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営業におけるDX推進の方法とは?売上を最大化する営業組織変革を解説!

近年、IT技術の進化やコロナ禍などを背景に、営業DXの推進が注目を集めています。今回はデジタル化との違いや営業DXを推進するための流れなどを解説します。また、営業DXを推進し売上向上などに成功した企業例をご紹介します。

DXとは

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術によって社会や生活をより良い方向に変革させることを指します。経済産業省は2018年に発表した「DX推進ガイドライン」(現:デジタルガバナンスコード2.0)のなかでDXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:「デジタルガバナンスコード2.0」経済産業省 2020年11⽉

DXは単なるデジタル化や業務の自動化・効率化がゴールではなく、製品やサービス、ビジネスモデルの変革までできてDXであるということは覚えておきましょう。単なるナログ・物理データのデジタルデータ化は「デジタイゼーション」、個別の業務・製造プロセスのデジタル化は「デジタイゼーション」と言います。

営業とは

営業DXを扱うにあたり、営業の機能についてもおさらいしましょう。営業職とは、顧客に対して自社のサービスや商品の説明をしてニーズ喚起をし、契約まで行う仕事のことをさします。

営業職の機能を分解すると、

  • 相手先に訪問して名刺交換をする
  • メールを送って相手に情報を送る
  • 商談日程を調整する
  • 電話をかけ口頭でも情報共有や商品説明をする
  • 商談をする
  • 受注までのサポートをする
  • 受注後の顧客のサポートをする

などがあります。

営業におけるDXとは

前述のように、DXとはビジネスモデルの変革と競争優位性を起こすことまでを言います。 IT技術の進化やコロナ禍により、DXは営業においても求められています。営業DXという言葉には明確な定義はないため、今回の記事では「データとデジタル技術を活用して、対顧客においては営業手法や提案内容を変革させ、社内においては営業組織や体制、営業管理手法、文化などを変革し、営業活動の成果を最大化させること」と定義します。よって、デジタイゼーションやデジタライゼーションの内容も一部含みます。

従来の営業の機能

従来の営業の機能としては以下のようなものがあります。

  • 相手先に訪問したり、展示会に参加したりして名刺交換をする
  • 一通ずつメールを送って相手に情報を送る
  • 電話や個人メールで商談日程を調整する
  • 相手先に赴き商談をする
  • 受注後の顧客のサポートをする
  • Excelで売上管理をする

こうした機能の中にはデジタル技術を使って効率化出来たり、無くすことができる機能も多くあります。

  • 従来の営業手法の各機能を営業DXさせた場合の例

上記の例は主にデジタイゼーションやデジタライゼーションの内容が主ですが、こうした簡単にできることから進めていくことで、DXの意識が自然と根付くことが重要です。「デジタルを使って営業をよりいいものにしていこう」という意識が根付けば、今後も時代に応じた営業形態に柔軟に対応していけるようになるでしょう。

営業DXの重要性

営業DXは近年特に注目を浴び、多くの企業で重要視されています。営業DXが重要視されるようになった背景は、昨今の目覚ましいIT技術の進化とインターネットの普及、それによる顧客の行動・ニーズの変容にあります。顧客が容易に情報を得られるようになったため、情報を提供するだけの営業活動は不要となりつつあります。

営業DXは働き方改革やコスト削減にも大きな効果を発揮します。従来の営業方法では、残業の多さなど無駄もありましたが、ITツールやデータを活用することで業務工数を減らし、生産性を向上させることが可能になります。企業としては事務作業などの手間が減り、人件費も削減できるメリットがあります。

営業DXの具体例

営業DXは一足飛びに進めることはできません。そこで、デジタイゼーションやデジタライゼーションの段階を含めた、営業DXの具体例をご紹介します。

営業手法のデジタル化

営業手法と言っても前述したように営業機能は多岐にわたります。それぞれ見ていきましょう。

 

営業連絡先の獲得

  • 従来の営業手法
    • 展示会で名刺交換、電話で代表電話番号にかける。
  • 営業DX
    • オンライン展示会やセミナー、Web広告で顧客情報を獲得。ビジネスSNSアプリでオンライン名刺交換する。

 

営業タイミングの最適化

  • 従来の営業手法
    • 経験や勘に頼って実施する。
  • 営業DX
    • MAツールを使ったアプローチタイミングの最適化。

※「MA」とは「Marketing Automation」のことで、見込み客へのコミュニケーション活動を自動化できるツールです。例えば見込み顧客を獲得し特定のアクションをした人に自動でメールを配信したり、営業担当に通知することで適切なタイミングで営業活動をしたりすることが可能になります。 MAツールには「Marketing Hub」「Pardot」「SATORI」などがあります。

 

メール活用

  • 従来の営業手法
    • 一通ずつメールを送って相手に情報を送る。
  • 営業DX
    • マーケティング部署が、MAツールを使い自動でメールを送る。

 

日程調整

  • 従来の営業手法
    • 電話や個人メールで商談日程を調整する。
  • 営業DX
    • 顧客が日程調整フォームを使い自動で営業の空いている時間に商談をセットする。

 

商談方法

  • 従来の営業手法
    • 相手先に赴き商談をする。
  • 営業DX
    • フィールドセールスがZoomを使ってオンライン商談をする。事前にサービス紹介動画を送り商談時間を短縮。商品カタログを紙からアプリに切り替える提案可能な商品を増やす。

 

受注後の顧客のサポート

  • 従来の営業手法
    • 商談~受注した営業担当が受注後も引き続きサポートする
  • 営業DX
    • カスタマーサクセスに引き継いでサポート

 

商談・売上・顧客管理、予測

  • 従来の営業手法
    • Excelで関数やマクロを使いこなせる人が実施
  • 営業DX
    • SFAツールを使い誰でも売上管理や分析・レポート作成・見込み予測が可能

※「SFA」とは「Sales Force Automation」の略で顧客情報から商談、売上管理まで必要な情報を漏れなく管理し、分析することができるシステムです。

SFAツールを導入すれば、顧客の購買行動や属性を分析して次に取るべきアクションを想定することができます。SFAツールは「Salesforce」「Senses」「Sales Hub」などがあります。

 

営業職の身近なルーチン業務からはじめられるDXとは?

 

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営業手法・機能の変革

次は営業の手法自体を変革していきましょう。特に新型コロナウイルスの感染拡大以降、対面営業が困難な状況やテレワーク推進の動きもあり、営業手法の変革が急速に求められています。

 

THE MODEL型営業組織

コロナ禍に入り注目を集めているのが「THE MODEL」と呼ばれる営業組織の体制です。THE MODELは対法人の営業活動を分業制にするプロセスモデルの一つです。営業部員がすべて行っていたプロセスを、「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分け、各領域に専門担当者を割り振って、それぞれで対応する方法になります。元々はSalesforce社で活用されており、昨今ではSaaSビジネスが増えてきたことで普及してきました。

THE MODEL型営業組織で重要になるのは ①各部署のKPIを丁寧に設計すること ②各部署間の情報共有をしっかりと行うこと の2つです。

①について、よくある失敗例としては「マーケティング」部署のKPIを「獲得リード数」にすることです。獲得リード数をKPIにするとニーズのないリードまで追い求めるようになるため、インサイドセールスがアポイント獲得に繋がらず、マーケティング部署とインサイドセールス部署に軋轢が生じたり、売上が最大化されなかったりする可能性があります。そういう場合はターゲットリード数やMQL(確度の高い見込み客)数をKPIにしたり、マーケティング獲得リード経由アポイント数をKPIにしたりすることも検討しましょう。

②について、分業型にすると各部署間で情報共有がされづらくなります。情報共有が少なくなると、フィールドセールスやカスタマーサクセスが顧客から受けた意見をマーケティングやインサイドセールスが反映できなかったり、インサイドセールスが掴んだ顧客情報が適切にフィールドセールスに引き継がれずに受注できなかったりと悪影響が出るので注意しましょう。

 

新しい職種の誕生

近年技術の急速な発展により技術的価値・サービス内容がわかりづらい商材が出てきたこと、デジタル技術を活用することで一度に多くの人に思いを伝えることが可能になったことから、自社の商材を不特定多数のユーザーにわかりやすく伝える職種としてエバンジェリストという職種がIT業界で生まれました。

エバンジェリストの主な業務として

  • 商材の説明や商材が必要な背景や概念を様々なセミナーに出て説明する
  • SNSや動画配信プラットフォームで発信する
  • 導入検討企業に対してデモンストレーションを行う
  • 自社の社員に対して新商材の説明や理解促進を行う

などがあります。

以上、営業DXの具体的な内容についていくつかお伝えしました。ここで紹介したこと以外にも日々営業活動や営業組織はデジタルの力によって変化し続けていますので、顧客の購買行動に合わせて柔軟に営業活動も変容させていきましょう。

参考:『営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践』

営業DXの成功事例

営業DXの成功事例として、大胆に営業手法を変革した2社をご紹介します。

ソフトバンク株式会社

実施内容・成果

大手通信会社のソフトバンクは、対面営業からデジタルセールスへ移行。さらに、マーケティング部門と営業部門を統合した本部を設立し、電話やメール、Webセールスを連動する体制を構築しました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 部門内のスタッフを、 ことで、それぞれの業務に注力することができる体制を構築しました。
  • WebマーケティングツールとMAツールやSFAツールを連携し、顧客のWeb行動情報を一元化。顧客の行動履歴に基づき関心の高いコンテンツをメールで配信し、効率的に見込み客の育成を行えるようになりました。

参考:『ソフトバンクがニューノーマル時代の新たな営業スタイルを実現させるまで』ソフトバンク株式会社

富士通株式会社

実施内容・成果

電子機器メーカーの富士通株式会社は、業種別やアカウント別にアサインしていた従来の営業職を見直し、お客様への価値提供をリードするビジネスプロデューサー(BP)として再定義しました。顧客をサポートし共にビジネスをプロデュースする役割を担っています。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • ビジネスプロデューサーが顧客のビジネスプロデュースが可能になるようにリスキリングを会社がサポートし、マーケット分析、DX構想策定力、デザイン思考などを学べるようになっています。

参考:『富士通株式会社採用ホームページ』

営業DXを推進する流れ

①課題の洗い出しと優先度決め

まずは自社の営業において何が課題か、何を目標とするのかを考えます。例えば昨年度から25%増の売上を目指す場合、その目標を達成するために必要な個々の課題を考えます。

目標を達成するために顧客訪問数を増やす、その時間を捻出するために事務作業の効率を上げるなど、行動を見直す必要があります。また、取り掛かるべき行動を明確化し優先度をつけることも大切です。

②組織・体制を整える

営業DXは営業部だけではなく、経営企画部や業務部、システム部など多くの部署にまたがるプロジェクトとなります。組織や手法自体を変革するため、現場レベルだけではなく役員などの協力が必要になる場合もあります。多くの人が関係するため、主管部を明確にしてDX推進の体制を整えることが重要です。

③業務プロセスの見直し・改善/変革計画の設計

営業活動に関わるプロセスが現代に合っているか、生産性が高いかなどの見直しを行います。見込み客の創出や育成方法、顧客満足度向上などの方法が前時代的なやり方でないか、ITツールを活用する余地がないか確認しましょう。

④ITツール導入

ITツールの導入は営業DX推進には必須です。ただし、ITツール導入により業務効率化は図れますが、ITツールの導入の目的は何かを明確にすることが大切です。見込み客育成のために利用したい場合はMAツール、顧客満足度の向上であればSFAツールなど目的に合ったツールを活用しましょう。

⑤改善/変革の実施

業務プロセスの改善や社内の体制を整えツールを導入したら、営業手法や営業職の在り方を考え、企業の戦略を再構築していきます。蓄積したデータをどう活用するか、最適な営業方法は何かを検討し、変革を実施していきます。

⑥文化・習慣として浸透させる

営業DXはすぐに効果を実感することは難しいものです。計画は長期的に考え、PDCAを回して改善を繰り返していくことが大切です。定期的に部門間の連携や、業務プロセスの修正などを行える体制を整え、習慣として定着させることが営業DX推進には重要です。

まとめ

営業DXからよくイメージされる業務効率化や自動化は、デジタイゼーションやデジタライゼーションであり、営業DXとしては最初のステップです。その先にある営業体制や営業手法の変革こそが本来の営業DXといえるでしょう。営業DXにはTHE MODEL型のような分業制や、富士通のように営業職を廃止するといった大胆な変革もあります。自社に合った営業の在り方を考え、明確なビジョンをかかげ、営業DXを推進していきましょう。