメント&ラーニング」の導入を決定しました。
活用のポイント
アセスメントでは、実力に応じて出題内容が変動する適応型モデルが採用されており、社員一人ひとりの強みと課題がより正確に可視化されました。
特に「セキュリティマネジメント」や「顧客・ユーザーへの共感」といったスキル項目において高スコアを記録し、同社の特性が浮き彫りになりました。また、eラーニングは約6ヶ月間実施され、全体のスキルスコアは平均0.3ポイント向上するなど、学習効果も定量的に確認されています。社内ではDX情報を集約・発信するプラットフォーム「Xzilla(くじら)」も活用され、学びを促進する風土づくりにもつながっています。
人事データとの統合分析(ピープルアナリティクス)
アセスメントで得られたDIAデータと既存の人事データを統合し、人材や組織の特徴を多角的に分析する取り組みが始まっています。これにより、これまでは見えていなかったハイパフォーマーの共通点や、役職・職種ごとの育成方針の設計が可能になりました。たとえば、課長職以上では「パーソナルスキル」と「変化への適応力」の組み合わせが高い人ほど人事評価スコアが高いという相関が見つかるなど、配置や育成の判断材料として活用できる示唆が得られています。
成果と今後の展望
北海道ガスでは、社員のスキルを実態に即して正確に把握したうえで育成方針を立てることが、DX人材育成成功の鍵であると考えています。既存の人事システムの枠にとらわれず、自社の風土やレベルに合った方法を選ぶべきという考えのもと、今後も「社員が成長実感を持てる育成環境」の構築に向けて取り組みを進めていく方針です。
参考:北海道ガス株式会社 お客様の声/exaBase DXアセスメント&ラーニング
ピープルアナリティクスの実践事例②(大鵬薬品工業株式会社)
背景
大鵬薬品工業株式会社では、2023年1月に社長より「DX人財の育成を本格化させる」との方針が示され、全社員を対象としたDXスキルアセスメント「DIA(デジタルイノベーターアセスメント)」の実施に踏み切りました。
同社ではDX人財を以下のように分類・定義し、**DX人財(D・X)と、ゼネラリスト人財(G)**の全体像を可視化した「DXG人財ポートフォリオ」の構築を開始。従業員のスキル把握と自律的な育成支援を進めています。
- D人財:デジタルスキルが高い
- X人財:イノベーティブスキルが高い
- G人財:コアリテラシーを持つゼネラリスト
活用のポイント
全社員に対してDIA(ver2.0)を受検してもらい、デジタル/イノベーティブの2軸によるスキル可視化を実施。その結果に基づき、希望者約1,600名に対してeラーニングプログラムを提供し、学習と成長のサイクルを構築しました。
このアセスメントでは、DXスキルレベル別に人財の分布を可視化。DXG分類に該当する社員が全体の約2割にのぼることが判明し、戦略的な人財育成・配置の指針として活用しています。
また、DスキルとXスキルのレベルに応じて、年齢層や役職などとの相関分析も実施。
- デジタルスキルは30〜40代に比較的高い傾向
- イノベーティブスキルはマネジメント層に分布
ピープルアナリティクスによる成長人財の特定
DIAは半年後に再度実施され、1000名以上が2回目を受検。1回目と比較し、DXG人財に該当する人数が236名増加(271→507名)。eラーニングの取り組みによって、明確なスキル向上が確認されました。
特に注目されたのは、
- 初回のスキルレベルが低いが、高い目標値を掲げていた層が顕著に成長していた点です。
- 資格・業務経験の双方を有する人財はスキルスコアが高い傾向にあることも判明。
デジタルスキルとデータリテラシーテストの結果には正の相関が見られ、データ活用力との関連性も明らかになっています。
成果と今後の展望
アセスメントによる客観的なスキル可視化とeラーニングの組み合わせにより、DX人財の裾野拡大に成功。特にデータサイエンスやAIなど、即戦力人財の育成が急務となる領域も浮き彫りになりました。
- アセスメント:DIA+社内アンケート+外部テスト
- 学習支援:eラーニング、マナビDX Quest等
- 学習定着:社内勉強会・ナレッジ共有
- スキル実践:部門横断的な業務アサイン
さらに、DXG人財ごとの育成方針とロール設計(例:ビジネスデザイナー、データサイエンティスト等)も具体化するに至りました。
参考:大鵬薬品工業・今岡 忠氏が語る、DXアセスメントの全社員受検で得られた示唆とDX人財育成戦略への活用 〜ExawizardsCollaborationDay2023
まとめ
人材確保が困難を極めるなか事業を継続していくには、新たな人材活用の方法を模索していかなくてはなりません。これまで活用してこなかった層の人材を採用し、戦力化するといったことが求められるようになります。そのためには、従来のような画一的な人事施策ではなく、働き方の多様性に配慮した複雑な制度運用が必要です。
こうした背景に対応していくためには、人事領域にもデータドリブンな手法を用いることが欠かせません。昨今、ピープルアナリティクスが注目を集め、導入を検討する企業が増加しているのはこうしたことが背景にあるのです。
しかし、有効な施策としてピープルアナリティクスを展開するうえでは、正しくデータを収集し、効果的に運用するシステム構築までを一貫して行える専門人材が必要です。今後は、人事領域の知見とデータ活用の専門知識を合わせ持つ人材の確保が、多くの企業にとっての課題となるでしょう。
では、DX人材の育成に取り組むうえで重要なROIとは、どのように向き合うのが適切なのでしょうか。
本資料は、DX推進担当者向けに、DX人材育成を推進するうえで上で重要な考え方3つをお伝えします。
DX人材育成の育成計画や目標を策定する際の参考としてお役立ていただけますと幸いです。
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