DXコンサルティングとは、最新のテクノロジーや経営戦略に知見を持つコンサルティング会社などが、企業などのDX実現をさまざまな方法で支援することです。
DXコンサルティングは、デジタル技術を生かした新規事業の立ち上げの場で、大きな力を発揮します。ここでは、DXコンサルティングの必要性の判断方法やDXコンサルティング会社の選び方を解説します。
DXコンサルティングとは
DXコンサルティングとは、AIやビッグデータ、IoTといった先進技術の知見を持つコンサルティング会社などが、競争力のあるビジネスモデルの確立や経営課題の解決に向けて企業などをサポートすることです。
DXコンサルティングでは、業務の部分的な改善に留まらず、製品、サービス、企業文化、組織、業務プロセスなどの全社横断的、抜本的なシステムの変革を目指すことができます。
DXコンサルティングを行う会社には、課題の洗い出しや経営戦略の立案、DX推進計画の策定などの上流工程を担う会社や、ITシステムやAIアルゴリズムの開発・導入、人材育成やアフターフォローなどの下流工程を担う会社、上流工程から下流工程まで一貫して伴走してくれる会社が存在します。
どういう場合にDXコンサルティングを頼むべきか?
DXコンサルティングを依頼すべきかどうかは、企業のDXへの理解や取り組み、人材の育成の程度によって変わってきます。DXコンサルティングを頼んだ方が良い場合と、内製で進めた方が良い場合を具体的な事例でご紹介します。
DXコンサルティングを頼んだ方が良い場合
DXを推進できる人材がいない
DXコンサルティングを行う会社には、豊富なDX推進経験や高度なIT知識を持つコンサルタントが在籍しています。DXを推進できるようなIT人材が自社にいない場合でも、同社のコンサルタントを活用することでDXを推進することが可能です。
DXのビジョン策定や戦略・ロードマップ作成をしたい
長期間にわたって全社一丸となり取り組む必要があるDXで、意識や目的、方向性のぶれを防ぐには、戦略の策定やロードマップの作成が重要です。DX推進に関して、ビジョンや戦略から検討が必要な場合も、DXコンサルティングを依頼すると良いでしょう。
DXコンサルタントの深い知見や豊富な経験を活用し、DXビジョンや戦略の策定、ロードマップの作成が可能です。
DX推進をするにあたって組織・制度・環境から大きく変えたい
DXの推進では、組織や制度、環境を成果が出せるように整えることが重要です。組織や制度、環境の大きな変革の実現には、しがらみや慣習にとらわれない外部の力が有効に働く場合が多くあります。
DXの推進を機に、組織や制度、環境を大きく変えたい場合にも、DXコンサルティングは役立ちます。
内製で進めた方が良い場合
DXを推進可能な人材が多く在籍している場合
自社にDX推進が可能な人材が数多く在籍している場合には、内製で進めた方が良いでしょう。自社にDX推進が可能な人材がいるか不明な場合は、全社にアンケートやテスト、アセスメントを受講してもらい適性のある人を探すことをお勧めします。
経営層がDXに関して理解が深く、現場に戦略や指示を落とせる場合
経営層がDXへの深い理解のもとリーダーシップを発揮し、DXを実現するための戦略や具体的な指示を現場へ落とし込める場合には、比較的内製でもDXがしやすいでしょう。
会社全体の文化としてDXのマインドが根付いている場合
会社全体ですでにデジタル技術を積極的に活用し、さらなるビジネスの変革にも抵抗感を持たないマインドが企業文化として根付いている場合、内製でDX推進が可能な土壌は整っていると言えます。
あとは経営層やボトムアップからの提案といったきっかけがあればDX推進プロジェクトも拡大していくでしょう。
DXをコンサルタントに依頼することのメリット・デメリット
コンサルタントにDX推進を依頼するメリット
無駄足を踏まず最短距離でDXを目指せる
DXコンサルティングを行う会社の支援実績から先行事例を把握できるため、自社の失敗や無駄を減らし、最短距離でDXを目指せます。
社内政治などに左右されない外部から、課題への客観的な指摘が可能
社員同士では指摘しづらい課題や、表面化していない問題点についても、コンサルティング会社から客観的な指摘を受けられます。
コンサルティング会社が持つDXのノウハウを吸収し活用できる
多様な業界を支援するコンサルティング会社は、自社の業界にはなかった視点からのアイデアやノウハウを提供してくれることがあります。それらを活用することができればDXを迅速に推進することができるでしょう。
人材育成の支援が受けられる
DXコンサルティング会社の中には、DX人材の採用や選出、育成のノウハウや教育ツールを提供できる会社が存在します。プロのサポートを受け、DX推進が可能な人材を効率よく育成できます。長期的にDXを内製で実現したい会社は人材育成も並行して実施しましょう。
DXコンサルティング会社にDX推進を依頼するデメリット
企業内でのDXノウハウの蓄積やDX文化の醸成がしづらい場合がある
コンサルティング会社の支援が一過性のもので、企業の自走につながる体制作りが十分でなかった場合、企業内でのDXノウハウの蓄積やDX文化の醸成がしづらい場合があります。
一過性の取り組みにならないよう、コンサルティング会社への依頼と並行して、自走につながる社内の体制作りやDXマインドの醸成も行いましょう。
自社の経営方針や業務実態、顧客のニーズについて理解が不足する可能性がある
DXや経営戦略に強いコンサルティング会社であっても、企業について十分な理解がないままだと、経営方針や業務実態にそぐわない対策となる場合があります。情報や課題、希望はコンサルタントに詳細に伝え、自社の状況を深く理解してもらいましょう。
社員の成長につながりづらい場合がある
DXコンサルティング会社にDXを任せきりにしてしまうと、社員の成長につながりづらい場合があります。人材育成につながる取り組みは並行して行いましょう。将来的に人的リソースを確保するためにも、社員の成長を促すことは重要です。
コンサルタントと相性が合わない可能性がある
コンサルタントと見解が相違したり、相性が合わない相手が担当になったりといった可能性も考えられます。
コンサルタントに依頼するという時点で「自分たちは専門ではないから」という意識が働くかもしれませんが、DXは長期的な取り組みですので忌憚なく話せる相手と進めることが重要です。 担当者の変更は遠慮なく相談してみましょう。
良いDXコンサルタントを見極める方法
数多く存在するDXコンサルタントから、自社に合うコンサルタントをどのように選ぶべきか悩んだら、以下の3点を基準に検討することをおすすめします。
上流から下流まで一貫して実施してくれるかどうか
DXに向けた取り組みはこれからという状況で、十分な予算が投資できる場合には、戦略策定から、実装、オペレーションの浸透まで一貫してサポートが可能なDXコンサルティング会社がおすすめです。費用はかかりますが、総合的なDXの推進が可能です。
自社でもDXを推進しているかどうか
提案型や伴走型など、支援のスタイルはDXコンサルティング会社によりさまざまです。より深く業務に根差した支援を求める場合には、DXコンサルティング会社自体がDXを実現できているかをチェックしましょう。
さらに、DXプロジェクトに携わった経験豊富な担当コンサルタントがいるのかもチェックしたいポイントです。
競争優位を確立した企業にDX成功の秘訣を学ぼう!
DXを実施するにあたっては、単に既存業務の効率化をおこなうだけでなく、どのように競合優位性を確立するかという経営観点にもとづいた推進が必要です。
先行してDX推進を成功させた企業は何を取り組んだのか?
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得意領域が自社に合っているか
DXコンサルティング会社にも、得意・不得意領域が存在します。戦略・ビジョン・ロードマップの策定が得意な会社や、組織・環境・制度構築が得意な会社、システム開発や実装が得意な会社、人材領域やプロダクト利用からDXを推進する会社などさまざまです。
得意とする領域はホームページに掲載されている実績などを参考にしましょう。依頼したい領域がわからない場合は、課題の洗い出しから相談するのも一つです。
DXコンサルティング会社に依頼する内容
DXコンサルティング会社に何を依頼するかは、人材を育成する段階なのか、ロードマップを作成する段階なのかといったフェーズ(工程の進捗具合)により異なります。DXコンサルティング会社への具体的な依頼内容の例を、フェーズごとにご紹介します。
DX組織開発・DX人材育成
DXの責任者やチームを初めて選任しようとしている、または選任したDX人材の育成方法を検討するフェーズでは、以下のような内容を依頼できます。
依頼例: DX推進に適正のある社員を見つける手法の相談、チームビルディング、DX担当者への教育の実施、社内全体のDXマインドの醸成
企画の案だし、アイディエーション
課題の洗い出しやアイデアの検討、企画の立案などを行うフェーズでは、以下のような内容を依頼できます。
依頼例:客観的な視点からの問題点の指摘、課題の洗い出し、会社の理想像やUX向上についてのアイデアの提案、アイデアの実現可能性・効果の検証(PoC)、実証実験
DXのビジョン策定や戦略・ロードマップ作成
DXの推進をどのような方法・手順で進めるか、DXのゴールはどんな状態かを検討するフェーズでは、以下のような内容を依頼できます。
依頼例:デザイン思考によるビジョンの具現化、戦略策定、ロードマップ作成
実装支援
AIやRPA、VR、ARといった先端技術などを実装するフェーズでは、以下のような内容を依頼できます。
業務の高度化
業務の質を高め、顧客満足度の向上やミス減少を目指せるツールの実装支援
依頼例:顧客満足度の向上を目指したチャットボットの精度向上・応対内容の改善
業務の効率化
業務を効率化し、生産性向上やコスト削減を目指せるツールの実装支援
依頼例:面接から採用までにかかる時間や業務量の削減を目的とした、客観的かつ統一された軸で評価が可能な採用選考動画のAI解析導入
新規サービスの開発
これまでにない顧客体験を実現するための新たなサービスの開発
依頼例: 顧客が実際に特定の場所を訪れたような体験ができるVR空間のプロトタイプの作成
AIのアルゴリズム開発
独自に提供したいサービスを実現できるAIアルゴリズムの開発
依頼例: 家族の認知症傾向や詐欺被害の早期発見ができるサービスを実現するための、AIによる口座の支払い状況異常検知アプリケーションの共同開発
DXコンサルティング会社の一覧
自社に合ったDXコンサルタントを探すうえで、DXコンサルティングを行っている企業を紹介します。
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン
上場企業のほか、政府機関のコンサルティングを行っています。デジタルに特化した案件に多数対応し、データサイエンティストやアジャイルコーチなど、幅広い専門性を持つ人材が在籍しています。
事例
大手銀行の住宅ローンの承認プロセスをデジタル化し簡素化。承認まで2日から10日かけていたプロセスを、わずか15分で行えるよう短縮。
参考:『Experience Design | McKinsey Design』 McKinsey & Company
ボストン・コンサルティング・グループ合同会社
戦略コンサルティングの先駆者として存在感を放つグローバルコンサルティングファームです。最先端のマネジメントコンサルティングやデザイン力、テクノロジーを駆使し、競争で優位性を持てるような組織づくりを支援しています。
事例
保険会社「ゼネラリ保険」のDXを支援し、顧客が離反する確率を10分の1まで下げることに成功。レスポンスタイムは半分に削減し、ダウンタイムは8割も短縮。
参考:『デジタル、テクノロジー、データで勝利をおさめる』 BCG
PwCコンサルティング合同会社
DX戦略の策定だけでなく、実行・実装まで総合的に支援できるコンサルティング会社です。独自の成長戦略フレームワークを提供し、コスト課題の解決や非効率な業務の削減と、新たな顧客体験の創造を包括的に実現します。
事例
大日本印刷の経費精算DXを支援し、請求書や領収書のペーパーレス化やカード利用明細のデータ連携、AIを利用した入力の自動化などを実施。経理業務の効率化や管理機能の強化とともに、リモートワークという新たな働き方を実現。
参考:『大日本印刷とPwC Japan 「経費精算DX」でいつでも・どこでも効果的な働き方を実現』 PwC Japanグループ 2021年10月20日
デロイトトーマツ コンサルティング合同会社
世界的なビジネスのプロフェッショナルのネットワークであるデロイトの一員として、日本でコンサルティングサービスを提供するファームです。企業の飛躍的な成長を実現するために、仮説検証型に加え、実験実証型のサービスを提供しています。
事例
人事部門が持つデータと営業部門が持つデータを有効に活用し、顧客が営業担当者に求める要素をアナリティクスで新たに定義。教育体制を整え、営業担当者の育成にかかっていた時間を15年から8年に短縮し、営業担当者1人当たりの売上高を1.3倍に増加。
参考:『デジタル・データ活用による競争力強化のための人材・組織変革のポイント』 デロイト トーマツ グループ
ガートナージャパン株式会社
独自のデータ資産を活用し、知見に基づき中立の立場からツールの提供やアドバイスが可能なコンサルティング会社です。デジタル化の加速だけでなく、組織機能の向上やコストの最適化、リスク管理もサポートしています。
事例
ヤマハ発動機のDX推進支援において、ERPの刷新やデータベースの構築を支援。さらにECサイトやバーチャルディーラーの開設により、デジタル上の顧客接点、顧客体験を創出。
参考:『3つのデジタル・トランスフォーメーションでダイナミックな成長を実現』ガートナー・ジャパン
株式会社エクサウィザーズ
豊富なAIアルゴリズムや、アプリケーション、APIなどをニーズに合わせ提供できるのが強みのコンサルティング会社です。企業がDXを内製化できるよう、人材の採用・発掘・育成の支援や組織開発、戦略コンサルティングも行っています。
事例
宅配業界最大手のヤマト運輸において、配送センターなどの拠点における業務量の予測の精度向上に、機械学習(Machine Learning)の技術を応用。MLOps(Machine Learning Operations)」と呼ぶ、機械学習モデルを継続的に改善する手法を導入した。機械学習モデルの開発・実装から運用までのサイクルを、自社の人材で継続的に改良できるようになった。
参考:『ヤマト運輸、MLOpsで経営リソースの最適配置を実現』エクサウィザーズ 2022年8月3日
まとめ
DXコンサルティングの必要性の判断基準や、DXコンサルティング会社の選び方をご紹介しました。DXコンサルティングを依頼する際には、自社の希望に対しどのような成果が出せるのか、事前にしっかりと打ち合わせることが大切です。
DXコンサルティング会社を選ぶ際には、実績をもとに力量や得意領域をしっかりと見極め、自社に最適な会社やコンサルタントを選びましょう。